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第1部 勇者令嬢アキラ
第2話 クズ勇者に鉄槌を! 下せませんでした。
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私の中に怒り、憎しみと言った、暗い感情が沸き起こる。自分で言うのもなんだが、私はかなり温厚である。こんなにも人を憎んだのは初めてだ。
「眠りの雲!」
三人の魔術士が同時に叫ぶ。彼らは対象を眠らせる雲を、各自が一つずつ出現させ、ヨシオとディアナ、リーファの頭上に放った。
いいぞ。確かにこれなら、誰も傷つかない。
「甘いぜ! 【創造】!」
ヨシオはドヤ顔で妙なポーズを取り、一瞬で全身甲冑を身につけた。そして背中にまとったマントをひるがえし、頭上の雲を薙ぎ払う。
雲は掻き消されてしまった。なんだこれは。何故こんな事が出来る?
「俺とやろうってんだな? 面白い。まずは力で屈服させてやるよ。三つ目のスキル【創造】は、魔術武具や道具を創り出す事が出来る。もう俺は、誰にも負けやしない。最強だ! 俺強えぇぇ!」
ヨシオはディアナとリーファの周囲に魔術障壁を展開し、両手に巨大な剣を出現させた。そしてそれぞれを一振りする。
たったそれだけの行為で。兵士も魔術士も貴族も。あらゆる調度品、そして国王の私も。
全てが吹き飛ばさせれ、壁に激突し、床に這いつくばった。だが魔術障壁で守られた二人だけは、無事だ。
「うう......」
そこかしこから、呻き声が聞こえる。
「はははっ! どうだ見たか! 逆らう奴には容赦しないぜ! 今後この城は俺のモノにする! この国も! そこに住む者達も!全部俺のものだ! そして国王のおっさん! あんたは牢屋に入ってもらう。そして国民の前で、公開処刑! 俺は王様になるんだ!」
ヨシオは愉快そうに笑い、倒れている者たちに【洗脳】の稲妻を放って行く。
立ち上がる兵士たち。ヨシオが命令を出し、それが当然であるかのように、彼らは私を捕らえた。
王冠やローブ、その他諸々の国王装備を全て奪われ、私は地下牢に幽閉された。
全てに絶望し、膝を抱えていた私。だが、見張りに立っていた二人の兵士のうち、一人がもう片方の兵士を殴り倒した。
「陛下、今のうちに逃げましょう!」
彼は新米兵士のジャクソン。洗脳が効かなかったのだろうか。
「ありがとうジャクソン。だが、何故君は心を奪われなかったのだ?」
牢の鍵を外すジャクソンに、私は小声で訪ねた。
「それは僕にもわかりません。もしかしたらですが、勇者の奴が、僕だけ見落としたのかも。とにかく陛下、今は逃げて下さい。そしてあいつを倒す手段を、見つけて下さい」
「ああ、そうしよう。希望が湧いてきたぞ」
私はジャクソンの案内で、秘密裏に城を抜け出した。
「僕はここまでです。陛下を見張っている振りをして、時間を稼ぎます。どうかご無事で!」
「ああ、ありがとう。知恵と力を身に付け、必ず助けに戻る。この恩は一生忘れない」
私はジャクソンと握手を交わし、城の裏手にある森を目指した。そこには私の親友であり、人嫌いの賢者、クラウドが住んでいる。彼ならきっと、何とかしてくれるだろう。
「眠りの雲!」
三人の魔術士が同時に叫ぶ。彼らは対象を眠らせる雲を、各自が一つずつ出現させ、ヨシオとディアナ、リーファの頭上に放った。
いいぞ。確かにこれなら、誰も傷つかない。
「甘いぜ! 【創造】!」
ヨシオはドヤ顔で妙なポーズを取り、一瞬で全身甲冑を身につけた。そして背中にまとったマントをひるがえし、頭上の雲を薙ぎ払う。
雲は掻き消されてしまった。なんだこれは。何故こんな事が出来る?
「俺とやろうってんだな? 面白い。まずは力で屈服させてやるよ。三つ目のスキル【創造】は、魔術武具や道具を創り出す事が出来る。もう俺は、誰にも負けやしない。最強だ! 俺強えぇぇ!」
ヨシオはディアナとリーファの周囲に魔術障壁を展開し、両手に巨大な剣を出現させた。そしてそれぞれを一振りする。
たったそれだけの行為で。兵士も魔術士も貴族も。あらゆる調度品、そして国王の私も。
全てが吹き飛ばさせれ、壁に激突し、床に這いつくばった。だが魔術障壁で守られた二人だけは、無事だ。
「うう......」
そこかしこから、呻き声が聞こえる。
「はははっ! どうだ見たか! 逆らう奴には容赦しないぜ! 今後この城は俺のモノにする! この国も! そこに住む者達も!全部俺のものだ! そして国王のおっさん! あんたは牢屋に入ってもらう。そして国民の前で、公開処刑! 俺は王様になるんだ!」
ヨシオは愉快そうに笑い、倒れている者たちに【洗脳】の稲妻を放って行く。
立ち上がる兵士たち。ヨシオが命令を出し、それが当然であるかのように、彼らは私を捕らえた。
王冠やローブ、その他諸々の国王装備を全て奪われ、私は地下牢に幽閉された。
全てに絶望し、膝を抱えていた私。だが、見張りに立っていた二人の兵士のうち、一人がもう片方の兵士を殴り倒した。
「陛下、今のうちに逃げましょう!」
彼は新米兵士のジャクソン。洗脳が効かなかったのだろうか。
「ありがとうジャクソン。だが、何故君は心を奪われなかったのだ?」
牢の鍵を外すジャクソンに、私は小声で訪ねた。
「それは僕にもわかりません。もしかしたらですが、勇者の奴が、僕だけ見落としたのかも。とにかく陛下、今は逃げて下さい。そしてあいつを倒す手段を、見つけて下さい」
「ああ、そうしよう。希望が湧いてきたぞ」
私はジャクソンの案内で、秘密裏に城を抜け出した。
「僕はここまでです。陛下を見張っている振りをして、時間を稼ぎます。どうかご無事で!」
「ああ、ありがとう。知恵と力を身に付け、必ず助けに戻る。この恩は一生忘れない」
私はジャクソンと握手を交わし、城の裏手にある森を目指した。そこには私の親友であり、人嫌いの賢者、クラウドが住んでいる。彼ならきっと、何とかしてくれるだろう。
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