35 / 35
第35話 打ち上げパーティ。(最終話)
しおりを挟むダンジョンを戻りながら、ノーマン、リカーナ、ワイルド・アベンジャーズの五人と合流した。
八つの鍵を使って開いた扉は、誰かが通ると閉じてしまう仕様だったらしく、みんなそこで待機していたのだ。
優希ちゃんが壁の所にある装置を色々と操作し、扉は開いた。優希ちゃんはすかさずみんなに謝る。
キョトンとするみんなに私が説明すると、全員快く許した。
「ありがとうございます、皆さん!」
「何、良いって事よ! 昨日の敵は、今日の友、つってなぁ! それにこんな美人なら、男は誰でも許しちまうぜ! なぁみんな!」
剣術士カイエンが、優希ちゃんの肩をぐっと抱き寄せる。優希ちゃんは顔を赤くして、眼鏡の位置を直している。とっても恥ずかしそうだ。
五人は優希ちゃんを、「やんややんや」ともてはやした。優希ちゃんは笑った。どうやら、まんざらでもないらしい。
ギルドに戻って報告。モンスターの首は全て回収し、中が異空間に通じている特殊な箱に収めてあった。それを提出して、該当する依頼を探してもらい、報酬を山分けした。
魔王の事は話さなかった。優希ちゃんを許すと決めた以上、彼女を殺す訳にはいかない。事件は、モンスター達がゲリラ的に集まって悪さをした、という事になった。
ちなみに勇気と優希ちゃんも、冒険者登録をした。勇者ユークリウッドは有名人なので、ギルド内は大盛り上がり。みんなが拍手喝采だった。
優希ちゃんは魔王の姿に変身し、マオ・ラーナキアの名前で登録した。でも、誰も魔王である事には気づかなかった。まぁ、誰も姿を見た事はないだろうから当然か。
ギルドの帰り。私のマンションで軽いパーティをした。みーたんは、マンションに帰るなり専用ベッドで丸くなった。きっと疲れたんだろう。
「ねぇ優希ちゃん。連絡先交換しよ?女子会、本当にやろうと思ってるからさ」
ワイルド・アベンジャーズに囲まれている優希ちゃんを連れ出し、私は連絡先を交換した。きっと彼女とは、仲良くやっていける。
「良いんですか、私、あの......嬉しいです!」
スマホを抱きしめ、涙目で微笑む優希ちゃん。可愛い。
「良かったね、優希ちゃん」
私の隣に寄り添っている勇気も、なんだか嬉しそうだ。
そこへノーマンとリカーナがやってくる。二人はダンジョンで再会した時から、めちゃくちゃラブラブで、見ているこっちが照れ臭くなる程だ。
「師匠! リカーナも女子会に混ざりたいらしいです」
「ちょっ、ノーマン! いいの、お姉ちゃん! 私が混ざっても迷惑だし」
ブンブンと手を振るリカーナ。ここにも可愛い子がいたよ。もう、素直じゃないんだから。
「リカーナも混ざって。あなたがいなきゃ、盛り上がらないわ」
「そ、そう? じゃあ、うん、お言葉に甘えちゃおっかなぁ」
リカーナ、めっちゃ嬉しそう。両手を合わせて目を輝かせている。
「あはは、みなちゃん、飲んでるぅー?」
「お姉ちゃん、飲み過ぎだよ!」
火凛ちゃんも千鳥足でやってきた。凛太郎君は大変そうだ。
「私も女子会行くからねー! 行くったら行くんだからねー!」
「それはさっきも言ったじゃない。もう、お酒弱いのに、無理するから」
「僕も止めたんですけど、なんか楽しくなっちゃったみたいで」
まぁ、気持ちはわかるけどね。
「ちょっとみなちゃん! 絶対、勇気君を幸せにしなさいよ! そうでないと私、泣いちゃうんだからぁー!」
泣き出す火凛ちゃん。
「任せて。火凛ちゃんの想いの分も、私が勇気を幸せにする! 約束する!」
私は火凛ちゃんをギュッと抱きしめた。
「あははぁー♡ よろぴくぅー♡」
火凛ちゃんは満足したように、またふらふらと去っていった。凛太郎君が面倒くさそうについて行く。
やがてパーティもお開きとなり、優希ちゃんはワイルド・アベンジャーズが送って行く事になった。
「あんた達、優希ちゃんに変な事したら殺すわよ」
「し、しねぇって! 勘弁してくれよ姐さん!」
笑いながら去って行く、五人のマッチョと一人の美女。
火凛ちゃんは、凛太郎君が肩を貸しつつ、タクシーに乗って行った。明日は月曜日。火凛ちゃん、明日の仕事、大丈夫かな......。
ちなみに今日は、勇気が泊まって行く事になった。私は仕事だけど、勇気はオフなんだって。私の部屋で、一緒に寝る。リカーナとノーマンも、きっと今日は一緒に寝るのだろう。
交代でお風呂に入り、リビングで軽くお酒を飲む。一時間ほど、今日のデートの話で盛り上がった。
「ふぁーっ」
私のあくびが、みんなに連鎖する。時計を見ると、いつの間にか夜の12時を過ぎていた。
自然と雰囲気は、就寝モードに移行する。
「そろそろ寝よっか」
「うん、そうだね」
ノーマンとリカーナがソファーから立ち上がる。二人はずっと手を繋いでいる。いやー、まさかこの二人が、ここまで仲良くなるなんてね。
「師匠、勇気さん、おやすみなさい」
「おやすみなさい♡」
二人は案の定、ノーマンの部屋に一緒に入って行った。リカーナ、めっちゃルンルンしてるし。
きゃあー♡ 予想はしてたけど、やばい! 一緒に寝るって、つまり、その、そういう事だよね。
「あの、勇気......わ、私達も、そろそろ寝よっか......♡」
「う、うん。そうだね」
勇気の顔は真っ赤だった。前世では婚約してた私たちだったけど、二人共めちゃくちゃ奥手で、キス止まりの関係だった。
まぁ、ミーナは十八歳だったしね。でも、今の私は二十八歳。それなりに経験を積んでいる。
勇気は、何人か付き合った人はいるけど、みんなすぐに別れてしまったらしい。なので転生後の今もキス止まり。
ここは私がリードしなきゃ。
「行こう勇気。私の部屋に」
「うん」
私は勇気の手を引き、自分の部屋に連れ込んだ。部屋に入るなりキスをし、そのままベッドに押し倒す。
「みなちゃん......」
勇気の息は荒い。
「肉食系女子は、嫌い?」
私は服を脱ぎながら、勇気にキスをする。
「いや、好きだよ。ていうか......肉食とか草食とか関係なく、みなちゃんが俺は好きだ」
「勇気......♡ 私も、勇気が好き。大好きなの」
私たちは体を重ねた。そして何度もお互いの愛を確かめ合った。幸せって、きっとこういう事なんだって、そう思えた。
前世の思い出が蘇る。あの時......ユークリウッドに婚約破棄された時は、本当に絶望したけど。
あの時のミーナに教えてあげたい。来世できっと、結ばれる。幸せになれるよって。
暖かい勇気の腕に抱かれながら、私は幸せな眠りへと、落ちていったのだった。
0
お気に入りに追加
106
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる