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第29話 親友
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【超高速忍び足】と【リザード・ブーツ】【モモンガ・マント】でビルからビルへ、屋根から屋根へと飛び移り、あっと言う間にマンションのある江古田へ。例のごとくスーパーの中に入り、冒険者ギルドへと入る。
「マスター! ホムラいる!?」
「ああ、さっき来てたぞ。奥にいるんじゃないか?」
「わかった! ありがと!」
薄暗いバー仕様のギルド内をざっと見回す。だがホムラらしき人影は見えず、気配もない。
j
「え!?」
ホムラは居なかったが、その代わりに意外な二人を発見した。私は即座にその二人の元へと駆け寄る。
「火凛(かりん)ちゃん! 凛太郎(りんたろう)君! どうしてこんな所に!?」
その二人とは、私の会社の同僚で親友の「日浦火凛(ひうら かりん)」ちゃんと、その弟「凛太郎(りんたろう)」君だった。
「!? ど、どうして私の名前を......! あなた、誰ですか?」
「......」
火凛ちゃんも凛太郎君も戸惑っている。あ、そうか、今の私は美奈子じゃなくて、ミーナの姿なんだ。
「ああ、えっと、いきなりごめん! 私、美奈子! 猫柳美奈子!」
「えっ! みなちゃん!? ええ!? その格好! 冒険者だったの!? びっくり!」
「......こんにちは」
火凛ちゃんは口を両手で覆って、目を丸くした。凛太郎君も、納得したように挨拶してくれた。
彼女とは同期入社で、音楽もドラマも、好きな俳優も好みが同じなのだ。
ちなみに勇気のLINEのIDを教えてくれたのも火凛ちゃんだ。彼女は「天空勇気ファンクラブ」のメンバーなのだ。まぁ、もちろんIDはプライベートのものとは別で、ファンの為に作られたらしいんだけどね。
「って言うか、ここに居るって事はさ、二人も冒険者なの?」
私の質問に、二人は顔を見合わせる。そしてクスッと笑った。
「実は、そうなんだ。今まで内緒にしててごめんね。私とみなちゃんの仲なのに」
「ううん、いいの。でも、なんだか嬉しいな。まさか火凛ちゃんが冒険者だなんて、夢にも思わなかったけど......。あ、私、最近冒険者になったばかりなの。火凛ちゃんは長いの?」
「私は、八歳の時からやってるよ。だから二十年くらい、かな。凛太郎も同時期だよ。ね、凛太郎」
「......うん」
二十年!? めっちゃ大先輩じゃん!
......ん? 確かホムラも二十年。
「ねぇ火凛ちゃん。まさか......火凛ちゃんは、ホムラなの? 私のライバル、ホムラ・フレイマーなの?」
全然性格が違うけど......。あらゆる状況が、それを指し示している。
「あはは、そうなんだ。さっきはミーナを見て知らない振りをしたけど、ごめんね。本当はわかってた。でもミーナがみなちゃんだって事は、びっくりだったよ。もう気付いてると思うけど、凛太郎は、イグニスだよ」
そう言って姿を変える火凛ちゃん。女武術士、ホムラ・フレイマーだ。凛太郎君は、赤豹イグニスへと変身する。
やっぱり、そうだったんだ。あの時。サキュバスの正体が色城恭子だとホムラが言った時、私は会社の同僚だと話した。ホムラは「奇遇だな、私も......」って言ってた。きっと、私も同じ会社にいる、って言いたかったんだ。
「ふはははっ! 改めてよろしくな! ミーナ! さて、私を探しているようだったが、何かあったのか?」
豪快に笑うホムラ。やっぱり火凛ちゃんとは全然違う。でも同一人物なんだ。不思議。凛太郎君はイグニスになっても寡黙だね。
「うん。魔王が現れたよ。勇気が攫われちゃったの。協力して、ホムラ。あなたの力が必要よ」
私は駅で起こった事をホムラに説明し、ダンジョン潜入の囮になって欲しいと説明した。
「なんて事だ......! よし、囮役は私に任せろ! 絶対に勇気君を助けてくれよ!」
「うん! 絶対に助けるよ」
私はホムラと拳を合わせた。彼女は力強く微笑み、イグニスに乗って颯爽と去っていった。
「マスター! ホムラいる!?」
「ああ、さっき来てたぞ。奥にいるんじゃないか?」
「わかった! ありがと!」
薄暗いバー仕様のギルド内をざっと見回す。だがホムラらしき人影は見えず、気配もない。
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「え!?」
ホムラは居なかったが、その代わりに意外な二人を発見した。私は即座にその二人の元へと駆け寄る。
「火凛(かりん)ちゃん! 凛太郎(りんたろう)君! どうしてこんな所に!?」
その二人とは、私の会社の同僚で親友の「日浦火凛(ひうら かりん)」ちゃんと、その弟「凛太郎(りんたろう)」君だった。
「!? ど、どうして私の名前を......! あなた、誰ですか?」
「......」
火凛ちゃんも凛太郎君も戸惑っている。あ、そうか、今の私は美奈子じゃなくて、ミーナの姿なんだ。
「ああ、えっと、いきなりごめん! 私、美奈子! 猫柳美奈子!」
「えっ! みなちゃん!? ええ!? その格好! 冒険者だったの!? びっくり!」
「......こんにちは」
火凛ちゃんは口を両手で覆って、目を丸くした。凛太郎君も、納得したように挨拶してくれた。
彼女とは同期入社で、音楽もドラマも、好きな俳優も好みが同じなのだ。
ちなみに勇気のLINEのIDを教えてくれたのも火凛ちゃんだ。彼女は「天空勇気ファンクラブ」のメンバーなのだ。まぁ、もちろんIDはプライベートのものとは別で、ファンの為に作られたらしいんだけどね。
「って言うか、ここに居るって事はさ、二人も冒険者なの?」
私の質問に、二人は顔を見合わせる。そしてクスッと笑った。
「実は、そうなんだ。今まで内緒にしててごめんね。私とみなちゃんの仲なのに」
「ううん、いいの。でも、なんだか嬉しいな。まさか火凛ちゃんが冒険者だなんて、夢にも思わなかったけど......。あ、私、最近冒険者になったばかりなの。火凛ちゃんは長いの?」
「私は、八歳の時からやってるよ。だから二十年くらい、かな。凛太郎も同時期だよ。ね、凛太郎」
「......うん」
二十年!? めっちゃ大先輩じゃん!
......ん? 確かホムラも二十年。
「ねぇ火凛ちゃん。まさか......火凛ちゃんは、ホムラなの? 私のライバル、ホムラ・フレイマーなの?」
全然性格が違うけど......。あらゆる状況が、それを指し示している。
「あはは、そうなんだ。さっきはミーナを見て知らない振りをしたけど、ごめんね。本当はわかってた。でもミーナがみなちゃんだって事は、びっくりだったよ。もう気付いてると思うけど、凛太郎は、イグニスだよ」
そう言って姿を変える火凛ちゃん。女武術士、ホムラ・フレイマーだ。凛太郎君は、赤豹イグニスへと変身する。
やっぱり、そうだったんだ。あの時。サキュバスの正体が色城恭子だとホムラが言った時、私は会社の同僚だと話した。ホムラは「奇遇だな、私も......」って言ってた。きっと、私も同じ会社にいる、って言いたかったんだ。
「ふはははっ! 改めてよろしくな! ミーナ! さて、私を探しているようだったが、何かあったのか?」
豪快に笑うホムラ。やっぱり火凛ちゃんとは全然違う。でも同一人物なんだ。不思議。凛太郎君はイグニスになっても寡黙だね。
「うん。魔王が現れたよ。勇気が攫われちゃったの。協力して、ホムラ。あなたの力が必要よ」
私は駅で起こった事をホムラに説明し、ダンジョン潜入の囮になって欲しいと説明した。
「なんて事だ......! よし、囮役は私に任せろ! 絶対に勇気君を助けてくれよ!」
「うん! 絶対に助けるよ」
私はホムラと拳を合わせた。彼女は力強く微笑み、イグニスに乗って颯爽と去っていった。
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