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第21話 ミーナさんマジ強すぎ(笑)。
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「いつでも、かかってきていいよ」
私は両手をマントの内側に隠したまま、彼らに攻撃を促した。
ギルドマスターの戦闘開始の号令がかかってから数分が過ぎた。だが五人の冒険者たちは、未だ攻撃を躊躇していたのだ。
「おい、お前から行け」
「いや、お前リーダーだろ? 言い出しっぺが行かねぇでどうすんだよ。まずは手本を見せてくれ」
彼らの目には、怯えが見て取れる。しかしそれも無理はない。何故なら私はレアスキル「名状(めいじょう)しがたき恐怖」を使用している。心の弱い者ならばSAN値直葬(さんちちょくそう)。つまり発狂する事もある。発動条件は、私に対する敵意だ。
「おいおい、お前ら! なにビビってんだよ!」
「そうだそうだ! SS級の野郎が五人もがん首そろえて、情けねぇぞ!」
バーエリアから、今回も大勢の冒険者が決闘の行方を見届けに降りて来ている。ホムラ、イグニス、ノーマン、リカーナも最前列で観戦している。
彼らは私に対しての敵意はない。そのため、「名状しがたき恐怖」の影響は受けない。だが何人かのギャラリーは、怯えて震えているようだ。気絶した者もいる。私を嫌いなんだろう。
ノーマンの時のように全員土下座なんて事になれば、また私の実力が疑われてしまうだろう。しかし、彼らがこの恐怖に耐えられる事を見込んでの、スキル発動だった。
まぐれだと言われない為に、徹底的に敗北感と恐怖を心に刻む。「名状しがたき恐怖」は、そのための下ごしらえだ。
「ほら、みんなもああ言ってるし。 全員一度にかかって来ていいんだよ?」
私は猫撫で声を出して微笑んだ。すると五人は「ひぃぃっ!」と悲鳴をあげる。
「もー、じれったいないぁ。早く来ないと全員の首、切り落としちゃうけどいい?」
「おいおいミーナ! 殺しはダメだっつってんだろが!」
私の脅しに、ギルドマスターが叫ぶ。
「だってぇ。じれったいんだもん。こうでも言わなきゃ戦いにならないでしょ? さぁ、十数えるうちに誰か来て。さもないと全員殺すよ。いーち、にーい、さーん」
「くそっ! もうヤケクソだ!」
パーティの後方にいる、マッチョな肉体をしながらも黒いローブを着た男が、杖を掲げて呪文を詠唱する。どうやら彼は魔術士のようだ。
「祝福を!」
その隣にいる白いローブを着たマッチョが、パーティ全体に「祝福」の神術を使用する。彼は神術士か。
「うおおお! これでも喰らえ! 五月雨(さみだれ)打ち!」
弓をつがえた男が、五本の弓を同時に放つ。彼は弓術士だね。
矢は全て私に向かってくる。このスピードなら、弾くのもかわすのも容易い。今回は弾いてみよう。
決闘用の最低ランクダガーを両手に持ち、私は全ての弓を弾き飛ばした。ギャラリーが巻き添えを食わないように、天井に飛ばす。
「嘘だろ......」
弓術士は、信じられない、と言った面持ちで私を見つめた。
「チッ! ならこれはどうだ! ボルテクス・ハンマーナックル!」
手甲を両手につけたマッチョが、私に殴りかかってくる。彼は武術士だ。その拳は輝く闘気を、渦のように腕に巻きつけて私に突っ込んでくる。
私は跳躍して宙返りし、ダガーを彼の両肩に投げつけた。
「ぐあああっ!」
武術士の両腕が、だらりと下がる。肩からダガーを抜くまで、あの両腕は動かせない。
「ライトニング・プリズン!」
魔術士の詠唱が完成し、私に向かって電撃をまとった球体が飛んでくる。あれに当たると、電撃で痺れたまま身動きが取れなくなる。
「魔返撃(まへんげき)!」
私は雷撃の玉に蹴りを放ち、それを魔術士に向かって蹴り返した。
「うわあああーっ!」
魔術士と、その近くにいた癒術士、弓術士が電撃の檻に囚われる。
「あががががが!」
まぁ、死にはしないだろう。多分。ちなみにさっきの技は、レアスキル「魔術反射」を応用した体術。「魔術反射」は体の一部にしか適用出来ないため、足の裏に適用させた上で、蹴りを放つのだ。
「あとはあなただけね、リーダーさん♡」
剣術士風のリーダーマッチョは、私が近づくと「ひぃぃっ!」と怯える。まぁ、仮にもSS級の冒険者だ。普段なら敵に対して怯えるような事はないだろう。喧嘩を売った相手が悪かったね。
私は両手をマントの内側に隠したまま、彼らに攻撃を促した。
ギルドマスターの戦闘開始の号令がかかってから数分が過ぎた。だが五人の冒険者たちは、未だ攻撃を躊躇していたのだ。
「おい、お前から行け」
「いや、お前リーダーだろ? 言い出しっぺが行かねぇでどうすんだよ。まずは手本を見せてくれ」
彼らの目には、怯えが見て取れる。しかしそれも無理はない。何故なら私はレアスキル「名状(めいじょう)しがたき恐怖」を使用している。心の弱い者ならばSAN値直葬(さんちちょくそう)。つまり発狂する事もある。発動条件は、私に対する敵意だ。
「おいおい、お前ら! なにビビってんだよ!」
「そうだそうだ! SS級の野郎が五人もがん首そろえて、情けねぇぞ!」
バーエリアから、今回も大勢の冒険者が決闘の行方を見届けに降りて来ている。ホムラ、イグニス、ノーマン、リカーナも最前列で観戦している。
彼らは私に対しての敵意はない。そのため、「名状しがたき恐怖」の影響は受けない。だが何人かのギャラリーは、怯えて震えているようだ。気絶した者もいる。私を嫌いなんだろう。
ノーマンの時のように全員土下座なんて事になれば、また私の実力が疑われてしまうだろう。しかし、彼らがこの恐怖に耐えられる事を見込んでの、スキル発動だった。
まぐれだと言われない為に、徹底的に敗北感と恐怖を心に刻む。「名状しがたき恐怖」は、そのための下ごしらえだ。
「ほら、みんなもああ言ってるし。 全員一度にかかって来ていいんだよ?」
私は猫撫で声を出して微笑んだ。すると五人は「ひぃぃっ!」と悲鳴をあげる。
「もー、じれったいないぁ。早く来ないと全員の首、切り落としちゃうけどいい?」
「おいおいミーナ! 殺しはダメだっつってんだろが!」
私の脅しに、ギルドマスターが叫ぶ。
「だってぇ。じれったいんだもん。こうでも言わなきゃ戦いにならないでしょ? さぁ、十数えるうちに誰か来て。さもないと全員殺すよ。いーち、にーい、さーん」
「くそっ! もうヤケクソだ!」
パーティの後方にいる、マッチョな肉体をしながらも黒いローブを着た男が、杖を掲げて呪文を詠唱する。どうやら彼は魔術士のようだ。
「祝福を!」
その隣にいる白いローブを着たマッチョが、パーティ全体に「祝福」の神術を使用する。彼は神術士か。
「うおおお! これでも喰らえ! 五月雨(さみだれ)打ち!」
弓をつがえた男が、五本の弓を同時に放つ。彼は弓術士だね。
矢は全て私に向かってくる。このスピードなら、弾くのもかわすのも容易い。今回は弾いてみよう。
決闘用の最低ランクダガーを両手に持ち、私は全ての弓を弾き飛ばした。ギャラリーが巻き添えを食わないように、天井に飛ばす。
「嘘だろ......」
弓術士は、信じられない、と言った面持ちで私を見つめた。
「チッ! ならこれはどうだ! ボルテクス・ハンマーナックル!」
手甲を両手につけたマッチョが、私に殴りかかってくる。彼は武術士だ。その拳は輝く闘気を、渦のように腕に巻きつけて私に突っ込んでくる。
私は跳躍して宙返りし、ダガーを彼の両肩に投げつけた。
「ぐあああっ!」
武術士の両腕が、だらりと下がる。肩からダガーを抜くまで、あの両腕は動かせない。
「ライトニング・プリズン!」
魔術士の詠唱が完成し、私に向かって電撃をまとった球体が飛んでくる。あれに当たると、電撃で痺れたまま身動きが取れなくなる。
「魔返撃(まへんげき)!」
私は雷撃の玉に蹴りを放ち、それを魔術士に向かって蹴り返した。
「うわあああーっ!」
魔術士と、その近くにいた癒術士、弓術士が電撃の檻に囚われる。
「あががががが!」
まぁ、死にはしないだろう。多分。ちなみにさっきの技は、レアスキル「魔術反射」を応用した体術。「魔術反射」は体の一部にしか適用出来ないため、足の裏に適用させた上で、蹴りを放つのだ。
「あとはあなただけね、リーダーさん♡」
剣術士風のリーダーマッチョは、私が近づくと「ひぃぃっ!」と怯える。まぁ、仮にもSS級の冒険者だ。普段なら敵に対して怯えるような事はないだろう。喧嘩を売った相手が悪かったね。
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