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第12話 空を駆ける。

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「さーて、そんじゃ行きますか。あの尻軽女、絶対『ざまぁ 』してやる」

 私は例のごとく民家の屋根の上に飛び乗り、超高速忍び足で疾走する。徐々に背の高いアパートやマンションも増え、住宅街からオフィス街へと移動して行く。

 あっ、ビルがある! ホムラに追いつけるチャンスかも!

 加速したスピードで一気に跳躍。ビルの壁面を駆け上がる。

 壁面を走れるのは、もちろん私の身体能力の高さの賜物ではあるが、それだけじゃない。

 転生時に能力と共に魂に内包された装備品。みーたん経由で私の体に装着されたそれは、魔術の力を持つレアアイテム達。

 壁面走行は、ブーツのお陰。その名も「リザード・ブーツ」。トカゲのように壁を歩けるって訳。

 そんなに高い壁じゃなければ、ブーツが無くても普通に登れちゃうんだけどね。

 ビルの屋上へと駆け上がり、夜景を見る。

「結構綺麗だよねぇ。この街の夜景もさ♡ 遠くに東京タワーも見えるし」

 目指すドイツ料理屋「ローレライ」までは約十キロメートル。ホムラは最大時速百キロで進めるが、冒険者と言えども歩道をそんなスピードで走る事は許可されていない。

 つまり現在、彼女は車道を走っている。東京の一般道で百キロ出し続けるのは中々厳しいだろう。

 おそらく彼女が到着するのは十分から十五分後。なら、充分追いつけるチャンスはある。

「ローレライはあそこね!」

 私はお店の看板を見つけ、その方向へとダッシュする。屋上から飛び降り、マントを広げて滑空!その時速はおよそ六十キロ! 上手く風に乗れば、八十キロくらい出る。

「空飛ぶのって、気持ちいいー♡」

 と言っても、滑空なので高度はどんどん落ちる。時折背の高いビルを見つけては、駆け上がってまた滑空。

 ちなみにこの滑空能力も、魔術のマントのお陰。その名も「モモンガ・マント」!可愛いでしょ?

 しばらく滑空を繰り返し、十五分程が経過した。ローレライまでの距離が、ぐんぐん縮まって行く。もうほとんど目の前だ。

 と、その時。轟音と共にお店が振動し、ローレライの看板が落下した。店内から飛び出し、逃げ惑う人々の姿も見える。

「ホムラが着いたんだ! あのバカ! また建物を壊してる! もう!」

 ホムラを止めるのは、多分無理だ。戦闘中は興奮しているし、聞く耳を持たないだろう。力ずくで止めている余裕もない。

 なら、私に出来るのは暗殺。ホムラに気を取られているターゲットを、素早く仕留めるしかない。そして「ざまぁ 」を遂行。

 待ってなさい、尻軽女。私の彼氏を寝取った事、後悔させてあげる!

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