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第11話 サキュバスの正体は......。
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ギルドの出入り口をバン!と開け、大股でスーパーを練り歩くホムラ。現在夜の九時。二十四時間営業の店内には、残業を終えたサラリーマンや、飲み会帰りのOLなど、比較的若い年齢層の客が多い。
「あっ! ホムラだ! 冒険者の!」
「おおー! めっちゃ美人! 巨乳!」
「あの、ファンです! 握手して下さい!」
ホムラの周囲は、あっという間に人だかりになる。まぁ、こうなるよね。みんなはここを出る時、一体どうしてるんだろう。
「はーい、どいたどいた!ごめんねー! これからモンスター退治なんでね! 応援してくれてありがとう! だけど通してくれると嬉しいな」
ホムラは満面の笑みを浮かべ、ファンたちを退けていく。周りの人々は残念そうではあったが、「応援してます!」「頑張ってください!」などと言って道を開けた。
意外だった。ホムラの性格なら、周囲の人々を殴り飛ばして進むと思っていたのに。思っていた程野蛮ではないようだ。
私はと言えば、そんなホムラを囮にして既に脱出していた。「気配遮断」のスキルにより、誰も気づかなかった筈だ。
スーパーの駐車場で自販機の陰に隠れつつ、私はホムラが出てくるのを待った。数分後、ようやく出てきた彼女の背後から、「わっ!」と脅かしてやった。
「うぎゃー!!!!!」
ホムラはぴょんっとウサギみたいに飛び上がり、「おのれモンスター!」と拳を振り回した。
うぷぷっ! めっちゃ可愛いじゃんこいつー!また今度からかってやろっと。
「ごめんごめん。私だよ! もー、可愛いんだからホムラってば。 うぎゃーっ!って。あはは」
「お前な! タチの悪い冗談はやめろ本当に! 心臓が口から飛び出すかと思ったぞ! イグニスだって驚いたんだ! なぁイグニス!」
「吾輩は別に......い、いや、驚いた! 心底驚いたぞ!!!」
赤豹イグニスは何かを察したように、大声で驚きを表現した。
「ほらな! 私はいいが、イグニスが可哀想だろう! もう絶対やるなよ! いいな!」
「へーい」
やるなと言われると、やりたくなっちゃうんだよなぁ。
「ねぇ、ホムラ。あんたどうせイグニスに乗って行くんでしょ? それだと私追いつけないからさ、行き先教えといてくれない? あとサキュバスの正体も」
イグニスのスピードは、通常の豹の約二倍以上。時速百キロでの走行が可能なのだ。
「ああ、仕方ないな。教えてやる。 行き先はローレライというドイツ料理屋だ。サキュバスの正体は色城恭子という女で、奴は毎日男を取っ替え引っ替えしている。だが使う店は曜日ごとに決まっていて、今日は金曜日だからローレライなんだ」
ホムラはえっへんと、ドヤ顔をキメる。
「へー、諜報活動が苦手なあんたにしちゃ、しっかり調べたじゃない。見直した」
「そうだろう! もっと褒めていいぞ!」
体を思いっきり反らし、豪快に笑うホムラ。まぁここは、おだてておこう。
「いやー、ほんとすごいよホムラ! サキュバスの正体まで掴んじゃうなんてさ! 色城恭子か......ん?」
色城恭子って、なんか知ってる気が......。
「ああー! 」
「なんだ! どうした!?」
私が叫び出したのを見て、ホムラが目を丸くする。
「その女、私の会社の受付! 私の彼氏を寝取った女!」
「え!?」
ホムラは私の顔をじっと見る。
「奇遇だな。私も......いや、何でもない。それなら顔はわかるな? さっきも言ったが、獲物は早い者勝ちだ。そして早く獲物に到着できるのは、この私とイグニスさ!」
ホムラはそう言ってイグニスに乗り込み、あっという間に走り去って行った。
「あっ! ホムラだ! 冒険者の!」
「おおー! めっちゃ美人! 巨乳!」
「あの、ファンです! 握手して下さい!」
ホムラの周囲は、あっという間に人だかりになる。まぁ、こうなるよね。みんなはここを出る時、一体どうしてるんだろう。
「はーい、どいたどいた!ごめんねー! これからモンスター退治なんでね! 応援してくれてありがとう! だけど通してくれると嬉しいな」
ホムラは満面の笑みを浮かべ、ファンたちを退けていく。周りの人々は残念そうではあったが、「応援してます!」「頑張ってください!」などと言って道を開けた。
意外だった。ホムラの性格なら、周囲の人々を殴り飛ばして進むと思っていたのに。思っていた程野蛮ではないようだ。
私はと言えば、そんなホムラを囮にして既に脱出していた。「気配遮断」のスキルにより、誰も気づかなかった筈だ。
スーパーの駐車場で自販機の陰に隠れつつ、私はホムラが出てくるのを待った。数分後、ようやく出てきた彼女の背後から、「わっ!」と脅かしてやった。
「うぎゃー!!!!!」
ホムラはぴょんっとウサギみたいに飛び上がり、「おのれモンスター!」と拳を振り回した。
うぷぷっ! めっちゃ可愛いじゃんこいつー!また今度からかってやろっと。
「ごめんごめん。私だよ! もー、可愛いんだからホムラってば。 うぎゃーっ!って。あはは」
「お前な! タチの悪い冗談はやめろ本当に! 心臓が口から飛び出すかと思ったぞ! イグニスだって驚いたんだ! なぁイグニス!」
「吾輩は別に......い、いや、驚いた! 心底驚いたぞ!!!」
赤豹イグニスは何かを察したように、大声で驚きを表現した。
「ほらな! 私はいいが、イグニスが可哀想だろう! もう絶対やるなよ! いいな!」
「へーい」
やるなと言われると、やりたくなっちゃうんだよなぁ。
「ねぇ、ホムラ。あんたどうせイグニスに乗って行くんでしょ? それだと私追いつけないからさ、行き先教えといてくれない? あとサキュバスの正体も」
イグニスのスピードは、通常の豹の約二倍以上。時速百キロでの走行が可能なのだ。
「ああ、仕方ないな。教えてやる。 行き先はローレライというドイツ料理屋だ。サキュバスの正体は色城恭子という女で、奴は毎日男を取っ替え引っ替えしている。だが使う店は曜日ごとに決まっていて、今日は金曜日だからローレライなんだ」
ホムラはえっへんと、ドヤ顔をキメる。
「へー、諜報活動が苦手なあんたにしちゃ、しっかり調べたじゃない。見直した」
「そうだろう! もっと褒めていいぞ!」
体を思いっきり反らし、豪快に笑うホムラ。まぁここは、おだてておこう。
「いやー、ほんとすごいよホムラ! サキュバスの正体まで掴んじゃうなんてさ! 色城恭子か......ん?」
色城恭子って、なんか知ってる気が......。
「ああー! 」
「なんだ! どうした!?」
私が叫び出したのを見て、ホムラが目を丸くする。
「その女、私の会社の受付! 私の彼氏を寝取った女!」
「え!?」
ホムラは私の顔をじっと見る。
「奇遇だな。私も......いや、何でもない。それなら顔はわかるな? さっきも言ったが、獲物は早い者勝ちだ。そして早く獲物に到着できるのは、この私とイグニスさ!」
ホムラはそう言ってイグニスに乗り込み、あっという間に走り去って行った。
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