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第5話 冒険者ギルドは大型スーパーの中。
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「嘘でしょ......」
私は冒険者ギルドがあるという場所の情報をみーたんから聞き、愕然とした。
「仕方ないよ。だって隠さなきゃいけないんだから。モンスターが結託してギルドを襲ったりしたらアウトだし。ほら、早く行こうよミーナ。もう夜の八時だよ」
「わかったよ。でもこの格好で行くの、ちょっと恥ずかしいなぁ」
異世界「魔球」であれば、さほど珍しい服装ではないのだが、この現世界「地球」において、私のような服装をしている者は「変態」「痴女」と罵られる事になる。
「大丈夫だよ。さっきも言ったけど、コスプレにしか見えないから。ほら、行こう!」
「へーい」
私は周囲に人の気配がない事を確認し、アパートを出る。二階の階段を降り、路地へ。
そこからほんの少し助走し、跳躍。電柱の出っ張りに足をかけ、民家の屋根に飛び移る。
体重を乗せず、屋根の上を軽やかに疾走。イメージとしては、超高速の忍び足。
屋根から屋根を飛び移り、私は近所の大型スーパーの入り口付近で地上に降り立った。
店の前の駐車場を通り、入り口へ。車の陰や、自販機の陰を利用しつつ、隠れながら素早く近づく。スーパーに入っていく女性が一人。その背中に寄り添うようにして、私も店内へと入った。
気配遮断のスキルを使用している為、誰も私に気付いていない。
(スーパーに入ったよ。本当にここにあるの? ギルドが)
(うん。右奥に進むと、従業員以外立ち入り禁止と書かれた扉が二つある。右側は普通の扉だけど、左側は冒険者ギルドの入り口になっているんだ。もちろん、僕ら『魔球』の出身者じゃないと扉を開ける事さえ出来ない)
みーたんの案内に従って奥へ進む。あった、二つの扉。右側は良くある両開きのスイングドア。左側はドアノブ付きの鉄製ドア。どちらも「従業員以外立ち入り禁止」と書いてある。
(左側ね。入るよ)
(うん)
鉄製扉のドアノブをひねる。鍵はかかっていない。ドアを押し、扉を開く。中から大勢の話し声が喧騒となって聞こえてくる。
(ミーナ、早く入って! 誰かに覗き込まれるとまずい!)
(えっ、そうなの! ごめん!)
みーたんに急かされ、私は急いで中に入る。ドアをしめ、改めて中の様子を見た。うん、ギルドだ。この感じ、懐かしい。
アニメやラノベなんかだと、受付のお姉さんがいっぱいいて、広くて、清潔感もあって。
大きな街にあるギルドの本部は確かにそんな感じだけど、支部はね、違うんだ。真逆と言ってもいい。私が今いるみたいな感じ。
薄暗くて、散らかってて、バーみたいな感じ。本部ほど広くはないけど、丸いテーブルがいくつもある。冒険者たちは依頼書を見ながら酒を飲み交わし、作戦を立てたり勝利を祝ったり。
カウンターにはイカツイおじさんが一人。彼がギルドマスター。
私は「気配遮断」を解除し、マスターに近づく。
「おっ、美人がいると思ったら『猫耳令嬢』! ミーナじゃねぇか! 久しぶりだな! 本部からは、だいぶ前に転生したって聞いてたが」
マスターは人懐っこい笑みを浮かべ、スキンヘッドを輝かせる。
「ホント、久しぶりだね。どうやら私、記憶を失ってたみたいで。思い出したのは、ついさっきなの。ウケるでしょ」
「マジか! そいつは災難だったな! おまえのライバルのホムラは、もう二十年前くらいから冒険者やってるぜ。今二十八だって言ってたから、八歳の時だな」
そんなに前から......。私たち「魔球」からの転生者は、変身すれば転生前の姿と能力に戻れる。
私自身、実際は二十八歳だけど、変身後、つまり今の姿は二十歳。転生の秘術を行った時の姿が保存されている。
「まぁ、冒険者が社会的に認知され始めたのは最近だけどな。ホムラもメディアで取り上げられてからは、ますます戦い方が派手になってきやがった。人的被害はまだ無いし、街の修繕費用は日本政府が持ってるからギルドのダメージは無いけどな」
なんと呑気な。まるで他人事だ。私は少しイラッとした。
「だとしても、いつかは怪我人が出るよきっと。会ったら注意しなきゃ。そういえば、ホムラの姿が見えないね」
「ああ。なんでも見たいドラマがあるらしくてな。えーと、なんて言ったかな。確か『イケメン・ヘブン』とかなんとか」
「あー! イケメン・ヘブン! 今日だった! すっかり忘れてたよぉー! 毎週欠かさず観てたのに!」
私の幼馴染の俳優、天空勇気(あまぞら ゆうき)が恋人役のドラマ!ずっと疎遠だった、私の憧れの存在。もちろん会えるとは思ってないし、付き合うなんて無謀な話だけど......。
友達のつてで、最近ようやく連絡が取れるようになったのに!「ドラマ、絶対観てくれよ? 」とかスタンプ付きでライン貰ったのに!
「ああー! なんて事! 録画してくれば良かった! マスター、テレビある!?」
私は藁にもすがる思いでギルド内を見渡した。
「あるように見えるか?」
ない! ない! テレビもねぇ! ラジオもねぇ!
「くっそー! DVD買うまで我慢しなきゃならないなんてー! マスター! ビール!」
私はストレスを軽減するため、飲酒に逃げる事にした。
私は冒険者ギルドがあるという場所の情報をみーたんから聞き、愕然とした。
「仕方ないよ。だって隠さなきゃいけないんだから。モンスターが結託してギルドを襲ったりしたらアウトだし。ほら、早く行こうよミーナ。もう夜の八時だよ」
「わかったよ。でもこの格好で行くの、ちょっと恥ずかしいなぁ」
異世界「魔球」であれば、さほど珍しい服装ではないのだが、この現世界「地球」において、私のような服装をしている者は「変態」「痴女」と罵られる事になる。
「大丈夫だよ。さっきも言ったけど、コスプレにしか見えないから。ほら、行こう!」
「へーい」
私は周囲に人の気配がない事を確認し、アパートを出る。二階の階段を降り、路地へ。
そこからほんの少し助走し、跳躍。電柱の出っ張りに足をかけ、民家の屋根に飛び移る。
体重を乗せず、屋根の上を軽やかに疾走。イメージとしては、超高速の忍び足。
屋根から屋根を飛び移り、私は近所の大型スーパーの入り口付近で地上に降り立った。
店の前の駐車場を通り、入り口へ。車の陰や、自販機の陰を利用しつつ、隠れながら素早く近づく。スーパーに入っていく女性が一人。その背中に寄り添うようにして、私も店内へと入った。
気配遮断のスキルを使用している為、誰も私に気付いていない。
(スーパーに入ったよ。本当にここにあるの? ギルドが)
(うん。右奥に進むと、従業員以外立ち入り禁止と書かれた扉が二つある。右側は普通の扉だけど、左側は冒険者ギルドの入り口になっているんだ。もちろん、僕ら『魔球』の出身者じゃないと扉を開ける事さえ出来ない)
みーたんの案内に従って奥へ進む。あった、二つの扉。右側は良くある両開きのスイングドア。左側はドアノブ付きの鉄製ドア。どちらも「従業員以外立ち入り禁止」と書いてある。
(左側ね。入るよ)
(うん)
鉄製扉のドアノブをひねる。鍵はかかっていない。ドアを押し、扉を開く。中から大勢の話し声が喧騒となって聞こえてくる。
(ミーナ、早く入って! 誰かに覗き込まれるとまずい!)
(えっ、そうなの! ごめん!)
みーたんに急かされ、私は急いで中に入る。ドアをしめ、改めて中の様子を見た。うん、ギルドだ。この感じ、懐かしい。
アニメやラノベなんかだと、受付のお姉さんがいっぱいいて、広くて、清潔感もあって。
大きな街にあるギルドの本部は確かにそんな感じだけど、支部はね、違うんだ。真逆と言ってもいい。私が今いるみたいな感じ。
薄暗くて、散らかってて、バーみたいな感じ。本部ほど広くはないけど、丸いテーブルがいくつもある。冒険者たちは依頼書を見ながら酒を飲み交わし、作戦を立てたり勝利を祝ったり。
カウンターにはイカツイおじさんが一人。彼がギルドマスター。
私は「気配遮断」を解除し、マスターに近づく。
「おっ、美人がいると思ったら『猫耳令嬢』! ミーナじゃねぇか! 久しぶりだな! 本部からは、だいぶ前に転生したって聞いてたが」
マスターは人懐っこい笑みを浮かべ、スキンヘッドを輝かせる。
「ホント、久しぶりだね。どうやら私、記憶を失ってたみたいで。思い出したのは、ついさっきなの。ウケるでしょ」
「マジか! そいつは災難だったな! おまえのライバルのホムラは、もう二十年前くらいから冒険者やってるぜ。今二十八だって言ってたから、八歳の時だな」
そんなに前から......。私たち「魔球」からの転生者は、変身すれば転生前の姿と能力に戻れる。
私自身、実際は二十八歳だけど、変身後、つまり今の姿は二十歳。転生の秘術を行った時の姿が保存されている。
「まぁ、冒険者が社会的に認知され始めたのは最近だけどな。ホムラもメディアで取り上げられてからは、ますます戦い方が派手になってきやがった。人的被害はまだ無いし、街の修繕費用は日本政府が持ってるからギルドのダメージは無いけどな」
なんと呑気な。まるで他人事だ。私は少しイラッとした。
「だとしても、いつかは怪我人が出るよきっと。会ったら注意しなきゃ。そういえば、ホムラの姿が見えないね」
「ああ。なんでも見たいドラマがあるらしくてな。えーと、なんて言ったかな。確か『イケメン・ヘブン』とかなんとか」
「あー! イケメン・ヘブン! 今日だった! すっかり忘れてたよぉー! 毎週欠かさず観てたのに!」
私の幼馴染の俳優、天空勇気(あまぞら ゆうき)が恋人役のドラマ!ずっと疎遠だった、私の憧れの存在。もちろん会えるとは思ってないし、付き合うなんて無謀な話だけど......。
友達のつてで、最近ようやく連絡が取れるようになったのに!「ドラマ、絶対観てくれよ? 」とかスタンプ付きでライン貰ったのに!
「ああー! なんて事! 録画してくれば良かった! マスター、テレビある!?」
私は藁にもすがる思いでギルド内を見渡した。
「あるように見えるか?」
ない! ない! テレビもねぇ! ラジオもねぇ!
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