すれ違う星の形

第2章 近づく距離

07話「心の距離」

　二人は夕焼けに染まる街を静かに歩いていた。
　言葉を探しながら、これまでのすれ違いを埋めようとするように歩みを進めていく。

「少し、ここで休もうか」

　天城が見つけたカフェに誘い、透也は黙って頷いた。温かな空気とコーヒーの香りが二人を迎え、ほっとした静かな時間が流れる。

　二人は窓際の席に座り、注文を済ませた。
　しばらくの沈黙の後、天城がゆっくりと口を開いた。

「真柴くん……僕、君との関係をもっと良くしたいんだ」

　その言葉に、透也は驚いて顔を上げた。

「これまで、君のことを理解できているつもりだった。でも、僕も気づかないうちに頼りすぎていたんだと思う」

　天城の真剣な表情に、透也の胸には温かな感情が広がった。

「僕も……すみませんでした」

　透也は視線を逸らしながら静かに言った。

「自分の態度が冷たかったのは分かってます。でも、どう接すればいいのか分からなくて……」

　その戸惑いを隠さない透也の言葉に、天城は微笑み、ゆっくりとカップを持ち上げた。

「僕はただ、君のことをもっと知りたいと思ったんだ」

　天城は、透也をまっすぐに見つめながら言葉を続けた。

「相棒としてだけじゃなくて、君が何を考えて、何を大切にしているのか……もっと理解したかったんだよ」

　その言葉に、透也の胸がじんわりと温まっていく。彼もまた、天城との時間を大切に思いながら、その感情が何なのか分からず悩んでいた。

「……あなたがいないと、心が落ち着かないんです」

　思わず漏れたその言葉は、自分でも驚くほど自然だった。天城も一瞬だけ目を見開いたが、すぐに優しく微笑んだ。

「僕もだよ、真柴くん。君がいないと、何かが欠けてしまったように感じる」

　二人はそれぞれの心の奥にある気持ちを打ち明け合い、その瞬間、これまでのすれ違いが少しずつ解けていくのを感じた。

　これまでのように単なる相棒としての付き合いではなく、お互いをより深く理解し、支え合う存在へと変わりつつあることに。


　二人はコーヒーを飲み干し、店を出た。
　夜の街は穏やかな灯りに包まれ、歩きながら交わす言葉も自然なものに戻っていた。

「次のプロジェクトも、一緒に頑張ろうね」

　天城が笑顔で言うと、透也も柔らかく微笑んだ。

「はい。これからも、よろしくお願いします」

　それは、互いに信頼し合い、支え合う相棒としての絆――共に歩んでいくための特別な関係が生まれつつあることを示していた。


　夜風が心地よく吹き抜ける中、二人は静かに歩く。その足取りには、これまで以上の確かさが込められていた。