聖剣伝説〜乙女の姿しばしとどめむ〜

rabao

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見えないからこそ ④

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「どうしてそんなことを気にしているんだい?」
僕は彼女の瞳を見つめながら問いかけた。
「君は誰からも信頼されているし、君が僕たちをまとめるクラス委員長じゃないか。」
「そんなことじゃない!」
「 私は女として異性に認められたいのよ。」

「女の子なんだから、こんなに乱暴にしないで欲しいのよ・・・。」
見つめていた彼女の瞳に、うっすらと涙がにじんでいた。
僕はハッとして、彼女を押さえつけていた腕の力を緩めた。

彼女は何の抵抗もせずに僕にすがりついて泣いた。
彼女の肩を抱きしめているはずなのに、柔らかい羽毛が僕の肌を優しく招き入れているように感じた。 
泣きすがる彼女の少し低い鼻を、僕の潰れた鼻梁にぐちゃりと押し入れる。
凸と凹が混じり合い、口唇が触れる。
口唇の凹と凹を求め合い、凸と凸が絡み合った。
見つめる彼女の瞳が、僕に答えを求めているように見えた。

僕は羽毛の下に隠れた日本刀のように反り返った聖剣を彼女の両手に握らせる。
「君はこんなにも、女の子の魅力で溢れている。」

僕は彼女の右手を取り、自分の腹にあてがい力強く左の脇腹から右の脇腹にかけて、彼女の爪で切り開いていた。
彼女に対する僕の気持ちを、画像として見せたかったのだが、鮮血が舞い彼女の羽毛を汚した。
奥深くまで切り開いた腹から流れ出る血液は、止まることを知らずに勢いよく流れ出てきた。
内包する血液の圧力が弱まり、吹き出す勢いを失った後も、聖剣のある下腹部と腰を濡らしていく。
力を失った聖剣がだらりと垂れ下がり、僕は虚ろに意識を失っていくようであった。




委員長が僕の腹を抑えて叫んでいる。
痛みは無かったが、僕はもう駄目なのかもしれない。
聖剣を失った僕に何ができる訳でもなかったが、せめて〇〇さんだけは苦しみから救ってあげたかった。
最初に彼女に裂かれた腹から飛び出した、真実の鏡が草の上に転がっていた。
僕は彼女に腹を抑えられながらも、手を伸ばしてその鏡を手に取った。
「〇〇さん・・・。君の鼻は高くはないけれど・・・、」
内臓まで切れているのか、口へとこみ上げてきた血液が再び下がり気管に入って激しくむせ返った。
もう声も出ない。
僕は途切れながらも、精一杯彼女に思いを伝えた。

「ほら・見て・・・。・・ 眩しいぐらいに、、、ウハっ・・・ㇵッ・・・輝いてい・・るだろ・・う?」
「クラスを・・・まと・・める、自信を持った、、、君は、ぐっ・・ガッ、・・・こん・・なにも 素敵、な、ヴァ・・・、、はぁ、素敵な女性、、、なんだ・・よ・・・。ごぁッ・・・、・・・ これが、みん・みんなに、、、見えて・・・、、、いる君の、、、本当・・・の、姿だ・・よ、、、ッゴハァ・・ッ ・・・っ」

彼女の瞳が、僕の持つ鏡を見つめるのを確認するのがやっとだった。
もはや僕には鏡を支える力も残ってはいなかった。
ダラリと力を失った僕の耳に、彼女が何かを叫んでいる声がぼんやりと聞こえていた。



『彼を、〇〇君を死なせるわけにはいかない。』
私の本当の姿に気づかせてくれ、私を女として認めてくれた彼を、何があっても殺すわけにはいかなかった。
彼を柔らかな体の正面の羽毛の中に抱え、ふっくらとした双房の間に彼の顔を挟み込んだ。

『どう?』

彼女は彼にそう問いかけているように見えた。
その先端を彼の口に含ませ頭を愛おしく抱きしめて撫であげる。
彼の口唇に自分の口唇をあてがい、彼の手を胸へと導いていく。
意識のない彼を臀部にあてがい、ゆっくりと溢れ出す女の液体を、彼の頼りない聖剣に擦りつけていく。
僕の筋肉質ではないが、骨ばった男の身体が、羽毛のように柔らかい彼女の素肌に愛おしく包まれている。
気を失っている場合ではなかった。

彼女のエネルギーが、聖剣を遡り僕の中に流れ込んでくるようであった。
少し意識を取り戻した僕は、すでに僕の中に分け入っている彼女の舌を求めた。
水分をたっぷりと含んだ、瑞々しい〇〇さんの舌から供給される水分が、水分の大半を失っている僕には、甘露のように感じられた。
柔らかい彼女の、腰から背中にかけて手を滑らす。
羽毛ではなくさらりとした柔らかな素肌の感触は、羽毛のように柔らかく、肌に吸い付くように馴染んでいく。
僕の胸に感じる彼女の膨らみの先端が、固く尖っているのが分かる。
口唇から離れ、彼女の胸を子供のように求める。

のけぞる彼女の顎のラインが美しかった。
僕は〇〇さんの顔を見つめ、僕の潰れた鼻に彼女の少し低い鼻を受け入れて、キスをし彼女の体液を求めた。
それが最後だった。

~~~~

フッと意識を失った僕を、大地に横たわらせて、彼女は僕を口に含んだ。
主の意識に関わらず、聖剣が大きく膨らみ硬さを増していく。
羽毛の布団を僕にかけるように、彼女は僕を包み込んでいった。

~~~~


僕はベッドの中で目を覚ました。
鼻は潰れてはおらず、腹に傷も無かった。
鬼となった彼女の情念を、晴らせてあげられたかどうかも分からなかった。
彼女のことを思うと、なぜか涙が溢れてきた。
何としても助けてあげたかった。
救ってあげたかった。
頑張り切れなかった自分が悲しかった。
泣きながら寝返りをうった僕のパンツから下腹部に、冷んやりとした感触が突き抜けてきた。

!!
「あっ! 夢精している。」
『彼女は、聖剣の祝福を得ることができたのかもしれない。』 
声をあげて泣いていた男が、ベッドの上でめちゃめちゃな顔をして笑い出していた。
『早く学校に行こう。』
顔も身体も下腹部も全てが体液にまみれていたが、爽やかな朝日が僕を暖かな羽毛に包んでいるように思えた。

朝、兄の部屋からの泣き声を聞いて、妹が心配そうに部屋を覗くと、突然パンツの中に手を差し込んだ彼のつぶやきを聞いた。
パンツから抜き取った彼の指先は、朝日を浴びてぬらりと光っていた。
泣き顔で突然笑い出した彼から発する青臭い匂いと汗の匂いが、私の鼻を襲った。
叫びたかったが、勝手に開けたことがバレてもうるさいので、我慢をしてそっとドアを閉めた。
もう、兄の部屋は絶対に覗かない。
しかし、少し興奮している私がいた。

13歳。
初めて嗅いだ男の香りだった。




見えないからこそ 完
次回は、爽やかな君の潮味 ①
につづきます。
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