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僕の可愛い女の子 ②

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体育の着替えの時間に私は見ている。
はち切れそうな女を見せつけるように、前面に押し出してくる彼女を。
食べごろの苺が摘まれる事を待ち望んでいるような胸を、ブラウスの下で隠そうともしない彼女を。
色が白く、透き通るような素肌で、不思議な呪文を赤い口唇から紡ぎ出し、異性を虜にする彼女も。
皆んな私をおいて、女としてどんどん成長していってしまう。
私も、男の子に・・・、後ろの席に座る〇〇くんだけには認めてもらいたかった。

少しでも彼に届くように、髪の毛を伸ばし香りのよいシャンプーを親におねだりした。
周りの女の子たちは、急に彼と仲良くなっているような気がする。
私だけ、まだ、足りない・・・。
私が心に秘めた、かけがえのない男の子を、誰にも取られたくなかった。

必ず、振り向かせて見せる・・・。


女の子は後ろの席で楽しそうに笑い合う一団に、戦に向かう戦士のような闘志を、その内面に燃え上がらせていた。
小動物のような可愛い笑顔を持つ彼女の中に、そんな憎しみに似た嫉妬の炎がメラメラと燃えていることに、誰も気づいてはいなかった。


『明日は朝シャンをして、〇〇さんに爽やかに話しかけてみよう。』
帰り道をニヤニヤとしながら歩いている。
『~、・・・、付きやってやってもいいぞ。』
〇〇さんの言葉が脳裏に浮かんでは消える。
自然に鼻の下が伸びていき、ニヤニヤが止まらない。

「うっ・・・わぁ~!お兄ちゃんキモすぎ・・・。」
後ろから僕に追いついた妹が、僕の顔を覗き込んで呟いた。
ハッと表情を戻して平静を装う。

「ねぇ♡お兄ちゃ~ん。」
「買って欲しいものがあるんだけどなぁ~♡」

!!
今日の僕に、妹への拒否権は無かった。
「お小遣いはあんまり残ってないぞ。」
きっちりと予防線を張るが、彼女は僕が新しいゲームを買うためにお年玉をとってあることもしっていた。
「新しい、お・よ・~~・ふ・く♡」
「お母さんが買ってくれないから、お兄ちゃんが買ってくれない?」
下から僕の腕を引っ張って、普段は見せない可愛らしい表情で甘えてくる。

うん、君の勝ちだ・・・。
彼女は家に帰って、僕の貯金箱の中身をしっかりと確認する。
「お兄ちゃん、行こう♡」
強引に僕の腕を引っ張って、レディースの洋品店に入っていく。
妹と一緒にいるのだが、なんだか気恥ずかしい。
使用中の試着室の中では今、美しい女性たちが、どのような格好で着替えをしているのであろうか。
試着室のカーテンが揺れ、その床の上に脱がれたスカートと畳まれたシャツが置いてあるようだった。
白いストッキングの足先が、艶かしく動いている。
無意識に数歩だけ試着室の方に身体が動いていた。
僕は、平静を装いながらリュックを肩から下ろして、何事もないようにズボンの前を隠した。

「ちょっと、お兄ちゃんどこ見てんのよ。」
「よリ過ぎなんだよ!自分でわかんないの?!」
「こんなにそっちによってんのよ!バカなの?」

「それより、これどうかな?」
実際にはキツイ女だが、ふわりとした洋服が、妹の華奢なラインを更にか弱く演出していた。
自分の妹とは言え、このお人形のような可愛さがキュンと僕の胸を締め付けていくようであった。

「うっわ~、キモッ。妹のこと、なんて目で見てるのよ~?」
彼女の兄に対しての性格はきつすぎるが、同級生にはモテモテなのかもしれない。
本人は異性の心を全く気にもしていないのであろうが、羨ましいかぎりだ。

お兄ちゃんはとんだ出費だと言うのに、妹は帰り道でもウキウキしながらアイスをおねだりしてくる。
「お兄ちゃんありがと~。今日は朝から変なのを見ちゃったけど、いいお買い物が出来たよ。」
「誰にも言わないでおいてあげるけど、あの気持ち悪いのはもう見せないでね!」
「じゃぁ~ね~♡」
自室に入る妹の言葉に胸をなでおろした。
新しいゲームの購入費がなくなったのは痛いが、これで朝の日課になりつつあるパンツの洗濯を、学校で広められることはなさそうだった。

僕も自室に戻り、今日の冒険へ向けての憂いをなくす。
最近は率先して宿題をやるようになってきたが、全く分かっていない問題が解けるわけもなかった。
教科書に、この学年になってから、初めて折り目をつけるところからのスタートだったが、最近になって少しつながってきたように感じている。

そんな自分が少し好きになってきていた。
ほとんど分からないなりに宿題を終えると、すでに10:00を過ぎていた。
珍しく頭を使っているせいであろうか、もはやクタクタであった。
限界を迎えるようにベッドへ倒れ込みたいその願望を抑え込み、新しい出会いを求める準備をするように歯を磨いて、洗口剤での口臭予防も忘れない。

そしていざ、新しい少女との出会いを胸に秘めて、空飛ぶベッドの上に倒れ込むと、そのまま泥のように深い眠りに落ちていった。


つづく

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