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chapter.20
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「うめぇ…」
「暁様、これもいかがですか?」
「いただきまーす!」
なんやかんやで狐の里に来て早一か月。
今日も今日とてツネ子さんに飯を勧められながらもりもりと食べている。
最近はあの三人よりも、北斗がちんちんみるくをねだりに来る日が多くなった。というかちんちんみるく、というよりも霊力を欲しているのだけれども。
おかげで毎日毎日搾り取られるが、腹の中に三人のざーめんみるくを注がれるためか、疲労感はあっても動けないほどではない。
…あのクソ苦、薬湯も代わり代わりに飲まされてるからな。三人に口移しで。
そのおかげで身体が楽なのはとても助かる。
「あ、暁」
「おう」
「おばあ様、僕も…」
「お待ちください九尾様。椅子をご用意させていただきますので」
「えー?」
そう言ってキヌさんが慌てて椅子を用意する。
「ありがと。キヌ」
「いえ。九尾様おひとりではございませんので」
「ふふ。そうだね」
キヌさんが持ってきた座敷椅子に座ると俺を見て、にこりと笑う。
「暁のおかげだね」
「そうでもないだろ」
「そうなんだよ。僕の足りない霊力を暁に貰っちゃってるからね」
「……………」
ふふっと笑う北斗に、その霊力が何なのかが分かっているから何とも言えない表情を浮かべる。
「でも本当に暁が興奮すれば興奮すれば霊力が濃くなっていくのはびっくりだよ」
「…どうも」
俺と三人、それと斗真と北斗とにゃんにゃんするようになってから気付いたこと。
見られて興奮する俺の特殊性癖を見抜いた恒晟に、北斗は感謝しまくってた。俺も自分がここまで変態だとは思ってみなかったから、なんとなくほっとしたけど。
「おかげで僕の霊力ももりもり回復したし、過剰魔力で身ごもることもできたし」
そう言いながらぺたんこの腹を撫でる北斗は綺麗だ。
尻尾も九尾の名にふさわしく九つになり、もっふもふの尻尾がわさわさと揺れている。
「あとは暁がいつ身ごもるかだよねぇ」
「近いうちにそうなるかと」
「あぁ…三人分のちんちんみるく貰ってるからねぇ…」
うふふと笑うツネ子さんと北斗に、耳まで熱くなるのが分かる。
「愛されてるねぇ」
「ですねぇ」
北斗とキヌさんにほのぼのといわれ「ぐぅ」としか言えない俺が箸を噛めば「九尾様。キヌ」とツネ子さんの呼びかけに二人の背筋が伸びた。
「からかうのもほどほどになさい」
「はい…」
「すみません」
しょんとしてしまった二人に「ふはっ」と吹き出せば、北斗もキヌさんも尻尾をふわりと揺らした。
「暁様も。笑っておられる場合ではございませんよ?」
「へ?」
思わぬ流れ弾に俺が笑顔のままツネ子さんを見れば、珍しく息を荒くしていて。
「お三方のお子を成されませぬと」
「え?いや?なんで?」
「九尾様のお子と、暁様のお子。この子らを番いにすれば、この里も安泰ですから」
「はい?!」
おほほと笑うツネ子さんに口元を引きつらせると、北斗は苦笑い。けれどキヌさんは袖で口元を隠して笑っているようで。
「でも暁にも、この何とも言えないむらむらを一緒に体験してもらえたらいいなぁ」
「むらむらってなんぞ?!」
「こう…ずっとお腹の中に霊力を注いでもらいたい感覚?」
そう言いながら、ほぅと悩ましく息を吐く北斗にぞっとする。
あれ?こいつはつじょ…。
ぺろりと舌なめずりをする北斗に、俺は大声でこいつの番を呼ぶ。
「斗真ーッ!お前の番がまた発情してんぞー!」
「暁ぁ♡」
「おい!やめろ!再放送はやめろ!」
なんてぎゃあぎゃあ騒いでいると、障子がすぱーん!と開かれて。
妊夫の北斗に押し倒されていた俺を見て斗真が慌てて引きはがしてくれて、そんな俺を見て三人が抱きついてきたりとギャルゲーでもびっくりなことをして。
そしてそんな俺たちを優しく見守ってくれる狐たちは楽しそうで。
「あきらぁ♡」
「やめろ!ちんちんみるくはやらねぇぞ!」
「えぇー!そんなぁー!」
べそべそと泣く北斗を斗真が慰め、ふしゃーと毛を逆立てる俺を三人が頭を撫でて落ち着かせようとする。
なんか北斗がこいつら以上にちんちんみるく求めてて怖いんですけど!
いつか北斗にも襲われそうで怖いな…。でもまぁ、妊夫の北斗には何もできないと思うから、斗真に頑張ってもらうか。
俺に子供なんかできないんだから。
なーんて思っていた時が俺にもありました。
「…………」
「暁、おめでとー」
ぱちぱちと腹の膨れた北斗に手を叩かれ、俺は碧斗に肩を抱かれていた。
「大丈夫か?」
「平気。気持ち悪さもあんまりないから」
はい。ご懐妊です。
北斗のご懐妊から一か月。その間に三人に襲われたり、俺から誘ったりとまぁ避妊もせずに乱れに乱れた生活をすればそうなるわけで。
腹の子が三人のうちの誰の種なのかは分からない。
「暁の子だから可愛いだろうな」
「そうだね。どっちに似ても可愛いよね」
碧斗も樹享も恒晟もなんだかんだで喜んでくれて。
優しく腹を撫でてくれる手が温かくて、なんだか泣きそうになる。
「てか本当に妊娠したのか…?」
まだ平たい腹をそっと撫でると俺の手を碧斗の手が包んでくれた。
「当然!そのための『九尾』にしか使えない術を使ったんだから」
えへんと胸を張る北斗に苦笑いを浮かべると、ふとした疑問を口にする。
「俺も腹が膨れる?」
「異種族は平気だよ。同族同士だとこうやってお腹が膨らむけど」
「そうなんだ」
そう言いながら膨らんだ腹を撫でる北斗の瞳は優しくて。
ならどうやって子供が…?という疑問が出てきたが、聞くのがちょっと怖い。
まさか尻から出る…とか?
いやいや。ただし魔法は~じゃないんだから。
「暁」
「ん?どした?」
ぎゅうと抱きしめて来た碧斗に抱き返して背中を撫でれば、ぱたぱたと尻尾が揺れている。
「好きだ」
「うん?!」
なんでここで告白?!
と思ったけど、そう言えばゲームだと『狐』が離れた時点でエンディング。
だけど、俺はエンディングを迎えることなくここにいる。
ということはここがエンディング?
「暁は?」
ぴるぴると動く耳を見ながら、そこで初めて自分自身の気持ちがどうなのかということに気付く。
確かにほぼ強姦だったような気もするし、違う気もする。
複数プレイであれこれされて、結局は魅了と催淫効果でそうなっていた。
でも嫌だったか、と言われればそうではない。
なら?
そっと身体を離されて真っすぐ見つめてくる碧斗に、小さく笑う。
「嫌だったら全力で逃げてるよ」
ああ、主人公もこんな気持ちだったのだろうか。
この三人だから「しょうがない」で納得してしまう。
うん?でもさ、よくよく考えてみたら。
「個別エンディング全部網羅してる?」
そこで気付いてしまった。
樹享のバッドエンディングは主人公の側にいること。それも一番近くで。だから樹享は主人公の側にいたいがために誰にも会わせず監禁し、子を成す。
恒晟のバッドエンディングは主人公を見守ること。側にいられなくても、見守ればそれでいい。だからストーカーと化し、抑えきれなくなった恒晟が強姦し子を成す。
碧斗のバッドエンディングは主人公を放置する。女性恐怖症がなくなったことで、複数との女性を囲う。その中の一人が主人公。そしてタガが外れた碧斗は女性たちを洗脳し、子を成す。
そして主人公は全てを「しょうがないな」で終わらせていたような…?
あれ?
「暁」
優しい碧斗の声にびくりと肩を跳ねさせると、あの時見た笑みを浮かべる碧斗。
「気付いちゃった?」
ああ。
やっぱりこの世界はどこまでいっても『クソゲー』なわけで。
「でも大丈夫だよ」
ちゅっとキスをされて、腹を撫でられる。
ゆらりと揺れる尻尾と、頭の上にある耳。それだけでも違うのに、俺は寒気が止まらない。
「おれたちがずぅーっと一緒にいるから」
そのおれたちの中に、北斗も含まれていることに気付いてひくりと口元が引きつる。
「それに、もうこの『世界』は途切れてるからね」
「とぎ…れる?」
「うん。この世界はエンディングを迎えた。そして…」
にこりと微笑む北斗の笑みがぞっとするほど綺麗で泣きそうになる。
「『新しい世界』が始まる」
「あ…あぁ…」
そういうことか。
何度も繰り返してきた『ゲーム』の世界。俺はプレイするだけだったけど、こっちの世界は『一度終わって』また『新しい世界』が始まるわけで。
だから『この世界』で生きる俺は、ここからどこにも行けないわけで。
「大丈夫だよ。暁。オレ達は暁を悲しませないから」
恒晟のその言葉に、俺は泣きながら笑う。
「ぅん♡」
それだけ言って頷くのが精いっぱいだった。
そうだよ。この世界はあくまで『ゲーム』の世界。
エンディングが変わることなどないのだ。
いや、もしかしたら変えられたのかもしれないけれど。
けれど俺はこの『ゲーム』の主人公と同じなのだ。
主人公が『攻略する』のではない。
主人公が『攻略されて』いたのだ。
それを今頃気付いたところで俺はもう三人から離れられないし、あの三人だって離れない。
エンディング通りの最後なのだろうけど『俺』はこれでいいのだ。
だって。
「三人とも『愛してる』」
“さて今回は『狐の嫁入り-闇の花嫁-』やっていくよー! KOTY乙女ゲー部門大賞受賞のこの作品!
本当にクソゲーなのか、その辺も検証しながらプレイしていくよ! ちなみにこれ、プレミアついて万超えwwww
あと、ちょっと怖い噂があるよね。え? 知らない? 結構有名なんだけどね。なんでもこのゲームをしていると、病院に運ばれる人がいるらしいんだよ。うん? そんな怖いゲームをやるのかって? だからだよ! みんなで見ながらプレイすれば何か異変があっても平気でしょ?www
まぁそういうわけでやってくよー!”
“てなわけでニューゲームでスタートだ!”
「そういえばゲーム実況者のにふにんさん、噂のゲームの生放送中に意識失ってそのままだったらしいじゃん?」
「あー…。クソゲーハンターで面白かったのにねー」
「それでさ…ちょっと怖い噂があってさ」
「噂?」
「うん。なんでもにふにんさんが意識を失くした時に、三人の男性が後ろに立ってたらしいんだよー」
「うっそだー!」
「アーカイブとか残ってないからただの噂、なんだけどさ」
「ふーん」
「興味なさそうwww」
「だってあたしはイケメン配信者のロッドさんに夢中なんだもん!」
「アンタってイケメン好きだよねwwww」
『だから君たちはいらないんだよね』
「今なんか言った?」
「え?何も言ってないよ?」
「こわwww」
終
「暁様、これもいかがですか?」
「いただきまーす!」
なんやかんやで狐の里に来て早一か月。
今日も今日とてツネ子さんに飯を勧められながらもりもりと食べている。
最近はあの三人よりも、北斗がちんちんみるくをねだりに来る日が多くなった。というかちんちんみるく、というよりも霊力を欲しているのだけれども。
おかげで毎日毎日搾り取られるが、腹の中に三人のざーめんみるくを注がれるためか、疲労感はあっても動けないほどではない。
…あのクソ苦、薬湯も代わり代わりに飲まされてるからな。三人に口移しで。
そのおかげで身体が楽なのはとても助かる。
「あ、暁」
「おう」
「おばあ様、僕も…」
「お待ちください九尾様。椅子をご用意させていただきますので」
「えー?」
そう言ってキヌさんが慌てて椅子を用意する。
「ありがと。キヌ」
「いえ。九尾様おひとりではございませんので」
「ふふ。そうだね」
キヌさんが持ってきた座敷椅子に座ると俺を見て、にこりと笑う。
「暁のおかげだね」
「そうでもないだろ」
「そうなんだよ。僕の足りない霊力を暁に貰っちゃってるからね」
「……………」
ふふっと笑う北斗に、その霊力が何なのかが分かっているから何とも言えない表情を浮かべる。
「でも本当に暁が興奮すれば興奮すれば霊力が濃くなっていくのはびっくりだよ」
「…どうも」
俺と三人、それと斗真と北斗とにゃんにゃんするようになってから気付いたこと。
見られて興奮する俺の特殊性癖を見抜いた恒晟に、北斗は感謝しまくってた。俺も自分がここまで変態だとは思ってみなかったから、なんとなくほっとしたけど。
「おかげで僕の霊力ももりもり回復したし、過剰魔力で身ごもることもできたし」
そう言いながらぺたんこの腹を撫でる北斗は綺麗だ。
尻尾も九尾の名にふさわしく九つになり、もっふもふの尻尾がわさわさと揺れている。
「あとは暁がいつ身ごもるかだよねぇ」
「近いうちにそうなるかと」
「あぁ…三人分のちんちんみるく貰ってるからねぇ…」
うふふと笑うツネ子さんと北斗に、耳まで熱くなるのが分かる。
「愛されてるねぇ」
「ですねぇ」
北斗とキヌさんにほのぼのといわれ「ぐぅ」としか言えない俺が箸を噛めば「九尾様。キヌ」とツネ子さんの呼びかけに二人の背筋が伸びた。
「からかうのもほどほどになさい」
「はい…」
「すみません」
しょんとしてしまった二人に「ふはっ」と吹き出せば、北斗もキヌさんも尻尾をふわりと揺らした。
「暁様も。笑っておられる場合ではございませんよ?」
「へ?」
思わぬ流れ弾に俺が笑顔のままツネ子さんを見れば、珍しく息を荒くしていて。
「お三方のお子を成されませぬと」
「え?いや?なんで?」
「九尾様のお子と、暁様のお子。この子らを番いにすれば、この里も安泰ですから」
「はい?!」
おほほと笑うツネ子さんに口元を引きつらせると、北斗は苦笑い。けれどキヌさんは袖で口元を隠して笑っているようで。
「でも暁にも、この何とも言えないむらむらを一緒に体験してもらえたらいいなぁ」
「むらむらってなんぞ?!」
「こう…ずっとお腹の中に霊力を注いでもらいたい感覚?」
そう言いながら、ほぅと悩ましく息を吐く北斗にぞっとする。
あれ?こいつはつじょ…。
ぺろりと舌なめずりをする北斗に、俺は大声でこいつの番を呼ぶ。
「斗真ーッ!お前の番がまた発情してんぞー!」
「暁ぁ♡」
「おい!やめろ!再放送はやめろ!」
なんてぎゃあぎゃあ騒いでいると、障子がすぱーん!と開かれて。
妊夫の北斗に押し倒されていた俺を見て斗真が慌てて引きはがしてくれて、そんな俺を見て三人が抱きついてきたりとギャルゲーでもびっくりなことをして。
そしてそんな俺たちを優しく見守ってくれる狐たちは楽しそうで。
「あきらぁ♡」
「やめろ!ちんちんみるくはやらねぇぞ!」
「えぇー!そんなぁー!」
べそべそと泣く北斗を斗真が慰め、ふしゃーと毛を逆立てる俺を三人が頭を撫でて落ち着かせようとする。
なんか北斗がこいつら以上にちんちんみるく求めてて怖いんですけど!
いつか北斗にも襲われそうで怖いな…。でもまぁ、妊夫の北斗には何もできないと思うから、斗真に頑張ってもらうか。
俺に子供なんかできないんだから。
なーんて思っていた時が俺にもありました。
「…………」
「暁、おめでとー」
ぱちぱちと腹の膨れた北斗に手を叩かれ、俺は碧斗に肩を抱かれていた。
「大丈夫か?」
「平気。気持ち悪さもあんまりないから」
はい。ご懐妊です。
北斗のご懐妊から一か月。その間に三人に襲われたり、俺から誘ったりとまぁ避妊もせずに乱れに乱れた生活をすればそうなるわけで。
腹の子が三人のうちの誰の種なのかは分からない。
「暁の子だから可愛いだろうな」
「そうだね。どっちに似ても可愛いよね」
碧斗も樹享も恒晟もなんだかんだで喜んでくれて。
優しく腹を撫でてくれる手が温かくて、なんだか泣きそうになる。
「てか本当に妊娠したのか…?」
まだ平たい腹をそっと撫でると俺の手を碧斗の手が包んでくれた。
「当然!そのための『九尾』にしか使えない術を使ったんだから」
えへんと胸を張る北斗に苦笑いを浮かべると、ふとした疑問を口にする。
「俺も腹が膨れる?」
「異種族は平気だよ。同族同士だとこうやってお腹が膨らむけど」
「そうなんだ」
そう言いながら膨らんだ腹を撫でる北斗の瞳は優しくて。
ならどうやって子供が…?という疑問が出てきたが、聞くのがちょっと怖い。
まさか尻から出る…とか?
いやいや。ただし魔法は~じゃないんだから。
「暁」
「ん?どした?」
ぎゅうと抱きしめて来た碧斗に抱き返して背中を撫でれば、ぱたぱたと尻尾が揺れている。
「好きだ」
「うん?!」
なんでここで告白?!
と思ったけど、そう言えばゲームだと『狐』が離れた時点でエンディング。
だけど、俺はエンディングを迎えることなくここにいる。
ということはここがエンディング?
「暁は?」
ぴるぴると動く耳を見ながら、そこで初めて自分自身の気持ちがどうなのかということに気付く。
確かにほぼ強姦だったような気もするし、違う気もする。
複数プレイであれこれされて、結局は魅了と催淫効果でそうなっていた。
でも嫌だったか、と言われればそうではない。
なら?
そっと身体を離されて真っすぐ見つめてくる碧斗に、小さく笑う。
「嫌だったら全力で逃げてるよ」
ああ、主人公もこんな気持ちだったのだろうか。
この三人だから「しょうがない」で納得してしまう。
うん?でもさ、よくよく考えてみたら。
「個別エンディング全部網羅してる?」
そこで気付いてしまった。
樹享のバッドエンディングは主人公の側にいること。それも一番近くで。だから樹享は主人公の側にいたいがために誰にも会わせず監禁し、子を成す。
恒晟のバッドエンディングは主人公を見守ること。側にいられなくても、見守ればそれでいい。だからストーカーと化し、抑えきれなくなった恒晟が強姦し子を成す。
碧斗のバッドエンディングは主人公を放置する。女性恐怖症がなくなったことで、複数との女性を囲う。その中の一人が主人公。そしてタガが外れた碧斗は女性たちを洗脳し、子を成す。
そして主人公は全てを「しょうがないな」で終わらせていたような…?
あれ?
「暁」
優しい碧斗の声にびくりと肩を跳ねさせると、あの時見た笑みを浮かべる碧斗。
「気付いちゃった?」
ああ。
やっぱりこの世界はどこまでいっても『クソゲー』なわけで。
「でも大丈夫だよ」
ちゅっとキスをされて、腹を撫でられる。
ゆらりと揺れる尻尾と、頭の上にある耳。それだけでも違うのに、俺は寒気が止まらない。
「おれたちがずぅーっと一緒にいるから」
そのおれたちの中に、北斗も含まれていることに気付いてひくりと口元が引きつる。
「それに、もうこの『世界』は途切れてるからね」
「とぎ…れる?」
「うん。この世界はエンディングを迎えた。そして…」
にこりと微笑む北斗の笑みがぞっとするほど綺麗で泣きそうになる。
「『新しい世界』が始まる」
「あ…あぁ…」
そういうことか。
何度も繰り返してきた『ゲーム』の世界。俺はプレイするだけだったけど、こっちの世界は『一度終わって』また『新しい世界』が始まるわけで。
だから『この世界』で生きる俺は、ここからどこにも行けないわけで。
「大丈夫だよ。暁。オレ達は暁を悲しませないから」
恒晟のその言葉に、俺は泣きながら笑う。
「ぅん♡」
それだけ言って頷くのが精いっぱいだった。
そうだよ。この世界はあくまで『ゲーム』の世界。
エンディングが変わることなどないのだ。
いや、もしかしたら変えられたのかもしれないけれど。
けれど俺はこの『ゲーム』の主人公と同じなのだ。
主人公が『攻略する』のではない。
主人公が『攻略されて』いたのだ。
それを今頃気付いたところで俺はもう三人から離れられないし、あの三人だって離れない。
エンディング通りの最後なのだろうけど『俺』はこれでいいのだ。
だって。
「三人とも『愛してる』」
“さて今回は『狐の嫁入り-闇の花嫁-』やっていくよー! KOTY乙女ゲー部門大賞受賞のこの作品!
本当にクソゲーなのか、その辺も検証しながらプレイしていくよ! ちなみにこれ、プレミアついて万超えwwww
あと、ちょっと怖い噂があるよね。え? 知らない? 結構有名なんだけどね。なんでもこのゲームをしていると、病院に運ばれる人がいるらしいんだよ。うん? そんな怖いゲームをやるのかって? だからだよ! みんなで見ながらプレイすれば何か異変があっても平気でしょ?www
まぁそういうわけでやってくよー!”
“てなわけでニューゲームでスタートだ!”
「そういえばゲーム実況者のにふにんさん、噂のゲームの生放送中に意識失ってそのままだったらしいじゃん?」
「あー…。クソゲーハンターで面白かったのにねー」
「それでさ…ちょっと怖い噂があってさ」
「噂?」
「うん。なんでもにふにんさんが意識を失くした時に、三人の男性が後ろに立ってたらしいんだよー」
「うっそだー!」
「アーカイブとか残ってないからただの噂、なんだけどさ」
「ふーん」
「興味なさそうwww」
「だってあたしはイケメン配信者のロッドさんに夢中なんだもん!」
「アンタってイケメン好きだよねwwww」
『だから君たちはいらないんだよね』
「今なんか言った?」
「え?何も言ってないよ?」
「こわwww」
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