14 / 20
chapter.14
しおりを挟む
「君たちはそのままでね? 斗真、お願い」
「御意」
うふふと微笑む北斗を見ながら「そんじゃ」と話しを向ける。
「んで? なんでお前らはここが『ゲーム』の世界だと知ってんだ?」
ちらりと廊下で正座をしている三人に視線を向けると、三人が互いに視線を合わせる。
「そのことは僕から話そう」
「北斗から?」
そういえばそんなことも言ってたような?
首を傾げてからお手伝いさん(北斗が来てから姿を隠さなくなった狐)が湯呑を置いていってくれた。
それを手にして、ふーふーとお茶を冷ましながら茶菓子をぽいっと口へ放り込む。
狐が何とも言えない顔をしたけど、まだ腹減ってんだよ。
「ここが『ゲーム』の世界だって初めて気付いたのは僕なんだよ」
「はい?」
お手伝いさんにもう一つお茶菓子を貰いながら、間抜けな声を出してしまった。
そして三人に視線を向ければ、こくりと頷いた。
「…なんでまた気付いたんだ?」
「本当に偶然だったんだよ。暁が『狐』ルートを見せてくれた時、違和感に気付いたんだ」
狐こと北斗と斗真の物語は所謂隠しルート、と言われるものだ。
三人を攻略し、全ED回収してから解放される超鬼畜仕様のルート。これに気付いたのは俺だけだった。
このゲームがクソゲーだと知れ渡るや否や、お姉さま方は早々に離脱していったからな。
で、狐ルート…というか物語は本当は斗真のことが好きなのに、男同士だから、という理由でその恋は叶わないというものだ。…まぁ仮にも乙女ゲーだからな。
本ルートの狐は花嫁探しとして主人公を付け回すが、それも斗真を忘れるために三人を使っていただけ、という裏事情が見える。
そこにいくまでめっちゃ大変だった…。それがまさかトリガーになるとは…。
「つまり…俺のせいか」
はぁ、と詰まった息を吐く。
しかしまぁこんなことになるとは…。
「でもなんで三人が知ってるんだ?」
「ああ、それはあの三人から聞こうか」
「うん?」
あれ?俺はてっきり北斗があの三人に教えたものだと思っていたが…。違うのか?
すると、すっと小さく右手を挙げる恒晟。
「おれたちが『ゲーム』の世界の住人だと気付いたのは、暁、君がずっとおれたちを見つめてくれていたからなんだ」
「はい?」
恒晟の言っている意味が一言も分からず、首を傾げる。
「暁。実はね、君がこちらの世界を見ていた時、おれ達もそちらの世界を見ていたんだよ」
「え? マジで?」
「ああ。だから君の『本当の顔』も知っているし『名前』も知っている」
「『顔』はまぁ…テレビ通して見てたから分かるかもだけど『名前』…?」
「暁、君は不思議に思わなかった?」
「何が?」
恒晟の質問におかしなところはないはずだ。
確かに不思議なことはあるけれど。
「『主人公』のデフォルトネームは『主人公』だろ?」
「あー…そうだっけ? …そうだったわ」
なんでか知らんがこのゲームの主人公。デフォルトネームがマジで『主人公』なんだよ。
だからそのままでいくと、母さんからも「主人公」と呼ばれてしまう。家族から「主人公」なんて呼ばれたら泣いちゃう自信はある。
「だから暁はこの『ゲーム』をするとき、『名前』を本名以外のものを適当に入れていただろ?」
「まぁ…そうだな」
「それがここにきて『五月七日 暁』で呼ばれた」
「あ」
そこまで聞いて恒晟が言った『名前』の意味を理解した。
「そうだ。『五月七日 暁』は『俺』の本名だ」
あまりにも自然に本名を呼ばれたから、今の今まで何の疑問も持たなかった。
けれど恒晟に言われて初めておかしなことに気付く。
「でもなんで俺の本名を…?」
「暁、よくテーブルの上に郵便物とか置いていただろ?」
「え? あー…そう、だったかな? 無意識だからなぁ…。ってまさか…」
「そう。そのまさか」
にこりと微笑む恒晟にちょっとだけぞわりとしたものが背中を駆け抜けていく。
「でもこれで僕たちがこの『ゲーム』を知っている、ってことは分かってくれた?」
「あー…うん。分かった、ような…分からないような? まぁなんとなく分かった気がするけど、すげぇ複雑…」
結局、こいつらが『ゲーム』の世界の奴だと知らせてしまったのは俺なのだから。
「でも暁のおかげで、僕は斗真と一緒にいられるんだから感謝しかないよ?」
「うーん…。なら、いい…のか?」
にこにこと笑いながら尻尾をゆらゆらと揺らす北斗を見て「まぁいっか」なんて思ってしまう俺も俺だけど。
「んじゃ、もう一個な?」
「それは俺からだな」
次は樹享が小さく手を挙げて発言する。
…なんで挙手制なんだよ。
「なぜ暁がここにいるか、だが…」
そこで一度言葉を切って、樹享が北斗を見つめる。北斗がこくりと頷くと、二人も頷いた。
「暁をここに呼んだのは俺『たち』の『願い』だったから」
「はい?」
またもやとんでもないことを言い始めた樹享に間抜けな声を上げてしまった俺だった。
「御意」
うふふと微笑む北斗を見ながら「そんじゃ」と話しを向ける。
「んで? なんでお前らはここが『ゲーム』の世界だと知ってんだ?」
ちらりと廊下で正座をしている三人に視線を向けると、三人が互いに視線を合わせる。
「そのことは僕から話そう」
「北斗から?」
そういえばそんなことも言ってたような?
首を傾げてからお手伝いさん(北斗が来てから姿を隠さなくなった狐)が湯呑を置いていってくれた。
それを手にして、ふーふーとお茶を冷ましながら茶菓子をぽいっと口へ放り込む。
狐が何とも言えない顔をしたけど、まだ腹減ってんだよ。
「ここが『ゲーム』の世界だって初めて気付いたのは僕なんだよ」
「はい?」
お手伝いさんにもう一つお茶菓子を貰いながら、間抜けな声を出してしまった。
そして三人に視線を向ければ、こくりと頷いた。
「…なんでまた気付いたんだ?」
「本当に偶然だったんだよ。暁が『狐』ルートを見せてくれた時、違和感に気付いたんだ」
狐こと北斗と斗真の物語は所謂隠しルート、と言われるものだ。
三人を攻略し、全ED回収してから解放される超鬼畜仕様のルート。これに気付いたのは俺だけだった。
このゲームがクソゲーだと知れ渡るや否や、お姉さま方は早々に離脱していったからな。
で、狐ルート…というか物語は本当は斗真のことが好きなのに、男同士だから、という理由でその恋は叶わないというものだ。…まぁ仮にも乙女ゲーだからな。
本ルートの狐は花嫁探しとして主人公を付け回すが、それも斗真を忘れるために三人を使っていただけ、という裏事情が見える。
そこにいくまでめっちゃ大変だった…。それがまさかトリガーになるとは…。
「つまり…俺のせいか」
はぁ、と詰まった息を吐く。
しかしまぁこんなことになるとは…。
「でもなんで三人が知ってるんだ?」
「ああ、それはあの三人から聞こうか」
「うん?」
あれ?俺はてっきり北斗があの三人に教えたものだと思っていたが…。違うのか?
すると、すっと小さく右手を挙げる恒晟。
「おれたちが『ゲーム』の世界の住人だと気付いたのは、暁、君がずっとおれたちを見つめてくれていたからなんだ」
「はい?」
恒晟の言っている意味が一言も分からず、首を傾げる。
「暁。実はね、君がこちらの世界を見ていた時、おれ達もそちらの世界を見ていたんだよ」
「え? マジで?」
「ああ。だから君の『本当の顔』も知っているし『名前』も知っている」
「『顔』はまぁ…テレビ通して見てたから分かるかもだけど『名前』…?」
「暁、君は不思議に思わなかった?」
「何が?」
恒晟の質問におかしなところはないはずだ。
確かに不思議なことはあるけれど。
「『主人公』のデフォルトネームは『主人公』だろ?」
「あー…そうだっけ? …そうだったわ」
なんでか知らんがこのゲームの主人公。デフォルトネームがマジで『主人公』なんだよ。
だからそのままでいくと、母さんからも「主人公」と呼ばれてしまう。家族から「主人公」なんて呼ばれたら泣いちゃう自信はある。
「だから暁はこの『ゲーム』をするとき、『名前』を本名以外のものを適当に入れていただろ?」
「まぁ…そうだな」
「それがここにきて『五月七日 暁』で呼ばれた」
「あ」
そこまで聞いて恒晟が言った『名前』の意味を理解した。
「そうだ。『五月七日 暁』は『俺』の本名だ」
あまりにも自然に本名を呼ばれたから、今の今まで何の疑問も持たなかった。
けれど恒晟に言われて初めておかしなことに気付く。
「でもなんで俺の本名を…?」
「暁、よくテーブルの上に郵便物とか置いていただろ?」
「え? あー…そう、だったかな? 無意識だからなぁ…。ってまさか…」
「そう。そのまさか」
にこりと微笑む恒晟にちょっとだけぞわりとしたものが背中を駆け抜けていく。
「でもこれで僕たちがこの『ゲーム』を知っている、ってことは分かってくれた?」
「あー…うん。分かった、ような…分からないような? まぁなんとなく分かった気がするけど、すげぇ複雑…」
結局、こいつらが『ゲーム』の世界の奴だと知らせてしまったのは俺なのだから。
「でも暁のおかげで、僕は斗真と一緒にいられるんだから感謝しかないよ?」
「うーん…。なら、いい…のか?」
にこにこと笑いながら尻尾をゆらゆらと揺らす北斗を見て「まぁいっか」なんて思ってしまう俺も俺だけど。
「んじゃ、もう一個な?」
「それは俺からだな」
次は樹享が小さく手を挙げて発言する。
…なんで挙手制なんだよ。
「なぜ暁がここにいるか、だが…」
そこで一度言葉を切って、樹享が北斗を見つめる。北斗がこくりと頷くと、二人も頷いた。
「暁をここに呼んだのは俺『たち』の『願い』だったから」
「はい?」
またもやとんでもないことを言い始めた樹享に間抜けな声を上げてしまった俺だった。
31
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。


悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる