13 / 20
chapter.13
しおりを挟む
「…なんか俺、おかしくね?」
樹享と恒晟、それに碧斗とにゃんにゃんしまくって気を失ってついさっき目が覚めた。
所謂寝起き、というやつである。
やっぱり自室とは違う天井を眺めながら思わずそう呟いていた。
ちょっとでも動けば腰が痛むから、痛みをこらえながらうつ伏せになってみた。
俺たちの体液でどろどろだった布団は綺麗になっているから、誰かが処理してくれたのだろう。
それに俺自身も。
…綺麗にしてくれた人、申し訳ない。
だがそれよりも気になることが一つ。
いや二つ?三つ?
その一つである、俺自身のことである。
なぜ急にあの三人に対して欲情したのか、である。
実際樹享に口移しで煎薬を飲ませてもらったら身体が急に疼きだした。それからはもう『気持ちいい』ことしか考えられなくなっていた。
そしてあの結果である。
「つか…。恒晟が言ってたけど『狐の里』ってどこだよ…」
ぽつりと自分に問いかけたその言葉に、ふぅと息を吐く。
「『狐の里』は僕が治める里のことだよ」
「え?」
一人だけだと思って呟いた言葉を拾われて、枕に埋めていた顔を上げればそこには分かれたはずの『狐』…北斗が正座していて。
その姿にぽかんとしていると、北斗がころころと笑う。
「暁、身体は…」
「いてぇよ」
「だろうねぇ…」
あははと笑う北斗を睨むと「ごめん、ごめん」と笑いながら謝る。
「あいつらは?」
「ああ、あの三人ね」
「…いねぇの?」
「いるよ。でも暁と一緒にいるとすぐ発情しちゃうから、今は斗真に見張られながら廊下で正座してる」
ふふっと笑う北斗の言葉に、廊下で三人並んで正座させられていると思うとなんだかおかしい。
だから俺も「ふはっ」と笑えば「よかった」と北斗が息を吐く。
「ここに来てから暁は疲れ切ってたからね」
「…主にあいつらのせいだと思うけど」
「まぁ、そうだねぇ」
俺の言葉に再びころころと笑う北斗。
「その体勢だと腰も痛くなりそうだからさ。はい」
そう言ってすっと目の前に湯呑が現れた。
「だから、とりあえず煎薬、飲もっか」
にこりと笑う北斗の笑みに、ひくりと口元を引きつらせると覚悟を決めた。
「ストローがあれば」
俺の言葉でストローが用意され、クッソ苦い煎薬を涙目になりながらなんとか飲み干すと腰の痛み、そして尻の穴の痛みもきれいさっぱりなくなった。
すげぇよな。クッソ苦くて、口の中が超不快だけど。
「さて、これでようやく話ができるね」
「…ぉう」
今俺と北斗は座卓をはさんで向き合って座っている。
俺の前には湯気が立つうまそうな料理と和菓子が。北斗の前には俺とは違う和菓子が置かれている。
「お腹すいてると思うから、それを食べながら聞いてね?」
「おう! いただきまーす!」
ここにいつからいるのかは分からないが、意識がある間中の記憶は三人とにゃんにゃんしているものしかない。
けど、その前に碧斗とにゃんにゃんしている記憶があるんだけど…。
まぁいいや、と思い、手を合わせてから箸を持ち、白米をかっ食らう。
「んめぇ…」
「それはよかった」
「あー…この煮物もうめぇ…」
「暁が食べているもの全部、この里で採れたものなんだ」
「へぇー…すげぇな」
むぐむぐと口を動かしながら話しているけど、北斗はにこにことしているだけだからほっとする。
家でこんなことすると母さんに怒鳴られるからな。
つい頭に鬼の角を生やした母さんを思い出し、ぶるりと震える。
「寒い?」
「いや。母さんのことを思い出しただけだから」
「そう? じゃあ、話しをしてもいいかな?」
「おう」
精進料理だけかと思えば、肉もちゃんとあるし魚もある。味付けもちょうどよくて、箸が止まらない。
「まずは暁がここにいる理由なんだけどね」
「んむ」
「暁が狐の嫁になったからだね」
「んぐ?!」
「暁?!」
北斗の言葉に口の中に入っていたものを喉に詰まらせ、慌てて胸を叩きお茶を飲む。
北斗に背中を擦られ、咳き込みながら「大丈夫」と告げる。
そしてしばらく咳き込み、ようやく落ち着きを取り戻す。
「悪い」
「びっくりしたよ。でもまぁ…仕方ない、とも思う」
苦笑いを浮かべる北斗に、俺も苦笑いで返すと再び箸を手にする。
腹が減っては戦は出来ぬ。
と言わんばかりに、俺は目の前にある料理を片付けていく。
やっぱり俺好みの味付けでなんだかほっとする。
「それで?」
「暁が狐の嫁になった、ということはいいかな?」
「それだ」
ぴっと箸を北斗に向ければ、きょとんとした表情。
時折、ぴるっと耳が動くから「行儀が悪いぞ」という言葉を飲み込んでいるのかもしれない。
「なんで俺が狐の嫁になってんだ?」
「…暁はこの『ゲーム』のエンディングについては分かってるんだよね?」
「…ああ。なんであんたもあいつらもここが『ゲーム』の世界だってことを知ってるんだ?」
もう一つの謎を北斗に問えば、ふさりと尻尾が揺れた。
「そうだなぁ。その質問も含めて、あの三人にも聞いた方がいいかな?」
「はい?」
首を傾げる俺に、北斗は楽しそうに尻尾を左右に揺らしながら、ちらりと障子に視線を向けた。
すると静かに障子が開いて、三人がなぜか動揺をしている。
「さっき暁が咳き込んでたからね」
「…今にも飛び出さんとしていましたけど黙らせました」
「ありがとう。斗真」
「いえ」
頭を下げる斗真の尻尾が揺れているから嬉しいのだろう。
なんかこの二人を見てると、やっぱり癒されるなぁ。
黙らせられた三人は耳と尻尾を下げて肩を落としているけれど。
「それじゃあ、ちょっと話を聞こうか。三人とも?」
にこりと微笑みながらそう言えば、それぞれがびくりと肩を震わせた。
樹享と恒晟、それに碧斗とにゃんにゃんしまくって気を失ってついさっき目が覚めた。
所謂寝起き、というやつである。
やっぱり自室とは違う天井を眺めながら思わずそう呟いていた。
ちょっとでも動けば腰が痛むから、痛みをこらえながらうつ伏せになってみた。
俺たちの体液でどろどろだった布団は綺麗になっているから、誰かが処理してくれたのだろう。
それに俺自身も。
…綺麗にしてくれた人、申し訳ない。
だがそれよりも気になることが一つ。
いや二つ?三つ?
その一つである、俺自身のことである。
なぜ急にあの三人に対して欲情したのか、である。
実際樹享に口移しで煎薬を飲ませてもらったら身体が急に疼きだした。それからはもう『気持ちいい』ことしか考えられなくなっていた。
そしてあの結果である。
「つか…。恒晟が言ってたけど『狐の里』ってどこだよ…」
ぽつりと自分に問いかけたその言葉に、ふぅと息を吐く。
「『狐の里』は僕が治める里のことだよ」
「え?」
一人だけだと思って呟いた言葉を拾われて、枕に埋めていた顔を上げればそこには分かれたはずの『狐』…北斗が正座していて。
その姿にぽかんとしていると、北斗がころころと笑う。
「暁、身体は…」
「いてぇよ」
「だろうねぇ…」
あははと笑う北斗を睨むと「ごめん、ごめん」と笑いながら謝る。
「あいつらは?」
「ああ、あの三人ね」
「…いねぇの?」
「いるよ。でも暁と一緒にいるとすぐ発情しちゃうから、今は斗真に見張られながら廊下で正座してる」
ふふっと笑う北斗の言葉に、廊下で三人並んで正座させられていると思うとなんだかおかしい。
だから俺も「ふはっ」と笑えば「よかった」と北斗が息を吐く。
「ここに来てから暁は疲れ切ってたからね」
「…主にあいつらのせいだと思うけど」
「まぁ、そうだねぇ」
俺の言葉に再びころころと笑う北斗。
「その体勢だと腰も痛くなりそうだからさ。はい」
そう言ってすっと目の前に湯呑が現れた。
「だから、とりあえず煎薬、飲もっか」
にこりと笑う北斗の笑みに、ひくりと口元を引きつらせると覚悟を決めた。
「ストローがあれば」
俺の言葉でストローが用意され、クッソ苦い煎薬を涙目になりながらなんとか飲み干すと腰の痛み、そして尻の穴の痛みもきれいさっぱりなくなった。
すげぇよな。クッソ苦くて、口の中が超不快だけど。
「さて、これでようやく話ができるね」
「…ぉう」
今俺と北斗は座卓をはさんで向き合って座っている。
俺の前には湯気が立つうまそうな料理と和菓子が。北斗の前には俺とは違う和菓子が置かれている。
「お腹すいてると思うから、それを食べながら聞いてね?」
「おう! いただきまーす!」
ここにいつからいるのかは分からないが、意識がある間中の記憶は三人とにゃんにゃんしているものしかない。
けど、その前に碧斗とにゃんにゃんしている記憶があるんだけど…。
まぁいいや、と思い、手を合わせてから箸を持ち、白米をかっ食らう。
「んめぇ…」
「それはよかった」
「あー…この煮物もうめぇ…」
「暁が食べているもの全部、この里で採れたものなんだ」
「へぇー…すげぇな」
むぐむぐと口を動かしながら話しているけど、北斗はにこにことしているだけだからほっとする。
家でこんなことすると母さんに怒鳴られるからな。
つい頭に鬼の角を生やした母さんを思い出し、ぶるりと震える。
「寒い?」
「いや。母さんのことを思い出しただけだから」
「そう? じゃあ、話しをしてもいいかな?」
「おう」
精進料理だけかと思えば、肉もちゃんとあるし魚もある。味付けもちょうどよくて、箸が止まらない。
「まずは暁がここにいる理由なんだけどね」
「んむ」
「暁が狐の嫁になったからだね」
「んぐ?!」
「暁?!」
北斗の言葉に口の中に入っていたものを喉に詰まらせ、慌てて胸を叩きお茶を飲む。
北斗に背中を擦られ、咳き込みながら「大丈夫」と告げる。
そしてしばらく咳き込み、ようやく落ち着きを取り戻す。
「悪い」
「びっくりしたよ。でもまぁ…仕方ない、とも思う」
苦笑いを浮かべる北斗に、俺も苦笑いで返すと再び箸を手にする。
腹が減っては戦は出来ぬ。
と言わんばかりに、俺は目の前にある料理を片付けていく。
やっぱり俺好みの味付けでなんだかほっとする。
「それで?」
「暁が狐の嫁になった、ということはいいかな?」
「それだ」
ぴっと箸を北斗に向ければ、きょとんとした表情。
時折、ぴるっと耳が動くから「行儀が悪いぞ」という言葉を飲み込んでいるのかもしれない。
「なんで俺が狐の嫁になってんだ?」
「…暁はこの『ゲーム』のエンディングについては分かってるんだよね?」
「…ああ。なんであんたもあいつらもここが『ゲーム』の世界だってことを知ってるんだ?」
もう一つの謎を北斗に問えば、ふさりと尻尾が揺れた。
「そうだなぁ。その質問も含めて、あの三人にも聞いた方がいいかな?」
「はい?」
首を傾げる俺に、北斗は楽しそうに尻尾を左右に揺らしながら、ちらりと障子に視線を向けた。
すると静かに障子が開いて、三人がなぜか動揺をしている。
「さっき暁が咳き込んでたからね」
「…今にも飛び出さんとしていましたけど黙らせました」
「ありがとう。斗真」
「いえ」
頭を下げる斗真の尻尾が揺れているから嬉しいのだろう。
なんかこの二人を見てると、やっぱり癒されるなぁ。
黙らせられた三人は耳と尻尾を下げて肩を落としているけれど。
「それじゃあ、ちょっと話を聞こうか。三人とも?」
にこりと微笑みながらそう言えば、それぞれがびくりと肩を震わせた。
31
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。


悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる