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chapter. 9

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「こいつが九尾だからなんだ?」
「きゅ…九尾様は我々の長の御子息で…!」
「それなのにこんな壊れかけた社で一人嫁を待ってたのか?」
「そ…れは…」

俺の言葉に徐々に語尾を小さくしていったそいつに肩を竦める。

「こいつのことが心配だったらちゃんと言え。だからこいつが一人だと勘違いするんだ」
「暁?それって…?」

どういう意味?と首を傾げる『狐』に、大慌てなのがそいつだ。

「な、なにを?!」
「こいつ、お前のことが心配すぎてずっと側にいたんだよ。思い当たることがあるんじゃないか?」
「そういえば…」

そう言って少し考えこむ『狐』だったが「あ」と小さな声を上げたら、そいつの肩が跳ねた。

「お腹すいた時、斗真がご飯くれてた…」
「そ、それは…その、御父上に言われまして…」

分かりやすく動揺する斗真。俺を抱きしめている腕から力が抜けると離れていく。
そして斗真の前まで歩いていくと、『狐』が碧斗の身体から抜ける。途端に崩れ落ちる碧斗の身体を支えようとするけど、いかんせん体格差が…!
それでもなんとか身体を抱きしめるけど、体重も負ける俺はそのまま後ろへと倒れこむ。

「おわ?!」
「暁。大丈夫?」
「おう…なんとか」

『狐』が何かをしたのか、後ろへと倒れこむ前に何かに支えられた。おかげで後頭部を打つことは免れたが、碧斗の身体に押しつぶされている。

「斗真」
「っは」
「ずっと僕のこと見ててくれたの?」
「………………」

『狐』の言葉に沈黙で返す斗真だけど、沈黙は肯定と同じで。
すると『狐』が斗真に抱きつく。

「きゅ…うび様?!」
「九尾じゃなくて北斗でいいよ」
「しかし…!」
「昔みたいに呼んでよ。斗真」
「ほく…と…様」

斗真の消え入りそうな声に『狐』―北斗は満足そうに微笑む。

「ありがとう。斗真」
「北斗…ごめん…。ごめん…!」

斗真ば北斗を抱きしめて泣き始めてしまった。
無理もない。
斗真は北斗の幼馴染みたいなもので、小さなころからずっと一緒だった。けれども北斗が九尾に選ばれたことにより、子供の頃のように一緒にいられなくなってしまった。
北斗は子供頃のように一緒にいられると思っていたようだが、斗真はそういう訳にはいかなくて。

「斗真のせいじゃないよ。僕が勝手に飛び出したんだもん」
「それでもオレは…!」
「だからずっと側にいてくれたんでしょう?」
「北斗…!」

九尾という名を与えられた途端に変わってしまった斗真にいじけてこちらへ来た。そして俺を見て気にいってしまい、どうにかそちらへと連れて行けないかと遅れてやってきた斗真に相談をしていた。
そこで嫁入りを思い出し、生徒が消えていった。

というのが真相なのだが、がばがばすぎんか?

まぁクソゲーと呼ばれるものだ。この辺がしっかりとしていたらそもそもクソゲーなどと言われていない。
しかもこれ、隠しキャラの『狐』ルートに入らなければ見られないのだ。
その為に何度あの胸糞悪いEDを見た事やら…。

「暁」
「おう」
「僕、斗真と帰るね?」
「そっか。あ、社のことは何とかしてみるわ」
「いいの?」
「いいよ。これも何かの縁だ」
「ありがと。やっぱり優しいね、暁は」
「そうでもないだろ」

碧斗に潰されながら笑えば、二人が手と手を取り合い立ち上がる。

「僕、帰るね」
「暁…、迷惑をかけた」
「そうでもないよ。二人で支え合って行けよ?」

俺のその言葉の意味に気付いたのか、二人が顔を見合わせると頬を赤く染めた。

「も、もう! 暁!」
「そ、それでは失礼します。暁殿」

そう別れの言葉を告げると、まばゆい光と共に二人の姿が消えた。


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