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chapter. 7

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それから直ぐに昇降口へと移動し、靴に履き替える。
傘は…武器になりそうだけど持っていたら不自然かと思い置いていくことにした。
それからこそこそと物陰に隠れながらがさがさと背の伸びた草をかき分けて、目的地へと進む。グラウンドからは体育の授業をしているから、ホイッスルや生徒たちの声が聞こえてくる。
けれども俺たちからはそれは小さい。

「なぁ、本当にこの道であってるのか?」
「ああ!もちろん!」

碧斗の手を握ったまま、俺たちは今、道なき道を進んでいる。青々と茂った木々の間を抜けながら。
ふんふんと鼻歌を披露しながらそこへと向かっていると、不自然に草が倒れていることに気付く。

「あれ?」
「どうした?」

それをさも今見つけたように足を止めると首を傾げる。

「なんかさ…ここ、草が倒れてるんだよ」
「なら、誰かが通ったんじゃないのか?」
「そんなことはないと思うんだけどな…」
「なぜ…そう思うんだ?」

ぎゅっと握った手に力がこもる。『狐』としては予想外だろう。なんせここは物語の終盤に訪れるのだから。
顔色が悪いままの碧斗に、俺は残念そうに肩を下げる。

「だって見つけたの本当に最近なんだぜ? しかも一回来たっきりなんだけど…」
「……………」
「あの時も天気雨が降ってさ。あまりに雨が強いからそこで雨宿りさせてもらったんだよ」
「…まさか」
「そん時に賽銭持ってなかったから、代わりにポケットに入ってた飴を置いたんだよね」

にひひと照れながら笑えば、碧斗…いや『狐』の瞳が大きくなっている。
そう。『狐』が『嫁』として人間を攫うのは、俺のこの行動が原因である。
つまり、俺が雨宿りをしてお礼をしたことで『狐』が一目ぼれ。でも『狐』は俺だということが分からず、天気雨を降らせてはこの学校の生徒を攫っていたのだ。
ちなみにそれは先代の『狐』もそうだったらしく、めでたく七不思議入りした。迷惑な話だ。
本来ならそれを『狐』と攻略者で紐解いていくのだが、それをすっ飛ばした。面倒だし。
そんなわけで、俺の話を聞いた『狐』が瞳を揺らしながら俺を見つめている。

「なら…」
「そ。今向かってるのはお社。あんた、俺を探してたんだろ?」

にまりと笑ってから、不自然にできた道を進んでいく。もう少し行けば、こいつがいるであろう社があるはずだ。
つかなんで学校に社があるんだろうな? そのあたりは全く出てこなかったし。
草を踏みしめながら歩けば、後ろから『狐』がついて来た。



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