1 / 20
chapter. 1
しおりを挟む
「おい。大丈夫か?」
「…………へ?」
ふ、と意識が浮上した。
そしてきょろきょろと周りを見て見れば本がたくさんあり、目の前にいる二人からの心配そうな瞳が俺をじっと見つめている。
それにびくりと肩を跳ねさせれば「五月七日?」と横から声がかかった。
「え?」
聞き慣れない言葉に思わず横を向けば、そこには美男子が視界に入って。彼を見つめたまま、しばらくぽかんとしていると額に手が当てられた。
「大丈夫か?五月七日?」
「熱は?」
「ないな」
「ちょっと休憩するか」
「…そうだな」
俺を置いて話が進むと、額に触れていた手が離れていった。きっとアホ面をさらしてるんだろうな、なんておかしなことを思いながら瞬きを繰り返す。
なんだ? どういうことだ?
というか、こいつらは誰だ?
見覚えのない面々になぜか俺は世話をされて?いるようで、アホ面をさらしたまま隣のやつが立ち上がるのを皮切りに、3人が立ち上がった。
目の前に広げていたノートやら教科書やらを隣の奴が片付けはじめ、それを受け取ったやつがカバンへと放り込んでいく。その作業をぼんやりと見つめていると、俺の額に手を当てていたやつがいつの間にか左隣に来ていた。
「帰るぞ」
「あ、うん…」
未だ混乱している俺の手を取って立ち上がらせてくれる。
…俺、男なんだけど?
やっぱり意味不明な状況だけれど、こいつらは悪いやつではない…と思う。
勘だけど。
「樹享」
「ああ、分かってる」
何が分かってるんだ?と首を傾げると、なぜか頭を撫でられてしまう。
すると樹享と呼ばれた奴からカバンを受け取る。…それ、俺のじゃねぇの?と思っていると、俺の隣に座っていた奴が顔を覗きこんできた。
「暁。また、明日な」
その言葉にこくりと頷くと、なぜか樹享に横抱きにされる。
「ん?」
「寄り道すんなよ?」
「するかよ。暁が辛そうなんだからな。じゃあな」
俺を横抱きにしたまま、すたすたと歩きだした樹享の肩口から頭を出して、ふりふりと右手を振れば二人が手を振ってくれる。
それが嬉しくてにまにましていると「危ねぇぞ」と言われてしまう。そうだった。安定している、とは言え横抱きにされている状態。慌てて樹享の首に腕を回してしがみつくと、なぜかその歩みがピタリと止まった。
「どうした?」
「なんでも。しっかり捕まってろよ」
「うん」
樹享の言葉に頷くと、なぜか額にキスをされる。それを平然と受け入れる俺も俺だが、なぜかそれが嫌ではない。
うむ。実に不思議だ。
そしてそのまま家に向かったが、学校を出てからこれまた不思議なことにすれ違う人がおらず樹享と二人きりだった。
家についてベッドへと降ろされると、そのまま抱き締められる。
「おばさん帰ってくるまでいるからな。具合が悪くなったら言えよ?」
「…ん。ありがと」
そしてそのまま頬に、瞼に、額にキスを贈られると、抱きしめられたまま俺は意識を飛ばした。
◆◇◆
すっかりと寝入って、気付いた時には母さんが肩を竦めていて。
「明日、ちゃんと樹享くんにお礼を言いなさいよ?」
「うん。それは分かってる」
母さんの言葉に頷いてから「夕飯は?」と聞かれると、途端に腹が小さく鳴く。それにまた呆れた母が「着替えたら来なさい」と肩を竦めてから部屋を出て行った。
それから夕飯を食べ、風呂にも入り再び部屋に戻ってきた。
「さて。ここは一体どこなんだ?」
一人になって、ようやく考えることができる。
…寝たから頭がすっきりしている、ともいえるんだけども。
髪を乾かしながらベッドに座ると、ふと抱きついて眠っていた樹享のことを思い出す。
そこで一つ、思い出したことがある。
「あの顔、どっかで見たような気がするんだよなぁ…?」
腕を組んで首を傾げながら独り言。
そして「はて、どこだったか?」と首を反対側へと傾げた時…。
「うん?」
少し開いたカーテンの隙間に何かが映ったような気がして眉を寄せる。
立ち上がって勢いよくカーテンを左右に開くが、そこには自分の部屋を映しているだけで。
「…見間違い?」
ぽつりとつぶやいた瞬間、ぞわりとしたものが背中を駆け抜ける。
アレが見間違いなら、俺は何を見たのだろう。
幽霊なんかは信じてはいないが確かに視界の端に見えた。それが否定されたことにより、見たものが何かが分からなくなったのだ。
慌ててカーテンを閉めてベッドへと滑り込む。髪が乾いていないのはもういい。それよりもバクバクと早鐘を打つ心臓を治めることが最優先だ。
結局、俺はここがどこなのかとか、あの三人についてとか考える前に、またしても意識を飛ばした。
「…………へ?」
ふ、と意識が浮上した。
そしてきょろきょろと周りを見て見れば本がたくさんあり、目の前にいる二人からの心配そうな瞳が俺をじっと見つめている。
それにびくりと肩を跳ねさせれば「五月七日?」と横から声がかかった。
「え?」
聞き慣れない言葉に思わず横を向けば、そこには美男子が視界に入って。彼を見つめたまま、しばらくぽかんとしていると額に手が当てられた。
「大丈夫か?五月七日?」
「熱は?」
「ないな」
「ちょっと休憩するか」
「…そうだな」
俺を置いて話が進むと、額に触れていた手が離れていった。きっとアホ面をさらしてるんだろうな、なんておかしなことを思いながら瞬きを繰り返す。
なんだ? どういうことだ?
というか、こいつらは誰だ?
見覚えのない面々になぜか俺は世話をされて?いるようで、アホ面をさらしたまま隣のやつが立ち上がるのを皮切りに、3人が立ち上がった。
目の前に広げていたノートやら教科書やらを隣の奴が片付けはじめ、それを受け取ったやつがカバンへと放り込んでいく。その作業をぼんやりと見つめていると、俺の額に手を当てていたやつがいつの間にか左隣に来ていた。
「帰るぞ」
「あ、うん…」
未だ混乱している俺の手を取って立ち上がらせてくれる。
…俺、男なんだけど?
やっぱり意味不明な状況だけれど、こいつらは悪いやつではない…と思う。
勘だけど。
「樹享」
「ああ、分かってる」
何が分かってるんだ?と首を傾げると、なぜか頭を撫でられてしまう。
すると樹享と呼ばれた奴からカバンを受け取る。…それ、俺のじゃねぇの?と思っていると、俺の隣に座っていた奴が顔を覗きこんできた。
「暁。また、明日な」
その言葉にこくりと頷くと、なぜか樹享に横抱きにされる。
「ん?」
「寄り道すんなよ?」
「するかよ。暁が辛そうなんだからな。じゃあな」
俺を横抱きにしたまま、すたすたと歩きだした樹享の肩口から頭を出して、ふりふりと右手を振れば二人が手を振ってくれる。
それが嬉しくてにまにましていると「危ねぇぞ」と言われてしまう。そうだった。安定している、とは言え横抱きにされている状態。慌てて樹享の首に腕を回してしがみつくと、なぜかその歩みがピタリと止まった。
「どうした?」
「なんでも。しっかり捕まってろよ」
「うん」
樹享の言葉に頷くと、なぜか額にキスをされる。それを平然と受け入れる俺も俺だが、なぜかそれが嫌ではない。
うむ。実に不思議だ。
そしてそのまま家に向かったが、学校を出てからこれまた不思議なことにすれ違う人がおらず樹享と二人きりだった。
家についてベッドへと降ろされると、そのまま抱き締められる。
「おばさん帰ってくるまでいるからな。具合が悪くなったら言えよ?」
「…ん。ありがと」
そしてそのまま頬に、瞼に、額にキスを贈られると、抱きしめられたまま俺は意識を飛ばした。
◆◇◆
すっかりと寝入って、気付いた時には母さんが肩を竦めていて。
「明日、ちゃんと樹享くんにお礼を言いなさいよ?」
「うん。それは分かってる」
母さんの言葉に頷いてから「夕飯は?」と聞かれると、途端に腹が小さく鳴く。それにまた呆れた母が「着替えたら来なさい」と肩を竦めてから部屋を出て行った。
それから夕飯を食べ、風呂にも入り再び部屋に戻ってきた。
「さて。ここは一体どこなんだ?」
一人になって、ようやく考えることができる。
…寝たから頭がすっきりしている、ともいえるんだけども。
髪を乾かしながらベッドに座ると、ふと抱きついて眠っていた樹享のことを思い出す。
そこで一つ、思い出したことがある。
「あの顔、どっかで見たような気がするんだよなぁ…?」
腕を組んで首を傾げながら独り言。
そして「はて、どこだったか?」と首を反対側へと傾げた時…。
「うん?」
少し開いたカーテンの隙間に何かが映ったような気がして眉を寄せる。
立ち上がって勢いよくカーテンを左右に開くが、そこには自分の部屋を映しているだけで。
「…見間違い?」
ぽつりとつぶやいた瞬間、ぞわりとしたものが背中を駆け抜ける。
アレが見間違いなら、俺は何を見たのだろう。
幽霊なんかは信じてはいないが確かに視界の端に見えた。それが否定されたことにより、見たものが何かが分からなくなったのだ。
慌ててカーテンを閉めてベッドへと滑り込む。髪が乾いていないのはもういい。それよりもバクバクと早鐘を打つ心臓を治めることが最優先だ。
結局、俺はここがどこなのかとか、あの三人についてとか考える前に、またしても意識を飛ばした。
58
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。


悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる