よくある話をしよう

マンゴー山田

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結局お互い性欲を止めることができずなんとか5回戦で一応終えた俺たちは呼吸を整え部屋を出る。
そういやこんな部屋あったっけか?

でもドアがあるから元々あった?

首をひねる俺にオルが「おばさんがショーマのために作ってくれたんだよ」と教えてくれた。

わお!
即席増築!

さっすが神様!
何でもありだね!

ほえーと間抜けな顔をしながら、意識を失う前までいたリビングへと戻れば俺たちに気付いた王子様の視線がこちらに向いた。
え、ずっとここにいたの?
やべぇ。
王子様たち放置してえっちしてたよ。

するとつかつかと王子様が俺の近くまで来ると、じっと見下ろしてくる。

うん、王子様も俺より背が高いんだよ。
なんなら全員俺より背が高い。
何食ったらそんなに背が伸びるんだよ!
教えてくれよ!

あとイケメン。
みんなイケメン!

ちくしょう!
どうせ俺は平々凡々な顔面だよ!

「身体はもういいのか?」
「ふぁっ?!」

え?
今なんつった?
王子様、今、何て言った?!

挙動不審になる俺に、王子様は文句を言うこともなく「ならいい」と言って椅子へと戻っていった。

何?
何が起こったんだ?!

ぽかんとしている俺に、オルが「ショーマは俺のものだからね」と言って俺を後ろから抱き締めて王子様を威嚇している。
オルも何してんの?!
ちょっと、ちょっとー!
俺が意識ぶっ飛ばしてる間に何があったんだよー!

「あ、ショーマ。大丈夫かい?」
「神様」

ぐるぐると喉を鳴らして威嚇しているオルを無視して、俺の側に寄ってきた神様の表情は心配そうに眉を下げてた。
うん、神様もすまんな。
でもそのおかげで忘れてたことをなんとなーく思い出したから、結果オーライってやつだ。

「大丈夫です。ご心配かけました」
「ううん。こっちこそショーマに起きたことを知っていたのにね…ごめんね」

しゅーんと見えない耳と尻尾を下げている神様。

そ れ は い け な い 。

耳と尻尾を下げられる事に弱いんだよー!

「あばばば。い、いやマジで気にしないでください!」
「ちょっとおばさん! ショーマの気を引くことしないでよね!」
「…ショーマはああいうのに弱いのか」

ちょ、何このカオス!
王子様まで何言ってんの?!
オルも王子様と神様に威嚇しない!
神様もきゅーんと捨てられた犬みたいにならない!

また頭が痛くなりそう!

そんな状況を打破したのは、やはりというかなんというか空気を読むことのない神様だった。

「よし! なら食事にしよっか。お腹空いてない?」

こういう時、空気を読まない神様が神様に見えてくる!

神様だけど!

「そういえば腹がすいたな…」

ここに来てから時間感覚がおかしいんだよ。
時計もないし、空の色も分らない。
だからいきなり「1週間いたよ」って言われても驚かない。

というかやっぱあの焼き菓子食っとけばよかったー。
オルとえっちしたからお腹すいた。

「君たちも食べるよね?」

君たち、といって視線を送ったのは王子様たち。
うん、すまんな。
俺を待っててくれたんだよな…。

「そうだな、いただこうか」
「殿下」
「問題ないだろう。仮に毒を盛られたとしたらそれが彼…彼女?の意思なんだろうしな」

肩を竦めながら騎士にそう告げる王子様はカッコイイ。
本物の王子様みたいだ。

「ショーマ」
「んっ」

拗ねているようなオルの声色に振り向けば、キスをされる。
触れるだけのキスだけど、さっきまでオルのちんこで穴をずぼずぼされてたから、きゅうんと穴が切なくなる。

「オルもショーマも見られながらえっちしてもいいけど、あとが気まずいよ?」
「ふぉあ?!」

そうだ!
王子様たちがいたんだ!

つか見られながらえっちとかまだハードルが高い!

「…ご飯食べて、リミッターの話したらまたしようね。ショーマ」
「んんっ!」

やめて!
話が終わったらえっちするから宣言するのやめて!
恥ずかしいから!
ばっと両手で顔を覆って首を左右に振る俺と、王子様に威嚇するオル。
神様は嬉々として食事の準備をして、王子様たちは無言だけど、オルの威嚇が強くなったから、何かしらのアクションを起こしているんだろう。

俺は見えないけど。

「君たち、遊んでないで食事にするよー」

数分後、神様ののんびりした声に少々カオスな空間が消滅し、穏やかな食事の時間に移行した。

食事の後、俺はぐっすりと強制睡眠したためかあまり眠くなかったが、さすがに王子様たちの疲労の事を考え今日はこの空間で眠ることにした。
即席増築で部屋を増やし、それぞれ個室に引っ込んでいったが、騎士だけは王子様の入った部屋の前で見張りをしようとしていたのを神様がやんわりとおど…こほん、話を付けて部屋へと戻した。

眠くはないけど、ちょっとうとうとしちゃったのを目ざとく見つけたオルと神様。

だってオルの胸に身体を預けると眠くなっちゃうんだよー…。
神様とオルしかいないからって、オルの膝の上で横抱きにされているからうとうとするのは仕方ないだろー…。
眠る時はずっとこうやってくっついてたんだからさー。

「ショーマ、眠いならちゃんとベッドで寝なさい」
「んー…」

すりすりとオルの胸に頬を擦りよせてもごもごと言葉にならない言葉を呟きながら、下がるだけの瞼に逆らうことなく閉じてそのまま眠りにつく。

「んんー…」

しかし、下腹部を撫でられる感覚に意識が覚醒してしまう。
せっかく眠りに落ちそうだったのにー。
オルやめろよー。

「んむー」

オルに抗議するように声を出したつもりだったけど、口が開かずむずがる子供みたいな声しか出なかった。
恥ずかしいというよりも、とにかく微睡みが気持ちよくて邪魔してほしくない。
そんな俺など放って、下腹部を撫でる手がくるくると回る。

んー。
温かくて気持ちいいー。

これならずっとやっててくれてもいいぞー。

口を動かしているのに声が出ていないから「むにゃむにゃ」としか言えない。

「眠いのにごめんね。ショーマ」

いいって。
気にすんな。

「おやすみ、ショーマ」
「おやすみなさい、ショーマ」

二人の声に「おやすみ」といえたかどうかは分らないけど、頭を撫でられたからきっと伝わったのだろう。

「また明日」

そのオルの声を最後に俺の意識は完全に睡魔に支配された。



はい!
おはようございます!

行がそんなに開いてないけど朝だよ!
めっちゃ気持ちがいい朝だよ!

外、見えないけどね!

王子様たちもすっきりとした顔で既にテーブルについて、朝食中。

俺? 俺はオルに「あーん」しながら食べてる。
なんかこの方が落ち着くようになちゃった。

あ、オル。パン屑付いてるぞー。

「ありがとうショーマ」
「ん、いいよ。それよりこれ食う?」

朝っぱらいちゃいちゃすんな、っていう騎士と魔導士の視線が突き刺さるけど、オルの結界のおかげでそれを弾いていく。
王子様はもう気にしないことにしたのかのんびり自分の分を食べている。

食べ方綺麗だよなー。
こう…品があるっていうの?

俺も習えたら習いたいなー。
使う場面がなさそうだけど。

「ショーマ」
「ん? んむ?!」

むちゅっとキスされて口の中に何かが押し込まれる。
え? ちょ?!
それを舌で押し返そうとすると、それがぐじゅりと潰れた。

ほわー?!

ビックリしすぎて固まる俺に、オルの舌がぐいぐいとそれを俺の方へと押しやってくる。
嫌いなものだった?!
そうならそうって言えよ!

「は、ぅん…っ!」

ちゅ、ちゅと音を立ててキスを繰り返すたびに、お互いの舌がそれをぐずぐずに押しつぶされ形を失っていく。
唾液と潰れたそれからあふれ出る甘い液体を、んくんくと飲み、最後に口に押し付けられるとオルの唇が離れていく。

「ん、んま」

もぐもぐとオルに押し付けられたそれを咀嚼すれば、イチゴのような味だったということに気付く。
いや、さっきはキスに夢中だったから…。
こくん、とそれを飲み込むと、ぺろりと唇を舐められた。

ひょわ?!

いきなりそういうことするなよ!
ビックリしたわ!

「ごちそうさま、ショーマ」

ぺろりと自分の唇を舐めるオルのカッコよさに、俺は…。

俺は…!

「朝から美味しいご飯をありがとうねー」

のんびりとした神様の声に、ハッと意識が戻される。
まただよー!
またやっちまったよー!

もう人前だろうがいちゃいちゃすんの気にならなくなってきちゃったよー!

バカップルってこういうことなんだろうか。

「オルの好きな果物、ショーマも気に入ってくれてよかったねー」
「…うるさい」

ひわー!
オルがちょっと照れてるー!
可愛いー!

てかあのイチゴみたいなのオルの好きなものなんだー!

…あれ?

よく考えてみたら、俺、オルのことほとんど知らなくない?
いやすっごい深いところは神様が教えてくれてるけど、好きな食べ物…はさっき知ったから、好きな色とか、誕生日とか…。

昔、聞いてたのかな?

だとしたら勿体ない!
なんで俺の記憶がぶっ飛んでんだよ!
許さんぞ! 俺を跳ね飛ばした運転手ーっ!

「さて、そろそろいいかな?」

俺が一人悶々としていると、ずっと頭を撫でてくれたらしいオルがにこりと笑う。

うん。
好き。

そんで朝食の皿とかがなくなってて、新たにお茶が入ったティーカップがあった。
周りを見ると、のんびりとそれを傾けている。

「あばば」
「ショーマは気にしなくていいからね」

そう言いながら頭にキスを贈ってくれるオルに、俺は勢いよく抱き付くと「ふふふ、ショーマは可愛いなぁ」って優しい声が降ってくる。
ああもう!
好きー!

「うんうん、ショーマも絶好調のようだし話の続きといこうか」

うふふ、と笑う神様に、王子様たちが頷く。

怖いといえば嘘になる。
けど、覚悟を決めたんだ。

オルだってそうだ。

最後に胸に額を押し当ててぐりぐり甘える。

よし!
昨日より少しだけ記憶があるから大丈夫!

「オルが私の作りたかった人間だってことまで話したよね?」

神様の言葉に、俺たちもいちゃいちゃした甘い空気を無くす。
俺はオルの膝に乗ったままだけどな。

「そこで取引してショーマの世界へ行った。ここまでは大丈夫?」

それに全員が頷く。

「うんうん、理解が早くて助かるよー。じゃあその続きね」

俺たちはともかく、王子様たちは理解する、というより理解するしかないだろうなー。
そもそもあっちの世界はそういったものが溢れて予習的なことができるからな。
でも王子様たちはそんなことできない、本当に理解不能な言葉や行動が多いと思う。
それでもきちんと話を聞いてくれるのは好印象だ。

きっと理解をしてくれようとしてくれてているんだろう。

「それで、今回の聖女召喚について話そうか」
「今回は特別で、逆転している、という話じゃないのか?」
「そうそう。で、聖女の条件ってなんだっけ?」

うふふとクイズを出す神様に、王子様たちの眉が寄った。
俺も神様の意図が分からず首を傾げる。

「…最低でも【治癒】のスキルを持っている」

王子様の回答に「せいかーい☆」とぱちぱち手を叩く神様。
なんか子供っぽいんだよなー。

憎めないっていうか…。
人によっては地雷っぽいけど。

「それが、どうしたと?」
「そういえば、オルは治癒が使えるよね?」
「ああ」
「何?!」

俺の言葉に王子様ががたりと音を立て立ち上がる。

あ、俺は子供の頃オルに怪我を治してもらったから知ってたけど王子様たちは知らないんだっけ。

信じられないような目で、オルを見つめる王子様たち。
ん?
治癒が使えるだけでここまで驚かれるってことは…。

「治癒ってもしかして聖女専用スキル…とか?」

俺のその言葉に、なぜか王子様が「はぁ…」と大きく溜息を吐いた。


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