よくある話をしよう

マンゴー山田

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俺の髪を誰かが弄っている。
軽く引っ張ったかと思えば、その場所を撫でてくれる。
その手は俺のよく知っている手で。
ゆっくりと瞼を持ち上げ、ぼやける視界をはっきりさせる為、瞬きを繰り返す。
視界がクリアになったところで見えたのは、零れそうなほど大きく見開いた赤い瞳。

俺の、大好きなオルが覆い被さっていた。

「おる」
「―――ッ?! ショーマ?!」

慌てふためくオル。
うむ。新鮮だ。

「大丈夫?! 痛いところはない?!」

そう言いながら右手を俺の頭に翳して温かな光を発生させる。

ああ。懐かしい。

「俺が転んだときも…そうやって治してくれたよな」
「ショーマ?」
「悪い。今まで忘れてたわ。ごめんな、オル」
「―――~っ! ショーマ!」
「いだだだだだ! 痛い! 痛いからあああぁぁっ!」

ぎゅうううと力一杯抱き締めてくるのはいいけど、オルと違って俺、身体薄いのよ!
あと苦しい、めっちゃ苦しい。
潰れるー!と叫べば、ようやく力強い腕から解放された。

やべぇ…オルの胸で昇天するところだった…。
それはそれで幸せなのかもしれないけどな! わはは!

じゃなくてさ。

「なんでオルが泣きそうな顔してんの」
「だって…ショーマが、突然倒れて…名前呼んでも起きなくて…」
「あー…悪かったって」

オルの頭をくしゃりと撫でて安心させるように笑ってやれば、ますます泣きそうになる。
なんで?!

「ショーマが…動かなくなったの…2回目で…でも今度はこっちにいてくれたからどうにかできるかって…」
「ん? 何言ってんだ?」

俺が動かなくなったのが2回目?

2回目?

そう言えば中学生の時交通事故にあったって母ちゃんに…。

「―――ッ?!」

その時ずきりと激しい頭痛が俺を襲う。
頭を鷲掴みされたような痛みに、たまらず両手で頭を抱えると「ショーマ!」と焦った誰かの声が聞こえた。

痛い、痛い、痛い。

全身が、痛い。

そうだ。
確かあれは中学2年生の夏休みの時だった。
ようやくできた友達と夕方まで遊んで家に帰る途中で信号がない横断歩道の自転車横断帯を自転車で渡っていた時、直進してきた車とぶつかって…?

「ショーマ!」

そうだ、この声。
意識が飛びそうになる俺にずっと話しかけてきた声だ。
それにこの温かいもの。

「大丈夫?!」
「お…る…?」

頭に治癒魔法をかけているオルと視線が合う。
あまりの痛みに涙が出ていたのか、視界が歪む。

「ごめんね、ごめんね。嫌なこと思い出させちゃったね…ごめんね…」

謝りながら俺の頭に治癒魔法をかけ続けるオル。
なんでオルが謝ってんだよ。

「あのときも…おるが、たすけてくれたんだろ?」

ぼろぼろと涙を流してる頬にそっと触れれば、赤い瞳が大きくなった。

やっぱりそうか。

事故のあと、駆け付けた悠里に説明をしてもらったけど、当時はよく分らなくて頷いていただけだった。
ただ、本当にぎりぎりだった、ということだけは覚えている。
けど今、なぜオルのことを忘れていたのか思い出した。

記憶がぶっ飛んだ。

事故の影響で少なからず記憶がぶっ飛んでたらしく、小さいころの記憶なんかは殆ど飛んだみたい。
だからオルとの別れ際にかけられた魔法も、言葉も綺麗さっぱりなくなっていた。

あー。
ホントにすまんと思ってる。

「あー…ほら、なくな、なくな。てんかのちーとゆうしゃさまがめそめそすんな」
「ショーマ…」

泣くなってー!
泣き顔もいいけどさー!

俺は泣いてるオルより、ふわふわして優しくて抱き締められると安心できる大型わんこのオルが好きなんだよー。

だから。

「泣くなよ。オル」
「っつ…ぅ、ん…、なかない…っ! ショーマがいうなら…なかない…っ!」

ホントに可愛いやつだなー。
オルは。

「泣くなよ」
「うん…っ」

おーおー、泣け泣け。
泣いてスッキリしろ。
涙で濡れる頬を撫でてやれば、ぎゅうと抱き付き肩に目元を押し付ける。

肩より胸を貸してやりたいけど…って今、俺どんな状況だ?

でかいベッドに寝てて…てかオルは今までどこにいたんだ?
ベッドの縁に座ってた?
そう思いながら動かせる範囲で頭を動かせば、ベッドの側に椅子が一脚。
それからラウンドテーブルがあって…その上にはティーポットとカップが2つ。

誰かといたのか?

それにもやっとしたものが胸をかすめ、ふとあることを思い出した。
そう言えば王子様…!
まさか?!
俺の勘違いじゃなかった?!
オルと王子様はそういった関係なのか?!

俺が好きだって言ったのは、王子様とのマンネリ化した関係に俺がスパイスとして…?!

あ。
いかん。
泣きそう。

例え妄想だとしても、オルが他の誰かとそういった関係になるのはダメだ。

あー、なんでこんなバカなこと考えたんだよー。俺ー。
オルを慰めてるのにー。

すると、視界いっぱいにオルの顔が現れ驚く。

「泣かないで、ショーマ」
「え…?」

言われて気付いた。

泣いてる?

バカな妄想をして勝手に泣いてる俺。
ホントなにやってんだよ…。

「泣かないで。俺も…悲しくなるから」
「オル…」

今度はオルの手が俺の頬を包み込んで、ちゅと額に唇を落とされる。
それから瞼に、そして唇に。

ちゅ、と触れるだけのキスは久しぶりだなーと思ったり。
そういや最後にオルと触れ合ったのいつだっけ?
2日前だったような気もするけど、もっと前だったような気もする…。

しかし…。

キス気持ちいいー。
触れるだけじゃなくて舌絡めたいなー。

エロいキスしたいー。

「くち、開けれる?」
「ん…」

あ、エロいキスしてくれるの?
やったー!

そそくさと口を開けて舌を出す。
なんかがっついてて恥ずかしいんだけどさ。
でも、今はオルに触れたい気分なんだよ。
許せ、オル。

一度深くキスして、舌を絡める。
くちゅ、という音が耳に届いて、腰に熱が集まり始める。

「あ、ふ…、んぅ…」
「ふふっ、ショーマの声、えっちだね」

直ぐに唇を離して、くすくすと笑うオルが色っぽくてたまらない。
あー…えっちしたいー。
オルのちんこで俺の奥、がんがん突いて入っちゃいけないそこに先端めり込ませて、襞でじゅぽじゅっぽ扱いてやりたい―。
そんでオルのザーメンみるく一杯出してほしいー。

「おるぅ…」

あー、もうダメ。
今すぐえっちしよー。

「あー…ショーマ…。俺もえっちしたいんだけど、ね?」

もにゅもにゅと言葉を濁しながら、それでも舌を絡めて唾液をどんどん与えてくる。
俺もオルのを絡めて舐めて、混ざった唾液を飲み込んで。
オルも、俺の下に絡みついてきたり、吸ったり、甘噛みしたり。
お互い呼吸を乱し、口周りを唾液で濡らしながらキスを繰り返す。

腕をオルの首に絡めてもっとと強請り、頬を包んでいたオルの手は服の上から身体を撫でまわしている。

めっちゃ気持ちいー。

既にちんこは元気いっぱいでズボンを持ち上げてる。
あー、穴もひくひくし出してるし、ちょっとパンツが濡れて気持ち悪い。

「んぁあっ!」
「あぁ! ごめんね!」

親指が乳首をかすめただけで、快感が身体を襲う。

そう。
1日えっちした時、乳首もばっちり開発された。
だから。

「おるぅ…ちんこいたいぃ…」
「ぐぅっ!」

お?
もしかしたらこれはいけるのでは?!
オルも我慢してるっぽいし。
よし、あともうひと押しでいけるな!

首に絡めている腕をぐっと引き寄せ、鼻先が触れる距離で止める。

そしてじいっと揺れる赤い瞳を上目遣いで見つめる。
なんなら首も少し傾げてやろう!

「おる…だめ…?」
「ダメじゃない!」

よし!
なら直ぐしよう! 今すぐしよう!

「あっ、はやくぅ…」
「ちょ、ちょっと待って! ショーマ!」
「おるぅ」
「可愛いしエロい! 早く突っ込んで奥に子種出したい!」

おお!
オルが暴走していらっしゃる!
これはちょっと期待しちゃうぞ!

「きて…おくに、おれのおくにいっぱいしあわせみるくちょうだい?」
「もちろん! というか、あまり可愛く煽らないでくれる?! 一回じゃ終われそうにないから!」

なんだと?!
一回で終わらせる気だったのか?!

1日えっち経験したから休憩しながら6回戦まではいけると思ってたのに!

「服…の前に、綺麗にするね」
「ん…」

そういやオルの側で寝てないから綺麗にしてもらってなかったなー。
っは!
ってことは俺臭くなかった?!
大丈夫?!

身体を綺麗にしてもらって、服を脱がせにかかるオルに協力しようと絡めていた腕を離そうとして…。

「そのまま」
「え?」

止められた。

なんで?

ちゅ、っと首筋にキスされて強く吸われる。
あ、これ。

「上着を着たままだと、エロさが増すから好きなんだ」

おお。
まさかのオルの趣味でした!

ってあれ?
そう言えばズボンは脱がせないの?

そこでようやく俺が上着だけ身に着けて、下を穿いていないことに気付いた。

んおおおぉあ?!
なんで?!
やだ! 俺の元気なちんこオルにバレバレだったじゃない!

恥ずかしい!

「これからもっと恥ずかしいこと言わせるのに、恥ずかしがらなくていいよ? ショーマ」
「ふえ?」

ちょ、今、なんかすごいこと言ったぞこいつ!

「可愛い、可愛い俺のショーマ」

舌なめずりをして俺を見下すオル。
うっわ。やっば。
細められた赤い瞳がギラギラと光って、ぞくりと背中を快感が駆け抜けていく。

あれだ。
捕食する狼だ。

そっかー…。
捕食される側はこんな気持ちかー…なんてのんびり考えていたら、オルが上着を脱ぎ始めた。

うっわえっろ!
あーもー! それだけでたまりませんぞー!
オルさん!

「ショーマの胎にたくさん俺の子種を注いであげるからね」
「ひょ…」




そう言ってにこりと笑うオルに、俺は煽りまくったことを後悔する羽目になったが、それ以上に気持ちよくしてもらって満足してしまった。

恥ずかしいことを散々言わされたけど、それも全部気持ちよくなっちゃう俺を可愛いって誉めてくれたから、ま、いっか。


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