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「え…なんで…名前…」
確かにどこかで会ったような気はしたけどさ…。
銀の髪に赤い瞳の人なんて日本で会ったら忘れないだろう。
むしろコスプレイヤーか?と思うかもしれない。
けど。
俺は、この人を知らない。
「まぁ君が知らないのは無理もない。私が一方的に知っているだけだからね」
ふふっと笑うその人に、警戒を示したのは王子様たちである。
当然だ。
歪んだ空間から人が出てくるなんてありえないのだから。
いや、この世界ならあるのかもしれないが、王子様たちの反応からそれもないと分る。
え、ちょっと待って。
マジでこの人何者だ?
すると俺たちに向かって歩いてくるその人に、びくりと肩を跳ねさせれば「ショーマが怖がってる」と今度は勇者様が威嚇する。
「いやー、大きくなったね」
「へ?」
「君を見かけた時はまだ豆粒だったのに」
そう言いながらぐりぐりと頭を撫でられる。
豆粒?
そりゃ俺は背だって小さいけど豆粒はないよ…。
「おばさん、言葉が足りないって言われない?」
「ああ。すまないね。何千年も生きてるとつい昨日みたいな感覚だからさ」
あっはっはっ、と笑うその人は急に笑うのをやめると赤い瞳を細めた。
「よく来てくれたね。オルの花嫁。首を長くして待ってたよ」
「んんん?!」
ちょと待て!
何言ってんだ?! この人?!
そもそも誰なの?!
「ああ、紹介するのが遅れたね。ショーマ、このおばさんがこの世界の神様」
「へぁ?!」
なんかすごい情報来た!
つかこの人が神様ってどういうこと?!
「ショーマの頭がパンクしてるねー。いやー、可愛い」
「ショーマは俺の嫁だ。いくらおばさんでもあげないよ?」
「分ってるよ。それが君への贈り物だもの」
はい。ここで情報を整理しようか。
勇者様曰く、この女性はこの世界の神様。
女性、といっても人の形になってるだけだから実際はどっちでもないらしい。
もうこの時点でよく分からんが、そういうことなんだろう。
歪んだ空間から出てきたことでそう理解するしかない。
んで、俺がオルの花嫁発言。
この人が神様だからこの世界のことを全て知っている、とすれば理解できる。
でも、気になるのは「待ってたよ」と言っていたこと。
その言い方じゃあまるで俺がこの世界に来ることを知っていたみたいじゃないか。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「おお。意外と復活が早いな。何か質問かな?」
さぁこい!と言わんばかりの神様に俺は本当に聞いていいのか分らなくなる。
その躊躇いを感じた勇者様が「まずは」と戦闘態勢を解かない王子様に水を向けた。
するとすぐに王子様が口を開いた。
「貴様が魔王だったか!」
勢いよくそう噛み付く王子様に、神様は「魔王? ああ!そうそう!」と手をぽんと合わせると王子様たちの方へと向き直る。
「実はさー。魔王候補の子をここに呼んだんだけどさー。スローライフを送りたいって言われてさー」
「は?」
「振られちゃったんだよね」
てへ☆とウインクをしながら舌を出す神様に、ぽかんとする俺。
逆に怒りを露わにした王子様たち。
「そんなことあるわけないだろう! どうせ貴様が…!」
「アドバイスすると、この人本物だからね。あんまり怒らせない方がいいよ?」
激昂する王子様に勇者様が口を挟めば、再び睨みつけてくる。
まぁ分らんでもない。
いきなり現れて「この人神様だから」なんて言われて信じられるかと言えば…。
まぁ普通に胡散臭いわな…。
俺は何となくこの人はなぜか本物だとは思っているけど。
「この国は神様信仰じゃなくて、聖女信仰だからね」
「ああ。なるほど」
神様に噛み付いてる王子様を見ていると、オルがこっそり耳打ちして教えてくれる。
まぁ聖女伝説なんてものがあるくらいだからな。
ってことは他の国は神様信仰なのかな?
それよりちょっと気になる言葉があるんだよね。
「というか、魔王候補生って何ですか?」
「ん? いやー…前封印された魔王がさー封印の間何もすることがないから辞めたいっていってきてさ…。そりゃ100年以上も何もやることないなら飽きるよね」
ええー。
魔王って申告すれば辞めれるのー?
てか神様に雇われてるのー?
「そんでさ、100年分の報酬払って承認したのさ。まぁ彼の報酬は異世界転生だったわけだけど」
あははーと笑う神様に、俺は何となく「分かる」と頷き、王子様たちは怒りを通り越して唖然としている。
たぶん魔王が異世界に行ったことが信じられないんだろう。
俺だったら「嘘だッ!」って言うかもしれない。
「で、いなくなった魔王の代わりにショーマ、君の世界から魔王候補生としてこの世界に転生させたんだけど、病弱で入退院繰り返してたから身体を動かしたいって言われたら断れないじゃない?」
にゃはーと笑う神様に、力が抜ける。
しかし、信じられないのか、信じたくないのか王子様が神様に更に噛み付く。
「では魔王城が現れたというのは…?!」
「ん? その候補生のためのものだったけど、いらなくなっちゃったから消しちゃった☆」
再びてへ☆と舌を出す神様にがくりと膝を付く王子様。
あー…まぁそうだよね…。
目的がそもそも魔王封印だからね…。
魔王がいないならこの旅も完全に無駄になっちゃったからね…。
なんか可哀相になってきた。
「すまない…聖女。せっかくこちらの世界に来ていただいたのに…」
それでもすっと立ち上がり、聖女の方へと向くと沈痛な面持ちでそう告げる。
おお。さすが王子様。
ちょとカッコイイぞ。
オルには負けるけど。
「聖女?」
それに食い付いたのは神様だ。
「え? その子が聖女なの?」
「ああ。そうだ」
「ホントに? マジで言ってる?」
「当たり前だろう! 冗談ではない!」
神様の言葉に、王子様が語尾を強くしてそう言えば神様の肩が震えはじめる。
そして…。
「あっ、はっ、あはははははっ!!!!!」
「な、なにがおかしい!」
急に大声で笑い始める神様。
それに俺もぎょっとすると「あの人の笑いのツボがよく分らないんだよ」とオルが教えてくれた。
とてもいらない情報だけど、ありがたくもらっておこう。
ついに腹を抱えて笑い出した神様に若干引いてなくもない魔導士。
騎士はなんとか耐えたみたい。さすがだ。
ひーひーと肩を大きく震わせ、涙を拭う神様が「ふっふふ…聖女…ふひっ」と何か聞いちゃいけない声を聞いてどうしたらいのか勇者様に視線を送れば、ふるふると首を振られた。
落ち着くのを待つしかないらしいが、それは直ぐに訪れた。
「そう言えば君たち、ショーマのことを聖女のおまけって呼んでたよね?」
「はい?」
「なら。おまけはそっち」
「え?」
はい?
どういうこと?!
てか分んないことが多すぎるよー!
ほら、王子様たちもどういうこと?って顔してんじゃんー!
「話が長くなりそうだからとりあえずお茶しない? ちょうどいい場所があるから」
そう言って、ぱちんと指を神様が鳴らすと次の瞬間には部屋の中に全員いた。
神様が言っていた「お茶」もしっかりと準備されていて俺はきょろきょろと部屋の中を見渡す。
部屋はヨーロッパのリビング的な感じだな。うん。
決して説明がめんどくさいとかじゃないからな。
違うぞ?
あ、でもドアはないから、出られないね。
出る時は神様の気分次第なのかな?
ある意味閉じ込められてるよね。
「じゃあ、俺たちはこっちね。ショーマ」
「え、あ、うん」
そんなことを考えていると、オルが首から腕を解き手を繋ぐ。
あ、指絡められてる。
所謂恋人つなぎというものだ。
さらっとこういうことするオルすごい。
そしてそのままソファーへと向かう。
ちょっと首元が寒いだなんて思わないぞ。
…思わないからな。
てか今まですっかり忘れてたけどそうだった。
勇者様が俺の背中から抱き締めてたんだった。
人前でいちゃいちゃしちゃたよー。
恥ずかしいよー。
そんなことを一人考えていたらオルが座った膝の上へと自然に乗せられた。
ん?
「おい!」
「どうしたの? もう花嫁だって分ってるんだし、いいじゃない」
「いやいや!待って?! そもそも花嫁ってなに?!」
「あ、君たちも座って座って」
ちょ、神様空気読んで! 空気!
でも俺たちが座ってて王子様たちが座ってないって言うのも気持ち的に嫌だからなー…。
てかオル! さりげなく腹に手を回して逃げられないようにするな!
更に背中に額を押し当ててぐりぐりするな! あと下腹部を撫でるな!
「嫌?」
「嫌じゃない! 寧ろ嬉しい!」
ああああ!
眉を下げて首を傾げられた「くーん」オルに勝てる訳ないだろ?!
可愛いなちくしょう!
好き!
「うんうん。君たちの仲がいいと私も幸せだよ~」
はっ!
そう言えば神様だけじゃなかったんだ!
やめやめ!
人前! 人前ですよ!
あと神様、ハンカチで目元を拭わないで!
なんかオルとのスキンシップを断り辛くなるから!
「さて、まずは改めて。私はこの世界を作った創造神、本人で~す」
急に真面目になったかと思いきや、きゃは☆と笑う神様の自己紹介に、王子様たちも信じるしかなくなったのか眉間にしわを寄せてるけど大人しい。
ていうか騎士の人、王子様の後ろに立ってないで座ればいいのに…。
「あの人はあれでいいんだよ」
「そうなの? でもなんか…」
「ショーマは優しいなぁ…。好きだよ」
ああ…甘い声と蕩ける笑顔。
キスしたいなーと思ったけど、今はダメダメ。
でも我慢できずにちゅっと額にキスをすると、ぶわっとオルの背後に花が咲いた。
すっごい喜んでる。
たまには額にキスするのもいいかも。
「オルもショーマも話、進めていいかい?」
「あっ、はい。大丈夫です、進めてください」
思わず敬語になっちゃったよ。
なんかそうしなきゃならない気がしてさ…。
うっわ。
オルの目がめっちゃキラキラしてる。
「ショーマのその話し方も新鮮でいい…」
「オ…じゃなかった勇者様、それはあとで、な?」
「じゃあ、いい子にしてる」
わふわふと背中に甘えるオルはこれでいいだろう。
…後が怖いけど。
そして生温かな視線が3つと、ふふと幸せそうな視線が1つ。
聖女は顔色を悪くして1人離れた場所に座ってる。
大丈夫かな?
「さて、まずは聖女の話からしようか」
その言葉にびくりと聖女の身体が大きく跳ねる。
うーん…まぁそうだよなぁ…
いきなり「君「おまけ」だから」なんて言われたらそうなるよな。
俺みたいに初めから「おまけ」扱いならそこまでショックを受けることもなかっただろうし。
「さっきも言ったけど、聖女はショーマのことだよ」
「それなんだが」
右手を小さく上げて発言の許可を貰う王子様。
なんか親近感湧く。
王子様っていきなり口を挟む人だと思てたけど違うんだね。
それともこの王子様だけがそうなのかな?
他の王族は出立のときに見ただけだから分んないなー。
聖女なら何か知ってるかもだけど、そんな雰囲気じゃないし。
それに頷いた神様を見て王子様が口を開く。
「男なのに聖女、とはどういうことなんだ?」
うん、それな。
俺もそう思った。
代わりに聞いてくれてサンキューな。
「うーん…今回は特別なんだよ」
「特別?」
「そ、聖女は女の子だけど、今回は逆なんだ」
「逆」
「そうそう。今回はオルがそのスキルを引き継いでるでしょ?」
「それだ。まずそれがおかしいんだ」
そういえば聖女スキルをオルが持ってたな。
探索系の“見える”スキル。
そのおかげで俺は森に入っても魔物や野盗に襲われなかった超便利スキル。
「だから言ったでしょ? 今回は『特別』なんだって」
「…………」
あらら。
王子様が黙っちゃった。
そう考えるとこの召喚が何もかもが本来とは違ったものだったんだな。
主に神様のせいで。
「そもそも聖女の元の設定…というかなんというかは?」
はーいはいーと右手を上げて発言すると「ショーマは可愛いなー」とオルがわふわふと背中に頭をぐりぐりと押し付けてくる。
可愛いのはオルだよ、なんて甘い空気を醸し出すと「んんっ」とわざとらしい咳払いが聞こえた。
それにはっとすると、騎士が睨んできた。
すまぬ。
オルが可愛かったから。
んでさっきの質問。
俺はこの世界の聖女が何たるかを知らないのだ。
そもそも聖女のことはオルの話を聞いただけで、オルも詳しいことを話してはくれなかったから何も知らないに等しい。
王宮の書物庫に行ってもそんなのはなかったし。
もしかしたらあったかもしれないけど、そうほいほい見れるものでもないだろう。
ってオルどうしたの。腕に力入れないで。
お腹の中身出ちゃうから。
苦しい、苦しい。ギブギブ。
「今までの聖女は【探索】と【癒し】それに【強化】のスキルを持っていて、かつ異世界から来た女の子。でもね、【癒し】はまだしも【探索】と【強化】は別のスキルでも賄えちゃうからね。実質【癒し】のスキル持ちじゃないと聖女、とはならないかな」
「なるほど。だから彼女を聖女だと認識したのか」
あー。
それは勘違いするわ。
今までがそうなら、今回もそうだと思うわな。
そんで、聖女があの時唖然としてた理由が分った。
強化した魔導士の魔法がオルの張ったであろう結界に阻まれたことに。
そして、聖女様ご一行と合流した時に心なしかぼろぼろだった理由が。
はえー本当に今回は色々特別なんだ。
「大体」
お?
オルどうした?
「聖女は勇者と対等であるために体力の強化がかかっているはずだろ? 森の中で俺についてこれたのはショーマだけだった。違うか?」
「ぐ…っ」
冷え冷えとしてますなー。オルさん。
でもそういうのが分ってたならオルの体力についてこれない時点で「おや?」と思うはずだけど、一応条件が揃っているのだから「聖女」だと疑わなかったんだろう。
なんせ俺がスキル持ってないんだから。
仮に俺が【癒し】のスキルを持っていたとしたら、その場合はどうなるんだろうな?
でも、勇者様が聖女スキルを持ってる時点で疑うべきだったんだ。
今回は何かがおかしい、と。
まぁそれは今だから言えるだけど。
ってちょっと待て。
それはそうと気になる言葉があるんだが…。
「今、勇者と対等であるために体力の強化がかかっているって言ったよな?」
「うん。聖女は勇者に力を与えるのが役目だからね。先にへばられたら困るだろ?」
にっこりと笑ってそう言うオルの笑顔が眩しい。
だがちょっと待ってほしい。
「体力が…強化されてるってまさか…」
「そうそう。オルが体力、絶倫お化けなのはショーマ、君も知ってるだろ?」
「ええ、まぁ…」
さっき王子様たちにバラしましたからね。オルが。
ああもうほらー!
うんざりした視線が痛いんだって!
「つまり。オルとのえっちについていけて、かつ翌日寝込まないのは体力強化がかかってるからだよ。やったね☆」
「神様ーっ!」
やめてやめてー!
そんな恥ずかしいことを人前で言わないでー!
それが分ってたから初めての時、あんなにがっついてきたのかよ!
めっちゃ気持ちよかったけど!
でも人様の前でそういうことを言うのはマナー違反だと思うんですよ!
神様!
ぎっと神様を睨めば「やだー☆子猫が毛を逆立てて睨んでるー☆」と身体をくねらせる。
くっそ! 腹立つな!
でも今、一番腹立つのは…。
勢いよく振り向きオルを見れば、へらりと笑っている。
く…っ!
俺は今怒ってるんだからな!
怒って…おこ…お…
もういい! 怒ってない!
その顔、可愛い!
無理!とぎゅうううと頭を抱きしめてやれば「ごめんねショーマ」と謝られた。
いい! もういい!
怒ってない!
でもね。
「先に言ってくれればよかった!」
「うん、ごめんね」
めっちゃ不安だったんだよ!
特に1日中えっちした翌日、聖女ご一行が来ても動けなかったらどうしようとか思ってた!
でもそんなことなくてびっくりしたけど!
そんな俺たちを王子様たちは放置して、お茶を飲んでいる。
きっと騎士の毒味が終わったんだろう。あ、焼き菓子食べてる。
この焼き菓子おいしそうだけど、今食べたら夕飯入らないよな?
どうしようー。
「さて、ここで相談なんだけど。君、お家に帰りたい?」
「え?」
俺が焼き菓子を食おうか食わないかで悩んでいたら話が進んで神様からのまさかの提案。
その言葉に俯いていた聖女が勢いよく顔をあげ、神様を信じられないような目で見つめている。
そうだよねぇ…。
帰れるとは思わないよね…。
俺もオルに「俺なら帰してあげられる」って言われた時はびっくりしたもんなー。
そもそも帰れるかどうか聞けなかったっていうのもあるんだよ。
パニックで脳みそが働かない状態で咄嗟にそういったことができることってすごいことだと俺は思う。
「どうする? 今なら帰れるよ?」
傷心の聖女にとってこの言葉はきっとどんな慰めの言葉よりも嬉しいものだろう。
瞳の中の輝きが大きくなり、がたんと椅子を倒して立ち上がる。
「かえ…帰りたいです…っ!」
その言葉に満足したのか、神様はにっこりと笑った。
確かにどこかで会ったような気はしたけどさ…。
銀の髪に赤い瞳の人なんて日本で会ったら忘れないだろう。
むしろコスプレイヤーか?と思うかもしれない。
けど。
俺は、この人を知らない。
「まぁ君が知らないのは無理もない。私が一方的に知っているだけだからね」
ふふっと笑うその人に、警戒を示したのは王子様たちである。
当然だ。
歪んだ空間から人が出てくるなんてありえないのだから。
いや、この世界ならあるのかもしれないが、王子様たちの反応からそれもないと分る。
え、ちょっと待って。
マジでこの人何者だ?
すると俺たちに向かって歩いてくるその人に、びくりと肩を跳ねさせれば「ショーマが怖がってる」と今度は勇者様が威嚇する。
「いやー、大きくなったね」
「へ?」
「君を見かけた時はまだ豆粒だったのに」
そう言いながらぐりぐりと頭を撫でられる。
豆粒?
そりゃ俺は背だって小さいけど豆粒はないよ…。
「おばさん、言葉が足りないって言われない?」
「ああ。すまないね。何千年も生きてるとつい昨日みたいな感覚だからさ」
あっはっはっ、と笑うその人は急に笑うのをやめると赤い瞳を細めた。
「よく来てくれたね。オルの花嫁。首を長くして待ってたよ」
「んんん?!」
ちょと待て!
何言ってんだ?! この人?!
そもそも誰なの?!
「ああ、紹介するのが遅れたね。ショーマ、このおばさんがこの世界の神様」
「へぁ?!」
なんかすごい情報来た!
つかこの人が神様ってどういうこと?!
「ショーマの頭がパンクしてるねー。いやー、可愛い」
「ショーマは俺の嫁だ。いくらおばさんでもあげないよ?」
「分ってるよ。それが君への贈り物だもの」
はい。ここで情報を整理しようか。
勇者様曰く、この女性はこの世界の神様。
女性、といっても人の形になってるだけだから実際はどっちでもないらしい。
もうこの時点でよく分からんが、そういうことなんだろう。
歪んだ空間から出てきたことでそう理解するしかない。
んで、俺がオルの花嫁発言。
この人が神様だからこの世界のことを全て知っている、とすれば理解できる。
でも、気になるのは「待ってたよ」と言っていたこと。
その言い方じゃあまるで俺がこの世界に来ることを知っていたみたいじゃないか。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「おお。意外と復活が早いな。何か質問かな?」
さぁこい!と言わんばかりの神様に俺は本当に聞いていいのか分らなくなる。
その躊躇いを感じた勇者様が「まずは」と戦闘態勢を解かない王子様に水を向けた。
するとすぐに王子様が口を開いた。
「貴様が魔王だったか!」
勢いよくそう噛み付く王子様に、神様は「魔王? ああ!そうそう!」と手をぽんと合わせると王子様たちの方へと向き直る。
「実はさー。魔王候補の子をここに呼んだんだけどさー。スローライフを送りたいって言われてさー」
「は?」
「振られちゃったんだよね」
てへ☆とウインクをしながら舌を出す神様に、ぽかんとする俺。
逆に怒りを露わにした王子様たち。
「そんなことあるわけないだろう! どうせ貴様が…!」
「アドバイスすると、この人本物だからね。あんまり怒らせない方がいいよ?」
激昂する王子様に勇者様が口を挟めば、再び睨みつけてくる。
まぁ分らんでもない。
いきなり現れて「この人神様だから」なんて言われて信じられるかと言えば…。
まぁ普通に胡散臭いわな…。
俺は何となくこの人はなぜか本物だとは思っているけど。
「この国は神様信仰じゃなくて、聖女信仰だからね」
「ああ。なるほど」
神様に噛み付いてる王子様を見ていると、オルがこっそり耳打ちして教えてくれる。
まぁ聖女伝説なんてものがあるくらいだからな。
ってことは他の国は神様信仰なのかな?
それよりちょっと気になる言葉があるんだよね。
「というか、魔王候補生って何ですか?」
「ん? いやー…前封印された魔王がさー封印の間何もすることがないから辞めたいっていってきてさ…。そりゃ100年以上も何もやることないなら飽きるよね」
ええー。
魔王って申告すれば辞めれるのー?
てか神様に雇われてるのー?
「そんでさ、100年分の報酬払って承認したのさ。まぁ彼の報酬は異世界転生だったわけだけど」
あははーと笑う神様に、俺は何となく「分かる」と頷き、王子様たちは怒りを通り越して唖然としている。
たぶん魔王が異世界に行ったことが信じられないんだろう。
俺だったら「嘘だッ!」って言うかもしれない。
「で、いなくなった魔王の代わりにショーマ、君の世界から魔王候補生としてこの世界に転生させたんだけど、病弱で入退院繰り返してたから身体を動かしたいって言われたら断れないじゃない?」
にゃはーと笑う神様に、力が抜ける。
しかし、信じられないのか、信じたくないのか王子様が神様に更に噛み付く。
「では魔王城が現れたというのは…?!」
「ん? その候補生のためのものだったけど、いらなくなっちゃったから消しちゃった☆」
再びてへ☆と舌を出す神様にがくりと膝を付く王子様。
あー…まぁそうだよね…。
目的がそもそも魔王封印だからね…。
魔王がいないならこの旅も完全に無駄になっちゃったからね…。
なんか可哀相になってきた。
「すまない…聖女。せっかくこちらの世界に来ていただいたのに…」
それでもすっと立ち上がり、聖女の方へと向くと沈痛な面持ちでそう告げる。
おお。さすが王子様。
ちょとカッコイイぞ。
オルには負けるけど。
「聖女?」
それに食い付いたのは神様だ。
「え? その子が聖女なの?」
「ああ。そうだ」
「ホントに? マジで言ってる?」
「当たり前だろう! 冗談ではない!」
神様の言葉に、王子様が語尾を強くしてそう言えば神様の肩が震えはじめる。
そして…。
「あっ、はっ、あはははははっ!!!!!」
「な、なにがおかしい!」
急に大声で笑い始める神様。
それに俺もぎょっとすると「あの人の笑いのツボがよく分らないんだよ」とオルが教えてくれた。
とてもいらない情報だけど、ありがたくもらっておこう。
ついに腹を抱えて笑い出した神様に若干引いてなくもない魔導士。
騎士はなんとか耐えたみたい。さすがだ。
ひーひーと肩を大きく震わせ、涙を拭う神様が「ふっふふ…聖女…ふひっ」と何か聞いちゃいけない声を聞いてどうしたらいのか勇者様に視線を送れば、ふるふると首を振られた。
落ち着くのを待つしかないらしいが、それは直ぐに訪れた。
「そう言えば君たち、ショーマのことを聖女のおまけって呼んでたよね?」
「はい?」
「なら。おまけはそっち」
「え?」
はい?
どういうこと?!
てか分んないことが多すぎるよー!
ほら、王子様たちもどういうこと?って顔してんじゃんー!
「話が長くなりそうだからとりあえずお茶しない? ちょうどいい場所があるから」
そう言って、ぱちんと指を神様が鳴らすと次の瞬間には部屋の中に全員いた。
神様が言っていた「お茶」もしっかりと準備されていて俺はきょろきょろと部屋の中を見渡す。
部屋はヨーロッパのリビング的な感じだな。うん。
決して説明がめんどくさいとかじゃないからな。
違うぞ?
あ、でもドアはないから、出られないね。
出る時は神様の気分次第なのかな?
ある意味閉じ込められてるよね。
「じゃあ、俺たちはこっちね。ショーマ」
「え、あ、うん」
そんなことを考えていると、オルが首から腕を解き手を繋ぐ。
あ、指絡められてる。
所謂恋人つなぎというものだ。
さらっとこういうことするオルすごい。
そしてそのままソファーへと向かう。
ちょっと首元が寒いだなんて思わないぞ。
…思わないからな。
てか今まですっかり忘れてたけどそうだった。
勇者様が俺の背中から抱き締めてたんだった。
人前でいちゃいちゃしちゃたよー。
恥ずかしいよー。
そんなことを一人考えていたらオルが座った膝の上へと自然に乗せられた。
ん?
「おい!」
「どうしたの? もう花嫁だって分ってるんだし、いいじゃない」
「いやいや!待って?! そもそも花嫁ってなに?!」
「あ、君たちも座って座って」
ちょ、神様空気読んで! 空気!
でも俺たちが座ってて王子様たちが座ってないって言うのも気持ち的に嫌だからなー…。
てかオル! さりげなく腹に手を回して逃げられないようにするな!
更に背中に額を押し当ててぐりぐりするな! あと下腹部を撫でるな!
「嫌?」
「嫌じゃない! 寧ろ嬉しい!」
ああああ!
眉を下げて首を傾げられた「くーん」オルに勝てる訳ないだろ?!
可愛いなちくしょう!
好き!
「うんうん。君たちの仲がいいと私も幸せだよ~」
はっ!
そう言えば神様だけじゃなかったんだ!
やめやめ!
人前! 人前ですよ!
あと神様、ハンカチで目元を拭わないで!
なんかオルとのスキンシップを断り辛くなるから!
「さて、まずは改めて。私はこの世界を作った創造神、本人で~す」
急に真面目になったかと思いきや、きゃは☆と笑う神様の自己紹介に、王子様たちも信じるしかなくなったのか眉間にしわを寄せてるけど大人しい。
ていうか騎士の人、王子様の後ろに立ってないで座ればいいのに…。
「あの人はあれでいいんだよ」
「そうなの? でもなんか…」
「ショーマは優しいなぁ…。好きだよ」
ああ…甘い声と蕩ける笑顔。
キスしたいなーと思ったけど、今はダメダメ。
でも我慢できずにちゅっと額にキスをすると、ぶわっとオルの背後に花が咲いた。
すっごい喜んでる。
たまには額にキスするのもいいかも。
「オルもショーマも話、進めていいかい?」
「あっ、はい。大丈夫です、進めてください」
思わず敬語になっちゃったよ。
なんかそうしなきゃならない気がしてさ…。
うっわ。
オルの目がめっちゃキラキラしてる。
「ショーマのその話し方も新鮮でいい…」
「オ…じゃなかった勇者様、それはあとで、な?」
「じゃあ、いい子にしてる」
わふわふと背中に甘えるオルはこれでいいだろう。
…後が怖いけど。
そして生温かな視線が3つと、ふふと幸せそうな視線が1つ。
聖女は顔色を悪くして1人離れた場所に座ってる。
大丈夫かな?
「さて、まずは聖女の話からしようか」
その言葉にびくりと聖女の身体が大きく跳ねる。
うーん…まぁそうだよなぁ…
いきなり「君「おまけ」だから」なんて言われたらそうなるよな。
俺みたいに初めから「おまけ」扱いならそこまでショックを受けることもなかっただろうし。
「さっきも言ったけど、聖女はショーマのことだよ」
「それなんだが」
右手を小さく上げて発言の許可を貰う王子様。
なんか親近感湧く。
王子様っていきなり口を挟む人だと思てたけど違うんだね。
それともこの王子様だけがそうなのかな?
他の王族は出立のときに見ただけだから分んないなー。
聖女なら何か知ってるかもだけど、そんな雰囲気じゃないし。
それに頷いた神様を見て王子様が口を開く。
「男なのに聖女、とはどういうことなんだ?」
うん、それな。
俺もそう思った。
代わりに聞いてくれてサンキューな。
「うーん…今回は特別なんだよ」
「特別?」
「そ、聖女は女の子だけど、今回は逆なんだ」
「逆」
「そうそう。今回はオルがそのスキルを引き継いでるでしょ?」
「それだ。まずそれがおかしいんだ」
そういえば聖女スキルをオルが持ってたな。
探索系の“見える”スキル。
そのおかげで俺は森に入っても魔物や野盗に襲われなかった超便利スキル。
「だから言ったでしょ? 今回は『特別』なんだって」
「…………」
あらら。
王子様が黙っちゃった。
そう考えるとこの召喚が何もかもが本来とは違ったものだったんだな。
主に神様のせいで。
「そもそも聖女の元の設定…というかなんというかは?」
はーいはいーと右手を上げて発言すると「ショーマは可愛いなー」とオルがわふわふと背中に頭をぐりぐりと押し付けてくる。
可愛いのはオルだよ、なんて甘い空気を醸し出すと「んんっ」とわざとらしい咳払いが聞こえた。
それにはっとすると、騎士が睨んできた。
すまぬ。
オルが可愛かったから。
んでさっきの質問。
俺はこの世界の聖女が何たるかを知らないのだ。
そもそも聖女のことはオルの話を聞いただけで、オルも詳しいことを話してはくれなかったから何も知らないに等しい。
王宮の書物庫に行ってもそんなのはなかったし。
もしかしたらあったかもしれないけど、そうほいほい見れるものでもないだろう。
ってオルどうしたの。腕に力入れないで。
お腹の中身出ちゃうから。
苦しい、苦しい。ギブギブ。
「今までの聖女は【探索】と【癒し】それに【強化】のスキルを持っていて、かつ異世界から来た女の子。でもね、【癒し】はまだしも【探索】と【強化】は別のスキルでも賄えちゃうからね。実質【癒し】のスキル持ちじゃないと聖女、とはならないかな」
「なるほど。だから彼女を聖女だと認識したのか」
あー。
それは勘違いするわ。
今までがそうなら、今回もそうだと思うわな。
そんで、聖女があの時唖然としてた理由が分った。
強化した魔導士の魔法がオルの張ったであろう結界に阻まれたことに。
そして、聖女様ご一行と合流した時に心なしかぼろぼろだった理由が。
はえー本当に今回は色々特別なんだ。
「大体」
お?
オルどうした?
「聖女は勇者と対等であるために体力の強化がかかっているはずだろ? 森の中で俺についてこれたのはショーマだけだった。違うか?」
「ぐ…っ」
冷え冷えとしてますなー。オルさん。
でもそういうのが分ってたならオルの体力についてこれない時点で「おや?」と思うはずだけど、一応条件が揃っているのだから「聖女」だと疑わなかったんだろう。
なんせ俺がスキル持ってないんだから。
仮に俺が【癒し】のスキルを持っていたとしたら、その場合はどうなるんだろうな?
でも、勇者様が聖女スキルを持ってる時点で疑うべきだったんだ。
今回は何かがおかしい、と。
まぁそれは今だから言えるだけど。
ってちょっと待て。
それはそうと気になる言葉があるんだが…。
「今、勇者と対等であるために体力の強化がかかっているって言ったよな?」
「うん。聖女は勇者に力を与えるのが役目だからね。先にへばられたら困るだろ?」
にっこりと笑ってそう言うオルの笑顔が眩しい。
だがちょっと待ってほしい。
「体力が…強化されてるってまさか…」
「そうそう。オルが体力、絶倫お化けなのはショーマ、君も知ってるだろ?」
「ええ、まぁ…」
さっき王子様たちにバラしましたからね。オルが。
ああもうほらー!
うんざりした視線が痛いんだって!
「つまり。オルとのえっちについていけて、かつ翌日寝込まないのは体力強化がかかってるからだよ。やったね☆」
「神様ーっ!」
やめてやめてー!
そんな恥ずかしいことを人前で言わないでー!
それが分ってたから初めての時、あんなにがっついてきたのかよ!
めっちゃ気持ちよかったけど!
でも人様の前でそういうことを言うのはマナー違反だと思うんですよ!
神様!
ぎっと神様を睨めば「やだー☆子猫が毛を逆立てて睨んでるー☆」と身体をくねらせる。
くっそ! 腹立つな!
でも今、一番腹立つのは…。
勢いよく振り向きオルを見れば、へらりと笑っている。
く…っ!
俺は今怒ってるんだからな!
怒って…おこ…お…
もういい! 怒ってない!
その顔、可愛い!
無理!とぎゅうううと頭を抱きしめてやれば「ごめんねショーマ」と謝られた。
いい! もういい!
怒ってない!
でもね。
「先に言ってくれればよかった!」
「うん、ごめんね」
めっちゃ不安だったんだよ!
特に1日中えっちした翌日、聖女ご一行が来ても動けなかったらどうしようとか思ってた!
でもそんなことなくてびっくりしたけど!
そんな俺たちを王子様たちは放置して、お茶を飲んでいる。
きっと騎士の毒味が終わったんだろう。あ、焼き菓子食べてる。
この焼き菓子おいしそうだけど、今食べたら夕飯入らないよな?
どうしようー。
「さて、ここで相談なんだけど。君、お家に帰りたい?」
「え?」
俺が焼き菓子を食おうか食わないかで悩んでいたら話が進んで神様からのまさかの提案。
その言葉に俯いていた聖女が勢いよく顔をあげ、神様を信じられないような目で見つめている。
そうだよねぇ…。
帰れるとは思わないよね…。
俺もオルに「俺なら帰してあげられる」って言われた時はびっくりしたもんなー。
そもそも帰れるかどうか聞けなかったっていうのもあるんだよ。
パニックで脳みそが働かない状態で咄嗟にそういったことができることってすごいことだと俺は思う。
「どうする? 今なら帰れるよ?」
傷心の聖女にとってこの言葉はきっとどんな慰めの言葉よりも嬉しいものだろう。
瞳の中の輝きが大きくなり、がたんと椅子を倒して立ち上がる。
「かえ…帰りたいです…っ!」
その言葉に満足したのか、神様はにっこりと笑った。
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