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カマルリア編
もっと君に幸あれ!
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「レイジス、大丈夫かい?」
「はいー…大丈夫ですよー…」
けほっと軽く咳き込めば「はいどうぞ」とお水が入ったコップを渡してくれるフリードリヒ。それを受け取ってこくこくと飲めば、喉が潤った。むっはー!
空になったコップをするりと抜き取られ、濡れた唇にちゅっとキスをされるとそのままぺろりと舐められる。はわ!
それに驚いてお口を開ければ、舌が侵入してきて潤ったお口の中を舐めまわされる。頬の内側を舐められると気持ちいんだー。
とろりと瞳を蕩かせれば、お口の中を隅々まで舐められて。ふうふうと鼻で呼吸するけどちょっと足りないのか、頭がくらくらとしてくる。
すると舌がお口の中から抜け出ていく。
溜まった唾液はこくんと飲んで、はぁはぁと肩で呼吸をすれば「ごめんね。可愛くて」と甘い甘い声で囁かれながらほっぺやこめかみ、そしてお耳にキスをされる。
ふわわ。気持ちいー。
「レイジス。もう一度、いい?」
さっきまでの甘い声とは違い、低い声でそっと囁かれるとぞくぞくしちゃう。
それに。
あららー…。元気になっちゃったー…。
どうも僕はフリードリヒの低い声に弱いらしい。その声を聴くだけでその…気持ちよくなっちゃうんだよ…。
どうしてこうなったんだろう?って考えても分からない。
ただ本当にフリードリヒの声が好きなだけなのかもしれない。
「だめ?」
「―――…ッ!」
今度は甘えるような声と共に、かぷりって耳たぶを甘噛みされる。
ああー!もうー!
よっ!元気ね!って僕の僕が元気になってる。ああー…断るなんて無理ぃー…!
ぎゅうと抱きしめてよいせ、と治癒魔法をフリードリヒに使えば、それを了承と取ったフリードリヒが圧し掛かる。
おわわ!
ギッってベッドが鳴るのがなんか恥ずかしい。
いや、さっきまで恥ずかしいことしてたんだけどね?!
というかえっちなことがしたくて…いや、したかったんだけど、ソルさんから「濃い魔力を手っ取り早く取るなら交尾が一番早いだろう」とさらりと言われ…。
そこで「あっ!」って全員気付いた。
そう。フリードリヒとエッチした翌日、僕は属性過多で体調を崩しちゃったんだよね。
けれど属性が不安定な今どんな属性でも、どんとこい状態なのだ。むしろもっとくださいお願いします状態。
それにフリードリヒの魔力の流れを良く分かっている。
アルシュもノアもリーシャもソルゾ先生もハーミット先生も分かるんだけど、やっぱり一番わかってるのはフリードリヒなわけで。
さらに言えば、僕に魔力…闇属性が溜まれば溜まるほどマーハ君の魔力も回復する、ということらしい。魔力の繋がりってこんなこともできるんだねーって笑ったけど「普通はできませんからね」とソルゾ先生がにっこりと笑って教えてくれた。
え? そうなの?
「レイジス様と一緒にいるから麻痺してますが、普通はできないことを普通にやっちゃってますからね?」
「あ、なんかごめんなさい」
うふふと笑うソルゾ先生はどこか遠い目をしていて。
「フリードリヒとうさぎが交尾をすれば魔力も属性も得られるんだ。便利ではないか」
「交尾を便利っていう人、初めて見た」
「我は聖獣ぞ?」
「ふはっ」
ソルさんの貴重なツッコミをもらってその日から一日一回えっちをすれば、魔力も属性も補えるって言われたんだけど…。
僕らまだ十代ぞ? それにそういうお年頃ぞ?
一回で済むわけが当然なくて。
昨日もその…したんだけど身体が透けることが少なくなったような気がする。気がするだけでまだまだ身体はいきなり透ける。これはもうしょうがない。魔力が馴染むまでの我慢。
それと属性だけど、僕の場合は混合魔法の氷と雷があるから余計に属性が必要になるみたい。フリードリヒが闇属性に特化してるけど、残りの風魔法は僕自身が使うことで強化できるらしい。
便利。
けど魔法を使うとなくなるのが魔力だから結局また透ける。という悪循環。
だから風属性をリーシャとソルゾ先生、それにノアからももらってる。アルシュからももちろんもらってるよ!
それに時々ギリクさんがふらっと来ては風属性を与えて、ご飯を食べて戻っていく。
それはガラムヘルツ殿下もルシミアルさんもシュルスタイン皇子も同じで、ふらっと来ては戻っていく。
まさにあなたは何しに学園へ?状態。
いや、僕に属性魔力をくれるために来てるんだけれども。
そしてギリクさんと同じようにご飯を食べて戻る。あ、おやつも持って行ってもらうんだ!
それと侍女さんの貸し出し?をしてるんだ。これは陛下にもちろん許可をもらってる。
つまりは僕の小さな小さな悪が世界規模へと発展したのだ! むふん!
味覚破壊をされた人はもう薄味には戻れないだろうし。
むっふっふ。
でも病人は食べさせないでね?って口酸っぱく言ってある。胃腸が弱い人にもね。後は食べてお腹壊す人もいるから様子を見ながらたべさせてねとも言ってある。
あとアレルギーね。
食物アレルギーはこわわだから。生魚に至っては『浄化の魔石』を各国に渡してあるからこれを使ってもらうことにしてる。これを作るために結構魔力を使った日には上半身が透けるという訳の分からないことになって大変だった。
だって下半身はあるんだよ? こわわーじゃない?
その状態で学園長先生に会いに行ったら、兵士さんが悲鳴を上げた。トラウマになってなければいいけど…。
上半身がないからバランスが取れなくて困ってたんだけど、フリードリヒに横抱きにして連れて行ってもらった。ちなみにその時、学園長先生とグラナージさんには盛大に吹き出されて、メトル君には叫ばれヴァルジスク君には「また器用なことを…」と呆れられて。
そんなこんながあって僕らのえっちは快楽や愛し合う行為、というよりは僕の魔力回復のためになってる。
いや僕もフリードリヒ以外とえっちしろっていわれたら全力で拒否るけどね。ヴァルジスク君と属性のためにえっちはできない。
そこに確かに『好き』があるからできるわけで。
「あ…ぁんん! …ァあ!」
「可愛い」
と回想してる間にフリードリヒがまだ柔らかいそこに入り込んでて。さっきもしたばっかだからすんなりと飲み込んで、どくどくしてるのが感じ取れる。
気持ちいい。
動いてないけど、僕の中にフリードリヒがいるって感じるだけで気持ちがいい。何度も中に吐き出された液は魔力として取り込まれてるから、お腹がいっぱいにはならないのがちょっと寂しい。でもそれのおかげで子供はできないんだって。
なんせ液が魔力になっちゃうんだから。その点は安心…かな?
あとね…。やっぱりフリードリヒのっておっきいと思うんだ。僕はほら…子供体型だから小っちゃくてさ…。男としては悲しいんだけど、フリードリヒはにこにこしながら「レイジスは小さい方が可愛いから私は嬉しいけどね」っていうんだ。だから小さいことに関しては悲しみはない。
「レイジスの中、すごくうねって…すぐにでもイきそう」
「ふぎゅん!」
ああ!ダメですダメです! そんな声でそんなこと言われたら…!
「ふふっ。きゅうって締まった」
「そ、そんなこと言わないでくだしあー!」
恥ずかしくてお顔を隠したいのに、フリードリヒのおててが僕の手を握って押し付けてるから動かせない。ううう。恥ずかしいー!
「レイジスは何をしても可愛いね」
「ぷぎゅう!」
「ふふっ。真っ赤になった」
「意地悪言わないでくだし…っぁ?!」
うわぁん!と泣きそうになる前に、僕の中にあったものがずるりと引き抜かれる。その感覚にぞわぞわー。
「ひ! ああ、ァあ…っ!」
「んっ。レイジスは泣いても可愛いけど…ッ!」
「んん! あぁ…! ァ…ッ!」
ずん、と熱いものが打ち込まれ、お口を開ければ一緒に舌も飛び出して。
その舌を掬い取られて唇を塞がれる。ということは呼吸も塞がれるわけで。
「ん…っん…っ! ッ…ん…!」
「ふっ、レイジス…、可愛い」
「んぐ…ッ! んむ…ぅ!」
角度を変えながら何度もキスを交わして、舌を絡め唾液を飲み込む。その間も抽挿をされているから、がくがくと揺さぶられ続ける。
僕とフリードリヒの身長差は約30cm。結構あるんだよー。だから。
「や…ッ! ああ!」
「ごめん。レイジスの中が気持ちよすぎて」
ぐっとフリードリヒが前のめりになると、当然ながら僕のおしりが浮くわけで。あれ? これってまずずーな…?
「ああァ…! ッ! ん…っむ…! ぅ…!」
「もう少し…頑張って…ッ!」
上から突き入れるような体勢…いわゆるこれって種付けプレスってやつだよね?!
おっふ。ちょっと苦しいー!
けどもっと苦しいのは…。
「ダメ…! これ以上入れたら…っ!」
「ごめんね。レイジス…!」
「あ…ッ!」
僕の静止など意味がなく、ぐっぽりと奥の奥まで入り込んだフリードリヒのもの。だけど僕はそれどころじゃなくて…。
これ…やばば…ッ!
「んーッ! あぁ…! やああぁ!」
つま先をきゅうぅぅっと丸めて、シーツに爪を立てる。
やばいやばいやばい! ずっとイってる…! 身体…おかしくなりそう…!
「レイジス…ずっとイってるね」
「あ…ぁッ! …ッッ! んんんっ!」
ちゅちゅと顔にキスをしてくれるけどそれ以上の気持ちよさに頭が真っ白になる。
開けっ放しのお口から舌が出てるけどもうそんなこと気にならない。わんちゃんみたいにはっはっと浅く呼吸を繰り返すだけ。
むり。これ、むり。からだもあたまもおかしくなる。
「動くよ?」
「まっへ…ま…ッ! あ…っあ…! ぁ…っ! ァ!」
にこりと笑うそのパンジー色の瞳には欲が色濃く浮かんで。獣に似たフリードリヒを止めることなんてできなくて。
フリードリヒが腰を抽挿するたびに、ベッドもギッギッと鳴いて、その音に交じってパンパンという音と水の音。
それに僕とフリードリヒの呼吸が混ざって。カーテンをしてあるから安心だけど、逆に性の空気が漂っているわけで。
「あ…っッ! あ! ぁ…ァ…! アァッ!」
「ん…、レイジス、きもちい?」
耳元でそう囁かれるけど、頭がうまく働かない。それに与えられる快感が強すぎて消化しきれない。フリードリヒの動きに合わせて、僕のもぴゅるぴゅると何度も吐き出し続けた結果何も出なくなっちゃった。
でも絶頂は絶えず来るからもう本当に訳が分からなくなって、ただ気持ちよさを感じてるだけ。
「レイジス」
「あ…っ! ッあ…! あァ…ッ! アア!」
どちゅりと奥の奥を強制的に開かされ、背中を反らせる。
だめ…! もう…!
ちかちかとお星さまが目の前を飛んで、魔力がお腹の中でぐるぐると渦巻いてる。
気持ち悪いけどそれが気持ちいい。
「奥にあげるから、ね?」
フリードリヒの言葉をよく理解せず、こくこくと頷けば「ああ! 可愛いな!」と手を外されぎゅうと抱きしめられる。そしてふわりと感じるフリードリヒの汗のにおい。
「らめ…! もうでない…!」
その匂いだけで腰を震わせると、抱きしめられたまま抽挿が続く。
けど。それが急に止まり、ずるると中身まで抜かれるんじゃないかってくらいに引き抜かれる感覚に恐怖すら覚える。今まであったものがなくなって、お腹が寂しい寂しいって僕に訴えてくるけどどうすることもできなくて。
「ふり…どり、ひぃ!」
「うん。寂しいね。だから寂しくないようにいっぱい出してあげるから、ね?」
「かはっ!」
「ね?」という言葉の後で、再び奥の奥に入ってきたフリードリヒのそれ。その感覚に僕は膝と腰を震えさせ、絶頂する。
けれど。
「でてる…! でてるぅ!」
「ん、っく…!」
びゅるびゅると吹き出されるものが奥にあたって気持ちがいい。けれど同時に怖くなって。ぎゅうとフリードリヒに抱きつけば、頭を撫でてくれる。そして長い射精が終われば、頭にたくさんキスをされた。
しばらく繋がったままいたけど、このままだと僕の受け入れてるところが開いたままになっちゃうかもって泣きつくと、抜いてくれた。
けど、くっついたまま。
汗のにおいと主に僕が吐き出したものの匂いが混ざっている空気を換えたいけど、だるくて…いや、むしろ元気いっぱいになってる。
魔力を注いでくれるから体力が回復しちゃうんだよ。
だから僕よりもフリードリヒの方がお疲れ。
どさりと僕の上にフリードリヒが降ってきて、ぐったりとする。その背中を撫でれば「ありがとう」とお礼を言われちゃう。
うふふ。どういたしまして。
「やっぱり私の精液は魔力に変換されちゃうんだね」
「そうですね…。でも僕の魔力と混ざってるのが分かるので嬉しいですよ?」
むふーと笑いながらそう言えば「レイジスはまたそういうことを…」とフリードリヒがぎゅうってする。うん?
「残念だけどもう私も限界だ」
「治癒魔法で疲れを取ってからお風呂、入りましょう?」
「そうだね」
その間に恥ずかしい跡を侍女さんが綺麗にしてくれる。恥ずかしいんだけどね! でもお片付けをしてくれる侍女さん達はなぜかとっても嬉しそうで。
だから何も言えなくて。
「さて、お風呂に入ろうか」
「あい!」
ぎゅうっと抱きついてうふふと笑えば、お耳にキスをされた。
「レイジス! 魔力食べたい!」
「はいはーい。どうぞー」
こうやってマーハ君が突撃してくるのは慣れた。「なんで毎日食べに来るかな?!」て思わず言ったら「毎日交尾するんだから問題ないでしょ?」ってにっこりと笑って言われて何も言えなくなっちゃったよね。
でも、僕もまだ魔力が必要なんだけどなー…。
そう思いながらちらっとマーハ君を見れば、やっぱり色っぽくて…。それを見てえろ可愛いから「ま、いっか」ってなるよね!
「んむー! やっぱりフリードリヒとレイジスの魔力が混ざったところはおいしいねー」
「そういうこと言うのやめてよー!」
恥ずかしいんだからー!
「そういうな。マーハもそろそろ子をなせるところまできたんだ」
「ふぁっ?!」
もぐもぐと朝ご飯を食べてるソルさんの言葉に驚けば「なんだ?」という顔で僕を見る。いやいやいや?!
「え? マーハく…子供?!」
「そだよー。レイジスがくれたんだよー」
「ふぁふぁ?!」
にっこりと笑うマーハ君。
え?! いつ?!
記憶にございませんという表情を向ければ、ソルさんが呆れたように肩を竦めた。
「マーハに『神の目』が宿ったのと同じだ」
「あじゃぱー!」
じゃあ、あの時僕の『子供が生める』っていうのがついちゃったのかー。ぽかんとお口を開けていると、やっぱりフリードリヒが下あごをそっと持ち上げてくれた。
ありがとうございます!
「これで我にも『カゾク』というものが持てる」
「あ…」
そっか。聖獣さんって基本一人だもんね。寂しいよね…。
しょぼと他の聖獣さんを思うと寂しさがこみ上げる。ソルさんはマーハ君がいるからいいけど。
「他のやつらはあれでも結構一人で楽しんでるから問題ないだろう」
「そうなんだ?」
なら問題ない?と、こくんと首を傾げれば「そうだ」と言ってサラダを食べる。
「そういえばあのフードの者たちですが」
ソルゾ先生がそう切り出すと、お口にパンを押し当ててくるフリードリヒ。それをもぎゅんと食べると、お口をむっむっと動かす。
「あいつらは元教会の上層部でした」
「んぐ。上層部?」
「ああ。そういえばアレクトスが教会の偉い人が変わってから、孤児院も綺麗になったっていってたね」
「うーんむ。なんかさらっと聞き流しちゃってたけど結構重要な話だったんだね」
「今までは泳がしていた為、各国が何も言えなかったようですが」
「旧神信者を一掃するため、か」
っていうかさ。
「なんで学園長先生とグラン先生は頑なに戻らないんだろう?」
「と、申されますと?」
「グラン先生…グラナージさんが戻ったのなら、聖女信仰をしなくても大丈夫なんでしょ?」
「それはな…」
僕の質問にソルさんが少々言いにくそうに視線をそらした。うん?
「主たちはその…面倒になった、と」
「はい?」
ソルさんの言葉に首を傾げる。
「信仰されるのが面倒だ、とのことだ」
「…信仰されるのに面倒とかあるんだ」
「何かを祈られたらそうしなければならない、とメーカネー様が思い込んでしまってな。それでダメ出しをグラナージ様が出すと喧嘩になるから面倒になった、と」
「はぁ…」
何とも言えない空気に曖昧にそう答えれば、ソルさんも「そういうわけだ」と少々いたたまれなくなってる。
うん。お疲れ様、ソルさん。
「それに230年ぶりに再会なされたのだ。喧嘩もしたくないだろうしな」
「そう、だね」
ソルさんとマーハ君も長い間離れてたもんね。なら、しばらくは2人でのんびりしてもらいたいねー。
むふりと笑えば「はい、スープ」とフリードリヒにスープを飲ませてもらう。ちょうどいい温さで僕にっこり。
そうそう。フリードリヒが僕に食べさせてくれる時、ものすごくちょうどいい温度になるのは闇属性が関係してるんだって。闇属性はものを冷やすのに優れてるから、フリードリヒがふーふーしてくれるとすぐに冷めるんだ!
だから僕にとっては本当に助かる! あちあちはあんまり食べられないから…。
「はい」
「はぎゅん!」
あつあつのチーズオムレツを食べさせてもらう。とろとろたまごに、とろとろチーズうままー。うっとりとしながら食べると、今度はそれをパンの上に乗せてくれる。
サラダの上にチーズオムレツ! 絶対美味しいー!
「はいどうぞ」
「わーい!」
まぎゅん!とそれに齧りついてむふむふしてると、フリードリヒも僕が齧りついたそれを齧る。ほわわ!
「うん。おいしい」
「殿下。お口周りが」
「おっと」
そういうフリードリヒに、僕はにまりと笑う。
「フリードリヒ殿下」
「うん?」
何だい?というフリードリヒのお口に付いたものを、ぺろりと舐め取る。
むふー。してやったりと笑えば、フリードリヒが顔を真っ赤にする。
「レイジス!」
「にゃはー!」
いつもしてもらうから、お返ししただけだよー!
ふんふんと息を吐けば、後ろから抱きしめられて。
「後で覚えておいてね?」
「はぎゅう!」
お耳にそう囁かれると、へにゃりと力が抜けて。
「いい?」
低く呟くようなその言葉に、ぷしゅうと頭から煙を出せば。
「レイジス?!」
「ちょ?! なにしたんですか!」
「何もしてないぞ?!」
「レイジス様?!」
フリードリヒとアルシュ、それに侍女さんの焦った声が聞こえてきたかと思ったらそのまま抱きかかえられてベッドへと運ばれる。
そして。
「レイジス! 大丈夫かい?!」
「あい…大丈夫ですー」
「医者! お医者様をー!」
わーわーと騒がしい寝室に初めて目覚めた時とは正反対だなーとくふふと笑う。
色んなことがあったけど、やっぱりここが僕の始まりの場所だと思う。そして悪に目覚めた場所。
全ての始まりはこの場所で。
寂しい始まりだったけど、今は騒がしいのが嬉しくて。
ああ、幸せだなって思う。
そうだ。このゲームのタイトルの願い通りになったね!
『君に幸あれ!』
このタイトルをつけてくれたあの人には感謝しかなくて。
「レイジス! お医者様が来てくれたよ!」
そう言って引っ張ってきた先生はやっぱりぜーぜーと息を切らしていて。
それに「ぷはっ」と笑えば「どうしたんだい?」とフリードリヒが前髪を払う。
「ううん。幸せだなって思っただけ!」
にっぱぱーと笑いながらそう言えば「そうだね」とフリードリヒも笑って。ぎゅうって抱きしめてくれた。
きっとここではこれでお終いだと思う。幸せ! ハッピーエンド!
けれど、僕の人生はまだまだ続く。だからまずは学園を卒業しなきゃね!
それと。
ここまで見てくれた画面の向こうの人にもありがとうを。
『あなたにも幸あれ!』
■■■
『あなたにも幸あれ!』
そう記されたウィンドウを見た後、私はそっとセーブを選ぶとゲームを終了する。
そしてパソコンを切るとそっとディスプレイを撫でる。
「お疲れ様。立花君、河島君」
最後に記された『あなたにも幸あれ!』。これがきっとレイジスにとって最高の終わり方なのだろう。
それだけで私はようやく心の荷が下りた。
「さて。帰るか」
一人そう呟くと、電気を切って扉を閉めた。
「はいー…大丈夫ですよー…」
けほっと軽く咳き込めば「はいどうぞ」とお水が入ったコップを渡してくれるフリードリヒ。それを受け取ってこくこくと飲めば、喉が潤った。むっはー!
空になったコップをするりと抜き取られ、濡れた唇にちゅっとキスをされるとそのままぺろりと舐められる。はわ!
それに驚いてお口を開ければ、舌が侵入してきて潤ったお口の中を舐めまわされる。頬の内側を舐められると気持ちいんだー。
とろりと瞳を蕩かせれば、お口の中を隅々まで舐められて。ふうふうと鼻で呼吸するけどちょっと足りないのか、頭がくらくらとしてくる。
すると舌がお口の中から抜け出ていく。
溜まった唾液はこくんと飲んで、はぁはぁと肩で呼吸をすれば「ごめんね。可愛くて」と甘い甘い声で囁かれながらほっぺやこめかみ、そしてお耳にキスをされる。
ふわわ。気持ちいー。
「レイジス。もう一度、いい?」
さっきまでの甘い声とは違い、低い声でそっと囁かれるとぞくぞくしちゃう。
それに。
あららー…。元気になっちゃったー…。
どうも僕はフリードリヒの低い声に弱いらしい。その声を聴くだけでその…気持ちよくなっちゃうんだよ…。
どうしてこうなったんだろう?って考えても分からない。
ただ本当にフリードリヒの声が好きなだけなのかもしれない。
「だめ?」
「―――…ッ!」
今度は甘えるような声と共に、かぷりって耳たぶを甘噛みされる。
ああー!もうー!
よっ!元気ね!って僕の僕が元気になってる。ああー…断るなんて無理ぃー…!
ぎゅうと抱きしめてよいせ、と治癒魔法をフリードリヒに使えば、それを了承と取ったフリードリヒが圧し掛かる。
おわわ!
ギッってベッドが鳴るのがなんか恥ずかしい。
いや、さっきまで恥ずかしいことしてたんだけどね?!
というかえっちなことがしたくて…いや、したかったんだけど、ソルさんから「濃い魔力を手っ取り早く取るなら交尾が一番早いだろう」とさらりと言われ…。
そこで「あっ!」って全員気付いた。
そう。フリードリヒとエッチした翌日、僕は属性過多で体調を崩しちゃったんだよね。
けれど属性が不安定な今どんな属性でも、どんとこい状態なのだ。むしろもっとくださいお願いします状態。
それにフリードリヒの魔力の流れを良く分かっている。
アルシュもノアもリーシャもソルゾ先生もハーミット先生も分かるんだけど、やっぱり一番わかってるのはフリードリヒなわけで。
さらに言えば、僕に魔力…闇属性が溜まれば溜まるほどマーハ君の魔力も回復する、ということらしい。魔力の繋がりってこんなこともできるんだねーって笑ったけど「普通はできませんからね」とソルゾ先生がにっこりと笑って教えてくれた。
え? そうなの?
「レイジス様と一緒にいるから麻痺してますが、普通はできないことを普通にやっちゃってますからね?」
「あ、なんかごめんなさい」
うふふと笑うソルゾ先生はどこか遠い目をしていて。
「フリードリヒとうさぎが交尾をすれば魔力も属性も得られるんだ。便利ではないか」
「交尾を便利っていう人、初めて見た」
「我は聖獣ぞ?」
「ふはっ」
ソルさんの貴重なツッコミをもらってその日から一日一回えっちをすれば、魔力も属性も補えるって言われたんだけど…。
僕らまだ十代ぞ? それにそういうお年頃ぞ?
一回で済むわけが当然なくて。
昨日もその…したんだけど身体が透けることが少なくなったような気がする。気がするだけでまだまだ身体はいきなり透ける。これはもうしょうがない。魔力が馴染むまでの我慢。
それと属性だけど、僕の場合は混合魔法の氷と雷があるから余計に属性が必要になるみたい。フリードリヒが闇属性に特化してるけど、残りの風魔法は僕自身が使うことで強化できるらしい。
便利。
けど魔法を使うとなくなるのが魔力だから結局また透ける。という悪循環。
だから風属性をリーシャとソルゾ先生、それにノアからももらってる。アルシュからももちろんもらってるよ!
それに時々ギリクさんがふらっと来ては風属性を与えて、ご飯を食べて戻っていく。
それはガラムヘルツ殿下もルシミアルさんもシュルスタイン皇子も同じで、ふらっと来ては戻っていく。
まさにあなたは何しに学園へ?状態。
いや、僕に属性魔力をくれるために来てるんだけれども。
そしてギリクさんと同じようにご飯を食べて戻る。あ、おやつも持って行ってもらうんだ!
それと侍女さんの貸し出し?をしてるんだ。これは陛下にもちろん許可をもらってる。
つまりは僕の小さな小さな悪が世界規模へと発展したのだ! むふん!
味覚破壊をされた人はもう薄味には戻れないだろうし。
むっふっふ。
でも病人は食べさせないでね?って口酸っぱく言ってある。胃腸が弱い人にもね。後は食べてお腹壊す人もいるから様子を見ながらたべさせてねとも言ってある。
あとアレルギーね。
食物アレルギーはこわわだから。生魚に至っては『浄化の魔石』を各国に渡してあるからこれを使ってもらうことにしてる。これを作るために結構魔力を使った日には上半身が透けるという訳の分からないことになって大変だった。
だって下半身はあるんだよ? こわわーじゃない?
その状態で学園長先生に会いに行ったら、兵士さんが悲鳴を上げた。トラウマになってなければいいけど…。
上半身がないからバランスが取れなくて困ってたんだけど、フリードリヒに横抱きにして連れて行ってもらった。ちなみにその時、学園長先生とグラナージさんには盛大に吹き出されて、メトル君には叫ばれヴァルジスク君には「また器用なことを…」と呆れられて。
そんなこんながあって僕らのえっちは快楽や愛し合う行為、というよりは僕の魔力回復のためになってる。
いや僕もフリードリヒ以外とえっちしろっていわれたら全力で拒否るけどね。ヴァルジスク君と属性のためにえっちはできない。
そこに確かに『好き』があるからできるわけで。
「あ…ぁんん! …ァあ!」
「可愛い」
と回想してる間にフリードリヒがまだ柔らかいそこに入り込んでて。さっきもしたばっかだからすんなりと飲み込んで、どくどくしてるのが感じ取れる。
気持ちいい。
動いてないけど、僕の中にフリードリヒがいるって感じるだけで気持ちがいい。何度も中に吐き出された液は魔力として取り込まれてるから、お腹がいっぱいにはならないのがちょっと寂しい。でもそれのおかげで子供はできないんだって。
なんせ液が魔力になっちゃうんだから。その点は安心…かな?
あとね…。やっぱりフリードリヒのっておっきいと思うんだ。僕はほら…子供体型だから小っちゃくてさ…。男としては悲しいんだけど、フリードリヒはにこにこしながら「レイジスは小さい方が可愛いから私は嬉しいけどね」っていうんだ。だから小さいことに関しては悲しみはない。
「レイジスの中、すごくうねって…すぐにでもイきそう」
「ふぎゅん!」
ああ!ダメですダメです! そんな声でそんなこと言われたら…!
「ふふっ。きゅうって締まった」
「そ、そんなこと言わないでくだしあー!」
恥ずかしくてお顔を隠したいのに、フリードリヒのおててが僕の手を握って押し付けてるから動かせない。ううう。恥ずかしいー!
「レイジスは何をしても可愛いね」
「ぷぎゅう!」
「ふふっ。真っ赤になった」
「意地悪言わないでくだし…っぁ?!」
うわぁん!と泣きそうになる前に、僕の中にあったものがずるりと引き抜かれる。その感覚にぞわぞわー。
「ひ! ああ、ァあ…っ!」
「んっ。レイジスは泣いても可愛いけど…ッ!」
「んん! あぁ…! ァ…ッ!」
ずん、と熱いものが打ち込まれ、お口を開ければ一緒に舌も飛び出して。
その舌を掬い取られて唇を塞がれる。ということは呼吸も塞がれるわけで。
「ん…っん…っ! ッ…ん…!」
「ふっ、レイジス…、可愛い」
「んぐ…ッ! んむ…ぅ!」
角度を変えながら何度もキスを交わして、舌を絡め唾液を飲み込む。その間も抽挿をされているから、がくがくと揺さぶられ続ける。
僕とフリードリヒの身長差は約30cm。結構あるんだよー。だから。
「や…ッ! ああ!」
「ごめん。レイジスの中が気持ちよすぎて」
ぐっとフリードリヒが前のめりになると、当然ながら僕のおしりが浮くわけで。あれ? これってまずずーな…?
「ああァ…! ッ! ん…っむ…! ぅ…!」
「もう少し…頑張って…ッ!」
上から突き入れるような体勢…いわゆるこれって種付けプレスってやつだよね?!
おっふ。ちょっと苦しいー!
けどもっと苦しいのは…。
「ダメ…! これ以上入れたら…っ!」
「ごめんね。レイジス…!」
「あ…ッ!」
僕の静止など意味がなく、ぐっぽりと奥の奥まで入り込んだフリードリヒのもの。だけど僕はそれどころじゃなくて…。
これ…やばば…ッ!
「んーッ! あぁ…! やああぁ!」
つま先をきゅうぅぅっと丸めて、シーツに爪を立てる。
やばいやばいやばい! ずっとイってる…! 身体…おかしくなりそう…!
「レイジス…ずっとイってるね」
「あ…ぁッ! …ッッ! んんんっ!」
ちゅちゅと顔にキスをしてくれるけどそれ以上の気持ちよさに頭が真っ白になる。
開けっ放しのお口から舌が出てるけどもうそんなこと気にならない。わんちゃんみたいにはっはっと浅く呼吸を繰り返すだけ。
むり。これ、むり。からだもあたまもおかしくなる。
「動くよ?」
「まっへ…ま…ッ! あ…っあ…! ぁ…っ! ァ!」
にこりと笑うそのパンジー色の瞳には欲が色濃く浮かんで。獣に似たフリードリヒを止めることなんてできなくて。
フリードリヒが腰を抽挿するたびに、ベッドもギッギッと鳴いて、その音に交じってパンパンという音と水の音。
それに僕とフリードリヒの呼吸が混ざって。カーテンをしてあるから安心だけど、逆に性の空気が漂っているわけで。
「あ…っッ! あ! ぁ…ァ…! アァッ!」
「ん…、レイジス、きもちい?」
耳元でそう囁かれるけど、頭がうまく働かない。それに与えられる快感が強すぎて消化しきれない。フリードリヒの動きに合わせて、僕のもぴゅるぴゅると何度も吐き出し続けた結果何も出なくなっちゃった。
でも絶頂は絶えず来るからもう本当に訳が分からなくなって、ただ気持ちよさを感じてるだけ。
「レイジス」
「あ…っ! ッあ…! あァ…ッ! アア!」
どちゅりと奥の奥を強制的に開かされ、背中を反らせる。
だめ…! もう…!
ちかちかとお星さまが目の前を飛んで、魔力がお腹の中でぐるぐると渦巻いてる。
気持ち悪いけどそれが気持ちいい。
「奥にあげるから、ね?」
フリードリヒの言葉をよく理解せず、こくこくと頷けば「ああ! 可愛いな!」と手を外されぎゅうと抱きしめられる。そしてふわりと感じるフリードリヒの汗のにおい。
「らめ…! もうでない…!」
その匂いだけで腰を震わせると、抱きしめられたまま抽挿が続く。
けど。それが急に止まり、ずるると中身まで抜かれるんじゃないかってくらいに引き抜かれる感覚に恐怖すら覚える。今まであったものがなくなって、お腹が寂しい寂しいって僕に訴えてくるけどどうすることもできなくて。
「ふり…どり、ひぃ!」
「うん。寂しいね。だから寂しくないようにいっぱい出してあげるから、ね?」
「かはっ!」
「ね?」という言葉の後で、再び奥の奥に入ってきたフリードリヒのそれ。その感覚に僕は膝と腰を震えさせ、絶頂する。
けれど。
「でてる…! でてるぅ!」
「ん、っく…!」
びゅるびゅると吹き出されるものが奥にあたって気持ちがいい。けれど同時に怖くなって。ぎゅうとフリードリヒに抱きつけば、頭を撫でてくれる。そして長い射精が終われば、頭にたくさんキスをされた。
しばらく繋がったままいたけど、このままだと僕の受け入れてるところが開いたままになっちゃうかもって泣きつくと、抜いてくれた。
けど、くっついたまま。
汗のにおいと主に僕が吐き出したものの匂いが混ざっている空気を換えたいけど、だるくて…いや、むしろ元気いっぱいになってる。
魔力を注いでくれるから体力が回復しちゃうんだよ。
だから僕よりもフリードリヒの方がお疲れ。
どさりと僕の上にフリードリヒが降ってきて、ぐったりとする。その背中を撫でれば「ありがとう」とお礼を言われちゃう。
うふふ。どういたしまして。
「やっぱり私の精液は魔力に変換されちゃうんだね」
「そうですね…。でも僕の魔力と混ざってるのが分かるので嬉しいですよ?」
むふーと笑いながらそう言えば「レイジスはまたそういうことを…」とフリードリヒがぎゅうってする。うん?
「残念だけどもう私も限界だ」
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「そうだね」
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「レイジス! 魔力食べたい!」
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でも、僕もまだ魔力が必要なんだけどなー…。
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恥ずかしいんだからー!
「そういうな。マーハもそろそろ子をなせるところまできたんだ」
「ふぁっ?!」
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「そだよー。レイジスがくれたんだよー」
「ふぁふぁ?!」
にっこりと笑うマーハ君。
え?! いつ?!
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「マーハに『神の目』が宿ったのと同じだ」
「あじゃぱー!」
じゃあ、あの時僕の『子供が生める』っていうのがついちゃったのかー。ぽかんとお口を開けていると、やっぱりフリードリヒが下あごをそっと持ち上げてくれた。
ありがとうございます!
「これで我にも『カゾク』というものが持てる」
「あ…」
そっか。聖獣さんって基本一人だもんね。寂しいよね…。
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「他のやつらはあれでも結構一人で楽しんでるから問題ないだろう」
「そうなんだ?」
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ソルゾ先生がそう切り出すと、お口にパンを押し当ててくるフリードリヒ。それをもぎゅんと食べると、お口をむっむっと動かす。
「あいつらは元教会の上層部でした」
「んぐ。上層部?」
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「うーんむ。なんかさらっと聞き流しちゃってたけど結構重要な話だったんだね」
「今までは泳がしていた為、各国が何も言えなかったようですが」
「旧神信者を一掃するため、か」
っていうかさ。
「なんで学園長先生とグラン先生は頑なに戻らないんだろう?」
「と、申されますと?」
「グラン先生…グラナージさんが戻ったのなら、聖女信仰をしなくても大丈夫なんでしょ?」
「それはな…」
僕の質問にソルさんが少々言いにくそうに視線をそらした。うん?
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ソルさんの言葉に首を傾げる。
「信仰されるのが面倒だ、とのことだ」
「…信仰されるのに面倒とかあるんだ」
「何かを祈られたらそうしなければならない、とメーカネー様が思い込んでしまってな。それでダメ出しをグラナージ様が出すと喧嘩になるから面倒になった、と」
「はぁ…」
何とも言えない空気に曖昧にそう答えれば、ソルさんも「そういうわけだ」と少々いたたまれなくなってる。
うん。お疲れ様、ソルさん。
「それに230年ぶりに再会なされたのだ。喧嘩もしたくないだろうしな」
「そう、だね」
ソルさんとマーハ君も長い間離れてたもんね。なら、しばらくは2人でのんびりしてもらいたいねー。
むふりと笑えば「はい、スープ」とフリードリヒにスープを飲ませてもらう。ちょうどいい温さで僕にっこり。
そうそう。フリードリヒが僕に食べさせてくれる時、ものすごくちょうどいい温度になるのは闇属性が関係してるんだって。闇属性はものを冷やすのに優れてるから、フリードリヒがふーふーしてくれるとすぐに冷めるんだ!
だから僕にとっては本当に助かる! あちあちはあんまり食べられないから…。
「はい」
「はぎゅん!」
あつあつのチーズオムレツを食べさせてもらう。とろとろたまごに、とろとろチーズうままー。うっとりとしながら食べると、今度はそれをパンの上に乗せてくれる。
サラダの上にチーズオムレツ! 絶対美味しいー!
「はいどうぞ」
「わーい!」
まぎゅん!とそれに齧りついてむふむふしてると、フリードリヒも僕が齧りついたそれを齧る。ほわわ!
「うん。おいしい」
「殿下。お口周りが」
「おっと」
そういうフリードリヒに、僕はにまりと笑う。
「フリードリヒ殿下」
「うん?」
何だい?というフリードリヒのお口に付いたものを、ぺろりと舐め取る。
むふー。してやったりと笑えば、フリードリヒが顔を真っ赤にする。
「レイジス!」
「にゃはー!」
いつもしてもらうから、お返ししただけだよー!
ふんふんと息を吐けば、後ろから抱きしめられて。
「後で覚えておいてね?」
「はぎゅう!」
お耳にそう囁かれると、へにゃりと力が抜けて。
「いい?」
低く呟くようなその言葉に、ぷしゅうと頭から煙を出せば。
「レイジス?!」
「ちょ?! なにしたんですか!」
「何もしてないぞ?!」
「レイジス様?!」
フリードリヒとアルシュ、それに侍女さんの焦った声が聞こえてきたかと思ったらそのまま抱きかかえられてベッドへと運ばれる。
そして。
「レイジス! 大丈夫かい?!」
「あい…大丈夫ですー」
「医者! お医者様をー!」
わーわーと騒がしい寝室に初めて目覚めた時とは正反対だなーとくふふと笑う。
色んなことがあったけど、やっぱりここが僕の始まりの場所だと思う。そして悪に目覚めた場所。
全ての始まりはこの場所で。
寂しい始まりだったけど、今は騒がしいのが嬉しくて。
ああ、幸せだなって思う。
そうだ。このゲームのタイトルの願い通りになったね!
『君に幸あれ!』
このタイトルをつけてくれたあの人には感謝しかなくて。
「レイジス! お医者様が来てくれたよ!」
そう言って引っ張ってきた先生はやっぱりぜーぜーと息を切らしていて。
それに「ぷはっ」と笑えば「どうしたんだい?」とフリードリヒが前髪を払う。
「ううん。幸せだなって思っただけ!」
にっぱぱーと笑いながらそう言えば「そうだね」とフリードリヒも笑って。ぎゅうって抱きしめてくれた。
きっとここではこれでお終いだと思う。幸せ! ハッピーエンド!
けれど、僕の人生はまだまだ続く。だからまずは学園を卒業しなきゃね!
それと。
ここまで見てくれた画面の向こうの人にもありがとうを。
『あなたにも幸あれ!』
■■■
『あなたにも幸あれ!』
そう記されたウィンドウを見た後、私はそっとセーブを選ぶとゲームを終了する。
そしてパソコンを切るとそっとディスプレイを撫でる。
「お疲れ様。立花君、河島君」
最後に記された『あなたにも幸あれ!』。これがきっとレイジスにとって最高の終わり方なのだろう。
それだけで私はようやく心の荷が下りた。
「さて。帰るか」
一人そう呟くと、電気を切って扉を閉めた。
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