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カマルリア編

うさうさバッグに新機能

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「レイジス様、お口が汚れてますよ」
「んむー!」

ぐしぐしとソルゾ先生にお口を拭かれる。急いで食べてるわけじゃないんだけど、どうしてかすぐにお口周りが汚れちゃう。
今日の夜ご飯は煮込みハンバーグ。チーズも添えて。それに温野菜とパン、コーンスープにシーザーサラダ。
むっむっとご飯を食べながらふと、みんなが少し疲れてるような雰囲気に首を傾げる。どうしたんだろう?

「ソルゾ先生」
「どうかしましたか?」
「なんでみんな疲れてるんですか?」
「あー…」

素朴な疑問をしたらソルゾ先生が困ってしまった。うん?

「一か月半ほどお酒を飲んでいないからですかね?」
「お酒?」

ハーミット先生が大きく切ったハンバーグを一口でがぶり。すごーい!
きゃっきゃと一人喜べば「娘に会いたい…」とガラムヘルツ殿下がぽつりと呟く。そういえばガラムヘルツ殿下の娘さん…エメエラちゃんは元気かなぁ?
おいしいご飯は出せるけど、エメエラちゃんは出せないからね…。
それに、三人も少し手を動かす速度が落ちてるような気がする。アルフレッド殿下は頬にいっぱい詰め込んでもっぎゅもっぎゅしてるけど。可愛いなー。それにヴァルジスク君も食べる量が増えてて僕にっこり。それに聖獣さんたちはお酒に興味ないのか、いつもと変りなくハンバーグをもぐもぐ。
みんながお酒を飲んでいないってことは先生たちも飲んでない、ってことだよね? うーん。緊張しっぱなしだと気も滅入っちゃうよね。ワインは少し飲んでるみたいだけど。

「お酒…飲みたいです?」
「レイジス様?」
「たまにはいいと思いますよ? 飲んでも」
「しかし…」
「襲われる心配はないんでしょ?」
「あったら国がやばいな」

もぐもぐとサラダを食べながらそう言うヴァルジスク君。アルフレッド殿下はミートソースのパスタをもぐもぐ。おっとー。お口の周りがすごいことになってるぞー!
いそいそとナプキンを用意すると、その前にヴァルジスク君がささっと拭いてしまう。ああー…!
しょんと肩を落としながら、パンをちぎってもぐり。パンも美味しいー!

「それで? 酒というのは?」

おっと。意外にもルシミアルさんがお酒に食いついたぞー?

「えっと…果実酒とか日本酒とか、ですかね?」
「ニホンシュ? なんだいそれは?」
「みりんに使う用の清酒です。そのまま飲んでも大丈夫なんですが…」

日本酒もいろいろ必要だし、発酵期間があるから…すぐにはできないよね。果実酒も。

「おいしそうだが…」
「はい…時間がとってもかかります…」

しょぼんぬと肩を落とせば「まぁ、できないことを言っても仕方ないさ」とギリクさんが慰めてくれる。ううう…。

「レイジスお姉ちゃん、元気出して?」
「ん。ありがとうございます」

アルフレッド殿下にも慰められてしまった…。しっかりしろ! 僕!

「酒、かぁ…」

ハーミット先生がそう呟いた後、ため息を吐きながらハンバーグを大きなお口でもぎゅりと食べてた。



お夕飯も済んでまったり。アルフレッド殿下もヴァルジスク君も王族四人もそれぞれお部屋に戻って、お部屋にいるのは僕と先生たちとジョセフィーヌに侍女さんたちだけ。
ソファでお茶を飲んでるけど、やっぱりさっきのことが気になる。

「こう…ぱっとお酒できないかなぁ…」
「それはさすがに無理でしょう」
「ですよねー…」

はああああぁぁ…と大きなため息を吐きながらソファの背もたれに身体を預ける。そしてふと目に留まったうさうさバッグ。それを両手で持って、もちもちとほっぺを伸ばしていると「どうかしたか?」とハーミット先生に聞かれる。

「うさうさバッグで何とかできないかなー…と」
「いや。それこそ無理な話でしょうに」
「むむー。時間が止められるなら、時間が早くなってくれてもいいのにー」
「それはウチュウでもできることなんですか?」
「どうなんでしょう…? 時間軸の流れが違うところがあってもおかしくはないと思いますけど」
「というかそのウチュウって何ですか?」
「宇宙は…今の科学でも1%くらいしか解明されてないお空の上に広がってる世界、ですかね?」
「…カガク?」

あ、そっか。こっちは科学の代わりに魔法があるからねー。久々に異世界を感じたね!

「簡単に言えば実験とか観測とかやって研究することですかね?」
「魔石研究と似たようなことでしょうか?」
「そうかも?」

僕自身もよく分かんないからそれでいいのかな? こっちの世界じゃ呪いとかもありそうだしねー。こわわー。
日本は呪いとか呪術関係で死亡しても、呪いをかけた人には罪はないみたいだし。こっちは…たしかデバフは宮廷魔術師の偉い人しか使えないから万が一、呪いで殺されても証明できなくてうやむやになりそうで怖いね。
そう考えて、ぶるると身体を震わせれば「寒いですか?」とソルゾ先生が火の魔石を強くしてくれる。ほわ…。ぬくくー。
温かくなったお部屋に、ほわんとしているとコンコンとノック音が聞こえてきた。でもそれは堅いものを叩く音じゃなくて、軽い…そうガラスを叩くような音が聞こえ…。うん? ガラス?
そう気付いた瞬間、僕はソルゾ先生に抱きしめられハーミット先生の陰に隠れる。ほわわ?! あまりにも速い動きに僕はされるがまま。ソルゾ先生に抱きしめらてるから状況がまったく分からない。
コンコンというノック音が響くたびに、ぎゅうって抱きしめられる。おっふ。ちょっと痛いかもです…。
すると、コンコン!と強めのノック音が響き、びくりと肩を跳ねさせれば「レイジス!」とガラムヘルツ殿下の声が聞こえてくる。

「入ってください!」
「分かった!」

ハーミット先生の声に反応した侍女さんが扉を開けると同時に、四人がなだれ込んできた。そのまま素早くガラムヘルツ殿下も部屋に入ると侍女さんが扉を閉め、鍵をかける。
まぁ僕は見えてないから予想だけどね!

「これは…?!」
「分かりません。ただ…」

コンコン。

「こういう状況でして」
「なるほど。それなら」
「わしらの出番かの」

そう言って聞こえてきたのはセイじいちゃんの声。いや。見た目は普通にイケメンなんだけど話し方がおじいちゃんっぽいからさ。一度ぽろっとセイじいちゃんって呼んだら気に入ったらしくて、こう呼び始めたんだ。

「そう警戒するな。外にいるのは我々に近い存在じゃよ」

ほっほっほ、と笑うセイじいちゃんの声に、ソルゾ先生の腕から力が抜ける。むはっ!と腕から顔を出してきょろきょろとすれば「そこにおったか」とスズ姐さんに笑われた。

「レイジス。あ奴らを部屋に入れてもよいか?」
「と言われましても…」
「あいつらは我らが大丈夫だと保証しよう」

クロさんとキリさんに言われて、一度ソルゾ先生とハーミット先生を見ればこくりと頷く。

「じゃあ…」
「なら俺が開けましょう」
「あ、お願いします」

そう言ってハーミット先生が警戒しながらカーテンを開ければ、そこには誰もいない。けれど、ノック音がしてるのがすごく怖い。

「お…お化けじゃない…よね?」
「レイジスはお化けが苦手?」
「…得意ではない、です」
「お化けに怯えるレイジス…。可愛いだろうな」

わしわしとギリクさんに頭を撫でられ、ルシミアルさんに髪を直される。
その間にハーミット先生がテラスの窓を開ければ、緊張が走る。

“ふう…ようやっと入れたわ”
“だから言っただろう。今はタイミングが悪い、と”
“しかしの…。メーカネーからは『ちょっぱや』で、だからの”
“はぁ…”

ほほほとこれまた豪快に笑う、ふよんふよんと浮いてる小さな光。それと…。

「可愛い!」

ウリ坊みたいな小さな生き物。はわー!と喜べば“あん?”とちょっと柄が悪い感じがしてきゅんきゅーんってする。可愛いー!

「おお。そなたらか。久しいな」
“うん? ああ、ヴールか。久しいの”

おやや? お知り合いですか?

「レイジス。こやつらは敵ではない」
「あ、そうなんですか?」

と言いつつ視線はウリ坊へ。可愛いよー! 可愛いよー!
はうはうとしながら見ていると「その姿だと何かと面倒じゃ。主らも人になれ」というセイじいちゃんの言葉に従うように、くるりとその場で一回転。
すると。

「この姿になるのも230年ぶりじゃの」
「余は…人の形はあんまり好きじゃないが。仕方ない」
「うおおおおおお!」

二人?の姿に僕大興奮。一人には背中から羽。もう一人には頭からご立派な角が二本出ている。ザ!ファンタジー!って感じがしてはうはうしちゃう。

「レイジス様、落ち着いてください」
「ふおー!ふおー! カッコいいー!」
「カッコいい?」

僕の言葉に反応したのは角が生えてる人。うおおお! かっちょいいー!

「余が…カッコいい?」
「はい! 角とか最高です!」

むっはー!と鼻息を荒くしながらそう言えば、頬が赤く染まる。おん?

「そうか…カッコいい、か」
「あー! 好き! 無理! 尊い!」

しゅばっと顔を両手で覆って首を振れば「レイジス様、大興奮ですね」とハーミット先生が苦笑いを浮かべている。窓を閉じてカーテンをすれば、冷静な侍女さんにソファに座るように促される。
それに従ってソファに座れば…。あ。アルフレッド殿下の席が無くなる。そう思ったら、セイじいちゃんがまたテーブルと椅子を用意してくれた。ありがとう! セイじいちゃん!

「さて、まずは私から話そうかの。私は『ジズ』。この世界を空から見守るもの」
「余は『ベヒーモス』。地上から世界を見守っている」
「ベヒーモス!」

ベヒーモスさんが紹介した後、僕が興奮気味にソファから立ち上がれば「落ち着いてくださいね」とソルゾ先生に言われてしまう。おっと。すみません。
すとんと大人しく座れば「それでな」と僕に特に気にすることもなくジズさんが話を進めていく。すごいなー。

「レイジス、レヴィアタンを知っておるだろう?」
「あ、はい! レヴィさんは元気ですか?」
「あいつとクラーケンは元気に泳ぎ回ってるぞ」
「そっかー。よかったー」

あれから会わないから元気かなーって思ってたけど良かったー。

「ああ。そうか、レイジスは会わないのか」
「うん?」
「ハガルマルティアの港ではよく見るな」
「ああ。ストラウムの港でも目撃される」
「…うちの港で目撃されるレヴィアタンとクラーケンはレイジスの知り合いだったか」
「初めて見たときは何事かって騎士が出たからな」
「あー…」

じゃあ、レヴィさんとクラさんは貝殻をそれぞれの港に届けてくれてるのかー。

「あいつらが持ってきた貝殻を焼いて風魔法で粉砕して畑にまくと、作物がよく育つんだよなー」
「レイジスの言った通りだったな」
「えへへー。役に立てたのならよかったです。でもお礼はレヴィさんとクラさんにも言ってあげてくださいね!」

僕は知識をちょびっと出しただけなので! 実際貝殻を大量に集める方が大変だからねー。
むふんむふんとしていると「なるほど」とジズさんが笑う。おん?

「メーカネーの言っておったとおりじゃの」
「あの…メーカネーさんって誰ですか?」
「うん? ああ。あ奴か」
「そういえばテガミを預かってきたんだった」
「お手紙?」

ごそごそと服を漁るベヒさん。可愛い。すると「お主、頭の辺りに入れていただろう」とジズさんに言われ「ああ、そうだった」と角の辺りを漁ると封筒が現れた。ほわ?!

「ほら」
「あ、ありがとうございます?」
「すぐに読んでほしいとの言付けじゃ」
「あ、じゃあすぐ読みますね!」

くるりと封筒をひっくり返せば、そこには可愛いうさぎさんのシール。むはっ!
それにむふむふとしながら、うさぎさんシールを破らないように丁寧にはがすと封筒を開いてお手紙を出す。便箋も可愛いうさぎさんがついててほわんとしちゃう。メーカネーさんもうさぎさんが好きなのかなー?と思いながら読んでいく。

『レイジス君へ』
「うん?」

あれ? メーカネーさんって僕のこと君呼びなの? というか、僕が知らないだけでメーカネーさんは僕のこと知ってる? おあ?
かくんかくんと首を傾けながらも手紙を読み進めていく。

『カマルリアの生活はどうですか?
そろそろダメな大人たちがお酒を求め始めると思いますので、うさぎちゃんバッグに新しい機能を与えておきました』
「うさぎちゃんバッグ…? うさうさバッグにいっぱい入るのって機能だったの?」

あれれ? ってことはメーカネーさんって…。

『お鼻を押せば、バッグの中の宇宙が向こうの世界と同じ時間になります。こちらの一か月はおおよそ向こうでの30秒ほどになります』
「んぶぅ?!」
「レイジス様?!」

ぶばっと思わず鼻水を吹き出せば、ソルゾ先生がお鼻を拭いてくれる。おあ。ありがとうございます。

『ですからお酒を造るときは、お鼻を三回ほど押せば約三か月早めることができます』
「お…おわわ…!」
『それと、足りないものがあれば青龍さんにお願いしてみてくださいね。きっといろいろと出してくれますから』
「セイじいちゃんに…」

っていうかセイじいちゃんにお願いって…。まるで孫がおじいちゃんに「お小遣いちょーだい!」って言ってるみたいだ…。
それはなんか違うような気がして、セイじいちゃんにお願いしたらちゃんとご飯で返そうと思う。あれだ。ギブアンドテイクってやつ。

『あ、ホワイトリカーは分からないことが多いので、レイジス君に水魔法【特殊】を付与しておきました。これを使えば簡単にお酒ができる優れた魔法です。魔石にすればソルゾ君やハーミット君、それに他の王族の方が使えますからぜひ渡してあげてください。【特殊】と魔石に掘れば出ますからね』
「なんてことをー?!」

僕の叫びに、びくっと肩を跳ねさせた先生たち。
お手紙をもってふるふるとしている僕を心配そうに見つめてくれるのがいたたまれない。

「何か悲しいことが書いてありましたか?」
「学園長先生がとんでもないことをしてくれましたああぁぁっ!」

わっとソルゾ先生に抱きついてそう叫べば「学園長?」と首を傾げている。それは他の王族四人も同じで。

「学園長?」
「メーカネーさんって学園長先生だったんですよぅ!」
「はい?」

何を言っているんだ?という声が聞こえたけど絶対そうじゃない! このお手紙日本語で書かれてるしー! あと、勝手にスキル付与とかできるの神様である学園長先生しかできないじゃん!
ぽっぽぽぷー!と怒っていいのか分からない感情をソルゾ先生に抱きつくことで発散させると、頭を撫でられた。

「それで、何が書かれてたんですか?」
「えとですね…。なんかうさうさバッグに新しい機能が付いて、お酒が早くできるようになったり、お酒に必要なものが水魔法【特殊】でできるようになったよーってお知らせが書かれてましたー!」
「酒が?」
「水魔法【特殊】?」

おわ! 先生たちがそれぞれ食いついた! ソルゾ先生はお酒よりも魔法のことが気になるんですね!

「うさうさバッグの機能も気になりますが、その【特殊】とは?」
「んー…なんかお酒の素が出るみたいです」
「え?」
「それを魔石にして他の人に渡してもいいですよーって書いてありました」
「…………」
「あとは…セイじいちゃんにお願いしてね、とも」
「ほっほっほっ。相変わらず聖獣使いが荒いお方だじゃのぅ」

ほほほと笑うセイじいちゃんと「サケが飲める?」とざわつく聖獣さんたち。それに「メーカネーがハヴォル・カウツナー?」と困惑の声も聞こえる。
あと何気にセイじいちゃんの言葉も気になるけど…。

「とりあえず、お酒作ってみてもいいかな?」

僕もうさうさバッグの新たな機能も気になるし。

「サケとやらを飲ませてもらえるのか?!」
「はい! 僕は飲めないので作るだけなので、作ったものを飲んでもらうことになりますけど…」
「構わん、構わん。それでレイジスは何が必要かの?」
「えーっと…梅とー、杏とー、コケモモとかがいいです!」
「ふむ」

僕のリクエストに、セイじいちゃんが一度考え込むとくるりと人差し指で円を描く。すると…。
どさどさ!とリクエストしたものが床に落ちてくる。あー!

「セイじいちゃん! 果物とかは傷みやすいんだからそんなふうに出しちゃダメー!」
「おお、すまんすまん」

ほほほと笑うだけで反省してないセイじいちゃん。もー!
落ちたそれを分けて拾っていると、先生たちも手伝ってくれる。ありがとー!
落ちた衝撃で傷んでないよね?と確認したけどみんな無事。おわわ!

「セイじいちゃん! 傷んでなかった!」
「ふむふむ。それはよかった」
「怒ってごめんなさい…。それからありがとう!」
「おお…これが孫というものか…!」

くぅっとなぜか泣いちゃったセイじいちゃんにおろっとするけど他の聖獣さんが「年取ると涙もろくなるねぇ」と慰めてる。ジズさんとベヒさんはただ見てるだけ。
加わる気はないのかな?なんて思いながら、とりあえず氷砂糖はどうしようかと悩む。けど。

「うさうさバックの機能で作れないかな?」
「そういえば新しく追加された機能って何ですか?」
「あー…っと。なんか時間の流れがちょびっとだけ早くなるみたいです」

四王族がいるからそれとなーく誤魔化しながら伝えてみれば「時間を…」とソルゾ先生も驚いてる。まぁ…普通は時間を止めることさえもできないからねぇ…。
まぁとりあえずやってみよう!ということで急遽砂糖水を作って、うさうさバックの中へ。こぼれないんだろうかと思ったけど、中に入れたお弁当箱のサンドイッチとか崩れたりしてないから、まぁいっかとお鍋ごと入れる。
初めてうさうさバッグの中へものを入れるのを見る四人と、興味津々な聖獣さんたち。それとジズさんとベヒさんも見てる。おわ。ちょっと恥ずかしい。
お鍋をすー、しゅぽん!と飲み込んだうさうさバッグのお鼻をとりあえず三回押してみる。するとお鼻がぺっかぺっかと点滅しだす。…なんか違う。あんまり可愛くないな、なんて思いながらギリクさんとキリさんに風魔法で果物の水分を吹き飛ばしてもらう。
すると「ティンティロリン」と音楽が流れる。お風呂が沸いたかな?ってかんじの音楽に苦笑い。というか音楽はどこから流れているんだろう?

「レイジス! 中はどうなっているんだい?!」
「ちょっとまってくださいねー」

興奮気味のガラムヘルツ殿下ににまにましながらうさうさバッグを開けて、お鍋を取り出すと…。

「おわぁ?!」
「これは…塊?」

そう。お鍋の中は結晶というよりも塊があって。おばば。
それをとりあえず取り出して風魔法で砕く。そしてかけらをぽいっとお口の中へと入れれば…。

「あ、氷砂糖だ」
「これはすごいな…!」

こりこりとそれを食べてから瓶を…セイじいちゃんが用意してくれたその中に梅、杏、コケモモを入れて氷砂糖を突っ込んで…。風魔法でお口の周りをガードする。お酒の匂いでもふにゃふにゃになっちゃうからねー。

「では…!」

瓶の中に水魔法【特殊】を使って、じょばばーと満たしていく。それの匂いを嗅いでもらうと「これはあの時のものと同じです」とソルゾ先生とハーミット先生が頷く。おおー!
そいじゃあ!ということで杏とコケモモの瓶にも水魔法【特殊】を使って満たして、うさうさバッグの中へGO!
さっきと同じようにお鼻を…今度は四回押してしばし待つ。それでもカップラーメンよりは短いからね!
すると再び「ティンティロリン」と音楽が流れて、うさうさバッグから瓶を取り出す。けど重くてハーミット先生に手伝ってもらいながら引っ張り出せば、そこには琥珀色に輝く梅と杏の瓶。コケモモは綺麗なトリアノン色! おほー!すごーい!
はうはうと興奮しながら瓶のふたを開けてもらって、確認してもらう。ジョセフィーヌにコップを持ってきてもらって、お玉で少し注いで味の確認も先生たちにお任せ。僕は飲めないから離れた場所に避難してる。ジズさんとベヒさんと一緒に。

「これはうまい!」
「すごい…本当にお酒になってます…!」

味を確認した先生たちが絶賛で、王族四人も聖獣さんたちもごくりと喉を鳴らす。なら。

「まだ試したいことがあるのでじゃんじゃか飲んでください!」

そう言えば、全員の表情が明るくなり酒盛りへ。
その間に僕は氷魔法でまん丸の氷を作ったり、侍女さん達のお手伝いとしておつまみとしてポテトチップスや唐揚げ、フライドポテトなんかを作っていく。
水魔法【特殊】で日本酒はできるのか、ビールはできるのかとうさうさバッグを使いながら出来上がったものをどんどんとみんなに消費してもらう。お鼻を押す回数によって味は変わるのか等々を繰り返し、それならお味噌とかも作れるのでは…?!といそいそとセイじいちゃんに枝豆を出してもらって半分を茹でておつまみにして、もう半分をお塩を入れてうさうさバッグの中へ。そしてお鼻を六回ほど押して待つと…。

「お味噌だー!」
「これは素晴らしいですね!」
「え? じゃあチーズとかも作れちゃうの?!」

と好奇心が抑えられず、チーズを次々と作ってはおつまみとして消費されていくのを見ていた。僕は実験ができてうはうは。先生たちや四人の王族、聖獣さんたちはお酒が飲めてうはうは。
ジョセフィーヌ達にも何が飲みたいか聞いて、こっそりと作って渡せばものすごく感謝をされた。すでに出来上がっている人はそのまま寝かせておくことにして、お酒臭い部屋を風魔法で換気。顔色一つ変えずに飲み続ける聖獣さん達に若干引きつつも次々とお酒を造っては置いていく。
途中でジズさんやベヒさんも加わり、水魔法【特殊】を使ってカクテルを作ればこれまた聖獣さんたちが大興奮。
セイじいちゃんも興奮のあまりいろんなものを出してくれて、それをどんどんと加工していけばいつの間にやら人間たちはすっかりと酔いつぶれていて…。
これは明日の朝二日酔い確定かなぁ…なんて思いながら、リクエストされた日本酒とビールを作っていく。うさうさバックの音楽がせわしなく流れる中、僕も大きなあくびを一つ。

「おお、おお。すまんな」
「魔力がだいぶ減ってるわね。妾たちのことはいいからもう寝なさい」
「ふわわー。ありがとうごじゃいまふふー」
「ああ、そこな人間も休んでくれ。後は我々が勝手に騒ぐからな」
「かしこまりました」

そう言われたジョセフィーヌたちに「お休みー」と言ってから、僕も寝室へ。ベッドに倒れこむように横になれば、すよよーとすぐに寝ちゃった。
翌朝、あれだけあった瓶はすべて空になってて戦慄。先生たちは全員もれなく二日酔いでグロッキー状態…と思いきや、みんなすっきりとした顔でおはよう。あれだけ飲んだのに?!
びっくら仰天しながらワイバーンのぬいぐるみをもってぽかんとすれば「牛さんのお耳可愛いね」とシュルスタイン皇子に褒められる。それに、てれてれしていたけど違う!と改めて先生たちを見れば、やっぱりすっきりしてる。ええー…。

「ここは光の属性が強いから毒なんかは無効なんでしょうね」
「はぇ…。そうなんですか…」

にっこりとさわやかに微笑むソルゾ先生に曖昧な返事をすると、朝食の準備で忙しそうなジョセフィーヌと侍女さんを手伝いに行く。

「妾たちの分も用意されておるの」
「これがメシ…というものか」

ご飯に興味津々なジズさんとベヒさんににまにましながら朝食を用意していく。先生たちも手伝ってくれて、アルフレッド殿下がお部屋に来る頃には準備が整って。
二人増えていることにヴァルジスク君が驚いてたけどベヒさんに「気にするな」って言われて何も言えなくなってた。ごめん。後で紹介するから…。
でもね。

ぐううううぅぅぅ。ぎゅごごおおおぉぉ。

怪獣が目を覚ましたから今はご飯を食べさせてー!


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