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聖女編
聖女の日記 後
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※前半レイジス視点、後半メトル視点になります。
赤黒い文字で書かれていた『うらぎりもの』。なんとなく紙が寄っていたからもしかして…と思った瞬間、ぶわりと毛が逆立って日記を放り出していた。
初めて人の『憎悪』に触れた。『憎悪』ってこんなに怖いものなんだ、と認識したらさらに震えが止まらなくなった。そういえばロゼッタさん?が僕の命を狙ってたってメトル君は言ってたけど、そこからは憎悪はあんまり感じなかった。どっちかといえば、結構僕が好きなものが多かった気がする。お花もそうだし、ワイバーンもそう。レヴィさんに至っては感動しちゃったし。
だから鈴音さんのこの文字に対しての恐怖はすごかった。
フリードリヒに抱きついてぶるぶると震えれば、あやすように何度も背中を擦ってくれる。その間「大丈夫だよ」というフリードリヒの言葉しか聞こえてこなかったから、僕が落ち着くのを待ってくれてたんだと思う。ううう…。ごめんなさい。
フリードリヒの匂いと体温ですっかりと震えが止まったころ、もじょっと顔を上げれば指で涙をぬぐってくれた。
「大丈夫かい?」
「ん…だいじょぶ…です」
「無理はしてない?」
「…はい」
「そっか」
そう言って頭を撫でてくれるパンジー色からはただただ心配だという色が現れていて。すん、と鼻をすすり、ぐいっと袖で涙をぬぐうと「大丈夫です!」と笑って見せる。それにフリードリヒが何か言いたそうにしてたけど、きゅっと一度唇を噛むと眉を下げて「じゃあ、お願いするよ」と抱きしめてくれた。
僕も背中に手をまわして、ぎゅってした後メトル君のところに戻る。
「…大丈夫か?」
「ん。だいじょぶ。ごめんね?」
「いや。あんなのを急に見たらそうなる」
「あ、そうだ。さっきは日記を放り投げてごめんなさい」
大切なものを放り出しちゃったことに「ごめんなさい」と陛下に謝れば「よい」と言われてほっとした。「許さん」って言われても仕方なかったからねー…。
本当にありがとうございます。ぺこりともう一度頭を下げると、そのページをめくったところを見せてくれた。
けど。
「ううーん…。これは結構きつい…」
「恨みつらみが書かれてるからな。気持ちがいいもんじゃない」
うへぇと顔をゆがませるメトル君に「でも、鈴音さんの気持ちは分からなくはない」と呟けば「そうだな」と、メトル君が頷く。
『うらぎりもの、うらぎりもの!』
鈴音さんの慟哭は数ページにわたって書かれていて、見ている僕は悲しくなる。けどそれがぱたりと止み、また普通の文章に戻った。おや?
『少し落ち着いた。
ウィンシュタイン王家に裏切られて産まれたばかりの子供を抱いて城から追い出された。
しかも追い出されたときに「スズネ様は出産の直後にお亡くなりに、子供も同様に死産でした。ですので『聖女様』はお亡くなりになりました。その『聖女様』と偽った娼婦は二度とここへは来ないように」とも言われた。
そこで『琴橋鈴音』という名前すら奪われたことに気付いた。日本から勝手に連れてこられて、暗黒竜を倒したのにこの仕打ち。ふざけてる。
けれど私はこの子を守り抜かねばならない。憎々しい男の子供でも、この子に罪はないのだから。
街をさまよって疲れて座っていたところを親切な方に拾ってもらった。彼の名前はルークス。ルークス・ユアソーン。
どうやら一応子爵、というものを持ってるらしいんだけどそれがすごいのかどうかさえ判断がつかない。だって爵位なんて昔のものだと思ってたから。
これからはルークスのお世話になることになった。ルークスは子供も好きみたいでこの子の世話をよくしてくれる。
ありがとう。ルークス』
「ルークス?」
「…ルークスはユアソーン家の始まりの人だね」
「父様」
そうぽつりと独り言みたいに呟いたらいつの間にか父様も側に来ていた。陛下は大丈夫なんですか?
「陛下には少しお休みしてもらうことにしたよ。代わりにフリードリヒ殿下に託されたよ」
「そう…ですか」
大丈夫かな?とフリードリヒを見れば、にこりと微笑まれた。ほわぁ。
「父上たちには遮断の外にいてもらうことになりました」
「アルシュ」
「気が散るだろうから、と」
「ノアも」
きょろ、と周りを見れば偉い人たちがいなくなってて、ぱちりと瞬く。
「責任は父様が負うからね。大丈夫だよ」
「…だい、じょうぶなんですか?」
「こう見えて父様って結構偉いんだ。レイジスは気にしなくていいからね」
「…はい」
父様に頭を撫でられると「それで?」とフリードリヒが先を促す。
あ、そうだね。
さて。ここでユアソーン家と聖女様の関係が繋がったわけだけど…。まさかウィンシュタイン王家がこんなにあれだとは正直思ってなかった。
もやもやとしながら、続きを読む。
『名前を失ったから新しく名前を考えなきゃいけない。けどお父さんとお母さんからもらった大切な名前を手放したくない。
だから新しい名前を『鈴音』とも読める『リオン』って名前にした。リオン・ユアソーン。これが新しい私の名前。それからこの子の名前も考えた。
ルークスさんにも考えてもらったけど「僕が考えてもいいの?」ってきょとんとしてた。そりゃ私のお義父さんですから、と言ったら泣いてしまった。
そこでルークスさんが私を拾った理由を教えてくれた。
どうやらルークスさんは男の人が好きらしい。だから勘当されて遠い親戚のユアソーン家に養子になったみたい。でも養父はもういないしルークスさん一人で子供もいないから私を養子にしたんだって。
男性が好きって聞いて初めはびっくりしたけど、でも私は気持ち悪いとは思わない。だってそういうことは知ってたから。
ルークスさんの好きな人って誰ですか?って無神経に聞いたとき、瞳を丸くしたあと少し照れながら「レガウ様」といった。
それに腹の奥が冷えたけど、そうか。ルークスさんはあの男の…ヴァルヘルムの父親が好きなのか。
この世界の同性同士の恋愛は結構厳しくて禁忌に近いらしい。だからルークスさんは「絶対にかなわない恋。しかも身分が全然違うからね」って少し寂しそうだった。
私を助けてくれたルークスさん…お義父さんに何かできないかな?』
「リオン?」
「…レイジス」
「うん?」
「以前『神の目』でおっさんと話したことがあっただろ?」
「うん? そうだっけ?」
なんかいろいろありすぎて覚えてないなー。ごめんよー!
「ああ。その時冗談で言った『オベロン社』があながち冗談でもなかったってことだ」
「『神の目』『オベロン社』『リオン』…あ!」
連想ゲームみたいに言葉をつなぎ合わせて言ったらあのゲームを思い出した。そうだ! あのゲームだ!
「だからあの時おっさんは笑ってんだな。それが遠からず、って感じだったから」
「はえー…ってことはあの時点でだいぶ近くにいたのかー」
「だな。情報が足らなさ過ぎてそこまで行けなかったが」
メトル君の言葉になるほどと頷くと「なんの話だ?」とフリードリヒが聞いてくる。ううーん…これどうやって説明しよう?
「これとは違うゲームの話だ。それにも『神の目』と『リオン』が出てくる」
「ふぅ…ん?」
「まぁ聖女様とは関係のない話だな」
「そうか」
いまいちよく分からない、というフリードリヒに日記を読んだあとでちょびっとだけ突っ込んだ説明しようと決めると、続きを読むことにする。
『せっかく聖女としての力があるんだから、何か使えないかな?って考えていたらお義父さんが、顔色を悪くして戻ってきた。
なんでもヴァルヘルムと婚約者のロゼッタとの間に子供ができた、ということだ。
その言葉に目の前が真っ暗になった。やはりあの男は私ではなく、元婚約者のロゼッタと結婚するつもりらしい。
許せない…!
怒りが瞬間的に沸いた。でもそこでふと聖女の力は逆も使えるのでないか、と考えた。
もしもそれが可能ならあいつらに復讐ができる。そう思ったら面白くて、つい笑ってしまった。
そうだ。私を捨てたこの国に復讐しよう。
まずはウィンシュタインに。ウィンシュタインの王族には『闇』属性の子供が生まれないようにしよう。そうすれば焦るだろうし。
それとお義父さんには申し訳ないけど、これから王族は――。』
「っとレイジス、その先を読んでみろ」
「ふえ?」
なぜだか急にメトル君が読んでいたところを飛ばした先を指さす。どうしたの?
「ほら、これだ」
「なになに?」
『ウィンシュタインを除く国の仲間に秘密裏に集まってもらった。
私がやることはきっとこの世界の理を変えてしまうから。だから協力を願い出た。
そうしたらみんな快く集まってくれて泣いてしまった。それに一番迷惑がかかってしまうアベラルドにとても心配された。けれど、私のされたことを言ったらみんな納得してくれた。
私のわがままに付き合ってくれてありがとう。そして…ごめんなさい。』
「これって…」
「ああ」
「………………」
フリードリヒを見れば、複雑な表情を浮かべている。そりゃそうだよね。なんとなくこの国の異常は気付いてたけどまさかそうしたのがずっと信仰してた『聖女様』本人なんだから。
「父様は…知ってたんですか?」
「ある程度はね。でも詳しいことは知らなかったんだ」
「だからフリードリヒ殿下もレイジス様と同じく『先祖返り』をしている、と」
「そうだね。フリードリヒ殿下がお生まれになって光属性を持っていない、と聞いた時には『ようやくか』って気持ちが強かったけどね」
「『ようやく』?」
「うん。多分その理由も書いてあるよ」
そう告げる父様の表情はどこかすっきりしてる。もしかして父様はずっとこの秘密を一人で抱えていたのかな?
なんて思っているとメトル君が「見つけた」と言って文章を指さしてくれた。
『クラエスが4歳になったときあの男がユアソーン家に…私に会いに来た。
今さら何の用だと思ったけど、その顔はやつれて以前の風貌はない。
ふん。いい気味だわ。
けれど彼の話を聞いて、すべてはウィンシュタイン国王とロゼッタのせいだと教えられた。
4年前、私を殺したウィンシュタインは国を挙げて…いえ、世界中が喪に伏した。それからすぐにロゼッタとヴァルヘルムが結婚。その年に子供が生まれた。
けれどその子供はやはり闇属性ではなく、光属性を持って生まれてきていた。それに驚いたのは国王とロゼッタでしょうね。ウィンシュタインの王族は代々闇属性しか持っていないのだから。
それが正反対の属性である、光属性を持って生まれてきた子供は国王とロゼッタにとっては絶望しかないでしょうね。
それから毎年子供を作ったけれどやはり生まれてくる子供はみな光属性。一度目は偶然だとされたけれど3人も闇属性ではなく光属性の子供が生まれればもはや偶然では済まされない。
その後ロゼッタは気がふれて後宮に押し込められたらしい。
それに彼―ヴァルヘルムは私が出産時には流行り病におかされ、子供ともども死んだ、と言われてそれを信じてしまったらしい。遺体も早急に処理されたと聞き、どうすることもできなかった、と。
そして塞いでいた時期にロゼッタに励まされ、結婚したとも。けれど生まれてくる子供はみな光属性。それで当時の助産師を問い詰めたらあっさりと口を割ったようで。それにお義父さんのこともあって、ユアソーン家に来たと。
「知らなかったとはいえ、君にひどいことをした」と頭を下げてきたけど、彼は何も知らなかった。それにクラエスは黒髪に紫色の瞳。王家の血を…闇属性を継いでいる。
だから彼との子供だということは疑いようがない。
「虫のいい話ではあるけれど…。この子を…クラエスを息子として育ててもいいだろうか」なんて言われても以前の私なら断っていたでしょうね。でも私、本当は―。
だからお願いすることにしたの。あなたの全てでこの子を守ってくれるなら、って。母親としてこの子の側にはいられないけど、教育係として雇ってもらったからこの子とは一緒にいられるしね。
ヴァルヘルム。私やっぱりあなたのことが好きなの。
それからもし、もしも私と同じ『神の目』『治癒魔法』を持つ子がユアソーン家から、そして本来の属性である『闇属性』を持つ子が王族から生まれたら許してあげる。』
「はえー」
「なるほど。当時のウィンシュタイン王家は何を考えてたんだろうな」
「だが数年…下手をすれば十年婚約者として育てられたロゼッタ様が、異世界から来た少女に婚約者を譲れと言われても納得はできないだろうな」
「暗黒竜を倒した報酬で聖女との結婚を要求すればよかったんじゃねーか?」
「ああー…その状況、あまたの悪役令嬢…いや悪役のシチュだよー」
いうて僕も悪役だからね? もともとはメトル君をいじめ倒すキャラだよ?
っていうか情報量が多すぎて頭くらくらするー。それに。
ぎゅうううううぅぅ…。ぐごごごごごご。
「お腹すいたぁー!」
「なんか聞いたことのない音がレイジス様のお腹から聞こえましたね」
瞳をまん丸にして驚くアルシュに、えへへーと笑いながらお腹を擦ればなぜかフリードリヒが「ふぐっ!」と言って口元を抑える。どうしました?
「聖母か?」
「はいはい。変なこと言ってないでレイジス様のお腹の音を鎮めるのが先ですよ」
なんかアルシュのフリードリヒに対する扱いが雑になってるような気がするけど気のせい?
「とりあえず休憩をしましょうか。父上たちもなにやら成果があったようですし」
「ふえ?」
そういえば偉い人たちがいなくなったと思ったけどまだここにいたんだ。
「さて、遮蔽を解除してご飯を食べに行こうか」
「ごはーん!」
やったー!と両手を上げて喜べば再び「ぐごごごごご」という音が聞こえる。
それに「今の音はなんだ?!」とアルシュのお父さんが血相を変えて走ってきた。あ、ごめんなさい。
「ごめんなさい。今の僕のお腹の音です」
「お腹の…音?」
「はい」
恥ずかしくて俯けば「そういうわけだ」とフリードリヒがくすくすと笑いながらアルシュのお父さんに言ってる。それに何の音だと僕を見てたみんなも「お腹の音?」と驚いてる。
ほぎゃー! 恥ずかしい!
「そういうわけなので、まずはご飯を食べに行きましょうか」
父様のその言葉に陛下が「そうだな」と返せば、敬礼をする。ほわ! カッコいい!
けどそんな僕をあざ笑うかのようにお腹から「ぎゅううううううう」という音が部屋に響く。
恥ずかしい。
お腹を鳴らしたまま移動するとなにごとかとなっちゃうから、学園長先生に「お腹が緊急事態になったら食べてくださいね」と言われたのを思い出し、うさうさバッグをごそごそすると何かが手に当たった。それを掴んで「ぺぺーん!」と取り出せば、それは棒付きのペロペロキャンディで。ちらりとフリードリヒを見て「食べていい?」と聞けば「可愛いね」と返ってきたけど、それは了承だと勝手に解釈して、ちむちむと食べ始る。
少し糖分が入ったことでお腹の音はちょっとだけ小さくなったような気がするけどそれでもまだ音がするからって、特別に飴を食べながらの移動が許された。ううう…ごめんなさい。
けど飴に集中して躓いてアルシュのお父さんに助けられる、ということをしでかし今はフリードリヒと手をつないで歩いてる。まるっきりお祭りの子供。それでも躓く僕をアルシュが支えてくれている。僕が躓くたびに、フィルノさんもびくりとしてる。ほんっとうに申し訳ない。
「レイジス、飴おいしい?」
「おいしいです!」
むふーと笑いながらそう返せば「もう少しだからね」と言われる。その頃にはようやくお腹の音が聞こえなくなって、躓くこともなくなってたけどずっとアルシュと、アルシュのお父さん、フィルノさんをはらはらさせてしまった…。
そして食堂ではなく応接室?みたいなところで立ち止まると、ふんわりと香るご飯の匂いに再びお腹の怪獣が目を覚ました。
ぐごごごごご。
「はわー!」
「うん。飴じゃどうにかならなかったね」
「はずかしいぃー!」
僕のお腹の音を聞き、扉を開けようとしていた騎士さんが驚いた表情を浮かべているのを視界の端に捉えた瞬間、フリードリヒの陰に隠れるのだった。
■■■
「なぁ、少しいいか?」
レイジスの腹の虫が…あれもう虫じゃねぇな。怪獣が咆哮した。しかし初めて聞いたぞ。あんな腹の音。
そんな腹の音を響かせながら歩くのはちょっとな…と思っていたら、レイジスがなにやらうさぎのバッグの中を急にごそごそとあさり始めた。その間、うさぎの顔がぼこぼこと歪になって少しの恐怖を感じたが、目的のものを取り出すと、すっと元に戻った。こえぇ。
で、レイジスの腹の怪獣を鎮めるために食事を取ろうと、ぞろぞろと移動してる最中だが、俺はフォルスのおっさんに声をかけた。もちろん小声でな。
「…どうしたんだい?」
「あの日記、レイジスに読ませるにはいろいろとやべぇもんが書かれてるぞ」
「そうか」
しれっとしながら歩いてるけど会話の内容が内容なだけに慎重にならざるを得ない。けれどレイジスがいるところでは話せないからな。
「レイジスを外して俺が読む、じゃダメなのか?」
「――本当はその方がいいんだろうけどね」
「王族とユアソーン家の関係。あれ教えてねぇだろ」
その言葉に、フォルスのおっさんの眉がぴくりと跳ねた。
はぁ…。まだなのか。ってことはフリードリヒも?
「あれは早々に教えないとやべぇだろ」
「…君に言われなくても分かっている」
ひそひそと話しているけれども、フォルスのおっさんの殺気に後ろにいた騎士がびくりと肩を跳ねさせる。おお、怖い怖い。
だが俺たちのやり取りはレイジスが躓いたことでいい具合に気付かれていない。これもおっさんの仕業か?
「それともう一つ」
「……………」
「たぶんあんたしか知らないと思うんだが…もしかしてレイジスは…」
「私の子ですよ?」
にっこりとそう告げるフォルスに、書いてあったことが本当なんだと気付く。マジかよ…。
仮定だと思ってたがマジでそうだといわれると、俺自身が設定していない事実に動揺する。
「午後からはメトル君だけ日記を読むようにしてもらいましょうか。あの子には刺激が強すぎる」
「憎悪なんてぶつけられたことがないからな。その方がいい」
そうこそこそと話していると、前のやつが立ち止まる。
っといいタイミングだな。
「では、陛下にそのように言っておきますね」
「…頼む」
そう言ってにこりと笑うフォルスのおっさんが離れると、俺は詰まっていた息を吐きだすのだった。
赤黒い文字で書かれていた『うらぎりもの』。なんとなく紙が寄っていたからもしかして…と思った瞬間、ぶわりと毛が逆立って日記を放り出していた。
初めて人の『憎悪』に触れた。『憎悪』ってこんなに怖いものなんだ、と認識したらさらに震えが止まらなくなった。そういえばロゼッタさん?が僕の命を狙ってたってメトル君は言ってたけど、そこからは憎悪はあんまり感じなかった。どっちかといえば、結構僕が好きなものが多かった気がする。お花もそうだし、ワイバーンもそう。レヴィさんに至っては感動しちゃったし。
だから鈴音さんのこの文字に対しての恐怖はすごかった。
フリードリヒに抱きついてぶるぶると震えれば、あやすように何度も背中を擦ってくれる。その間「大丈夫だよ」というフリードリヒの言葉しか聞こえてこなかったから、僕が落ち着くのを待ってくれてたんだと思う。ううう…。ごめんなさい。
フリードリヒの匂いと体温ですっかりと震えが止まったころ、もじょっと顔を上げれば指で涙をぬぐってくれた。
「大丈夫かい?」
「ん…だいじょぶ…です」
「無理はしてない?」
「…はい」
「そっか」
そう言って頭を撫でてくれるパンジー色からはただただ心配だという色が現れていて。すん、と鼻をすすり、ぐいっと袖で涙をぬぐうと「大丈夫です!」と笑って見せる。それにフリードリヒが何か言いたそうにしてたけど、きゅっと一度唇を噛むと眉を下げて「じゃあ、お願いするよ」と抱きしめてくれた。
僕も背中に手をまわして、ぎゅってした後メトル君のところに戻る。
「…大丈夫か?」
「ん。だいじょぶ。ごめんね?」
「いや。あんなのを急に見たらそうなる」
「あ、そうだ。さっきは日記を放り投げてごめんなさい」
大切なものを放り出しちゃったことに「ごめんなさい」と陛下に謝れば「よい」と言われてほっとした。「許さん」って言われても仕方なかったからねー…。
本当にありがとうございます。ぺこりともう一度頭を下げると、そのページをめくったところを見せてくれた。
けど。
「ううーん…。これは結構きつい…」
「恨みつらみが書かれてるからな。気持ちがいいもんじゃない」
うへぇと顔をゆがませるメトル君に「でも、鈴音さんの気持ちは分からなくはない」と呟けば「そうだな」と、メトル君が頷く。
『うらぎりもの、うらぎりもの!』
鈴音さんの慟哭は数ページにわたって書かれていて、見ている僕は悲しくなる。けどそれがぱたりと止み、また普通の文章に戻った。おや?
『少し落ち着いた。
ウィンシュタイン王家に裏切られて産まれたばかりの子供を抱いて城から追い出された。
しかも追い出されたときに「スズネ様は出産の直後にお亡くなりに、子供も同様に死産でした。ですので『聖女様』はお亡くなりになりました。その『聖女様』と偽った娼婦は二度とここへは来ないように」とも言われた。
そこで『琴橋鈴音』という名前すら奪われたことに気付いた。日本から勝手に連れてこられて、暗黒竜を倒したのにこの仕打ち。ふざけてる。
けれど私はこの子を守り抜かねばならない。憎々しい男の子供でも、この子に罪はないのだから。
街をさまよって疲れて座っていたところを親切な方に拾ってもらった。彼の名前はルークス。ルークス・ユアソーン。
どうやら一応子爵、というものを持ってるらしいんだけどそれがすごいのかどうかさえ判断がつかない。だって爵位なんて昔のものだと思ってたから。
これからはルークスのお世話になることになった。ルークスは子供も好きみたいでこの子の世話をよくしてくれる。
ありがとう。ルークス』
「ルークス?」
「…ルークスはユアソーン家の始まりの人だね」
「父様」
そうぽつりと独り言みたいに呟いたらいつの間にか父様も側に来ていた。陛下は大丈夫なんですか?
「陛下には少しお休みしてもらうことにしたよ。代わりにフリードリヒ殿下に託されたよ」
「そう…ですか」
大丈夫かな?とフリードリヒを見れば、にこりと微笑まれた。ほわぁ。
「父上たちには遮断の外にいてもらうことになりました」
「アルシュ」
「気が散るだろうから、と」
「ノアも」
きょろ、と周りを見れば偉い人たちがいなくなってて、ぱちりと瞬く。
「責任は父様が負うからね。大丈夫だよ」
「…だい、じょうぶなんですか?」
「こう見えて父様って結構偉いんだ。レイジスは気にしなくていいからね」
「…はい」
父様に頭を撫でられると「それで?」とフリードリヒが先を促す。
あ、そうだね。
さて。ここでユアソーン家と聖女様の関係が繋がったわけだけど…。まさかウィンシュタイン王家がこんなにあれだとは正直思ってなかった。
もやもやとしながら、続きを読む。
『名前を失ったから新しく名前を考えなきゃいけない。けどお父さんとお母さんからもらった大切な名前を手放したくない。
だから新しい名前を『鈴音』とも読める『リオン』って名前にした。リオン・ユアソーン。これが新しい私の名前。それからこの子の名前も考えた。
ルークスさんにも考えてもらったけど「僕が考えてもいいの?」ってきょとんとしてた。そりゃ私のお義父さんですから、と言ったら泣いてしまった。
そこでルークスさんが私を拾った理由を教えてくれた。
どうやらルークスさんは男の人が好きらしい。だから勘当されて遠い親戚のユアソーン家に養子になったみたい。でも養父はもういないしルークスさん一人で子供もいないから私を養子にしたんだって。
男性が好きって聞いて初めはびっくりしたけど、でも私は気持ち悪いとは思わない。だってそういうことは知ってたから。
ルークスさんの好きな人って誰ですか?って無神経に聞いたとき、瞳を丸くしたあと少し照れながら「レガウ様」といった。
それに腹の奥が冷えたけど、そうか。ルークスさんはあの男の…ヴァルヘルムの父親が好きなのか。
この世界の同性同士の恋愛は結構厳しくて禁忌に近いらしい。だからルークスさんは「絶対にかなわない恋。しかも身分が全然違うからね」って少し寂しそうだった。
私を助けてくれたルークスさん…お義父さんに何かできないかな?』
「リオン?」
「…レイジス」
「うん?」
「以前『神の目』でおっさんと話したことがあっただろ?」
「うん? そうだっけ?」
なんかいろいろありすぎて覚えてないなー。ごめんよー!
「ああ。その時冗談で言った『オベロン社』があながち冗談でもなかったってことだ」
「『神の目』『オベロン社』『リオン』…あ!」
連想ゲームみたいに言葉をつなぎ合わせて言ったらあのゲームを思い出した。そうだ! あのゲームだ!
「だからあの時おっさんは笑ってんだな。それが遠からず、って感じだったから」
「はえー…ってことはあの時点でだいぶ近くにいたのかー」
「だな。情報が足らなさ過ぎてそこまで行けなかったが」
メトル君の言葉になるほどと頷くと「なんの話だ?」とフリードリヒが聞いてくる。ううーん…これどうやって説明しよう?
「これとは違うゲームの話だ。それにも『神の目』と『リオン』が出てくる」
「ふぅ…ん?」
「まぁ聖女様とは関係のない話だな」
「そうか」
いまいちよく分からない、というフリードリヒに日記を読んだあとでちょびっとだけ突っ込んだ説明しようと決めると、続きを読むことにする。
『せっかく聖女としての力があるんだから、何か使えないかな?って考えていたらお義父さんが、顔色を悪くして戻ってきた。
なんでもヴァルヘルムと婚約者のロゼッタとの間に子供ができた、ということだ。
その言葉に目の前が真っ暗になった。やはりあの男は私ではなく、元婚約者のロゼッタと結婚するつもりらしい。
許せない…!
怒りが瞬間的に沸いた。でもそこでふと聖女の力は逆も使えるのでないか、と考えた。
もしもそれが可能ならあいつらに復讐ができる。そう思ったら面白くて、つい笑ってしまった。
そうだ。私を捨てたこの国に復讐しよう。
まずはウィンシュタインに。ウィンシュタインの王族には『闇』属性の子供が生まれないようにしよう。そうすれば焦るだろうし。
それとお義父さんには申し訳ないけど、これから王族は――。』
「っとレイジス、その先を読んでみろ」
「ふえ?」
なぜだか急にメトル君が読んでいたところを飛ばした先を指さす。どうしたの?
「ほら、これだ」
「なになに?」
『ウィンシュタインを除く国の仲間に秘密裏に集まってもらった。
私がやることはきっとこの世界の理を変えてしまうから。だから協力を願い出た。
そうしたらみんな快く集まってくれて泣いてしまった。それに一番迷惑がかかってしまうアベラルドにとても心配された。けれど、私のされたことを言ったらみんな納得してくれた。
私のわがままに付き合ってくれてありがとう。そして…ごめんなさい。』
「これって…」
「ああ」
「………………」
フリードリヒを見れば、複雑な表情を浮かべている。そりゃそうだよね。なんとなくこの国の異常は気付いてたけどまさかそうしたのがずっと信仰してた『聖女様』本人なんだから。
「父様は…知ってたんですか?」
「ある程度はね。でも詳しいことは知らなかったんだ」
「だからフリードリヒ殿下もレイジス様と同じく『先祖返り』をしている、と」
「そうだね。フリードリヒ殿下がお生まれになって光属性を持っていない、と聞いた時には『ようやくか』って気持ちが強かったけどね」
「『ようやく』?」
「うん。多分その理由も書いてあるよ」
そう告げる父様の表情はどこかすっきりしてる。もしかして父様はずっとこの秘密を一人で抱えていたのかな?
なんて思っているとメトル君が「見つけた」と言って文章を指さしてくれた。
『クラエスが4歳になったときあの男がユアソーン家に…私に会いに来た。
今さら何の用だと思ったけど、その顔はやつれて以前の風貌はない。
ふん。いい気味だわ。
けれど彼の話を聞いて、すべてはウィンシュタイン国王とロゼッタのせいだと教えられた。
4年前、私を殺したウィンシュタインは国を挙げて…いえ、世界中が喪に伏した。それからすぐにロゼッタとヴァルヘルムが結婚。その年に子供が生まれた。
けれどその子供はやはり闇属性ではなく、光属性を持って生まれてきていた。それに驚いたのは国王とロゼッタでしょうね。ウィンシュタインの王族は代々闇属性しか持っていないのだから。
それが正反対の属性である、光属性を持って生まれてきた子供は国王とロゼッタにとっては絶望しかないでしょうね。
それから毎年子供を作ったけれどやはり生まれてくる子供はみな光属性。一度目は偶然だとされたけれど3人も闇属性ではなく光属性の子供が生まれればもはや偶然では済まされない。
その後ロゼッタは気がふれて後宮に押し込められたらしい。
それに彼―ヴァルヘルムは私が出産時には流行り病におかされ、子供ともども死んだ、と言われてそれを信じてしまったらしい。遺体も早急に処理されたと聞き、どうすることもできなかった、と。
そして塞いでいた時期にロゼッタに励まされ、結婚したとも。けれど生まれてくる子供はみな光属性。それで当時の助産師を問い詰めたらあっさりと口を割ったようで。それにお義父さんのこともあって、ユアソーン家に来たと。
「知らなかったとはいえ、君にひどいことをした」と頭を下げてきたけど、彼は何も知らなかった。それにクラエスは黒髪に紫色の瞳。王家の血を…闇属性を継いでいる。
だから彼との子供だということは疑いようがない。
「虫のいい話ではあるけれど…。この子を…クラエスを息子として育ててもいいだろうか」なんて言われても以前の私なら断っていたでしょうね。でも私、本当は―。
だからお願いすることにしたの。あなたの全てでこの子を守ってくれるなら、って。母親としてこの子の側にはいられないけど、教育係として雇ってもらったからこの子とは一緒にいられるしね。
ヴァルヘルム。私やっぱりあなたのことが好きなの。
それからもし、もしも私と同じ『神の目』『治癒魔法』を持つ子がユアソーン家から、そして本来の属性である『闇属性』を持つ子が王族から生まれたら許してあげる。』
「はえー」
「なるほど。当時のウィンシュタイン王家は何を考えてたんだろうな」
「だが数年…下手をすれば十年婚約者として育てられたロゼッタ様が、異世界から来た少女に婚約者を譲れと言われても納得はできないだろうな」
「暗黒竜を倒した報酬で聖女との結婚を要求すればよかったんじゃねーか?」
「ああー…その状況、あまたの悪役令嬢…いや悪役のシチュだよー」
いうて僕も悪役だからね? もともとはメトル君をいじめ倒すキャラだよ?
っていうか情報量が多すぎて頭くらくらするー。それに。
ぎゅうううううぅぅ…。ぐごごごごごご。
「お腹すいたぁー!」
「なんか聞いたことのない音がレイジス様のお腹から聞こえましたね」
瞳をまん丸にして驚くアルシュに、えへへーと笑いながらお腹を擦ればなぜかフリードリヒが「ふぐっ!」と言って口元を抑える。どうしました?
「聖母か?」
「はいはい。変なこと言ってないでレイジス様のお腹の音を鎮めるのが先ですよ」
なんかアルシュのフリードリヒに対する扱いが雑になってるような気がするけど気のせい?
「とりあえず休憩をしましょうか。父上たちもなにやら成果があったようですし」
「ふえ?」
そういえば偉い人たちがいなくなったと思ったけどまだここにいたんだ。
「さて、遮蔽を解除してご飯を食べに行こうか」
「ごはーん!」
やったー!と両手を上げて喜べば再び「ぐごごごごご」という音が聞こえる。
それに「今の音はなんだ?!」とアルシュのお父さんが血相を変えて走ってきた。あ、ごめんなさい。
「ごめんなさい。今の僕のお腹の音です」
「お腹の…音?」
「はい」
恥ずかしくて俯けば「そういうわけだ」とフリードリヒがくすくすと笑いながらアルシュのお父さんに言ってる。それに何の音だと僕を見てたみんなも「お腹の音?」と驚いてる。
ほぎゃー! 恥ずかしい!
「そういうわけなので、まずはご飯を食べに行きましょうか」
父様のその言葉に陛下が「そうだな」と返せば、敬礼をする。ほわ! カッコいい!
けどそんな僕をあざ笑うかのようにお腹から「ぎゅううううううう」という音が部屋に響く。
恥ずかしい。
お腹を鳴らしたまま移動するとなにごとかとなっちゃうから、学園長先生に「お腹が緊急事態になったら食べてくださいね」と言われたのを思い出し、うさうさバッグをごそごそすると何かが手に当たった。それを掴んで「ぺぺーん!」と取り出せば、それは棒付きのペロペロキャンディで。ちらりとフリードリヒを見て「食べていい?」と聞けば「可愛いね」と返ってきたけど、それは了承だと勝手に解釈して、ちむちむと食べ始る。
少し糖分が入ったことでお腹の音はちょっとだけ小さくなったような気がするけどそれでもまだ音がするからって、特別に飴を食べながらの移動が許された。ううう…ごめんなさい。
けど飴に集中して躓いてアルシュのお父さんに助けられる、ということをしでかし今はフリードリヒと手をつないで歩いてる。まるっきりお祭りの子供。それでも躓く僕をアルシュが支えてくれている。僕が躓くたびに、フィルノさんもびくりとしてる。ほんっとうに申し訳ない。
「レイジス、飴おいしい?」
「おいしいです!」
むふーと笑いながらそう返せば「もう少しだからね」と言われる。その頃にはようやくお腹の音が聞こえなくなって、躓くこともなくなってたけどずっとアルシュと、アルシュのお父さん、フィルノさんをはらはらさせてしまった…。
そして食堂ではなく応接室?みたいなところで立ち止まると、ふんわりと香るご飯の匂いに再びお腹の怪獣が目を覚ました。
ぐごごごごご。
「はわー!」
「うん。飴じゃどうにかならなかったね」
「はずかしいぃー!」
僕のお腹の音を聞き、扉を開けようとしていた騎士さんが驚いた表情を浮かべているのを視界の端に捉えた瞬間、フリードリヒの陰に隠れるのだった。
■■■
「なぁ、少しいいか?」
レイジスの腹の虫が…あれもう虫じゃねぇな。怪獣が咆哮した。しかし初めて聞いたぞ。あんな腹の音。
そんな腹の音を響かせながら歩くのはちょっとな…と思っていたら、レイジスがなにやらうさぎのバッグの中を急にごそごそとあさり始めた。その間、うさぎの顔がぼこぼこと歪になって少しの恐怖を感じたが、目的のものを取り出すと、すっと元に戻った。こえぇ。
で、レイジスの腹の怪獣を鎮めるために食事を取ろうと、ぞろぞろと移動してる最中だが、俺はフォルスのおっさんに声をかけた。もちろん小声でな。
「…どうしたんだい?」
「あの日記、レイジスに読ませるにはいろいろとやべぇもんが書かれてるぞ」
「そうか」
しれっとしながら歩いてるけど会話の内容が内容なだけに慎重にならざるを得ない。けれどレイジスがいるところでは話せないからな。
「レイジスを外して俺が読む、じゃダメなのか?」
「――本当はその方がいいんだろうけどね」
「王族とユアソーン家の関係。あれ教えてねぇだろ」
その言葉に、フォルスのおっさんの眉がぴくりと跳ねた。
はぁ…。まだなのか。ってことはフリードリヒも?
「あれは早々に教えないとやべぇだろ」
「…君に言われなくても分かっている」
ひそひそと話しているけれども、フォルスのおっさんの殺気に後ろにいた騎士がびくりと肩を跳ねさせる。おお、怖い怖い。
だが俺たちのやり取りはレイジスが躓いたことでいい具合に気付かれていない。これもおっさんの仕業か?
「それともう一つ」
「……………」
「たぶんあんたしか知らないと思うんだが…もしかしてレイジスは…」
「私の子ですよ?」
にっこりとそう告げるフォルスに、書いてあったことが本当なんだと気付く。マジかよ…。
仮定だと思ってたがマジでそうだといわれると、俺自身が設定していない事実に動揺する。
「午後からはメトル君だけ日記を読むようにしてもらいましょうか。あの子には刺激が強すぎる」
「憎悪なんてぶつけられたことがないからな。その方がいい」
そうこそこそと話していると、前のやつが立ち止まる。
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「では、陛下にそのように言っておきますね」
「…頼む」
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