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学園編
悪魔の調味料 爆誕
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「で。今度は何をやらかしたんだい? レイジス?」
「うー…」
フリードリヒの膝の上に向かい合って座らされただいま叱られ中。
なんでこうなったかって? 侍女さん達にお願いしてキッチンに行ったまではよかったんだよ。そこから調味料探しを始めて棚とかごそごそしてたらジョセフィーヌに見つかった。
協力してくれた(なんか怯えてたけど強要したわけじゃないぞ! 断じて!)侍女さんが怒られるかも、と危惧した僕はジョセフィーヌに事情を説明した。ものすごい顔をしていた彼女も僕の説明を最後まで聞いてくれたけど「後でフリードリヒ殿下のお叱りを受けてください」と言われてしまったのだ。
なんでわざわざフリードリヒに?なーんて思ってたらこれ。
恥ずかしいってレベルじゃなく、恥ずかしい。
だって護衛三人+侍女さんたち。その人たちに見られながら今、なぜそんなことをしたのかとフリードリヒに優しく聞かれている。
「危ないからキッチンへは入らないでくださいって言いましたよね?」
「はぃ…」
リーシャの棘のある言葉に肩を落とすと、頭を撫でられる。慰められているようだが恥ずかしさが更に増し、顔があげられない。
ううう…まさかこんなことになるなんて…!
「それで? なぜ言いつけを守らなかった?」
「だって…」
むにむにと頬を摘ままれ軽く引っ張られる。早く言って楽になってしまえというフリードリヒの催促に、ちらりと上目遣いで彼を見ればなぜかにこにこと微笑んでいる。
楽しそうだな! おい!
それにムッとして唇を尖らせると途端に表情が緩むが「フリードリヒ殿下」と氷のような冷たさでアルシュがフリードリヒを呼べば、キリッとした表情に戻る。おおう、どうしたの。
「んんっ、それで? 言い訳があるなら聞くぞ?」
フリードリヒのその言葉に不機嫌な顔からぱあっと希望に満ちた表情を向ければ「甘すぎる…」とリーシャが呟いた。それにジョセフィーヌも頷いてそうだけど気にしない!
言い訳があるから聞いてもらおうぞ!
「味が薄くて…」
「んんっ?!」
そう。料理の味が薄い、とそれとなく伝えてみたらその場にいる全員が固まった。
それはもう見事に。どうした?
「おーい」
フリードリヒの前でひらひらと掌を振ってみるが、固まっている。ホントになんだよ。
フリードリヒは使い物にならないと判断し周りを見てみると、リーシャがものすごい顔で僕を見ていた。リーシャは素直だなぁ…。好感が持てるよ。
と、言う訳でリーシャに聞いてみよう!
「リーシャぁ…」
「…レイジス様ってアホなの?」
「んな?!」
思ってもみない言葉にちょっとだけショックを受ける。そりゃ僕はアホだけど…。大学だってごにょごにょもにょもにょ。
だがバイトで培ったあれやこれは使えるんだからな! ホントだぞ!
ぐぬぬとリーシャを見ればもうどうでもいいというように「何の味が薄かったんですか?」と投げやりな言葉が返ってきた。
それに首を傾げながらぱちりと瞬きを一つ。
「なにって…料理の味、だけど?」
むしろそれ以外何があるのか。
すると「なんだ、料理か」と固まっていたフリードリヒが華麗に復活した。
なんなんだよ。
「レイジス様は言葉が足りないんですよ」
「どこが?!」
しゃあ!とリーシャに噛み付けば「はいはい」と軽くあしらわれてしまった。ううー!リーシャに勝てない!勝ち負けじゃないけど!
するとぎゅうとなぜかフリードリヒに抱き締められ、今度は僕が固まった。急に何?!
「よかった…」
「な、なにが…?!」
僕の胸に顔を押し当ててすりすりと猫が甘えるようなしぐさをするフリードリヒにただただ困惑する。てか何やってんの?! この人?!
離れろー! と服を引っ張って見るが効果はなし。ちょっと! 護衛三人組! どうにかしてよ! と助けを求めるが、なぜか生温かく見守ってくれている。
ならば!
一縷の望みを抱いてジョセフィーヌを見れば、すんっとプロの侍女になっていた。
もしかして料理の味が薄いって言ったのが気に障った?! ごめんて!謝るから助けて!
つかその間もずっと胸に顔を埋めているフリードリヒをどうにかして!
「ふぁ?!」
ってどさくさに紛れて尻を触らないでください! お巡りさん! ここ! ここに痴漢がいますー!
「フリードリヒ殿下、約束はお忘れになられたのですか?」
するとノアが口を開き、びくりとフリードリヒの尻を触る指が跳ねた。
そしてゆっくりと尻から手が離れていくと、ほっと息を吐いた。というかなーんの膨らみもない男の胸に顔を埋めてるけどそれでいいのか? あ、この世界BLだったわ。
だったらなおのことよくない! 僕自身がBLになるのではない! 僕以外の男同士の絡みが見たいんだよ!
でもそれが見られるのは来年。それまでどうやって生きていけばいいんだ! と思ったけど死ぬ準備があるから生きなきゃな! 何この矛盾!
「フリードリヒ殿下」
「…なんだ」
胸に顔を埋めたまま話すからびりびりとしたものが響く。ううーん…。これどうすればいいの?
ぎゅうぎゅうとさらに抱き付いてくるフリードリヒに困ってしまう。まずはとにかく離れさせよう。うん。多少の恥は仕方ない! 覚悟を決めろ!
覚悟を決めるとそっと頭を撫でてやる。するとぴくりと反応した。うんうん、いい感じだ。そしてちゅと頭にキスを落とす。
するとすぐさま顔が上を向き、パンジー色が揺らめいた。
よし! 離れたな!
小さく心でガッツポーズをすると、するりと頬を掌で包まれた。
「はえ?」
「レイジス」
離れてほっとしたのもつかの間。そのままちゅっと触れるだけのキスをされる。
あまりに突然の出来事に何が起きたのか理解できず、ぽかんとしているとリーシャの「やっぱりアホだった…」という呟きがやけに大きく聞こえた。
「あのー…?」
そこへおずおずと声をかけてきた人に全員の視線が集まる。僕とフリードリヒ以外の。
「お取込み中…でしたよね?」
「いえ。助かりました」
ジョセフィーヌの声にハッと我に返ると、にっこりと笑うフリードリヒの顔が思いの外近くにあって僕は顔を後ろに動かそうとしたが動かせないことに気付いた。
そうだった! 今がっちり拘束されてる!
というか人前でキス…した、よ…ね?
ちら、とアルシュを見ればその視線に意味に気付いたのか、それはそれは重く頭を縦に動かす。
「ふ…」
「ふ?」
「ふぉあああああっ?!」
「レイジス?!」
奇声を上げながらばっと両手で顔を隠す。恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい!
人前でキスとか…キ…。
ぶわわと全身が熱くなる。こんなことならまだ高熱の方がまだマシだよ!
「レイジス?! どうした?!」
「ひええええええぇぇん!」
「む、これはいけない! また熱が上がってきてるな!」
「うわあああああぁん! フリードリヒのばかああぁっ!」
「急いでベッドの用意を!」なんて言ってるけど違うから! あんたのせいだから!
でも王子様の言うことを無視するわけにもいかず侍女さんたちがばたばたと動き始める。ごめんて! ホントごめんて!
「はぁ…。落ち着くまでここでお待ちください」
「は、はぃ…」
わぁわぁと騒ぐ僕らを他所にそんな会話をしているジョセフィーヌ。
っていうかその人誰?!
■■■
「これから一ヶ月、教師を務めますソルゾと申します。よろしくお願いします」
「先程はお見苦しい所をお見せしました」
深々と頭を下げる僕に、やっぱりびくびくしてる先生。微妙に距離があるのは物理的に怖いからなのか? まぁ…今更驚かないけどね!
やんややんやと大騒ぎした後、それぞれがお灸をすえられた。ごめんなさい。
これから一ヶ月お世話になる先生との顔合わせ。
優しそうな先生でほっとした。なんかこう…気難しそうなおじいちゃん先生とかだったらどうしようかと思ってた。
「教師になってまだ日が浅いのでその…至らないこともあると思いますが…」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
妙におどおどしている先生に、にこりと笑いかければ「ひっ」と小さな悲鳴が聞こえた。…解せぬ。
けど笑顔は崩さずにいる。
今日は顔合わせだけだからこれでおしまい。お疲れ様でしたー。また明日、よろしくお願いしまーす!
先生が帰ってしまえばいつものメンバーが部屋に残る。なんだか安心できるんだよなぁ…。うん。
それから侍女さんが新しいお茶を持ってきてくれてそれを飲んでいるとフリードリヒの口元がにんまりと持ち上がった。
「それよりレイジス」
「はい?」
「なぜキッチンに行ったんだい?」
「…蒸し返さないでください」
突然何を言い出したのかと思えば…。ただちょーっと調味料を漁りに行っただ…うわぁ…リーシャの視線が超痛い…。
ちらりとジョセフィーヌを見れば、彼女もまた僕を見ていた。ううう…分かったよー。
「味が薄いから…調味料を増やそうと思って…」
「調味料?」
「う…はい。だって塩と胡椒だけじゃ味気なくて…」
美味しく調理してくれてる侍女さん?には悪いけどさ…。もごもごと言葉が口に中に溜まっていく。
「だから作れないかなーって」
「作る?」
僕の言葉にリーシャが食い付く。え? どこに食い付く要素があったの?!
リーシャの瞳がきらきらとしているのは気のせいだろうか。
「ざ、材料と道具があれば…」
「材料は?! 道具は?! 直ぐに用意できる?!」
「え? え?」
「リーシャ」
「だって作れるんだよ?! すごくない?! ちなみに何が作れるの?!」
「え…えっと…?」
なんでこんなにぐいぐい来るの?! あっ! もしかしてリーシャも物足りない口か?! 仲間か?!
よし! いいだろう!
「卵にお酢、油に塩。あとは…瓶があれば…」
「あれば?」
ごくりと喉を鳴らすリーシャを始めとする僕以外の全員。
「マヨネーズが作れる」
「マヨ…?」
「うん。野菜につけて食べるとめちゃくちゃおいしい」
「ほぅ」
どうやらフリードリヒも気になり始めたようで瞳が輝いた。話を聞いている侍女さん達も気になり始めたのかそわそわとしているようにも見える。
「レイジス様。材料と道具でございます」
「わお!」
準備が早い! 侍女さん達も気になってたみたいだからね! ちゃっちゃと作ってごちそうしてみよう!
「でもこれだけで本当にできるのですか?」
「うん。これ全部入れてしゃかしゃかと振るだけだから」
「しゃかしゃかとふる?」
言いなれない言葉を口にするフリードリヒが妙に可愛く見えて「ふふっ」と笑うと「んんっ」と声がした。
でも言葉の意味が分かってなさそうだからジェスチャーで説明することにした。
「うん。こうやって…」
エア瓶を掴んでその腕を上下に振ると、そっと後ろからその手を止められた。僕の後ろにいるのはジョセフィーヌ。振り返り彼女を見ればなぜか首を左右に振られた。
え? なに?
「なるほど。そうやって作るのか。けどレイジス。その手の動きはダメだ」
「は、え? はい?」
膝の上に肘を置いて手を組みその上に顎を乗せて僕をじっと見つめてくるパンジー色は恐ろしく真剣だ。その瞳にちょっとだけ身体を後ろに引きながらこくりと頷けば、その気配が柔らかくなった。何だったんだ? 一体…。
「じ、じゃあ作っていくね」
あ、でも手を洗ってないや。すると「あ、浄化魔法使って手を綺麗にしておきましたよ!」とリーシャが元気よく答えてくれた。あ、ありがとう。
よーっし! そこまで期待されてるなら美味しいの作っちゃうぞー!たぶん誰が作っても一緒だけど!
準備された卵を手にしてささっと割って瓶の中へ。うん。いい卵だ。黄身がぷっくりと膨らんでる新鮮なものだね。これにオリーブオイルとお酢を目分量で入れて最後に塩を入れ蓋をする。瓶をひっくり返して零れないことを確認すると元に戻し、瞳を閉じて呼吸を整える。
そしてカッと目を見開くと勢いよく腕を動かし始める。
「レ、レイジス?!」
ちょ、今話しかけないで! 必死だから!
うおおおおおお! と心で叫びながら腕を振っていると、その腕をそっと誰かが止めた。ふぉ?! ビックリした!
はぁはぁと息を乱し、肩を上下に動かしながらその手を視線で追っていくとやっぱり止めたのはジョセフィーヌだった。
「無理をなさらないでください」
「むり…は、してない…」
ぜーはーと息をする僕からするっと瓶を取り上げられるとなぜかアルシュへと渡された。
「これを振ればよろしいのですね?」
「ん…そう…」
こくりと頷けば、アルシュが僕以上の勢いで瓶を上下に振り始めた。す…すごい…! 本来ならミキサーで作るけどそれと同じような勢い…! さすが体力が作られてるだけはある…!
2分程瓶を振り疲れた様子もないアルシュが「これでよろしいですか?」と瓶を渡してくれる。それに「ありがとう」とにこりと微笑みながら受け取ると、アルシュもにこりと笑う。ほわぁ、アルシュが笑ったぁ…。
「アルシュ」
「おっと。では失礼します」
フリードリヒの低い声をもろともせず何食わぬ顔で元の位置に戻るアルシュ。なんか可愛かったなー。とほんわかとした気持ちになりながらにこにことしているとリーシャが「それより!」と声を上げる。
おっと、そうだった。胸にある瓶を底、それからくるりと一周してちゃんと混ざっている事を確認すると蓋を開ける。途端、ふわりと鼻孔を擽る嗅ぎなれた匂い。
瓶をテーブルに置いて蓋に着いたそれを指で掬い取ってぺろりと舐めれば「レイジス様!」とリーシャが焦った声が聞こえた。だいじょぶだいじょぶ。うん。ちゃんとできてる。
「うん、だいじょぶ」
「大丈夫じゃありませんよ! ピアス! 見せてください!」
「え? あ、うん」
アルシュの次はリーシャが大股で近付いて来くるまえに横髪を耳にかける。そしてピアスをじいっと見つめ手をかざすとほっと息を吐いた。
「…いきなり食べるのはやめてください」
「ごめんなさい」
「食べるときは少なくとも誰かに食べさせてから食べてくださいね?」
「はい…」
リーシャの真剣な声色に僕は反省すると、ノアがなぜそうしなければならないのかということを教えてくれた。じゃあ、今まで僕が口にしたもの全部誰かが食べてるんだよね? 危ないものとか入ってたのかな?
「そんな顔をするな。私の分はこの三人が先に食べるのだぞ?」
「え…?」
それってつまり…。
僕の考えていた事に、フリードリヒがにこりと笑うと「お野菜をお持ちしました」と侍女さんがスティック状にした人参やキュウリをお皿に山盛りにして盛ってきた。あれ? 今日の夕飯とサラダの材料とかじゃないよね?!
それをテーブルに置かれ、さて誰が食べるかという問題にあたった。もう僕が食べてるからマヨネーズ自体に問題はないことが分かってる。なら次は。
「いただこうか」
しゅわっとフリードリヒの手が光ったのを見てあれが一般的な浄化魔法かと、ほへーと間抜けな表情で見ていたのだろう。
「またあとで見せてあげますから!」とリーシャに言われた。わーい!
キュウリを手に取ったので僕も慌てて人参を摘まんで、瓶を傾け皿の端にそれをだばぁと全て豪快に盛り付ける。それを見たフリードリヒがくつくつと笑うけど仕方ないじゃん!
ムッとして人参をぱくりと口の中に入れるとフリードリヒもマヨネーズを付けて一口。するとパンジー色の瞳がみるみる大きくなっていった。あれ? 口に合わなかったかな? なんて思いながらぽりぽりと人参を食べているとフリードリヒが咀嚼していたものを飲み込んだ。
「これは…悪魔の調味料か…?」
「え?」
「これはすごいな…アルシュ、リーシャ、ノア!」
「はぁーい!」
「では」
「失礼します」
待ってました!と早速手を伸ばすリーシャと、アルシュとノアも人参ときゅうり、それぞれを口に運ぶ。
「!」
それぞれが固まるのを見てから、フリードリヒが僕を見た。
「レイジス」
「は、はい!」
しゃきんと背を伸ばし言葉を待つ。何かやばい?
するとふ、と笑みを浮かべ「食べさせてみろ」と侍女さん達を見た。ん? ああ! 侍女さん達そわそわしてるもんね! これがあればポテトサラダとか料理のレパートリーが増えるぞー!
ジョセフィーヌを呼んで「これ頼んでもいい?」と聞けば「はい、お任せください」とそわそわしてる彼女を見てふふっと笑う。
「じゃあ、後はお願いね」
「は、はい! かしこまりました!」
そそくさと野菜の盛り合わせを下げていく侍女さんの足取りが少しだけ早いのは気のせいだろうか。でもなんか気に入ってくれたようで安心した。
その後姿を見送ると、がっしと肩を掴まれた。ひぇ?! 何?!
「レイジス様…!」
「ひょわ?!」
リーシャがどこか恨めし気に見つめてくることにあわわと焦っていると「リーシャ」とアルシュが咎める。
「あれだけしか食べられないの辛いよぉ!」と珍しく叫ぶリーシャに耐え切れず吹き出すと「レイジス様酷い!」と言われた。
じゃあ侍女さんに言ってもう一度作ろうかな。なんだかみんな食べたりなさそうだし。
こうして「悪魔の食べ物・マヨネーズ」がこの異世界に誕生した。
「うー…」
フリードリヒの膝の上に向かい合って座らされただいま叱られ中。
なんでこうなったかって? 侍女さん達にお願いしてキッチンに行ったまではよかったんだよ。そこから調味料探しを始めて棚とかごそごそしてたらジョセフィーヌに見つかった。
協力してくれた(なんか怯えてたけど強要したわけじゃないぞ! 断じて!)侍女さんが怒られるかも、と危惧した僕はジョセフィーヌに事情を説明した。ものすごい顔をしていた彼女も僕の説明を最後まで聞いてくれたけど「後でフリードリヒ殿下のお叱りを受けてください」と言われてしまったのだ。
なんでわざわざフリードリヒに?なーんて思ってたらこれ。
恥ずかしいってレベルじゃなく、恥ずかしい。
だって護衛三人+侍女さんたち。その人たちに見られながら今、なぜそんなことをしたのかとフリードリヒに優しく聞かれている。
「危ないからキッチンへは入らないでくださいって言いましたよね?」
「はぃ…」
リーシャの棘のある言葉に肩を落とすと、頭を撫でられる。慰められているようだが恥ずかしさが更に増し、顔があげられない。
ううう…まさかこんなことになるなんて…!
「それで? なぜ言いつけを守らなかった?」
「だって…」
むにむにと頬を摘ままれ軽く引っ張られる。早く言って楽になってしまえというフリードリヒの催促に、ちらりと上目遣いで彼を見ればなぜかにこにこと微笑んでいる。
楽しそうだな! おい!
それにムッとして唇を尖らせると途端に表情が緩むが「フリードリヒ殿下」と氷のような冷たさでアルシュがフリードリヒを呼べば、キリッとした表情に戻る。おおう、どうしたの。
「んんっ、それで? 言い訳があるなら聞くぞ?」
フリードリヒのその言葉に不機嫌な顔からぱあっと希望に満ちた表情を向ければ「甘すぎる…」とリーシャが呟いた。それにジョセフィーヌも頷いてそうだけど気にしない!
言い訳があるから聞いてもらおうぞ!
「味が薄くて…」
「んんっ?!」
そう。料理の味が薄い、とそれとなく伝えてみたらその場にいる全員が固まった。
それはもう見事に。どうした?
「おーい」
フリードリヒの前でひらひらと掌を振ってみるが、固まっている。ホントになんだよ。
フリードリヒは使い物にならないと判断し周りを見てみると、リーシャがものすごい顔で僕を見ていた。リーシャは素直だなぁ…。好感が持てるよ。
と、言う訳でリーシャに聞いてみよう!
「リーシャぁ…」
「…レイジス様ってアホなの?」
「んな?!」
思ってもみない言葉にちょっとだけショックを受ける。そりゃ僕はアホだけど…。大学だってごにょごにょもにょもにょ。
だがバイトで培ったあれやこれは使えるんだからな! ホントだぞ!
ぐぬぬとリーシャを見ればもうどうでもいいというように「何の味が薄かったんですか?」と投げやりな言葉が返ってきた。
それに首を傾げながらぱちりと瞬きを一つ。
「なにって…料理の味、だけど?」
むしろそれ以外何があるのか。
すると「なんだ、料理か」と固まっていたフリードリヒが華麗に復活した。
なんなんだよ。
「レイジス様は言葉が足りないんですよ」
「どこが?!」
しゃあ!とリーシャに噛み付けば「はいはい」と軽くあしらわれてしまった。ううー!リーシャに勝てない!勝ち負けじゃないけど!
するとぎゅうとなぜかフリードリヒに抱き締められ、今度は僕が固まった。急に何?!
「よかった…」
「な、なにが…?!」
僕の胸に顔を押し当ててすりすりと猫が甘えるようなしぐさをするフリードリヒにただただ困惑する。てか何やってんの?! この人?!
離れろー! と服を引っ張って見るが効果はなし。ちょっと! 護衛三人組! どうにかしてよ! と助けを求めるが、なぜか生温かく見守ってくれている。
ならば!
一縷の望みを抱いてジョセフィーヌを見れば、すんっとプロの侍女になっていた。
もしかして料理の味が薄いって言ったのが気に障った?! ごめんて!謝るから助けて!
つかその間もずっと胸に顔を埋めているフリードリヒをどうにかして!
「ふぁ?!」
ってどさくさに紛れて尻を触らないでください! お巡りさん! ここ! ここに痴漢がいますー!
「フリードリヒ殿下、約束はお忘れになられたのですか?」
するとノアが口を開き、びくりとフリードリヒの尻を触る指が跳ねた。
そしてゆっくりと尻から手が離れていくと、ほっと息を吐いた。というかなーんの膨らみもない男の胸に顔を埋めてるけどそれでいいのか? あ、この世界BLだったわ。
だったらなおのことよくない! 僕自身がBLになるのではない! 僕以外の男同士の絡みが見たいんだよ!
でもそれが見られるのは来年。それまでどうやって生きていけばいいんだ! と思ったけど死ぬ準備があるから生きなきゃな! 何この矛盾!
「フリードリヒ殿下」
「…なんだ」
胸に顔を埋めたまま話すからびりびりとしたものが響く。ううーん…。これどうすればいいの?
ぎゅうぎゅうとさらに抱き付いてくるフリードリヒに困ってしまう。まずはとにかく離れさせよう。うん。多少の恥は仕方ない! 覚悟を決めろ!
覚悟を決めるとそっと頭を撫でてやる。するとぴくりと反応した。うんうん、いい感じだ。そしてちゅと頭にキスを落とす。
するとすぐさま顔が上を向き、パンジー色が揺らめいた。
よし! 離れたな!
小さく心でガッツポーズをすると、するりと頬を掌で包まれた。
「はえ?」
「レイジス」
離れてほっとしたのもつかの間。そのままちゅっと触れるだけのキスをされる。
あまりに突然の出来事に何が起きたのか理解できず、ぽかんとしているとリーシャの「やっぱりアホだった…」という呟きがやけに大きく聞こえた。
「あのー…?」
そこへおずおずと声をかけてきた人に全員の視線が集まる。僕とフリードリヒ以外の。
「お取込み中…でしたよね?」
「いえ。助かりました」
ジョセフィーヌの声にハッと我に返ると、にっこりと笑うフリードリヒの顔が思いの外近くにあって僕は顔を後ろに動かそうとしたが動かせないことに気付いた。
そうだった! 今がっちり拘束されてる!
というか人前でキス…した、よ…ね?
ちら、とアルシュを見ればその視線に意味に気付いたのか、それはそれは重く頭を縦に動かす。
「ふ…」
「ふ?」
「ふぉあああああっ?!」
「レイジス?!」
奇声を上げながらばっと両手で顔を隠す。恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい!
人前でキスとか…キ…。
ぶわわと全身が熱くなる。こんなことならまだ高熱の方がまだマシだよ!
「レイジス?! どうした?!」
「ひええええええぇぇん!」
「む、これはいけない! また熱が上がってきてるな!」
「うわあああああぁん! フリードリヒのばかああぁっ!」
「急いでベッドの用意を!」なんて言ってるけど違うから! あんたのせいだから!
でも王子様の言うことを無視するわけにもいかず侍女さんたちがばたばたと動き始める。ごめんて! ホントごめんて!
「はぁ…。落ち着くまでここでお待ちください」
「は、はぃ…」
わぁわぁと騒ぐ僕らを他所にそんな会話をしているジョセフィーヌ。
っていうかその人誰?!
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「これから一ヶ月、教師を務めますソルゾと申します。よろしくお願いします」
「先程はお見苦しい所をお見せしました」
深々と頭を下げる僕に、やっぱりびくびくしてる先生。微妙に距離があるのは物理的に怖いからなのか? まぁ…今更驚かないけどね!
やんややんやと大騒ぎした後、それぞれがお灸をすえられた。ごめんなさい。
これから一ヶ月お世話になる先生との顔合わせ。
優しそうな先生でほっとした。なんかこう…気難しそうなおじいちゃん先生とかだったらどうしようかと思ってた。
「教師になってまだ日が浅いのでその…至らないこともあると思いますが…」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
妙におどおどしている先生に、にこりと笑いかければ「ひっ」と小さな悲鳴が聞こえた。…解せぬ。
けど笑顔は崩さずにいる。
今日は顔合わせだけだからこれでおしまい。お疲れ様でしたー。また明日、よろしくお願いしまーす!
先生が帰ってしまえばいつものメンバーが部屋に残る。なんだか安心できるんだよなぁ…。うん。
それから侍女さんが新しいお茶を持ってきてくれてそれを飲んでいるとフリードリヒの口元がにんまりと持ち上がった。
「それよりレイジス」
「はい?」
「なぜキッチンに行ったんだい?」
「…蒸し返さないでください」
突然何を言い出したのかと思えば…。ただちょーっと調味料を漁りに行っただ…うわぁ…リーシャの視線が超痛い…。
ちらりとジョセフィーヌを見れば、彼女もまた僕を見ていた。ううう…分かったよー。
「味が薄いから…調味料を増やそうと思って…」
「調味料?」
「う…はい。だって塩と胡椒だけじゃ味気なくて…」
美味しく調理してくれてる侍女さん?には悪いけどさ…。もごもごと言葉が口に中に溜まっていく。
「だから作れないかなーって」
「作る?」
僕の言葉にリーシャが食い付く。え? どこに食い付く要素があったの?!
リーシャの瞳がきらきらとしているのは気のせいだろうか。
「ざ、材料と道具があれば…」
「材料は?! 道具は?! 直ぐに用意できる?!」
「え? え?」
「リーシャ」
「だって作れるんだよ?! すごくない?! ちなみに何が作れるの?!」
「え…えっと…?」
なんでこんなにぐいぐい来るの?! あっ! もしかしてリーシャも物足りない口か?! 仲間か?!
よし! いいだろう!
「卵にお酢、油に塩。あとは…瓶があれば…」
「あれば?」
ごくりと喉を鳴らすリーシャを始めとする僕以外の全員。
「マヨネーズが作れる」
「マヨ…?」
「うん。野菜につけて食べるとめちゃくちゃおいしい」
「ほぅ」
どうやらフリードリヒも気になり始めたようで瞳が輝いた。話を聞いている侍女さん達も気になり始めたのかそわそわとしているようにも見える。
「レイジス様。材料と道具でございます」
「わお!」
準備が早い! 侍女さん達も気になってたみたいだからね! ちゃっちゃと作ってごちそうしてみよう!
「でもこれだけで本当にできるのですか?」
「うん。これ全部入れてしゃかしゃかと振るだけだから」
「しゃかしゃかとふる?」
言いなれない言葉を口にするフリードリヒが妙に可愛く見えて「ふふっ」と笑うと「んんっ」と声がした。
でも言葉の意味が分かってなさそうだからジェスチャーで説明することにした。
「うん。こうやって…」
エア瓶を掴んでその腕を上下に振ると、そっと後ろからその手を止められた。僕の後ろにいるのはジョセフィーヌ。振り返り彼女を見ればなぜか首を左右に振られた。
え? なに?
「なるほど。そうやって作るのか。けどレイジス。その手の動きはダメだ」
「は、え? はい?」
膝の上に肘を置いて手を組みその上に顎を乗せて僕をじっと見つめてくるパンジー色は恐ろしく真剣だ。その瞳にちょっとだけ身体を後ろに引きながらこくりと頷けば、その気配が柔らかくなった。何だったんだ? 一体…。
「じ、じゃあ作っていくね」
あ、でも手を洗ってないや。すると「あ、浄化魔法使って手を綺麗にしておきましたよ!」とリーシャが元気よく答えてくれた。あ、ありがとう。
よーっし! そこまで期待されてるなら美味しいの作っちゃうぞー!たぶん誰が作っても一緒だけど!
準備された卵を手にしてささっと割って瓶の中へ。うん。いい卵だ。黄身がぷっくりと膨らんでる新鮮なものだね。これにオリーブオイルとお酢を目分量で入れて最後に塩を入れ蓋をする。瓶をひっくり返して零れないことを確認すると元に戻し、瞳を閉じて呼吸を整える。
そしてカッと目を見開くと勢いよく腕を動かし始める。
「レ、レイジス?!」
ちょ、今話しかけないで! 必死だから!
うおおおおおお! と心で叫びながら腕を振っていると、その腕をそっと誰かが止めた。ふぉ?! ビックリした!
はぁはぁと息を乱し、肩を上下に動かしながらその手を視線で追っていくとやっぱり止めたのはジョセフィーヌだった。
「無理をなさらないでください」
「むり…は、してない…」
ぜーはーと息をする僕からするっと瓶を取り上げられるとなぜかアルシュへと渡された。
「これを振ればよろしいのですね?」
「ん…そう…」
こくりと頷けば、アルシュが僕以上の勢いで瓶を上下に振り始めた。す…すごい…! 本来ならミキサーで作るけどそれと同じような勢い…! さすが体力が作られてるだけはある…!
2分程瓶を振り疲れた様子もないアルシュが「これでよろしいですか?」と瓶を渡してくれる。それに「ありがとう」とにこりと微笑みながら受け取ると、アルシュもにこりと笑う。ほわぁ、アルシュが笑ったぁ…。
「アルシュ」
「おっと。では失礼します」
フリードリヒの低い声をもろともせず何食わぬ顔で元の位置に戻るアルシュ。なんか可愛かったなー。とほんわかとした気持ちになりながらにこにことしているとリーシャが「それより!」と声を上げる。
おっと、そうだった。胸にある瓶を底、それからくるりと一周してちゃんと混ざっている事を確認すると蓋を開ける。途端、ふわりと鼻孔を擽る嗅ぎなれた匂い。
瓶をテーブルに置いて蓋に着いたそれを指で掬い取ってぺろりと舐めれば「レイジス様!」とリーシャが焦った声が聞こえた。だいじょぶだいじょぶ。うん。ちゃんとできてる。
「うん、だいじょぶ」
「大丈夫じゃありませんよ! ピアス! 見せてください!」
「え? あ、うん」
アルシュの次はリーシャが大股で近付いて来くるまえに横髪を耳にかける。そしてピアスをじいっと見つめ手をかざすとほっと息を吐いた。
「…いきなり食べるのはやめてください」
「ごめんなさい」
「食べるときは少なくとも誰かに食べさせてから食べてくださいね?」
「はい…」
リーシャの真剣な声色に僕は反省すると、ノアがなぜそうしなければならないのかということを教えてくれた。じゃあ、今まで僕が口にしたもの全部誰かが食べてるんだよね? 危ないものとか入ってたのかな?
「そんな顔をするな。私の分はこの三人が先に食べるのだぞ?」
「え…?」
それってつまり…。
僕の考えていた事に、フリードリヒがにこりと笑うと「お野菜をお持ちしました」と侍女さんがスティック状にした人参やキュウリをお皿に山盛りにして盛ってきた。あれ? 今日の夕飯とサラダの材料とかじゃないよね?!
それをテーブルに置かれ、さて誰が食べるかという問題にあたった。もう僕が食べてるからマヨネーズ自体に問題はないことが分かってる。なら次は。
「いただこうか」
しゅわっとフリードリヒの手が光ったのを見てあれが一般的な浄化魔法かと、ほへーと間抜けな表情で見ていたのだろう。
「またあとで見せてあげますから!」とリーシャに言われた。わーい!
キュウリを手に取ったので僕も慌てて人参を摘まんで、瓶を傾け皿の端にそれをだばぁと全て豪快に盛り付ける。それを見たフリードリヒがくつくつと笑うけど仕方ないじゃん!
ムッとして人参をぱくりと口の中に入れるとフリードリヒもマヨネーズを付けて一口。するとパンジー色の瞳がみるみる大きくなっていった。あれ? 口に合わなかったかな? なんて思いながらぽりぽりと人参を食べているとフリードリヒが咀嚼していたものを飲み込んだ。
「これは…悪魔の調味料か…?」
「え?」
「これはすごいな…アルシュ、リーシャ、ノア!」
「はぁーい!」
「では」
「失礼します」
待ってました!と早速手を伸ばすリーシャと、アルシュとノアも人参ときゅうり、それぞれを口に運ぶ。
「!」
それぞれが固まるのを見てから、フリードリヒが僕を見た。
「レイジス」
「は、はい!」
しゃきんと背を伸ばし言葉を待つ。何かやばい?
するとふ、と笑みを浮かべ「食べさせてみろ」と侍女さん達を見た。ん? ああ! 侍女さん達そわそわしてるもんね! これがあればポテトサラダとか料理のレパートリーが増えるぞー!
ジョセフィーヌを呼んで「これ頼んでもいい?」と聞けば「はい、お任せください」とそわそわしてる彼女を見てふふっと笑う。
「じゃあ、後はお願いね」
「は、はい! かしこまりました!」
そそくさと野菜の盛り合わせを下げていく侍女さんの足取りが少しだけ早いのは気のせいだろうか。でもなんか気に入ってくれたようで安心した。
その後姿を見送ると、がっしと肩を掴まれた。ひぇ?! 何?!
「レイジス様…!」
「ひょわ?!」
リーシャがどこか恨めし気に見つめてくることにあわわと焦っていると「リーシャ」とアルシュが咎める。
「あれだけしか食べられないの辛いよぉ!」と珍しく叫ぶリーシャに耐え切れず吹き出すと「レイジス様酷い!」と言われた。
じゃあ侍女さんに言ってもう一度作ろうかな。なんだかみんな食べたりなさそうだし。
こうして「悪魔の食べ物・マヨネーズ」がこの異世界に誕生した。
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