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134.追い詰められて

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 あゆたの心は萎えてしまって、もうどうしたらいいのかわからない。

 ラウンジに座り込んで動けなくなる。

 厭だ。

 怖い。

 次にあのドアが開いて入ってくるのは、名も知らぬアルファである。

 あゆたはぎゅっと胸のまで両手を握り合わせた。

 初めて体を合わせるなら好きな人がいい、などと乙女のような願望があったわけではない。

 好きな人すらついこないだまでいなかった。初恋の自覚をしても、その八月一日宮とどうにかなりたいとは高望みだとわかりきっている。それは余りに遠い夢のようなものだった。

 発情期が来れば何かの役に立つ。

 呪いのように吹き込まれてきたから。

 いつかは必ず来ることだった。

 しかしだからといって、こういうふうに純潔を売買されることは受け入れがたかった。

 胸がどきどきしている。発情期のせいか、恐怖のせいか。そのどちらでもあるかもしれない。

 動物に与える生肉みたいに、ぽんと地に投げ捨てられて、あゆたはお金の代わりに誰かに犯されるのか。

 誰かに助けを求める? どうやって?

 備え付けの電話でレセプションには連絡できる。

 しかしこのホテルが梅渓とどういう繋がりかもわからない。信善はレセプションも顔パスであゆたをつれてここまで来た。上客なのは間違いない。

 助けてくれる見込みは少なそうだった。

 焦りで髪をくちゃくちゃにしながら、ふとあゆたは顔を上げた。

 壁際のインテリアのようにスツールの上に花瓶があった。

 
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