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32.友だちのありがたみ
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あゆたはアルバイトで放課後や週末も忙しい。
そもそも上流階級のコネクションがあるわけでもないあゆたには、付き合ってもなんのうまみはない。その上アルファは自分のオメガを本能的に求めるので、オメガのフェロモンのないあゆたはベータと同じで彼らの視界に入らない。
そのあたりは割り切っているので気にしない。しかし高校の三年間アルファだらけの一組で、友達のひとりもいなければわびしすぎるだろう。
あゆたに付き合ってもなんの得にもならない。それでも於兎はあゆたの傍ににこにこといてくれる。あゆたはこの友人に感謝しているのだった。
「うん、おはよう! 元気になったの?」
「ああ、ありがとう。もう熱はひいた」
「よかった! あの、それで、あの、さっきの、一年の八月一日宮くん……」
なんだかもじもじしている。上目遣いにあゆたを見てくるさまが、恥ずかしがり屋のハムスターみたいだった。
「ん? ああ。於兎に頼みがあるんだけど、昨日のノート見せてくれる?」
「それはいいけど、って、そうじゃなくて、え、あゆたくん、八月一日宮くんと仲良かったの?」
「あ? 別に、仲良くはない。委員会が一緒なだけ」
委員会が同じだけの後輩が何故あゆたをおんぶしていたのか? と於兎は茶色の目をくるくるさせた。
控えめな癖に一度決めると妙な頑固さを発揮する於兎だから、これはきちんと説明しないと納得しないだろう。
いつまでももじもじする於兎を放置することもできず、あゆたはぶつかりざまねん挫したことと、責任感の強い八月一日宮の送迎の顛末をかいつまんで話して聞かせた。
「はえ~、大きな怪我しなくてよかったけど、大変だったね。ご飯とか、大丈夫なの?」
梅渓で居候というあゆたの事情を把握している於兎は、気の毒そうに眉を下げた。
「ああ、問題ない。なんとかなっている」
「本当? あゆたくんって修行僧みたいなところあるから」
「修行僧って」
ちょっと笑いそうになってしまったが、於兎は真剣な面持ちだった。あゆたも居住まいをただした。
そもそも上流階級のコネクションがあるわけでもないあゆたには、付き合ってもなんのうまみはない。その上アルファは自分のオメガを本能的に求めるので、オメガのフェロモンのないあゆたはベータと同じで彼らの視界に入らない。
そのあたりは割り切っているので気にしない。しかし高校の三年間アルファだらけの一組で、友達のひとりもいなければわびしすぎるだろう。
あゆたに付き合ってもなんの得にもならない。それでも於兎はあゆたの傍ににこにこといてくれる。あゆたはこの友人に感謝しているのだった。
「うん、おはよう! 元気になったの?」
「ああ、ありがとう。もう熱はひいた」
「よかった! あの、それで、あの、さっきの、一年の八月一日宮くん……」
なんだかもじもじしている。上目遣いにあゆたを見てくるさまが、恥ずかしがり屋のハムスターみたいだった。
「ん? ああ。於兎に頼みがあるんだけど、昨日のノート見せてくれる?」
「それはいいけど、って、そうじゃなくて、え、あゆたくん、八月一日宮くんと仲良かったの?」
「あ? 別に、仲良くはない。委員会が一緒なだけ」
委員会が同じだけの後輩が何故あゆたをおんぶしていたのか? と於兎は茶色の目をくるくるさせた。
控えめな癖に一度決めると妙な頑固さを発揮する於兎だから、これはきちんと説明しないと納得しないだろう。
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「ああ、問題ない。なんとかなっている」
「本当? あゆたくんって修行僧みたいなところあるから」
「修行僧って」
ちょっと笑いそうになってしまったが、於兎は真剣な面持ちだった。あゆたも居住まいをただした。
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