82 / 165
文明的な労働
しおりを挟む
俺たちが自然史博物館を出る前にもひと悶着あった。
チャールスがよりにもよって、エルフを展示しようとした。
つまり、我らがポトポト王のミリアさんを柵の中に入れようとしたのだ。
もちろんローキックで、向こう脛をしたたかに蹴られていた。
チャールスは見学者に対して、「ンッー!皆様落ち着いて、これはエルフの文化です!」とか言っていたが、俺の知る限り、こんなことをするのはミリアだけである。
さて、最後はイギニスの産業の見学らしいが……もう嫌な予感しかしねえな!
俺たちは再度、クソ遅い自動車に乗せられてどんぶらこと移動し、いくつもの煙突が生えまくった、赤レンガの建物の前に着いた。
おお、いかにもな工場だな。
オーマも似たようなことはしているが、規模感がダンチだ。
「ンッンー!ここがイギニスが世界に誇る!工場でございます!ンッンー!」
中に通されて工場を見る。ほう、大体、小中学校の教科書で見るような感じだ。
織物をする器械が並んでいて、ゴンゴンゴンという音と一緒に、大量の布がラインを流れていく。
機械には大量の糸を供給しなければならないが、その作業をしているのは、象っぽい人たちだ。この人たちは、亜人動物園でも見たな?
象っぽい人たちは、ミリアがすっぽりと4人は入りそうな、でっかい白いシャツとズボンの統一された服装だ。
彼らがえんやこらと、糸の入った箱を機械に補充して、出来上がった布をどこかへ運んでいる。
「ここで働いているのは、先ほどの動物園にもいたな。象人……でいいのか?」
「ンッンー左様です!文明の存在しないインダから、この地にやってきた彼ら象人は、実に文明的な労働をしていますン!」
文明的、というわりには、その服装は統一され、まるで機械のように働かされているが……?いや、機械の俺が言うのもおかしいが。
「……イギニスの文明的、というのは、人が工場の歯車の一つとして、物も言わずに働くという意味か?」
「ンッンー!それは少々意地の悪い、視点からの見方ですね!」
「彼らはインダに居れば、古代竜の奴隷となり、草を育て、バナーナを食べ、その日使うだけの布や道具を作る。ただそれだけの、未開の生活をしていましたン!」
「古代竜と暮らしていたのか彼らは……?」
「ンッンー!そうですね!」
どう考えても、古代竜が攻めてきてる理由、それじゃねーか!!!!!
「……古代竜はそれを怒って攻めてきているのでは?」
「ンッンー!ナンセンス!所詮は動物でしょーぅ!貨幣も使わずに、その日ぐらしをしていた彼らに、そんな知性があるとは思えませーンン!!」
そのとき、バンッっと大きな音がして、糸の入った箱が転がった。
「何が文明でごわすか、もうやってられんでごわす!」
「なんで自分が着るわけでもない服の為に、毎日こんな思いをするでごわっど!」
「そうでごわっど!!もうたくさんでごわっど!!」
象人たちが口々に不平を口にして、仕事の手を止めてしまった。このために、機械から吐き出される布は、勢いを無くして止まってしまった。
「ンッンー!いけません!暴動が発生しましたンー!」
「……働く人間の前で、堂々と小馬鹿にするような事を言うからだ」
「ンン!ンー!お助けください機人様!チャールスとあなたは『友人』!そうではありませんかンンン!!!」
「……なるほど、『友人』ならば、友が誤った道を歩みそうなとき、それを止めてあげるのもまた、友人のつとめだな?」
「ンッンー!何をするのですかアッハーン!」
俺はチャールスをつまみ上げると、象人の中に放り込んだ。
「殺さなければ何をしてもいい。少しは薬になるだろう」
「「ごわっどごわっど!!!」」
ガシッ!ボカ!ブリュッセル!!ジョンブリュッ!!!
――といった具合でチャールスはもみくちゃにされた。
埃っぽい工場が、さらに埃っぽくなった煙の後に残されたのは……
ボロボロになって、尻に布のロールを突っ込まれたチャールスだった。
まあ、管理者責任という事でここはひとつ。
チャールスがよりにもよって、エルフを展示しようとした。
つまり、我らがポトポト王のミリアさんを柵の中に入れようとしたのだ。
もちろんローキックで、向こう脛をしたたかに蹴られていた。
チャールスは見学者に対して、「ンッー!皆様落ち着いて、これはエルフの文化です!」とか言っていたが、俺の知る限り、こんなことをするのはミリアだけである。
さて、最後はイギニスの産業の見学らしいが……もう嫌な予感しかしねえな!
俺たちは再度、クソ遅い自動車に乗せられてどんぶらこと移動し、いくつもの煙突が生えまくった、赤レンガの建物の前に着いた。
おお、いかにもな工場だな。
オーマも似たようなことはしているが、規模感がダンチだ。
「ンッンー!ここがイギニスが世界に誇る!工場でございます!ンッンー!」
中に通されて工場を見る。ほう、大体、小中学校の教科書で見るような感じだ。
織物をする器械が並んでいて、ゴンゴンゴンという音と一緒に、大量の布がラインを流れていく。
機械には大量の糸を供給しなければならないが、その作業をしているのは、象っぽい人たちだ。この人たちは、亜人動物園でも見たな?
象っぽい人たちは、ミリアがすっぽりと4人は入りそうな、でっかい白いシャツとズボンの統一された服装だ。
彼らがえんやこらと、糸の入った箱を機械に補充して、出来上がった布をどこかへ運んでいる。
「ここで働いているのは、先ほどの動物園にもいたな。象人……でいいのか?」
「ンッンー左様です!文明の存在しないインダから、この地にやってきた彼ら象人は、実に文明的な労働をしていますン!」
文明的、というわりには、その服装は統一され、まるで機械のように働かされているが……?いや、機械の俺が言うのもおかしいが。
「……イギニスの文明的、というのは、人が工場の歯車の一つとして、物も言わずに働くという意味か?」
「ンッンー!それは少々意地の悪い、視点からの見方ですね!」
「彼らはインダに居れば、古代竜の奴隷となり、草を育て、バナーナを食べ、その日使うだけの布や道具を作る。ただそれだけの、未開の生活をしていましたン!」
「古代竜と暮らしていたのか彼らは……?」
「ンッンー!そうですね!」
どう考えても、古代竜が攻めてきてる理由、それじゃねーか!!!!!
「……古代竜はそれを怒って攻めてきているのでは?」
「ンッンー!ナンセンス!所詮は動物でしょーぅ!貨幣も使わずに、その日ぐらしをしていた彼らに、そんな知性があるとは思えませーンン!!」
そのとき、バンッっと大きな音がして、糸の入った箱が転がった。
「何が文明でごわすか、もうやってられんでごわす!」
「なんで自分が着るわけでもない服の為に、毎日こんな思いをするでごわっど!」
「そうでごわっど!!もうたくさんでごわっど!!」
象人たちが口々に不平を口にして、仕事の手を止めてしまった。このために、機械から吐き出される布は、勢いを無くして止まってしまった。
「ンッンー!いけません!暴動が発生しましたンー!」
「……働く人間の前で、堂々と小馬鹿にするような事を言うからだ」
「ンン!ンー!お助けください機人様!チャールスとあなたは『友人』!そうではありませんかンンン!!!」
「……なるほど、『友人』ならば、友が誤った道を歩みそうなとき、それを止めてあげるのもまた、友人のつとめだな?」
「ンッンー!何をするのですかアッハーン!」
俺はチャールスをつまみ上げると、象人の中に放り込んだ。
「殺さなければ何をしてもいい。少しは薬になるだろう」
「「ごわっどごわっど!!!」」
ガシッ!ボカ!ブリュッセル!!ジョンブリュッ!!!
――といった具合でチャールスはもみくちゃにされた。
埃っぽい工場が、さらに埃っぽくなった煙の後に残されたのは……
ボロボロになって、尻に布のロールを突っ込まれたチャールスだった。
まあ、管理者責任という事でここはひとつ。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
クラスメイト達と共に異世界の樹海の中に転移しちまったが、どうやら俺はある事情によってハーレムを築かなければいけないらしい。
アスノミライ
ファンタジー
気が付くと、目の前には見知らぬ光景が広がっていた。
クラスメイト達と修学旅行に向かうバスの中で、急激な眠気に襲われ、目覚めたらその先に広がっていたのは……異世界だったっ!?
周囲は危険なモンスターが跋扈する樹海の真っ只中。
ゲームのような異世界で、自らに宿った職業の能力を駆使して生き残れっ!
※以前に「ノクターンノベルス」の方で連載していましたが、とある事情によって投稿できなくなってしまったのでこちらに転載しました。
※ノクターン仕様なので、半吸血鬼(デイウォーカー)などの変なルビ振り仕様になっています。
※また、作者のスタイルとして感想は受け付けません。ご了承ください。
魔力は最強だが魔法が使えぬ残念王子の転生者、宇宙船を得てスペオペ世界で個人事業主になる。
なつきコイン
SF
剣と魔法と宇宙船 ~ファンタジーな世界に転生したと思っていたが、実はスペースオペラな世界だった~
第三王子のセイヤは、引きこもりの転生者である。
転生ボーナスを魔力に極振りしたら、魔力が高過ぎて魔法が制御できず、残念王子と呼ばれ、ショックでそのまま、前世と同じように引きこもりになってしまった。
ある時、業を煮やした国王の命令で、セイヤは宝物庫の整理に行き、そこで、謎の球体をみつける。
試しに、それに魔力を込めると、宇宙に連れ出されてしまい、宇宙船を手に入れることになる。
セイヤの高過ぎる魔力は、宇宙船を動かすのにはぴったりだった。
連れて行かれたドックで、アシスタントのチハルを買うために、借金をしたセイヤは、個人事業主として宇宙船を使って仕事を始めることにする。
一方、セイヤの婚約者であるリリスは、飛んでいったセイヤを探して奔走する。
第三部完結
Tactical name: Living dead. “ Fairies never die――. ”
されど電波おやぢは妄想を騙る
SF
遠い昔の記憶なのでやや曖昧だが、その中でも鮮明に残っている光景がある。
企業が作った最先端のロボット達が織りなす、イベントショーのことだった。
まだ小学生だった頃の俺は両親に連れられて、とある博物館へと遊びに来ていた。
そこには色々な目的で作られた、当時の様々な工業機械や実験機などが、解説と一緒に展示されていた。
ラジコンや機械弄りが大好きだった俺は、見たこともない機械の物珍しさに、凄く喜んでいたのを朧げに覚えている。
その中でも人間のように二足歩行し、指や関節の各部を滑らかに動かして、コミカルなショーを演じていたロボットに、一際、興味を惹かれた。
それは目や鼻と言った特徴はない無機質さで、まるで宇宙服を着込んだ小さな人? そんな感じだった。
司会の女性が質問を投げ掛けると、人の仕草を真似て答える。
首を傾げて悩む仕草や、大袈裟に身振り手振りを加えたりと、仰々しくも滑稽に答えていた。
またノリの良い音楽に合わせて、ロボットだけにロボットダンスを披露したりもして、観客らを大いに楽しませていた。
声は声優さんがアテレコしていたのをあとから知るが、当時の俺は中に人が入ってるんじゃね? とか、本気で思っていたりもしていたくらいだ。
結局は人が別室で操作して動かす、正しくロボットに違いはなかった。
だがしかし、今現在は違う。
この僅か数十年でテクノロジーが飛躍的に進歩した現代科学。
それが生み出したロボットに変わるアンドロイドが、一般家庭や職場にも普及し、人と共に生活している時代だからだ。
外皮を覆う素材も数十年の間に切磋琢磨され、今では人間の肌の質感に近くなり、何がどうと言うわけではないが、僅かばかりの作り物臭さが残る程度。
またA.I.の発達により、より本物の人間らしい動き、表情の動きや感情表現までもを見事に再現している。
パッと見ただけでは、直ぐに人間と見分けがつかないくらい、精巧な仕上がりだ。
そんな昔のことを思い出している俺は、なんの因果か今現在、そのアンドロイドらと絶賛交戦中ってわけで――。
異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い
八神 凪
ファンタジー
旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い
【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】
高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。
満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。
彼女も居ないごく普通の男である。
そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。
繁華街へ繰り出す陸。
まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。
陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。
まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。
魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。
次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。
「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。
困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。
元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。
なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。
『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』
そう言い放つと城から追い出そうとする姫。
そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。
残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。
「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」
陸はしがないただのサラリーマン。
しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。
今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――
VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~
オイシイオコメ
SF
75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。
この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。
前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。
(小説中のダッシュ表記につきまして)
作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。
後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜
黄舞
SF
「お前もういらないから」
大人気VRMMORPGゲーム【マルメリア・オンライン】に誘った本人である幼馴染から受けた言葉に、私は気を失いそうになった。
彼、S級クランのクランマスターであるユースケは、それだけ伝えるといきなりクラマス権限であるキック、つまりクラン追放をした。
「なんで!? 私、ユースケのために一生懸命言われた通りに薬作ったよ? なんでいきなりキックされるの!?」
「薬なんて買えばいいだろ。次の攻城戦こそランキング一位狙ってるから。薬作るしか能のないお前、はっきり言って邪魔なんだよね」
個別チャットで送ったメッセージに返ってきた言葉に、私の中の何かが壊れた。
「そう……なら、私が今までどれだけこのクランに役に立っていたか思い知らせてあげる……後から泣きついたって知らないんだから!!」
現実でも優秀でイケメンでモテる幼馴染に、少しでも気に入られようと尽くしたことで得たこのスキルや装備。
私ほど薬作製に秀でたプレイヤーは居ないと自負がある。
その力、思う存分見せつけてあげるわ!!
VRMMORPGとは仮想現実、大規模、多人数参加型、オンライン、ロールプレイングゲームのことです。
つまり現実世界があって、その人たちが仮想現実空間でオンラインでゲームをしているお話です。
嬉しいことにあまりこういったものに馴染みがない人も楽しんで貰っているようなので記載しておきます。
「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.
あおっち
SF
海を埋め尽くすAXISの艦隊。
飽和攻撃が始まる台湾、金門県。
海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。
同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。
苫小牧市を守るシーラス防衛軍。
そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った!
SF大河小説の前章譚、第5部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
十六夜誠也の奇妙な冒険
シルヴィアたん
SF
平和な国ー日本ー
しかしこの国である日ウイルスが飛来した。このウイルスに感染したものは狂人と化し人間を見つけては襲いかかる。
狂人に噛まれたものも狂人へと変わる、、、
しかしある一定の年齢までならこのウイルスに感染しない。
これはウイルスに感染せずなお狂人に噛まれなかった少年少女たちの物語。
十六夜誠也と仲間達はウイルスについて、日本の状態についてを知るために狂人と戦う。
第2章
最強の超感染体ウェイパーを倒し、日本も段々と人が増え平和を手にした誠也たち。だが新たに強力な超感染体が次々と現れる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる