上 下
15 / 165

使い勝手がいいとはなんだったのか

しおりを挟む
 人間たちの前哨基地っぽい砦をテミスという爆弾で焼いた後、俺は続けて無人機を飛ばしていた。

 いくつかの人間たちの村や町の上を飛んでいたのだが、それでちょっと気付いたことがある。

 ミリアが機人さま!もう人間たちの軍隊のHPは0よ!というくらいまでやっておけば、ひとまず時間は稼げるかなと思っていたのだが、ちょっと中世ファンタジーの世界の実際というものを知らな過ぎたな、と思った。

 なんというか、軍と民間の区別が曖昧なのだ。

 畑にいる人たちは農具と一緒に槍やピカピカの兜を持ってるし、軍隊っぽいバケツ頭の群れは秩序だったキャンプや要塞だけではなく、普通の村にも出入りしている。

 そもそも軍事工場みたいなものも無くて、武器を作ってるような工房は普通に農具や鍋釜なんかも置いているようだ。

 すべての家々が軍事施設としての機能を持っている、これは厄介だ。

 やはりすべての人間の村を焼き払うかなんかしないと、エルフやドワーフ、蛮族と呼ばれる人たちへの攻撃はやむことが無いのだろう。

 俺が無人機が抱えている爆弾を今眼下の村に落としたら、それによって多くの人が死ぬだろう。
 それによって起きることに道徳的な問題はもちろん感じている。だがなりゆきで助けたエルフと人間は戦争という状況にある。そもそもがすべての道徳に反することを始めてしまっているのだ。

 俺はできるだけ大きな街を探してそこにBLU-330スキピオという爆弾を落とすことにした。
 なんか聞いたことのある名前だなあ、漫画かなんかにあった気がする。

 10分ほどとんだところで、川沿いに城壁に囲まれた都市を発見する。城塞都市というやつか。赤いレンガでつくられた美しい街並みが見える。
 俺が人間として転生して、冒険者としてスタートするならこういう街がいいね、もうそれはかなわないけど。

 スキピオを選択するとUIに投下位置が表示される。テミスと違って地面をこする楕円の表示はひとつだった。
 お、こいつは使い勝手のいい普通の爆弾っぽいな?ではさっそく、ポチっとな!

 落とした爆弾はパラシュートを開いてゆっくりと眼下の都市に落ちていく。
 おや?なんか雰囲気が違うな?

 カメラを回して爆弾を確認してみる。爆弾になにか開口部のようなものが見える。まさかガス弾か?
 しかし、眼下の街に何か影響が出ているようには見えない。
 これは何だ?猛烈に嫌な予感がして無人機を上昇させる。

 上昇させるために操作していると、眼下の街が唐突に表れた丸い炎に包まれた。
 オレンジ色をした、お饅頭のような丸い炎だった。
 その炎はパっと現れて城壁の内側を飲み込むと、ひと呼吸も無い次の瞬間に白い空気の波を発生させた。
 その空気の波は地上にあった城壁、川に浮かんでいた船、それらをすべてバラバラに解体して踏みつぶしていった。

 後には平たい土地とそれを囲うリングのような瓦礫の山しか残っていなかった。
 きれいさっぱり何もかもが消えた。
 
 使い勝手がいいと思ったがこれは最悪だな。
 いやはや、何もかもが無くなってしまったら、クラフトの材料が手に入らないじゃないか。

 俺は最後のシュリケンとかいう爆弾に望みを託して無人機の翼を西に向けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

40代(男)アバターで無双する少女

かのよ
SF
同年代の子達と放課後寄り道するよりも、VRMMOでおじさんになってるほうが幸せだ。オープンフィールドの狩りゲーで大剣使いをしているガルドこと佐野みずき。女子高生であることを完璧に隠しながら、親父どもが集まるギルドにいい感じに馴染んでいる…! ひたすらクエストをやりこみ、酒場で仲間と談笑しているおじさんの皮を被った17歳。しかし平穏だった非日常を、唐突なギルドのオフ会とログアウト不可能の文字が破壊する! 序盤はVRMMO+日常系、中盤から転移系の物語に移行していきます。 表紙は茶二三様から頂きました!ありがとうございます!! 校正を加え同人誌版を出しています! https://00kanoyooo.booth.pm/ こちらにて通販しています。 更新は定期日程で毎月4回行います(2・9・17・23日です) 小説家になろうにも「40代(男)アバターで無双するJK」という名前で投稿しています。 この作品はフィクションです。作中における犯罪行為を真似すると犯罪になります。それらを認可・奨励するものではありません。

十六夜誠也の奇妙な冒険

シルヴィアたん
SF
平和な国ー日本ー しかしこの国である日ウイルスが飛来した。このウイルスに感染したものは狂人と化し人間を見つけては襲いかかる。 狂人に噛まれたものも狂人へと変わる、、、 しかしある一定の年齢までならこのウイルスに感染しない。 これはウイルスに感染せずなお狂人に噛まれなかった少年少女たちの物語。 十六夜誠也と仲間達はウイルスについて、日本の状態についてを知るために狂人と戦う。 第2章 最強の超感染体ウェイパーを倒し、日本も段々と人が増え平和を手にした誠也たち。だが新たに強力な超感染体が次々と現れる。

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

女神のチョンボで異世界に召喚されてしまった。どうしてくれるんだよ?

よっしぃ
ファンタジー
僕の名前は 口田 士門くちた しもん。31歳独身。 転勤の為、新たな赴任地へ車で荷物を積んで移動中、妙な光を通過したと思ったら、気絶してた。目が覚めると何かを刎ねたのかフロントガラスは割れ、血だらけに。 吐き気がして外に出て、嘔吐してると化け物に襲われる…が、武器で殴られたにもかかわらず、服が傷ついたけど、ダメージがない。怖くて化け物を突き飛ばすと何故かスプラッターに。 そして何か画面が出てくるけど、読めない。 さらに現地の人が現れるけど、言葉が理解できない。 何なんだ、ここは?そしてどうなってるんだ? 私は女神。 星系を管理しているんだけど、ちょっとしたミスで地球という星に居る勇者候補を召喚しようとしてミスっちゃって。 1人召喚するはずが、周りの建物ごと沢山の人を召喚しちゃってて。 さらに追い打ちをかけるように、取り消そうとしたら、召喚した場所が経験値100倍になっちゃってて、現地の魔物が召喚した人を殺しちゃって、あっという間に高レベルに。 これがさらに上司にばれちゃって大騒ぎに・・・・ これは女神のついうっかりから始まった、異世界召喚に巻き込まれた口田を中心とする物語。 旧題 女神のチョンボで大変な事に 誤字脱字等を修正、一部内容の変更及び加筆を行っています。また一度完結しましたが、完結前のはしょり過ぎた部分を新たに加え、執筆中です! 前回の作品は一度消しましたが、読みたいという要望が多いので、おさらいも含め、再び投稿します。 前回530話あたりまでで完結させていますが、8月6日現在約570話になってます。毎日1話執筆予定で、当面続きます。 アルファポリスで公開しなかった部分までは一気に公開していく予定です。 新たな部分は時間の都合で8月末あたりから公開できそうです。

新宿アイル

一ノ宮ガユウ
ファンタジー
 遥か6100万光年の彼方から、いつの間にか東京の地下に空間転移していた〈ロートの追憶〉。  半世紀前、その〈ロートの追憶〉を奪うため、〈ルジェ〉は、円環(ロンド)と呼ばれる巨大な円形地下空間を構築したが、その計画は失敗した。  しかし円環(ロンド)はいまだ健在。  〈追憶のカケラ〉とは、その円環(ロンド)を復活させるための鍵。  再び強奪を目論む〈ルジェ〉が送り込んだ、ロカとコルヴェナの兄妹、そしてヒト型機械兵ガルバルデのデッサが狙う。  祖父の指示に従い、秋葉原に来たハルは、そのコルヴェナとガルバルデに遭遇する。  そして、コルヴェナたちを追って空間転移してきたジシェと、たまたま居合わせた同級生のモジャコとともに、都内に散らばる〈追憶のカケラ〉を集めることになる。  ピンチに現れ、ハルたちを救ったのは、旧式のヒト型機械兵ルドゥフレーデ、リグナ。  リグナの能力は少しずつ覚醒し、デッサを上回っていく――が、そもそもは、リグナもまた〈ルジェ〉が持ち込んだもの。  半世紀前、円環(ロンド)の稼働を阻止したのは〈テヴェ〉のオーラという人物であり、そのオーラに、廃棄されかかっていたところを救われたから、リグナはいまハルたちを助けているらしい。  けれども、その証はどこにもない。  かすかに生まれた疑念は、ハルの中でどんどん膨らんでいく。  彼女は自分たちを欺いているのではないか?  ただ、再び訪れたピンチを救ってくれたのもまた、リグナだった……。  真実がどちらにあるのかは誰にもわからない。  堂々巡りで考えたところで答えはなく、最後は信じるか信じないかの二択でしかない。  信じられずに後悔するくらいなら、騙され欺かれて後悔したほうがいい――と、ハルは心を決めるだった。  都内に散らばる〈追憶のカケラ〉に、6100万光年と半世紀前の記憶と想いが重なる物語。 ※2021.08.12: 挿し絵 (画像) の枚数制限 (1作品につき200枚まで) の関係で分けていた「新宿アイル(5章以降)」をこちらに集約しました (詳細は各章の変更履歴を参照)。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

地球から追放されたけど、お土産付きで帰ってきます。

火曜日の風
SF
何となく出かけた飛行機旅行、それは偶然の重なり、仕組まれた偶然。 同じく搭乗している、女子高校生3人組、彼女達も偶然だろう。 目を開けたら、そこは宇宙空間でした。 大丈夫だ、テレポートができる。 そこで気づいてしまった、地球に戻れないという事実を。 地球から追放したは、どこの誰だ? 多少の犠牲を払いながら、地球に戻ってきたら、今度は地球がピンチでした。 ~~~~ カテゴリーはSFになってます。が、現代ファンタジーかもしれません。 しかし、お話の展開はインドアの人間ドラマが8割ほどです。 バトルはラスボス戦まで、一切ありません! 超能力の使用もほぼありません・・・ ーーーー ※男女の営みの描写はありません、空白になって情事後から始まります。 なろう、ツギクル、カクヨム転記してます。 続きの第2部をなろうにて始めました。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...