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その3. 幼馴染みの君へ 

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ライルとサマンサは領地が隣り同士の幼馴染、伯爵家同士で母親同士が友達だったから、同じ年の子供がいると、交流も頻繁で幼い頃は毎日の様に遊んでいた、

「サマンサ!大きくなったらお嫁さんにしてあげるね!」

「お嫁さん?なあに?」

「ずっと一緒にいられるんだって!」

「ふーん お嫁さんって,何する人?」

「え?んーと、何するんだろう?」

「えー?じゃあいい!サマンサなりたいものあるもの!お嫁さんはライルがなるといいよ!」

「サマンサのなりたいものって?」

「私薬師になりたいの!」

「へー凄いね!応援するよ!」

「ライルは何になりたいの?」

「僕は魔術師になりたいんだ!」

「わぁ!かっこいい!私も応援する!」

まだ幼い子供の頃の単純になりたい気持ちで、
なる為に条件や素質が必要な事などわからなかった頃の夢だった、

サマンサが,憧れた薬師は国内にいるが、その薬師になるには、10年は他国に留学しないとなれないことが分かった、サマンサには兄がいて両親を説得するのに力になってもらい、高等学園に入学する15歳で留学することが決まった

ライルがなりたかった魔術師は魔力量が多くある事は当たり前のことで、並の魔力量のライルがなるのは無理だった、そこでライルは体を鍛えて騎士になる事をめざした、ライルは次男だったので騎士爵をとる事を目指すことにした。

サマンサは留学することをライルに伝えると、
ライルは驚いていた、自分も騎士になる為王都に出発する、時期もサマンサと同じ時期だ 騎士爵を取るには務めて何年かかるかは、本人の頑張りしだい、でも年に何回は会えるだろうとライルは思っていた
薬師の勉強が他国でするというのも初めて聞いた、しかも海を渡った遠い国らしい10年は勉強が必要だと
「そんなに遠くへ行ってしまうなんて聞いてないよ!もっと前に教えてくれても良かったじゃないか!」
ライルは寂しさからつい感情的になってしまい、大きな声でサマンサを責めてしまった

サマンサもなぜかライルに言えば反対される気がしてギリギリまで、打ち明けられずにいた

何よ、ライルだって好きな事をするのに私はダメなわけ?大きな声で責められた事にカチンと来てしまったサマンサはつい口に出してしまい売り言葉に買い言葉になった
「だから、今 言ってるわ?私達は幼馴染でしょ?お互いに応援するって言ったじゃない?あれは、嘘だったの?」

「・・サマンサは寂しくないのか?」

「何を寂しがる事があるの?」
嘘だ、寂しいでも強がっていないと泣いてしまいそうで・・・

「そっか、何だか僕だけ勘違いしてたんだね
ただの幼馴染だったね・・・
遠くにいても応援しているよ、今までありがとう 元気で!」

「・・・うん、ライル今までありがとう、私も応援しているよ!元気でね!」


それから一週間後ライルが王都に向けて出発したと人伝に聞いた


私も、ひと月後期待と希望を胸に、留学先に旅だった






王都に来て3年が経った、騎士見習いから始めて体の細かった俺はついて行くのがやっとだった、訓練の後は食事が喉を通らず苦しくて挫けそうになったことも数知れず、

 今では身長も190cm近くなり随分と逞しくなった
 王都の生活にもなれ 知り合いも増えた
 休暇がまとめて取れたら伯爵家に顔を出す様にはしている、その時に母からサマンサの話しを耳にする、頑張っているそうだ よかった


 騎士になり5年が経ったころ 第三部隊の副隊長の役職についた、剣術大会や魔物の討伐での成果を買われたらしい

 毎日忙しくしているが、何かと女性が近づいてくる  騎士はもてるが、あからさまに近づいてくる女性を相手にはしなかった、周りの連中もみんなそんな感じだ、隊の規律を重んじるのは当たり前だし、隊服を着ている間は仕事中だ プライベートな時間じゃないのに彼女達は隊服が好きなのかもしれない。

その年の女性3人の騎士見習いが入隊した
珍しいが、今回は多いらしく他の隊にも数人いると聞いた その3人と、男性騎士見習いが17人、第三部隊は合計20人 見習い後に適正をみて配属される部隊が決まる
どの部隊も見習いが受ける訓練はほぼ同じ、
慣れるまでが大変だ、辞めていくものもいる

身近に15歳のまだ幼い顔だちの女性を見る様になったからか、
サマンサは5年経ってどんな女性に成長したかな?
懐かしい気持ちで ふと思い出す

俺だって、大分見た目は変わったからな
大人の女になったんだろうな


そんな事を考えていた時、第三部隊の執務室のドアをノックする音がした。











 

ここはタナトス帝国、とても大きな国で街並みも私の国ラピス国とは違って圧倒される 

魔法が普通の国で他の国には無い聖女の力で魔物からの脅威を防いでいるらしい

医療魔法の研究も進んでいる国なのでそれを学びに留学するものが多いと聞いた、私の魔力は日常生活に役に立つ程度の魔法しか使えない
だから、薬師になり自分で薬を作りたいと思った 子供の頃にみた薬師がかっこよかった!が最初の動機だけど、故郷から離れてこんな遠くまで来たからにはやり遂げてみせる!自身はあった、

なのに、ひと月足らずでいきなりホームシックになった
お父様 お母様 お兄様,ライルに会いたい!

昼間は勉強だけでなく、初めての場所 人間関係 生活するのに必要な事 そして身の回りの事は全て自分でやる事に慣れるまで大変だった、今までどれだけ甘やかされた生活をして来たんだろう、恥ずかしくなった 寮母さんやまわりの留学生に張り付いて、色んなことを覚えた
そして何故か夜になると寂しくなり一人泣いた


魔法は使えたので、生活魔法を教わりメイドがいなくても1人で料理洗濯そうじはこなせる様になり、3年経つ今では基本の魔法にアレンジして効率よく時短できるようになった
薬草学を学び 医学を学び 実技を学び 
もの凄い速さで吸収した

5年経つ頃には先生達から、学校ではもう教える事は無いから、医療現場か薬師の元で,働く方がいい、ラピス国内にも伝手はあるから、紹介状を書こうと、卒業を促された
10年かかると聞いていたから、いいのか尋ねると出来ることをもう教わる必要はない、後は経験をつんで一人前の薬師になりなさいと言われた。
この5年の間に帝国から海を渡りラピスに戻る行程が短縮できるようになった 
料金は高いけど船で14日かかる所が魔法の力ですぐ着くらしい 瞬間移動っていったかな
その乗り場はここから1時間程の場所にある
ラピスの王都に到着地点があるから
我が家に帰る方が時間がかかる
王都から馬車で3日、だから両親には王都についてから先ぶれを出そうと思う、2日程止まって先に紹介先に挨拶をしてから帰ろうと思っていた

 

荷物を圧縮マジックバックに入れた
部屋の中の物全て入ってるのにポーチひとつだけなんて、びっくりだわ!
この魔道具も高かったけど絶対欲しかったので買った!凄い便利 帝国の魔法技術には恐れ入ります。

あっという間にラピスの王都に到着してその足で王城に隣接する建物に向かう、馬車で1時間程で王城に着いた 隣接する魔術師の棟に紹介してもらったスミヨン薬師はここに所属しているそうで、連絡はしてあるので訪ねるようにいわれていた。

魔術棟に並んで騎士の棟もあるようで 門の前に着くと、隊服姿の騎士が数人目に入った
建物の奥に訓練場があるのか大きな声も聞こえてくる

ライルもいるのかな? 
あれから 直接手紙のやり取りもしないまま
5年も経ってしまった、前に兄から届いた手紙にはライルはモテるそうだと書かれていた
結婚したとは書いて無かったけど、彼女がいるのだろう 兄は匂わせて書いてきたと思った。私が傷つくから? 兄はいつも優しい



そんな事を考えて門の前でボーっと立っていたら、メガネをかけた騎士に声をかけられた

「こちらに御用ですか?」

「あっ、はい 帝国の薬師学校からスミヨン薬師に会いにきたのですが」

「お名前を聞いてもよろしいですか?」

「はい、サマンサ. クルスと申します」







執務室のドアをノックする音がした

「どうぞ」
ドアが開いて秘書のレイノルズが入ってくる

「戻りました」

「レイ遅かったな 隊長は?」

「『見習い達に大切な訓練をしている最中だ!お前とライルで書類は片付けておけ!』だそうです!」

「おいおい!隊長じゃなきゃダメな書類があるから呼びに行かせたのに」

「無理ですよ?闘気を纏われて返事されたら・・・死にたくないですよ!」

「まったく・・・」

「あっ、それより! 凄い可愛い娘がいたんですよ!髪が短いから平民かと思ったら貴族の娘さんみたいで、帝国の薬師学校から来たって言ったなぁ」

「帝国の薬師学校⁉︎   どんな娘だった?」

「へー珍しい、ライルが女の話に興味を持つなんてなぁ、  なんでもスミヨン薬師を訪ねてきたって言うから案内したんだよ、
茶色い髪でヘーゼル色の瞳のサマンサ.クルスちゃんって あっ!どうしたんだよ!」

ライルは部屋を飛び出して魔術棟へ急いで向かった、

「サマンサ!」







メガネの親切な騎士レイノルズさんは魔術棟の受付まで案内してくれた、
「スミヨン薬師に帝国からの客人が来ています 取り次ぎをお願いします」

「レイノルズさん、ありがとうございました」

どういたしまして、と笑顔で去って行った、
騎士の人って、もっと怖いイメージがあったけど紳士ね、ラピス国の貴族の女性は長髪が当たり前だから、この髪の長さでこの服装は平民に見られたと思うんだけど、名乗って家名を言っても最初から態度は一緒だったわ

移動装置のポートから出る時の方が、ジロジロ見られて、なんで平民の女が?って声も聞こえたし身分証をみせたら態度がころっと変わって、ため息を吐きながら出口をでた、嫌な感じ・・・
なんだか、我が国のダメな所を 帰ってきて最初に見せられた気分だった。



「お待たせしたね、スミヨンだ!君がサマンサ.クルスだね?」

「はい、サマンサです、よろしくお願いします」

「あぁ、昔クルス家にお邪魔した事があってね 君は小さかったから覚えていないかな?
クルス家の領地は変わった薬草が豊富にあるから今だに薬草の取引ではお世話になっているんだよ」

「あ!もしかして、薬草の見分け方を教えてくれたかた?」

「そうそう、私と母君は同級生でね、その伝手もあって領地の薬草の事を聞いたのがきっかけなんだけどね、まさか帝国の薬師学校始まって依頼の天才が君だなんて、誇りにおもうよ!」

「そんな事、初めて言われましたよ?」

「ハハハッ!5年で卒業なんて創立して初めてだと、校長から連絡がきているよ?君の前に7年で卒業したのは私だからね、記録を塗り替えた子を君に紹介状書いたからって」

驚いた、私って優秀だったみたい!

「そうだね、まだ戻って来たばかりだろう?
来月の頭からここで働いて貰うから、それまでは色々準備もあるだろうし、もし住む所が必要な場合はここの近くに寮もあるから、事務にいって何でも相談しなさい。話しは通してあるからね
それじゃ、一緒に仕事ができるのを楽しみにしているよ。」

「はい、ありがとうございます」











ライルは急いで魔術棟の入り口まで走ってきた、ちょうど扉を開けて1人の女性が出てくる所だった
肩までの茶色の髪にヘーゼルの瞳
紺色のシンプルなワンピースを着て記憶の中のサマンサより大人の顔をした女性がそこにいた

「サマンサ!」

「え!ライル?嘘でしょ?本当にライル?」

「ああ、本当だよ」

「大きくなったわねー 凄いわ!
・・・5年ぶりよね?元気そうでなによりだわ」

「ああ、サマンサも 綺麗になったな」
ライルがそんな事を言うなんて!思わず赤面してしまう

「ふふふ、ライルも凄くカッコよくなって、素敵よ!」
本当に男らしく素敵な男性になった、これは兄がいう通りモテるのでしょうね

「サマンサは帝国にはすぐ戻るのか?」

「ああ、そうそう、凄いのよ私って、
とっても優秀だからもう、帝国の薬師学校は卒業したのよ?来月からここで働くことになったの」

「本当に?10年かかるって言ってたのに」

「頑張ったのよ?研究もだけど、伯爵家の娘が1人で生活するのって、そりゃあ大変だったんだから! 」

「うん,分かるよ 俺もそうだった」

「う、うん ライルも頑張ったんだね!」

「おかえり!サマンサ」

「ふふ ただいま!ライル」

サマンサはライルに抱きついた、それをライルも受け止めて抱きしめてくれた。

「会いたかったよ、ライル」

「うん、俺も 会いたかった」

「こんなに大男になって、僕って言ってたのに
俺になってるし、成長の過程を見れなかったのは少し残念だわ・・」

「ハハッ、サマンサも大きくなったよ」

「? そんなに、背はのびなかったよ?」

「いいや、ぺったんこだったのに、今じゃこんなに大きくなって」

「!!!ライル!ちよっと!」
自分から抱きついたけど顔を真っ赤にしたサマンサは離れようとジタバタするが、ライルがガッチリ抱きしめてピクともしない

「大好きだよ、サマンサ俺と一緒になろう」
耳もとでライルが囁く

「もう!私だって大好きよ」

2人は見つめ合ってキスをした、離れ難くて長い長いキスを・・・



ここが魔術棟の入り口前で、訓練の終わった隊長や騎士達も大勢が見ているのも気づかないまま 2人の世界に入っているのであった







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