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その1 悪女に憧れて 巷で流行っているお芝居

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その1  悪女に憧れて 巷で流行っているお芝居


「マーガレット.スミス侯爵令嬢! そなたがアンナ.ジョゼッペ男爵令嬢を迫害し、学園では侯爵家の権力で友人達から仲間外れになるように仕向けたと、聞いているぞ!挙げ句の果てには教科書を破りすて、アンナを階段から突き落としたことは目撃者もいるのだぞ!恥を知れ!
 そのような事をする女が我が婚約者とは、嘆かわしい!未来の王妃に などふさわしくない! この場を持って婚約破棄をする!」


「そんな、私はそのような事はしておりません!ヘンリー様はジョゼッペ男爵令嬢に騙されているのですわ!」

「黙れ!目撃者もいるんだぞ!この後に及んでアンナを悪者にしようなどと、よくそのようなことが言えたものだな!
 婚約破棄の上 国外追放だ! 衛兵!いますぐこの女を国境まで連れて行け!」

 衛兵達は動かず ただ立ち様子を見ている


「・・・ヘンリー様は私の事は少しも信じて下さらないのですね?
 婚約破棄で国外追放・・・
 このことは国王様も了承しているのですか?」

「・・当たり前だ! お前にいわれるまでもない!目障りだ、さっさと連れていけ!」

 衛兵はマーガレットの腕を強引に引っ張り連れて行こうとする

「きゃっ!こわ~い!ヘンリー様!マーガレット様がアンナのこと睨んでる~」

「ああ、もう大丈夫だよ、アンナ 君の事は私が守るからね!」

「ヘンリーさまぁ」

 そして2人は熱い口づけをして

 舞台は暗転


 煌びやかなウエディングドレス姿のアンナとヘンリー王太子が現れる
 国を挙げての結婚式をしているシーンにナレーションが入り 「国王と王妃になった2人のおかげで国は栄え、末永く幸せに暮らしました」


 喝采の中 緞帳は下がり幕を閉じる






「はぁ~今日のジョー様もステキでしたわぁ」

 ヘンリー役のジョー.ルクニーのことである、
 学園の女友達3人で舞台『真実の愛』を観た後
 劇場の近くのケーキ&紅茶のお店で感想を言い合っている


「ベルは本当ジョー様命よねぇ、ストーリーはどうでもいいのよね?私は断然お話しの内容ありきじゃないとこんなに長い時間の舞台は観れないわぁ」

「もう!サラだって推しが出来れば分かるよ
 それに、内容だって好みはあるわよ?
 今日の真実の愛はイマイチだったけど、そんなでもジョー様が素敵だから許せちゃうわ」

「やっぱり?なんか物足りない感じだったよねー?テラはどうだった?」

「うーむ、なんかジョーが馬鹿すぎて あれくらいのヒロインに絆されてしまうなんて、ヒロインの腹黒さを楽しみにしてる私としてはイマイチだったわ」

「テラ?あれは役であってジョー様ではないのよ?」

「だってベル?いくらお芝居でも やんごとなきお方を馬鹿にする訳にはいかないもの、こんな公共の場でどこに耳があるかわからなくてよ?」


「せめて、役柄で言って!ヘンリーよ、ヘンリー!」

「あら?ごめんなさいね?そうね、ヘンリーがあれ程度の男爵令嬢に騙されてしまうなんて、第一が嫌がらせとした内容の稚拙なことといったら酷いじゃない?
 侯爵令嬢があれは無いわ~ ないない!
 私達3人伯爵家だけど、あんな幼稚ないじめ方思い付きもしないわよね?」

 サラ「うん、1番に感じたわ それ!侯爵令嬢があんな幼稚な事する?教科書をやぶる?
ありえなーい 」

 ベル「そうそう!舞踏会のシーンだってそうよ?侯爵令嬢の婚約者を差し置いて男爵令嬢をヘンリーがエスコートした上に一緒に踊るなんて有り得な~い」

 テラ「そうね、あれは全てを捨てて愛に生きる男の姿よね?『運命の恋』だったわよね あの作品はステキだったわ 身分より愛を選んだ男と女の話し あれこそ純愛だったわよね」

 サラ「そうよ、ステキだったわー 身分は捨てるけどそれくらい相手の事を愛しているのが伝わって来て、幸せになってねって祈ったくらいよ!」

 テラ「そうそう、なのに今回のヘンリーは自分のしたい様にして何も失わず 結婚式挙げて
 2人が幸せになったから国も栄えました。完って、おかしいわよね?
 コレはアレね!誰かの情報操作による陰謀ね!大衆向けにこんな事が許されるように舞台にして流行らせて、世論をだましているのよ!
 きっと、継承権争いかしら?主要な人物を陥れようとする力が働いているわ きっとハニートラップも仕向けられているわね 婚約者ではなくその子をエスコートしたいとか言い出したらもう、思う壺よ!」

 ガタンッと椅子の倒れる音と急用が出来たと連れに言う声が衝立で仕切られた隣りの席の方から聞こえてきた 

 ベル「騒がしいわね~」

サラ「まぁ、テラのいつもの空想話も聴けたし、追加のケーキを注文する?」

 ベル テラ「するする~!」

まだまだ3人娘の感想会は続くのであった・・




 そんな頃、隣りの席で椅子を倒して店を飛び出した男は急いで自分の父親に話しをしに、王城へと向かった

「父上大変です!」

「どうしたんだ サイラス 王城まで来るとは何があった?」
 サイラスの父親は宰相のアイザック.ベンハー公爵 サイラスは嫡男で第一王子と同級生、幼少期より王子を支えるようにと、いつも側にいる

 サイラスは妹にせがまれ、今話題の劇を観に行った話しから、その後の茶店で隣りの席から聞こえて来た話しをひと通りする

「で、それが何だと言うんだ?」

「ひと月前、学園に編入して来た男爵家の女生徒がいるんです、クラウド王子と親しくしていて、クラウド王子に対して距離感が近いので気をつけるように言っていたのですが、最近クラウド王子の婚約者のアシュリー.ロイド公爵令嬢に虐められたと泣いていたんです、その事で劇と重なるなと観劇しながら思っていたのですが、
 茶屋の隣席から聞こえて来た内容が、私には天啓のように感じました、是非調べてもらいたいのです、その男爵令嬢の事と、何故こんな時期に編入して来たのか、誰と繋がりがあるのか、
 あの劇は王家からの許可を得ていると聞きましたが、内容は王子の役柄が問題あります、よく許可をおろしたなと感じました、
 許可した王族も調べるべきとおもいます。
 私の早とちりならいいのですが、クラウド王子が男爵令嬢をエスコートしてしまう前に!」

 ここまで息子が必死に話す姿を見た事の無いアイザックは至急調べようと、その場に部下を呼び手配をする
 まぁ、間違いならそれはそれで、私の所で止めて置けばいい話しだ 今は息子の感を信じてやろう   

 

半信半疑で調べた事が まさかのビンゴであった

 大元は側姫 自分の息子の第二王子を王太子にする為の策略だった
 
男爵令嬢を学園に編入させクラウド王子を籠絡して婚約破棄させて、廃嫡させるのが目的だった  
世の中の目をそうむけさせ王太子をその気にしやすい様に流行りの役者を使って演じさせた 

男爵令嬢には成功させれば第二王子の妻にしてやると約束していたらしい


この事を聞いたクラウドは「俺を馬鹿にしてるのか?」と言った後、サイラス感謝してるよと、笑っていた。

このことで第一王子の王太子任命式が早まった




あの時妹にせがまれて劇場に行っていなければ
未来は違っていたかもしれない、

あの時の彼女達を探さなければ、あの慧眼の持ち主の彼女に会ってみたいと、思うサイラスであった。






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