ファムファタール

仏白目

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無敵

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「ドンッドンッ! 狭間の魔女!おい!ばーさん!いるんだろう!開けろ!ドンッドンッ」

あの男の声だ!ミシェルはセシルを抱きしめ震えあがる


「チッ、厄介な奴に目をつけられたねぇ」

魔女は扉に向かって大声で叫ぶ


「ああ?まったく!うるさいねえ、何の用だい!」

「ばあさん、居るんなら開けろ」

「お断りだねえ 用件を言いな!」

「・・・チッ そこに居る女と話したい」

「迷惑だよ!帰りな!お前を怖がって泣いちまってるよ! 」


「⁈   すまない、怖がらせるつもりじゃ・・  」

扉の向こうの男はそう言うと大人しくなった


「おばあちゃんの知り合いなの?」


「まぁね、魔王だけど悪い奴では無いさ 」


「え?マオウ?それって?何?」

「あ? 何って、魔界の王様だよ!知らないのかい?」

ミシェルは黙って頷く

「・・・まあ、そりゃそうかねぇ、人間の世界と繋がりはないから知らなくて当然かねぇ・・・ まあ、わかりやすく言えば 別の世界の王様だよ 人間なんて簡単に滅ぼす事の出来る力を持っているやつさ!」

ミシェルは真っ青な顔で

「な、なんでそんな方が、私に話しなんて」


「めんどくさいねぇ、 ほら、入ってきてさっさと話して帰りな!」

魔女がそう言うと玄関のドアは勢いよく開いて、先程話しかけてきた男性がそこに立っている

「なんだ、ばあさん入っていいのか?」

「ああ、そこの椅子に座んな!で、一体何なんだい?お前さんが女の尻を追いかけるなんてらしく無いんじゃ無いかえ?」

「別に尻を追いかけて来た訳じゃねぇ」

「どうだか? お前さんには太った中年女には見えていないのだろう?」

「ああ、何故そんな姿にしているのか不思議に思ったが、すぐに狭間の魔女の魔法には気がついたさ 何故わざわざ醜い姿にする必要があるんだ?」

「お前さん見たいな男を避けるためさ、まぁ お前さんまでミシェルの虜になるとは魔王も大した事ないねぇ」

「俺は別に虜になってねぇ、大体 あんたが他の人間と一緒にいるのが信じられない、」

「余計なお世話だよ、それよりさっさと用件をいいな!」



「・・・ばあさんには用は無い、・・・」

そう言ってから、男はミシェルを見ると話しだした

「怖がらせて悪かった、俺はあんたと話しをしたい、いいか?」

ミシェルは恐々と頷く

「少し2人にしてくれ」

男は指を鳴らすと、ミシェルと2人だけの空間を作り上げた

「え?」

「ああ、婆さん達からは遮断したから何も聞こえないし、見えていないさ」

「あなたも、魔法使いなの?」

「まぁ、似た様なものだ・・・あんたは?
ミシェルといったか?」

「はい、あなたのお名前は?」

「ああ、俺はニゲル」

「ニゲルさん・・話って何ですか?」

ミシェルはニゲルを正面から見据えて尋ねた
ニゲルはその眼差しを受け止めて、ゾクゾクするものを体の中に感じる

「ミシェル、お前の中の魂は特別なようだ、
人間の魂は未完成に出来ているものだが、
お前のそれは完全なる宝玉だ

昔、魔界にて管理されていた宝玉がいつの間にか消えて騒ぎになったが、その後も見つからなかったが・・・

そうか、ミシェルお前となって宝玉は人に生まれて来ていたのか」


全くもって、ミシェルには分からない事をニゲルは目を輝かせて話し、ひとり納得している


「あの、何を仰っているのか分かりませんが・・」


「お前の魂は物凄い力を持っているんだよ、欲しければ、世界を手に入れる事も簡単だ」

「・・・世界どころか、人に振り回されて自分の望む様に生きられた事は無かったわ、あの場所から逃げて今のこの生活だけが自分から選んだ事くらいよ 」


「・・宝玉も、随分と欲の無い人間を選んだものだ お前の性質次第では、この世界も違う姿になっていただろう、私も命拾いをしたのかもしれないな」



「そう言われると何だか損してるみたい、今から頑張って世界を手に入れた方がいいのかしら?」



ミシェルのその言葉にニゲルは息をのむ


「・・・やるつもりか?」


「では、手始めに 魔王ニゲルよ!私の友達になりなさい! ・・・なんてどうかしら?」

ミシェルは笑って言った

魔界の王様が私を恐れているなんて、そう思う一方で 漠然と理解はしていた

自分が望めば思い通りになる事も

恐らく世界も手に入れる事もできるのだろうが、そんな事は望んでいない



「俺と友達?」

ニゲルは驚いている

「そう、ここでの暮らしじゃ友達出来ないし、何だか貴方も友達いなそうだし、丁度いいかなって思ったの 嫌なら無理強いはしないわよ?」


「・・ああ、別にいいが・・」

「そう?じゃあよろしくねニゲル」

ミシェルは手を差し出してニゲルと握手をした



それから、 

「気に入らないねぇ」と文句を言うおばあちゃんと、緊張しながらも大人の男の人に興味深々のセシルと、居心地の悪そうな顔のニゲルとアップルパイを食べた


その日から、時々ニゲルは顔を出すようになり、私よりもセシルと仲良くなった



男女の関係?とんでもない、今更ながら、私は自分の価値を知ったし 力の根源も理解した もう怯えて従うだけの私ではないのよ 

「我願えば全ては叶う」

魔女の変身の力も必要ないし、ある意味
私は無敵なのだ、私を縛っていたものは私自身の無知だった


どこにでも行ける 私は自由だった


セシルも大きくなり、私の手元から離れ、私は世界を見てまわる事にした


「それじゃ、おばあちゃん行ってくるわね 今までありがとう」

「ああ、せいせいするよ!」

「また、顔を見に来るわ」

「好きにするが良いさ」

狭間の魔女の家をでて、歩き出す



「さて、何処へ向かおうか・・・ニゲルは見送りに来てくれたの?」

「いや、俺も行く」

「私の魂を食うため?」

「⁈」

「私に近づいた目的はそれでしょう?」

「・・ああ、始めはそのつもりだった、だが今は友達だろう?ミシェル俺もついて行く」



「ふふ、そうね友達よ、また会いましょう」





そう言うと、ミシェルの姿はニゲルの前から消えて無くなった




 




       fin
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