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チェルシー.ハサウェイ
精霊の悪戯とは
しおりを挟む気がつくと涙が頬をつたっていた
「リヒト・・・」
思わず口にでた 本の中の妖精の名前はどこか懐かしい感じの響きだった
「ふふ、本に感情移入しすぎたみたい 私ったら」
ケイティを見ると馬車の座席に横になり、寝てしまっている
「ケイティったら、珍しいわね 寝てしまうなんて・・ 疲れているのね 」
そう言った矢先にチェルシーは急な眠気に襲われ大きな欠伸をする
「わたしも少し眠ろうかしら・・」
チェルシーは座席のクッションに頭を置くと同時に眠りについてしまった・・
小さな女の子が布をめくり、その中をのぞいている
クルクルした癖のある茶色の髪をポニーテールにして赤いリボンをつけている
その顔は・・・なんだかケイティに似ているわ
「君はだあれ?」
めくった布の中には鳥籠がみえる、 その中にぼんやりと光る 羽の生えた小さな人
がいる あれは、妖精?
「わたし? わたしは、リリアンよ?
あなたは? 」
「ぼくはリヒト!」
「あなたは何故?カゴに入っているの?」
「・・・ 捕まっているんだ、好きで入っているわけじゃないよー」
「捕まっている? ひどいわ!誰がそんな!・・まさか、お父様?」
「う、ううん違うよ 君のお父様じゃないよ」
「じゃあ誰?」
「マルクス」
「マルクス?」
「うん、僕の友達のルシアンのお兄さんなんだ」
「わたしが逃がしてあげる!」
リリアンが鳥籠の小さな扉を開ける・・
「出ていいのよ?」
「ううん、いいんだよ」
「どうして・・?」
「マルクスと約束したんだ 僕が逃げたらルシアンが・・幸せになれないんだ」
「そんな・・・」
「ありがとうね、リリアン」
「・・・じゃあ!わたしと友達になって?」
「うん!もちろんだよー」
「また、くるから!」
その後、何度となくリリアンは鳥籠の前でリヒトとおしゃべりをしたり、一緒にぶどうを食べたり 仲良く過ごしていた
鳥籠の中のリヒトはひとりぼっちでは無かった
チェルシーは映画でも見ているようにその光景を眺めていた
ある日、リヒトの鳥籠が置かれた部屋の扉が勢いよく開けられ、けたたましく人が入って来て鳥籠を急いで掴んで部屋をでていく
チェルシーはその後を走ってついて行く
「お願いだ!娘をリリアンを助けてくれ!」
父親と思われる男に抱き抱えられているのは、血だらけのリリアンだった
ひどい、それは酷い傷だった
『リリアン!死なないで! 』
リヒトは全ての力を振り絞り 光の粉をリリアンへ降り注ぐ
そしてその光は段々弱くなり 消えていった
リリアンの傷は塞がり一命を取り留めた
傷は深く リヒトだけの力ではこれが精一杯であった
急いで来た医師と共に家の中へとリリアンを連れて行く人間達
後には空になった 鳥籠だけがそこに残された
チェルシーは空になった鳥籠を眺め、
『がんばったよね リヒト えらいよ』
そう、1人呟き涙を流した
ガタンッと、馬車が大きく揺れて 目を覚ましたチェルシーとケイティはお互いに目を合わせた
「チェルシー様?」
「なんだか急に眠くなって 」
「チェルシー様・・今 夢を?」
「ええ・・まさかケイティも? 」
「はい・・その本の中の、妖精リヒトと・・・リリアンの夢を・・・」
「一緒だわ!」
「それが、リリアンと私は血が繋がっていてるんです 5代前のリリアン.バロウズ伯爵夫人だって言ってました」
「誰が?」
「リリアンがです、貴方は私に似ているわね?って話しかけられて」
「私は夢の中をただ見ているだけだったのよ、ケイティ貴方凄いわ!話しが出来たなんて」
「いえ、私は俯瞰で見ている感じだったんですが、後ろから声をかけられて、それが大人の姿のリリアンでした」
「私達に今起きている事は、シュバルツ王国の精霊と関係しているのかしら?」
「きっと、そうだと思います、今までこんな体験したことないですよ」
「ええ、向こうに着いたら何か分かるかも」
「目が覚める前にリリアンが言ったんです、
『やっと、この時が来たのね 』って
どう言うことか聞こうとした時 目が覚めてしまって・・・」
「・・・気になるわよね、シュバルツ国王に話してみましょう 何か分かるかも 」
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