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推しを陰から支えるのが僕の生きがいです。-後-
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ハルヒトは生挿入をしてからは達しても抜かずに二回戦三回戦と楽しみ、それに合わせて柊夜も白濁が出なくなるまでイキまくる。柊夜の中では一回中出しさえさせてしまえば、もう気を使う必要はない。つまり、もう計算なしでマジイキしても問題ないということ。でも、それがハルヒトを更に燃え上がらせていたのには気づいていない。
翌朝、連絡先を聞いてくるハルヒトに、柊夜は契約中の遊び用スマホの連絡先を教えておく。下手にごまかすと、あんなに積極的だったのはなんだったのかと疑われかねない。
「僕、こんな良かったの初めて。ハルさん、またね!」
「バトルとか予定あって忙しいけど、都合ついたら連絡する」
ハルヒトとの一夜を終えて、柊夜は遠回りして自宅へと戻る。これもストーカー対策だ。数年前に自宅を突き止められそうになった事件があって引っ越しをしたからなのだが、柊夜は身辺に関しては警戒しすぎるほど警戒していた。
「またねとか言ったけど、会うかはわかんないけどねぇ。でもあと一回くらいは会っといてもいいかな。そのほうが俺が何かしたって思わなさそうだし、ちんこは良かったからな」
柊夜は推しが大好きだ。長年恋い焦がれていると言ってもいい。でも、推しは柊夜にとって雲の上の人で、顔も異能力もインタビューで語る内容も、全てが理想だった。影から見続けられればいい……密かに応援してファンとして推しを支えたい、柊夜が思うのはそんなことばかり。推しに恋しているようなものであっても、この『ターゲットを見つけて関係を持つこと』はやめられそうにない。
それから時折ハルヒトからメッセージが入るのに返事をして、柊夜は一回呼び出しに応じた。相変わらず、セックスの相性だけは良かったし、そのときは最初から生だった。柊夜も自分から腰を振り、ハルヒトの精液を何度も搾り取る……それが大事だと言わんばかりに。
◇◇◇
この日は、柊夜の推しの異能バトルの日だ。もちろん推しの全試合のチケットは取ってある。柊夜が今までやってきたことは試合を見に行くことで完結するのだから。
「えっと、席はここか。うん、案外いい席。これなら強めに発揮できそう」
会場は老若男女関係なく埋め尽くされている。異能バトルは今や国民あげての一大イベントでもあった。アリーナ席をゲットするのは年々厳しくなってきている。今回もすぐ近くは無理だったのだが、それにしてはまだ肉眼で楽しめる位置だ。
席に着いてしばらくすると、会場のライトが消灯し、巨体モニターに司会者が映し出された。一気に会場全体のボルテージがあがっていく。
「本日の異能ーバトルはー! おなじみチャンピオンー、アキヤマーケントー!」
モニターにアップで映される推しを食い入るように見つめる柊夜。柊夜がケントにハマったのは、まだ彼がデビュー戦をしたばかりのときだ。そのとき柊夜はまだ中学生であったが、親に頼み込んでファンクラブに入れてもらった。なんの取り柄もなく、夢中になれるもののなかった柊夜の『生きる意味』がそこにあった。
推しができたことで柊夜は変わっていく。出会うはずもないのに見た目を気にするようになり、バトルのチケットを買うために、高校生になったと同時にアルバイトも積極的にやるようになった。推しは柊夜の人生を変えたのだ。
「相対するはー! 挑戦者ー! タチカワーハルヒトー!」
会場が歓声とブーイングで揺れるようだ。ハルヒトも勝ち上がってきただけあってそこそこ人気がある。異能力の派手さも魅力のひとつらしい。自信満々になるのもわからないでもないが、柊夜からしたらなんとなく鼻につくやつだ。
「ちんこはいいんだけどね」
柊夜がそう呟いて、司会者がバトルスタッフメンバーの異能力者が張った結界の外に出ると、ゴングが鳴った。
ケントの背後から黒いモヤのようなものが湧くと、それは凝縮して触手のようなものになる。それだけではなくて、パリパリと触手から青い火花が散っている。その二段構えのような異能力は唯一無二で柊夜の心を掴んで離さない。
ハルヒトは業火を操る異能力者。おそらく、特に何もせずぼーっとバトルを見ていてもケントが勝つだろうことはわかっている。
のだが……。
バトルが始まって少ししたときに、柊夜がニヤリと笑う。腹に手を当て少し意識を向ければ、そこはもう柊夜のテリトリーとなる。
ハルヒトの操っていた業火は威力を失い、ケントの攻撃を受け止めることもできなくなっていた。
「なっ……!」
焦った様子で異能を放とうとするが、ハルヒトはまるでガス欠のカセットコンロのように炎を放つことができなくなっていた。訝しむチャンピオン・ケントであったが、それも作戦のうちかもしれないと攻撃の手は緩めない。驚愕の表情を浮かべたままハルヒトが追い詰められていき、ボロボロになった状態でドクターストップがかかった。
最近、ちょくちょくとバトル中に調子が悪くなる者がいる。異能力が使えない、もしくは使いにくくなるというのだが、翌日には完全に復活しているらしく、原因不明の能力不調と騒がれていた。
ケントの対戦者が陥ることが多いものの、毎回でもなく、一時期おかしいと疑われそうになったケントに完全な見張りがついたが、怪しい動きは一度もなかったため無罪放免となったのだ。
座席に座ったまま、柊夜は周囲のざわつく声を聞いていた。そして心の中で呟く。
――悪いね、ハルさん……あんたと寝たのはこれが目的。僕も異能力者なんだよ。後天的なやつだし、戦う術すべはないけど……まだあまり認知されてない異能力だと思う。面白いだろ? あんたに注いでもらった遺伝子から、あんたの異能力はコントロールさせてもらったよ。推しはこんなこと望んでないのわかってるけど、僕は勝ち続ける推しを見ていたいんだ。だから、これは僕の自己満足。今後も集めた遺伝子を通じて、バトルが開催されるたびに僕がコントロールさせてもらう。とりあえず……ヤッた有名異能力者は今のところ……六人か。意外とプライベートをリサーチするの大変だし、ノーマルを落とすのって大変なんだよね。だから、思ったよりは集められてるかな。あーあ、ホント僕、すっかりビッチになっちゃった……。けど、それなりに気持ちいいし後悔はしてない。これが僕の推し活で、ある意味『異能バトル』だ。
そして、異能バトル会場をあとにした柊夜は夜の街に消えていった。
今後の脅威になりそうな異能力者を探し続けながら、柊夜は男を誘惑し続ける。とはいえ、推しを陰から支える目的しかない柊夜は、その能力の恐ろしさに気づいていない。
ただただ、推しにバレませんように、と願いながら抱かれにいくのだった。
-完-
翌朝、連絡先を聞いてくるハルヒトに、柊夜は契約中の遊び用スマホの連絡先を教えておく。下手にごまかすと、あんなに積極的だったのはなんだったのかと疑われかねない。
「僕、こんな良かったの初めて。ハルさん、またね!」
「バトルとか予定あって忙しいけど、都合ついたら連絡する」
ハルヒトとの一夜を終えて、柊夜は遠回りして自宅へと戻る。これもストーカー対策だ。数年前に自宅を突き止められそうになった事件があって引っ越しをしたからなのだが、柊夜は身辺に関しては警戒しすぎるほど警戒していた。
「またねとか言ったけど、会うかはわかんないけどねぇ。でもあと一回くらいは会っといてもいいかな。そのほうが俺が何かしたって思わなさそうだし、ちんこは良かったからな」
柊夜は推しが大好きだ。長年恋い焦がれていると言ってもいい。でも、推しは柊夜にとって雲の上の人で、顔も異能力もインタビューで語る内容も、全てが理想だった。影から見続けられればいい……密かに応援してファンとして推しを支えたい、柊夜が思うのはそんなことばかり。推しに恋しているようなものであっても、この『ターゲットを見つけて関係を持つこと』はやめられそうにない。
それから時折ハルヒトからメッセージが入るのに返事をして、柊夜は一回呼び出しに応じた。相変わらず、セックスの相性だけは良かったし、そのときは最初から生だった。柊夜も自分から腰を振り、ハルヒトの精液を何度も搾り取る……それが大事だと言わんばかりに。
◇◇◇
この日は、柊夜の推しの異能バトルの日だ。もちろん推しの全試合のチケットは取ってある。柊夜が今までやってきたことは試合を見に行くことで完結するのだから。
「えっと、席はここか。うん、案外いい席。これなら強めに発揮できそう」
会場は老若男女関係なく埋め尽くされている。異能バトルは今や国民あげての一大イベントでもあった。アリーナ席をゲットするのは年々厳しくなってきている。今回もすぐ近くは無理だったのだが、それにしてはまだ肉眼で楽しめる位置だ。
席に着いてしばらくすると、会場のライトが消灯し、巨体モニターに司会者が映し出された。一気に会場全体のボルテージがあがっていく。
「本日の異能ーバトルはー! おなじみチャンピオンー、アキヤマーケントー!」
モニターにアップで映される推しを食い入るように見つめる柊夜。柊夜がケントにハマったのは、まだ彼がデビュー戦をしたばかりのときだ。そのとき柊夜はまだ中学生であったが、親に頼み込んでファンクラブに入れてもらった。なんの取り柄もなく、夢中になれるもののなかった柊夜の『生きる意味』がそこにあった。
推しができたことで柊夜は変わっていく。出会うはずもないのに見た目を気にするようになり、バトルのチケットを買うために、高校生になったと同時にアルバイトも積極的にやるようになった。推しは柊夜の人生を変えたのだ。
「相対するはー! 挑戦者ー! タチカワーハルヒトー!」
会場が歓声とブーイングで揺れるようだ。ハルヒトも勝ち上がってきただけあってそこそこ人気がある。異能力の派手さも魅力のひとつらしい。自信満々になるのもわからないでもないが、柊夜からしたらなんとなく鼻につくやつだ。
「ちんこはいいんだけどね」
柊夜がそう呟いて、司会者がバトルスタッフメンバーの異能力者が張った結界の外に出ると、ゴングが鳴った。
ケントの背後から黒いモヤのようなものが湧くと、それは凝縮して触手のようなものになる。それだけではなくて、パリパリと触手から青い火花が散っている。その二段構えのような異能力は唯一無二で柊夜の心を掴んで離さない。
ハルヒトは業火を操る異能力者。おそらく、特に何もせずぼーっとバトルを見ていてもケントが勝つだろうことはわかっている。
のだが……。
バトルが始まって少ししたときに、柊夜がニヤリと笑う。腹に手を当て少し意識を向ければ、そこはもう柊夜のテリトリーとなる。
ハルヒトの操っていた業火は威力を失い、ケントの攻撃を受け止めることもできなくなっていた。
「なっ……!」
焦った様子で異能を放とうとするが、ハルヒトはまるでガス欠のカセットコンロのように炎を放つことができなくなっていた。訝しむチャンピオン・ケントであったが、それも作戦のうちかもしれないと攻撃の手は緩めない。驚愕の表情を浮かべたままハルヒトが追い詰められていき、ボロボロになった状態でドクターストップがかかった。
最近、ちょくちょくとバトル中に調子が悪くなる者がいる。異能力が使えない、もしくは使いにくくなるというのだが、翌日には完全に復活しているらしく、原因不明の能力不調と騒がれていた。
ケントの対戦者が陥ることが多いものの、毎回でもなく、一時期おかしいと疑われそうになったケントに完全な見張りがついたが、怪しい動きは一度もなかったため無罪放免となったのだ。
座席に座ったまま、柊夜は周囲のざわつく声を聞いていた。そして心の中で呟く。
――悪いね、ハルさん……あんたと寝たのはこれが目的。僕も異能力者なんだよ。後天的なやつだし、戦う術すべはないけど……まだあまり認知されてない異能力だと思う。面白いだろ? あんたに注いでもらった遺伝子から、あんたの異能力はコントロールさせてもらったよ。推しはこんなこと望んでないのわかってるけど、僕は勝ち続ける推しを見ていたいんだ。だから、これは僕の自己満足。今後も集めた遺伝子を通じて、バトルが開催されるたびに僕がコントロールさせてもらう。とりあえず……ヤッた有名異能力者は今のところ……六人か。意外とプライベートをリサーチするの大変だし、ノーマルを落とすのって大変なんだよね。だから、思ったよりは集められてるかな。あーあ、ホント僕、すっかりビッチになっちゃった……。けど、それなりに気持ちいいし後悔はしてない。これが僕の推し活で、ある意味『異能バトル』だ。
そして、異能バトル会場をあとにした柊夜は夜の街に消えていった。
今後の脅威になりそうな異能力者を探し続けながら、柊夜は男を誘惑し続ける。とはいえ、推しを陰から支える目的しかない柊夜は、その能力の恐ろしさに気づいていない。
ただただ、推しにバレませんように、と願いながら抱かれにいくのだった。
-完-
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