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マカル視点
最終話.触手との生活のススメ
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「私みたいな、真面目しか取り柄がない学問好きはモテないと思ってましたが、こんな別世界が広がっているなんて……しかも、子どもを持つとか、一生縁がないかもと思ってました」
「わかるよ。俺もそうだったんだ。最初は一人でここに籠ってたからさ。それに、触手と出会う前は痩せこけてクマがひどいとマカルに心配されてたからね。今はまるごとマカルが愛してくれたからこんなだけどね」
産卵したもの同士、ハルロスと男は仲良く話している。二人の膝の上にはチビたちがわさわさと乗っていて戯れているのが可愛い。あの子たちは、また少し性格が違いそうだ。
男は膝の上のチビたちを撫でて、優しい眼差しを送っている。
「なんていうか、自分の子だと思うとより可愛いですね……」
「でしょ!? 絶滅させたくなくてさ。それでマカルがいろいろ考えてくれたんだ。君が来てくれて本当に良かった」
「薬も触手たちも……絶対に守りたいです」
俺の目に狂いはなかったな。少しずつ人を増やせたら最高だ。
実は俺の子──ルマと名付けた──はハルロスとどうしても番いたいらしく、「待て」をさせている。さすが欲望に忠実な俺の子だ……ちょっと複雑だけど。ただ、ハルロスもルマからの気持ちはまんざらではなさそうなんだけどな。
ミミの二回目のときは、俺から無理やり搾り取るのはやめてもらった。ちゃんと三人で相談して、俺がハルロスの中に出した精液を回収して使うならいいと許可したというか。何を言ってるかわからないというか……それもどうなんだとは思うけど、ハルロスとミミはそれでもいいらしい。
俺の子がもっとほしいんだってハルロスに訴えられたら、俺が負けるに決まってるんだよ。妥協点探すしかないだろ?
とりあえず、その時の卵は五つのうち三つを封印してある。もちろんミミの許可も得た。ハルロスの血筋だけじゃなくて、俺の血筋の触手の卵も保管したいってハルロスが言ったからなんだけどな。
全部を保管したわけじゃないけど、確率的には俺の子が混じってるはずだ。かなり俺の精液を回収してるのを見たからな……執念がやばい。
そう言いつつも、俺の血を引いた卵がハルロスの血を引いた卵と一緒に時を超えていくかもしれないと思うと少しだけ感動する。
◇◇◇
ハルロスが言うには、ハルロスの曽祖父は良くも悪くも本当の研究者で、子どもをたくさん作ってはいたけど、人間社会に戻ると決めたらすっぱりとここごと切り捨てられる人みたいだってことだ。ハルロスは「それを考えると、すごい人だと思うけど、仲良くできたかわからない」って言ってたな。
実際はどうだったのかなんて誰にもわからない。もしかしたらハルロスの曽祖父だって断腸の思いでここを去ったのかもしれないしな。そのときの触手たちがどこか別のところで血筋を繋いでいるのか、それとも淋しく枯れていったのかもわからないんだ。生きててくれたらいいなと思うけど。
そして、俺とハルロスは、こいつらを捨てるのは無理だった。それだけのことだ。
今、従業員は五人に増えて、その中で婿は四人になった。自分の『人を見る目』が間違いなさすぎて笑う。触手たちもかなり増えたけど、楽しくやっている。
薬だけじゃなくて、いろいろと手広く触手に手伝ってもらっているし、生活は安定してると言っていい。しようと思えば贅沢もできるしな。
触手と交合をしていると、美しくなって老化がかなり遅くなるのは、全員に当てはまることもわかった。蜜玉と交合のときの粘液が合わさることで、その効果が出るらしいことまではハルロスが突き止めた。
他の従業員との差……それを身に染みてわかっているのは婿になってない一人の従業員だろう。彼は俺と同じでケツを許すのが怖いらしい。でも、かなり心が揺れているのが見ていてわかるし、触手のことはめちゃめちゃ可愛がってるんだよな。思うに……彼が婿になる日も近いだろう。
もし触手によって得たその美貌を持って、研究所を出たいやつが現れても、俺はそれを許すつもりだ。魔力契約のおかげで、触手のことは口外できないからその点は安心なんだ。でも今のところ、ここを出たいという声は聞かない。みんな触手が大好きなやつらだからな。
あと、うちの薬は以前にも増して、卸して欲しいと希望が殺到している。薬だけじゃないと言ったのは、肌に塗るバームとかを新たに追加したり、夜の生活が潤う潤滑剤を少し作ったりしたからだ。大々的に売ってるわけじゃないが、身分の高い人なんかが買い占めようとしてくる。それがわかってて作ったわけだけど。
でも、予約販売はしてないし、昔から個人的に付き合いのある信用できるところ以外は卸さないで、ときどきゲリラ販売を続けている。うちの薬なんかの転売もあるようだけど、そこまでは責任もてない。見えないところでやってくれ。
俺たちは研究所や従業員の生活が保てる収入があればいいからな。商品を卸して、その売り上げで生活用品や希望のあったものなんかを購入して持って帰るのは俺の役目だ。
今の俺はいろいろな魔導札を書けるようになったから、昔の旅よりはかなり安全に移動できるようになった。しかも、触手たちのくれた獲物捕獲用の粘液を込めた袋がかなり役立っている。
「うぉら!」
「ぎゃああああ」
ほらな。
こうやって投げつけるだけで動きが封じられるし、下手するとあの粘液固まるからなぁ。盗賊たちに情けは無用だから、そこで固まって干からびようと知らないが。
俺もなんだかんだハルロスのおまけで老化が抑えられてて、肌艶がよくなってるもんで、顔は知られてるし狙われるんだ。
ただ、年々対策もバッチリになってきてるし、戦闘能力やら隠密能力やらのスキルが上がってるんで問題はない。あと、研究所にある程度近くなってくると、察知してこっそり出てきている触手が守ってくれることがあるのも心強いし。
なんとなく世の中にここのことが伝わりつつあるようだけど、防壁は触手製だから壊せないし、俺の認めた者しか中に入ることはできない。仮に忍び込めたとしても、触手に捕らえられるしな。双方の同意がなくても、強制的に口外できなくなるような魔力契約ができるように、鋭意勉強中ってところだ。
ここは今や触手の楽園だから。
俺は命ある限りハルロスや触手たち、婿たちを守ると決めたんだ。
心が純粋で真面目な気のいい男なら俺の眼鏡に適うだろうから、ぜひここに来て触手と生活してみてほしい。ケツを差し出すことに抵抗がないなら、きっともっといい思いもできるはずだ。
自分の血を引いた触手は可愛いぞ? 興味が出てきただろ?
「マカル、おかえりっ! 会いたかった!」
「ただいま。変わりはないか?」
「ん、また触手が増えたくらいかな」
「そうか! 新しい子たちはどこに?」
「たぶん……部屋に父親共々そろっているはずだよ。会う?」
俺はハルロスを抱き上げてキスをすると、一緒に新しい家族に会いに行く。
触手たちと婿たち、それに最愛のハルロス。
ああ……幸せだなぁ。
いつまでもこんな日々が続きますように。
-end-
「わかるよ。俺もそうだったんだ。最初は一人でここに籠ってたからさ。それに、触手と出会う前は痩せこけてクマがひどいとマカルに心配されてたからね。今はまるごとマカルが愛してくれたからこんなだけどね」
産卵したもの同士、ハルロスと男は仲良く話している。二人の膝の上にはチビたちがわさわさと乗っていて戯れているのが可愛い。あの子たちは、また少し性格が違いそうだ。
男は膝の上のチビたちを撫でて、優しい眼差しを送っている。
「なんていうか、自分の子だと思うとより可愛いですね……」
「でしょ!? 絶滅させたくなくてさ。それでマカルがいろいろ考えてくれたんだ。君が来てくれて本当に良かった」
「薬も触手たちも……絶対に守りたいです」
俺の目に狂いはなかったな。少しずつ人を増やせたら最高だ。
実は俺の子──ルマと名付けた──はハルロスとどうしても番いたいらしく、「待て」をさせている。さすが欲望に忠実な俺の子だ……ちょっと複雑だけど。ただ、ハルロスもルマからの気持ちはまんざらではなさそうなんだけどな。
ミミの二回目のときは、俺から無理やり搾り取るのはやめてもらった。ちゃんと三人で相談して、俺がハルロスの中に出した精液を回収して使うならいいと許可したというか。何を言ってるかわからないというか……それもどうなんだとは思うけど、ハルロスとミミはそれでもいいらしい。
俺の子がもっとほしいんだってハルロスに訴えられたら、俺が負けるに決まってるんだよ。妥協点探すしかないだろ?
とりあえず、その時の卵は五つのうち三つを封印してある。もちろんミミの許可も得た。ハルロスの血筋だけじゃなくて、俺の血筋の触手の卵も保管したいってハルロスが言ったからなんだけどな。
全部を保管したわけじゃないけど、確率的には俺の子が混じってるはずだ。かなり俺の精液を回収してるのを見たからな……執念がやばい。
そう言いつつも、俺の血を引いた卵がハルロスの血を引いた卵と一緒に時を超えていくかもしれないと思うと少しだけ感動する。
◇◇◇
ハルロスが言うには、ハルロスの曽祖父は良くも悪くも本当の研究者で、子どもをたくさん作ってはいたけど、人間社会に戻ると決めたらすっぱりとここごと切り捨てられる人みたいだってことだ。ハルロスは「それを考えると、すごい人だと思うけど、仲良くできたかわからない」って言ってたな。
実際はどうだったのかなんて誰にもわからない。もしかしたらハルロスの曽祖父だって断腸の思いでここを去ったのかもしれないしな。そのときの触手たちがどこか別のところで血筋を繋いでいるのか、それとも淋しく枯れていったのかもわからないんだ。生きててくれたらいいなと思うけど。
そして、俺とハルロスは、こいつらを捨てるのは無理だった。それだけのことだ。
今、従業員は五人に増えて、その中で婿は四人になった。自分の『人を見る目』が間違いなさすぎて笑う。触手たちもかなり増えたけど、楽しくやっている。
薬だけじゃなくて、いろいろと手広く触手に手伝ってもらっているし、生活は安定してると言っていい。しようと思えば贅沢もできるしな。
触手と交合をしていると、美しくなって老化がかなり遅くなるのは、全員に当てはまることもわかった。蜜玉と交合のときの粘液が合わさることで、その効果が出るらしいことまではハルロスが突き止めた。
他の従業員との差……それを身に染みてわかっているのは婿になってない一人の従業員だろう。彼は俺と同じでケツを許すのが怖いらしい。でも、かなり心が揺れているのが見ていてわかるし、触手のことはめちゃめちゃ可愛がってるんだよな。思うに……彼が婿になる日も近いだろう。
もし触手によって得たその美貌を持って、研究所を出たいやつが現れても、俺はそれを許すつもりだ。魔力契約のおかげで、触手のことは口外できないからその点は安心なんだ。でも今のところ、ここを出たいという声は聞かない。みんな触手が大好きなやつらだからな。
あと、うちの薬は以前にも増して、卸して欲しいと希望が殺到している。薬だけじゃないと言ったのは、肌に塗るバームとかを新たに追加したり、夜の生活が潤う潤滑剤を少し作ったりしたからだ。大々的に売ってるわけじゃないが、身分の高い人なんかが買い占めようとしてくる。それがわかってて作ったわけだけど。
でも、予約販売はしてないし、昔から個人的に付き合いのある信用できるところ以外は卸さないで、ときどきゲリラ販売を続けている。うちの薬なんかの転売もあるようだけど、そこまでは責任もてない。見えないところでやってくれ。
俺たちは研究所や従業員の生活が保てる収入があればいいからな。商品を卸して、その売り上げで生活用品や希望のあったものなんかを購入して持って帰るのは俺の役目だ。
今の俺はいろいろな魔導札を書けるようになったから、昔の旅よりはかなり安全に移動できるようになった。しかも、触手たちのくれた獲物捕獲用の粘液を込めた袋がかなり役立っている。
「うぉら!」
「ぎゃああああ」
ほらな。
こうやって投げつけるだけで動きが封じられるし、下手するとあの粘液固まるからなぁ。盗賊たちに情けは無用だから、そこで固まって干からびようと知らないが。
俺もなんだかんだハルロスのおまけで老化が抑えられてて、肌艶がよくなってるもんで、顔は知られてるし狙われるんだ。
ただ、年々対策もバッチリになってきてるし、戦闘能力やら隠密能力やらのスキルが上がってるんで問題はない。あと、研究所にある程度近くなってくると、察知してこっそり出てきている触手が守ってくれることがあるのも心強いし。
なんとなく世の中にここのことが伝わりつつあるようだけど、防壁は触手製だから壊せないし、俺の認めた者しか中に入ることはできない。仮に忍び込めたとしても、触手に捕らえられるしな。双方の同意がなくても、強制的に口外できなくなるような魔力契約ができるように、鋭意勉強中ってところだ。
ここは今や触手の楽園だから。
俺は命ある限りハルロスや触手たち、婿たちを守ると決めたんだ。
心が純粋で真面目な気のいい男なら俺の眼鏡に適うだろうから、ぜひここに来て触手と生活してみてほしい。ケツを差し出すことに抵抗がないなら、きっともっといい思いもできるはずだ。
自分の血を引いた触手は可愛いぞ? 興味が出てきただろ?
「マカル、おかえりっ! 会いたかった!」
「ただいま。変わりはないか?」
「ん、また触手が増えたくらいかな」
「そうか! 新しい子たちはどこに?」
「たぶん……部屋に父親共々そろっているはずだよ。会う?」
俺はハルロスを抱き上げてキスをすると、一緒に新しい家族に会いに行く。
触手たちと婿たち、それに最愛のハルロス。
ああ……幸せだなぁ。
いつまでもこんな日々が続きますように。
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