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情報収集の旅へ

202.あのときのヤツみたいな

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 街を出てからかなり歩いて、俺たちはもう森に入っていた。確かにここは少し魔物が強くなっている体感がある。
 
「うーん。なんでこうやって強さに差が出るの? いろんなところに強いのとか弱いのが混ざってるならわかるけど、あるエリアだけ強いとかゲームじゃないんだからさ……」
「ゲーム?」
「あ、ごめん。こっちの話。森に入る前までと全然違うよなーって思ってさ」
「そうだねぇ。これはオレの予想なんだけど、この森が魔力を溜めちゃうんだと思う。渓谷もあの地形で魔力噴出しやすかったり魔力が流れ出なかったりするんだよね。そこから考えるとってだけなんだけどさ。もしかしたらこの森も魔力噴出しやすいとかそういうのがあるかもしれないよ」
 
 他の森では魔力が溜まっちゃうことがなかったから、地形が違うかもってことか。
 それにしても、魔力噴出はトラウマなんだよなぁ……。俺がこの世界に来ちゃってまだ不安がいっぱいなときに起こった印象が強すぎてさ。近くで起こったらやだな。
 
「少し谷になってるのか、それとも森の木々のせいなのかわからんが、確かに魔力が濃い感じはするな」
「そうなんだ……ちょっと怖いな」
「なに言ってんの。村の周りのほうがもっと濃かったのに」
「ヴァン、そういうこと言うな。俺もお前もこの森に来たことないんだぞ。油断しすぎだ」
 
 ルイに言われてヴァンは少し耳を倒していた。喋らなくてもああいうところで感情が少し見えるのが獣人の可愛いところだよね。俺、ヴァンの耳と尻尾見るの大好き。でも尻尾はあまり見てるとヴァンにやらしいって言われちゃうからな……。
 
 この森で出る魔物は2人も初めての種類が多いんだって。似たような魔物に当てはめて戦略は立ててるみたいだけど。もともと生息してる動物が違うから、魔化したら違う魔物になるってのは理解できる。しかも、魔化するとそれによってどういうふうに変化するかは、受けた魔力の量とか持っていた性質なんかで少しずつ変わるらしいからね。
 
「イクミ、来るよ」
 
 少し前を歩いていたヴァンに言われて、弓に矢をつがえて用意をした。けど……ヴァンがなにかに攻撃してるようだけど、俺にはよくわからないんだ。ルイは俺のそばにいてくれてるけど、少し険しい顔をしてる。
 
「ヴァンが押されてるか?」
「え?」
「イクミはひとりで平気だよな」
「待って! おかしいよ。俺には何も見えない」
 
 俺がルイを引き止めると、ルイも目を見開いていた。どういうことだって聞かれたけど、どういうこともなにも……ヴァンは『空中』に向かって短剣を繰り出したり魔法を放ったりしてるじゃん。
 
「待て。それって前に村に出た幻影の魔物と似てるってことか?」
「わ、わかんないよ……どうしよう」
「そしたら本体が近くにいるはずだ。どうやら惑わされていないのはイクミだけみたいだから、探してみてくれ」
「う……ん」
 
 そんな重要な役目を任されるなんて怖すぎる。けど、ヴァンが魔物を引き受けてくれてるうちに見つけないと……。
 俺は周辺に目を凝らすけどなかなか見つけられなくて、ルイに頼んで木に登らせてもらった。上まで登っちゃうと葉っぱで見えにくくなるから下の方だけど、地面で見るよりは遠くまで見えそう。
 
 ヴァンの位置があそこだから、そんなに離れたところにいるはずないよな? それに俺たちはさっき攻撃されなかったからこの辺りは除外して……。こっちで暮らしだしてから視力は回復した感じがあったけど、森の中で探すってめちゃくちゃ大変じゃん。や、やるけどね? ヴァンが怪我したり何かあったりしたらやだし。

「あ、あそこらへん怪しいかも」
「確かに草が揺れてる、か? 魔力が分散してて位置がわかりにくい」

 それは俺たちのいるところからヴァンのもっと先。少しモサモサした低木が揺れた気がしたんだ。風の可能性もあるけど……。

「イクミ、矢を」
「届くかな……」
「身体強化」
「あ、そっか。わかった」

 言われないとできないの、どうにかしないとな。この場合、腕に強化を集中させればいいのかなって思ったけど、木の上で不安定だから脚も強化しないと怖いかもしれない。

「魔力いっぱい使っちゃうと思うから、その後はフォローしてね」
「全部使い切らなけりゃいい」
「うん。やるね!」

 俺は全身の組織に魔力を巡らせる感じで集中する。特にすごく変化があるわけじゃないんだけど、ポカポカするような感じだ。
 そして、いつものように弓ちゃんに心の中で話しかける。
 ──仕留められたら嬉しいけど、そうじゃなくても魔物の本体がわかればいいんだ。協力して!

 弓を構えれば、腕が自然と茂みの下の方を狙った。いつもと違ってギリギリと嫌な音を立てるくらい弓を引いて、弓の狙わせてくるところへ矢を放つ。

 予想しなかったキンッという感じの嫌な音がすると、俺の隣からルイが飛び出していった。

 つまり、その場所で合ってたってこと?
 木の幹に寄りかかって、俺は弓ちゃんにお礼を言った。だって、俺なら茂みの中央を狙っていたと思うんだ。あんな地面みたいなところを狙おうなんて思わなかったもん。

 ヴァンもルイと合流して今度こそ魔物と対峙している。たぶんもう大丈夫だと思うけど、俺は木の上からその様子をずっと見ていた。だって、もしまた魔物が変なことしだしたら、俺しかわからないんだろ? もうフルパワーで矢を射るのは無理としても、本体の位置を教えるくらいはできるはずだから。

 けど、本体がわかったからか、ルイとヴァンでトドメを刺すことができた。あっちでヴァンが手を振っている。
 うん……行きたいんだけど、降りれるかなって下を見てたら、ルイが来てくれて手を広げてくれた。うひゃあ、恥ずかしい! って一瞬戸惑ったけど、魔力の調節が上手くできなくて自分で降りれなさそうだからしょうがない……。
 俺はルイの腕の中に飛び降りた。

「大丈夫か?」
「だ、だ、大丈夫! ありがとう!」
「今回もイクミの手柄だな。魔核持ちじゃなかったが」
「まあ、あのときのみたいな魔物じゃなさそうだったもんね。ヴァンのとこに行こっか」
「やめとけ」

 ルイに止められた。けど、俺は遠目すぎて魔物をちゃんと確認できてないんだよ。

「イクミの苦手な種類だ」
「……」
「アレにそんな知能があるのか謎だが、そういう虫のやつだ」
「……やめとく」

 ヴァンが俺たちのところに来たのはもう少しあと。どうやら食べられないやつだけど、解体して魔力のこととかを調べてたみたい。

「変な魔物。外皮も硬めだったね。すごく細長くてイクミが矢を放ったところが頭で、オレが最初に戦ってたところが末端って感じだったよ。棘みたいな尻尾みたいなところから魔力の幻覚というか偽物を作り出してたっぽい」
「あれに気づいたのはイクミだけだな」
「不思議だねぇ。でも助かったよ。こういう魔物にはイクミがいたら安心かもね」

 意味わかんないんだけど。なんで俺にはヴァンの戦ってる様子が見えなかったのかな。前に村の近くに出たやつは分身した魔物が俺にも見えたから、あれとは種類が違いそうだ。

「イクミがあまり魔力を察知できないからかなぁ」
「俺も今回はその可能性が高そうだとは思った」

 え、そういう感じなの!?
 
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