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情報収集の旅へ
181.防具屋と武器屋再び
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今日は防具屋に来ている。今、ちょうどルイが預けた防具の修理が終わってるか聞いてくれてるところ!
「立て込んでいると言っていたのに、だいぶ早く仕上げてくれて助かった」
「いやいや、気にすんなって。遅くてもいいやつは後回しにしてるだけなんだ。さすがに無理なときは無理って言うさ」
ルイは防具を丁寧に確認して料金を支払い、ひとまず受け取ったルイのとヴァンの鎧をマジックバッグにしまっていた。
そして、店主が俺を呼ぶ。少し調整してみたからつけ心地を確認しようって言われて、装着してみたんだけど……なにこれ!?
「ええー、全然違う。不思議!」
「うんうん、やっぱりここの調整で合ってたみたいだね。あと、各ベルトを少しだけ細くしたよ。微調整レベルだけど変わるだろう? 意外とベルトの太さは盲点なんだよ」
「ピタっときて、擦れる感じがまったくない……すごい」
感動ってレベルを超えてた。だって、今までのだってセミオーダーみたいなもんでかなり俺に合ってたんだ。それなのにそれ以上しっくりくるなんてさ!
大満足で俺の革鎧もルイにしまってもらった。あと、俺の予備のグローブとアームガードを買って、お礼を言って店を出た。
次に武器屋に顔を出す。武器屋も1回来てるんだけど、ルイやヴァンの武器を修理したわけじゃない。修理はしないのかって口にすると、意外な答えが返ってきた。
「今回はそこまで剣に異常があったわけじゃないから、自分で砥げば事足りるなと思ってな」
そりゃね、店に預けたらお金はかかっちゃうんだろうけど、頼んだらちゃんとした手入れをしてくれるわけじゃん?
「イクミ、ルイがどれだけ旅してると思ってんの」
「あ、うん……そうだよね。旅の途中でも手入れしてたし」
「心配してくれてありがとな」
ルイに頭をポンポンされて気持ちがふわりとした。とりあえず使ってる武器は問題ないってことでいいんだよな。
で、なんでそれなのに武器屋に来てるかっていうと、俺の予備の弓矢を買うためだったんだよね。最初に来たときは弓がほとんどなくて、親方に頼んだんだ。
もちろん、新しく作れとかじゃなくて、街にいくつかある工房から俺に合いそうなのを取り寄せてもらうお願いだけだけどね。もちろんアーティファクトの弓矢は見せるわけにいかないから、それは伏せて旅の途中でメインの弓が壊れた的なことを言ったわけ。それで、俺の背格好とかを確認して5日後以降に来てくれって言われてたんだ。
「さてさて、この辺を用意してみたんだが、ちょっと持って見てくれるか」
「はい!」
ムル村で練習に使っていた弓よりは随分質が良さそう。俺の弓ちゃんには敵わないけどさ。
「あ、これとか結構いいかな。見た目もシンプルで似てるし」
「おお。それの良さがわかるなんて弓をわかってるね! それは無駄をとことん無くした機能性全振りの弓なんだそうだ」
「親方、値段は? あと、矢も頼む」
「聞いて驚け! これは──」
支払い関係をすべてルイに任せてごめんって気分。でも武器の値段のこととかもルイが一番わかってるからなぁ。俺が何もわかってなさすぎ問題なんだけどさ。
とりあえずは、村で話してた予備の弓矢もゲットできたし一安心かな? それに防具屋で鎧も戻ってきたし、これで塔に行く準備は大丈夫ってことだよね。塔の主人にアポ取れるといいんだけどなぁ。
なんて思ってたんだけど……。
やっぱり思ったとおりにトントンと進むことなんてないんだ。海守りの塔の主人には会えないし、どこに行っても「最近見ていない」ばっかりでさ。ここに着いてからずっとそうだから、タイミングが悪いもなにもないんだけどね。
今のところ、情報収集も街の半分も聞いて回れてない。マギッドの町を8日ほどで出てきたことを考えたら、やっぱりここってかなり広いんだなって思う。
いろんな店に入って聞いてるから、ルイも初めて入る店が多いみたい。衣料品とかアクセサリーの店なんて絶対入らなそうだもんね。明らかに女性向けの店もあったし。
そういえば、この間、そんな衣料品店のご隠居から少しだけ不思議な話を聞いたな。
極まれに海にものすごく濃い霧が出て、怖いくらいのことがあるんだとか。入江まで霧は来ないらしいんだけど、普段は水平線が見えるはずなのに白く何も見えなくなるんだって。まあ、冷たい海水と湿った空気でそんなことは起きそうだけど、極まれにってことはもともと起こりやすい地域でもないんだろうなぁ。
自然現象といえばそうなんだけど、俺がこっちに迷い込んだときも霧があったから少しだけ気になるよね。頭の片隅に置いておこうかなって感じ。ただ……海になにか手がかりがあっても、海には出られないからなぁ。この世界の人も海に繰り出すことがないんだから、霧の原因もわからないだろうし。
「防具も揃ったし、先に塔に行ってみる?」
「ええっ。でも……街の人でもない俺たちが急に行ったら、驚かせちゃわない?」
「大丈夫じゃないか? そういうのも慣れてるだろ」
「そうそう。食いつくらしい金属も渡すしさ。女将さんの話もするし」
あまりにも単調な聞き込みが続くせいで、ヴァンは変化を求めてるっぽいな。気持ちはわからんでもない……。小さな町での聞き込みと全然違うんだもん。
「そうやって途中で街を出る場合どうするの?」
「一旦それまでの宿代とか税金は払うね。でもまたすぐ戻ってくると申告すればタグは一時保管しててくれるんだったよ。一定期間戻らなければタグは初期化されて、また登録の手続きからするんだ。街に入るときに聞いたから確かなはず」
「ああ、俺もそう聞いたな」
「聞いてなかったの俺だけだね……」
「聞き取れなかっただけだろ」
あ、そっか。入り口のところで俺に向かって言ったわけじゃなかったってことね。びっくりしたー! 最近聞き込みのときは俺たち3人に向かって話してくれる人が多かったせいで、俺に意識向けてくれないと聞き取れないって忘れてたよ。
街から塔も半日あれば着くらしいから、行ってみて不在ならすぐ戻ればいいかもって。それなら試しに行ってみるのもいいかもね。
「じゃあ、明日とか見に行ってみる?」
「ここらで風向きを変えるのはオレはありだと思うな」
「イクミに任せるぞ」
ルイとヴァンに見られて少し言葉に詰まったけど、こういう戦闘とか生命に関わる場面じゃないときは決定権が俺なんだよね。
「うー……行きます」
「やったぁ」
「じゃあ、今日は酒場に行く前に一度宿に予定を伝えておこう」
「あ、そっか。明日までの分を一度精算しておかないとだめなんだもんね。どうせ戻ってくるのにね」
「そうだが、宿からしたらそのまま旅立たれても困るだろ?」
俺からしたらバックレなんて信じられないけど、そういう人もいるんだろうなぁ……。
宿には朝イチで一旦精算することと、一応早ければ夜……遅くても数日後には戻る予定だから、部屋は確保したままにしてもらえると助かると伝えて部屋代を渡してた。戻ってきたら満室だったとか悲しいもんな。
「立て込んでいると言っていたのに、だいぶ早く仕上げてくれて助かった」
「いやいや、気にすんなって。遅くてもいいやつは後回しにしてるだけなんだ。さすがに無理なときは無理って言うさ」
ルイは防具を丁寧に確認して料金を支払い、ひとまず受け取ったルイのとヴァンの鎧をマジックバッグにしまっていた。
そして、店主が俺を呼ぶ。少し調整してみたからつけ心地を確認しようって言われて、装着してみたんだけど……なにこれ!?
「ええー、全然違う。不思議!」
「うんうん、やっぱりここの調整で合ってたみたいだね。あと、各ベルトを少しだけ細くしたよ。微調整レベルだけど変わるだろう? 意外とベルトの太さは盲点なんだよ」
「ピタっときて、擦れる感じがまったくない……すごい」
感動ってレベルを超えてた。だって、今までのだってセミオーダーみたいなもんでかなり俺に合ってたんだ。それなのにそれ以上しっくりくるなんてさ!
大満足で俺の革鎧もルイにしまってもらった。あと、俺の予備のグローブとアームガードを買って、お礼を言って店を出た。
次に武器屋に顔を出す。武器屋も1回来てるんだけど、ルイやヴァンの武器を修理したわけじゃない。修理はしないのかって口にすると、意外な答えが返ってきた。
「今回はそこまで剣に異常があったわけじゃないから、自分で砥げば事足りるなと思ってな」
そりゃね、店に預けたらお金はかかっちゃうんだろうけど、頼んだらちゃんとした手入れをしてくれるわけじゃん?
「イクミ、ルイがどれだけ旅してると思ってんの」
「あ、うん……そうだよね。旅の途中でも手入れしてたし」
「心配してくれてありがとな」
ルイに頭をポンポンされて気持ちがふわりとした。とりあえず使ってる武器は問題ないってことでいいんだよな。
で、なんでそれなのに武器屋に来てるかっていうと、俺の予備の弓矢を買うためだったんだよね。最初に来たときは弓がほとんどなくて、親方に頼んだんだ。
もちろん、新しく作れとかじゃなくて、街にいくつかある工房から俺に合いそうなのを取り寄せてもらうお願いだけだけどね。もちろんアーティファクトの弓矢は見せるわけにいかないから、それは伏せて旅の途中でメインの弓が壊れた的なことを言ったわけ。それで、俺の背格好とかを確認して5日後以降に来てくれって言われてたんだ。
「さてさて、この辺を用意してみたんだが、ちょっと持って見てくれるか」
「はい!」
ムル村で練習に使っていた弓よりは随分質が良さそう。俺の弓ちゃんには敵わないけどさ。
「あ、これとか結構いいかな。見た目もシンプルで似てるし」
「おお。それの良さがわかるなんて弓をわかってるね! それは無駄をとことん無くした機能性全振りの弓なんだそうだ」
「親方、値段は? あと、矢も頼む」
「聞いて驚け! これは──」
支払い関係をすべてルイに任せてごめんって気分。でも武器の値段のこととかもルイが一番わかってるからなぁ。俺が何もわかってなさすぎ問題なんだけどさ。
とりあえずは、村で話してた予備の弓矢もゲットできたし一安心かな? それに防具屋で鎧も戻ってきたし、これで塔に行く準備は大丈夫ってことだよね。塔の主人にアポ取れるといいんだけどなぁ。
なんて思ってたんだけど……。
やっぱり思ったとおりにトントンと進むことなんてないんだ。海守りの塔の主人には会えないし、どこに行っても「最近見ていない」ばっかりでさ。ここに着いてからずっとそうだから、タイミングが悪いもなにもないんだけどね。
今のところ、情報収集も街の半分も聞いて回れてない。マギッドの町を8日ほどで出てきたことを考えたら、やっぱりここってかなり広いんだなって思う。
いろんな店に入って聞いてるから、ルイも初めて入る店が多いみたい。衣料品とかアクセサリーの店なんて絶対入らなそうだもんね。明らかに女性向けの店もあったし。
そういえば、この間、そんな衣料品店のご隠居から少しだけ不思議な話を聞いたな。
極まれに海にものすごく濃い霧が出て、怖いくらいのことがあるんだとか。入江まで霧は来ないらしいんだけど、普段は水平線が見えるはずなのに白く何も見えなくなるんだって。まあ、冷たい海水と湿った空気でそんなことは起きそうだけど、極まれにってことはもともと起こりやすい地域でもないんだろうなぁ。
自然現象といえばそうなんだけど、俺がこっちに迷い込んだときも霧があったから少しだけ気になるよね。頭の片隅に置いておこうかなって感じ。ただ……海になにか手がかりがあっても、海には出られないからなぁ。この世界の人も海に繰り出すことがないんだから、霧の原因もわからないだろうし。
「防具も揃ったし、先に塔に行ってみる?」
「ええっ。でも……街の人でもない俺たちが急に行ったら、驚かせちゃわない?」
「大丈夫じゃないか? そういうのも慣れてるだろ」
「そうそう。食いつくらしい金属も渡すしさ。女将さんの話もするし」
あまりにも単調な聞き込みが続くせいで、ヴァンは変化を求めてるっぽいな。気持ちはわからんでもない……。小さな町での聞き込みと全然違うんだもん。
「そうやって途中で街を出る場合どうするの?」
「一旦それまでの宿代とか税金は払うね。でもまたすぐ戻ってくると申告すればタグは一時保管しててくれるんだったよ。一定期間戻らなければタグは初期化されて、また登録の手続きからするんだ。街に入るときに聞いたから確かなはず」
「ああ、俺もそう聞いたな」
「聞いてなかったの俺だけだね……」
「聞き取れなかっただけだろ」
あ、そっか。入り口のところで俺に向かって言ったわけじゃなかったってことね。びっくりしたー! 最近聞き込みのときは俺たち3人に向かって話してくれる人が多かったせいで、俺に意識向けてくれないと聞き取れないって忘れてたよ。
街から塔も半日あれば着くらしいから、行ってみて不在ならすぐ戻ればいいかもって。それなら試しに行ってみるのもいいかもね。
「じゃあ、明日とか見に行ってみる?」
「ここらで風向きを変えるのはオレはありだと思うな」
「イクミに任せるぞ」
ルイとヴァンに見られて少し言葉に詰まったけど、こういう戦闘とか生命に関わる場面じゃないときは決定権が俺なんだよね。
「うー……行きます」
「やったぁ」
「じゃあ、今日は酒場に行く前に一度宿に予定を伝えておこう」
「あ、そっか。明日までの分を一度精算しておかないとだめなんだもんね。どうせ戻ってくるのにね」
「そうだが、宿からしたらそのまま旅立たれても困るだろ?」
俺からしたらバックレなんて信じられないけど、そういう人もいるんだろうなぁ……。
宿には朝イチで一旦精算することと、一応早ければ夜……遅くても数日後には戻る予定だから、部屋は確保したままにしてもらえると助かると伝えて部屋代を渡してた。戻ってきたら満室だったとか悲しいもんな。
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