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178.魚料理が絶品
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俺たちの目の前には料理が来る前に空のグラスが置かれた。なんだこれと思っていたら、ヴァンが氷と水を出してくれる。
「え、何してんの?」
「何って、水だよ」
「見ればわかるけど……ええ?」
何度かのやり取りをして、俺はやっと理解した。こっちの人たちは魔力で水を出すのなんて普通だから、お店の人はグラスを出すだけなんだ……。マギッドの町のときはグラスを出してくれるところがなかったから知らなかったよ。
もちろん、氷はヴァンのサービス。周りのお客さんの水には氷なんてない。
「お酒に入ってる氷は値段に含まれてるよ。ちゃんと店が仕入れた氷だからね」
「なんか、久々にびっくりしたなー。だいぶこっちに慣れたと思ってたのに」
「オレたちからしたら、水を買うってほうがびっくりだよ」
だってあっちじゃ魔法で水なんて出せないんだから、普通は生水しかないんだよ? そりゃきれいな生水もあるけど、海外でサラダを食べて腹を壊すなんてよく聞く話だ。普通は消毒されてない水なんてあまり良くないんだよな。登山の時だって、『この水は飲めます』の札がない湧き水なんかは飲んじゃだめだしさ。日本の水はタダみたいな感覚あるけど、それでも水道代を払ってるわけだし。
そういう意味では水魔法はやっぱり生命維持に必要不可欠だよね。俺が最初に覚えたがったのもそういうところからだしさ。
「はーい、おまちどう! どんどん持ってくるからね」
「きたー!」
まず出てきたのはお酒。それと……素揚げっていうか揚げ焼きされた魚に、千切りの野菜がもりっと乗って酸味のある香りのタレがかかってるやつと、カロイモ。魚はちょっと南蛮漬けっぽい感じ? これはお兄さんのおすすめだ。
「美味しそう!」
「うんうん。酸っぱい匂いがする! オレ絶対好き」
「そこまでキツくないといいんだが」
「ルイの好きなやつは時間かかるのかな」
「そうだな。少し待つ」
もうね、コレめちゃくちゃ美味しい。周りがカリカリになった魚は中身はふっくらしてて食感も最高。このあっさりとした白身魚に、ビネガーだけじゃなくて柑橘とか混ざってる酸味のあるドレッシングみたいなソースが絡んで……爽やかでありつつ揚げてあることでコクもあるというか。野菜も一緒に食べるとシャクシャクとした歯ざわりも加わって、また少し違った味わいになるのも楽しい。
「オレ、これ気に入った! いくらでも食べられるよ」
「この酸味はいいな。油のせいなのか食べやすい。前にイクミが作った柑橘ソースのステーキを思い出す」
「魚だからよりあっさりしてるね」
感激しながら食べてると次々に料理が出てくる。トルティーヤみたいなやつは形は整ってなくて結構適当な薄焼きパンみたいな感じ。硬めだけど噛みしめると甘みを感じる。
それからシンプルな塩焼き。これも海辺で塩がたくさん使えるからか、塩味がしっかりしてて満足感がある。今までワタの苦味は少し苦手だったけど、この魚は美味しく感じる。これはルイが2番目に好きなやつなんだって。
「お兄さん、イモ追加で!」
「はいよ。酒は?」
「んー、じゃあもう一杯だけ。こっちのもお願い」
ヴァンがすかさず追加注文してた。でも、わかる……魚が美味しくてどんどんいけちゃうんだよね。そして、ルイのお気に入り料理が追加のカロイモと共に出てきた。
ステーキの鉄板みたいなのにペースト状のものが敷き詰められ、その上に魚がバーンと乗ってグリルされている。見た目はいたってシンプル。
「このペーストなんだろう……」
「オレは匂いですぐわかったけど」
「え、そんな匂いする? ……ん? あ、ほんとだ」
料理に顔を寄せれば俺にもわかった。これはシャロだな。え……絶対美味しいやつじゃん。ルイは俺たちにほら食べてみろと先に勧めてくれた。
魚を解しつつ、シャロと一緒に取皿に分けると、ワクワクしながら口に運ぶ。シャロが加熱されて溶けたところに、魚の出汁を吸って……さらに長時間のグリルで水分が飛んで甘みも増してる感じ。これだけで美味しいソースみたいだ。魚は身がしっかりしてて弾力があるから食べごたえもある。
「「うっま……」」
「だろ?」
え、これトルティーヤもどきで包んで食べたい。カロイモとも合うけど、絶対美味しいよ。生野菜も一緒にしたらワンハンドミールにいいんじゃない?
そう思って、俺はお兄さんに普通のサラダがないか聞いた。あまり出ないけどあるにはあるって言うから頼んじゃった。
「ビネガーとかいるかい?」
「いえ、大丈夫です。これと一緒に食べるから」
お兄さんはキョトンとした顔でサラダを置いていった。そんな俺を2人は興味深そうに見てる。気にせず俺は、大きめのトルティーヤもどきにサラダ、魚、シャロを乗せて巻いてかぶりついた。
「ふおお! やっぱり思ったとおり美味しい!」
2人も真似して同じように手で持ってかぶりつくと絶賛していた。俺は久々のサンドイッチみたいな感覚で嬉しくて黙々と食べちゃったよね。
「やっぱり、イクミは応用がすごいね。才能だと思う」
「イクミの作るものは外れない」
「そ……そんな褒めても何も出ないよ」
俺たちは魚料理を堪能して大満足! どれも美味しかった。魔物肉だってもんのすごく美味しいんだけど、魚はなんかホッとする感じなんだよな。魔物じゃないからなのかも。
魔化した魚は魔魚とでもいうのかな……知らないけど。それも美味しいのかもしれないけど、外海に出られないから捕まえられないんだろう。
「お兄さん! お会計お願いしまーす」
「口に合ったかい?」
「すごく美味しかった」
「ところで……。君たちのやってたの裏で真似したんだけどさ、アレ売ってもいいかな?」
「へ?」
トルティーヤもどき巻きのことか! あんなの誰でも考えつくことじゃないの? 俺に許可なんかいらないと思うんだけど。
「イクミ、答えてあげなよ」
「あ、びっくりしちゃって。そんなの聞かないでいいのにって」
「いや。あんなの初めて見たんだ。だから君に許可を取るべきだと思って」
「そうなんだ。じゃあ……どんどんやっちゃって下さい」
だってね、食材全部ここの料理だし。俺は組み合わせただけで手を加えたわけじゃないもん。お兄さんには何か謝礼をって言われたけど、そんなこと言われてもなぁ。
「あ、じゃあ、海守りの塔の人が来たら俺たちが会いたがってたって伝えてくれますか?」
「そんなんでいいのか?」
「はい!」
「わかった。見かけたら伝えるよ。滞在先は?」
宿のことはルイが話してくれて、マギッドの女将さんの話とか金属の話も匂わせておいてくれた。さすがルイ!
店を出ると辺りは暗くなっていて、街の灯りが海に反射してきれいだ。それに酒場が開いたのか、ザワザワとした雰囲気が漂っている。
「今まで見てきたところと全く違うね……やっぱり人が集まるところは違うんだな」
「まあね。イクミはひとりになっちゃだめだよ?」
「……イクミも慣れれば対人できると思うが」
「いや、無理無理! 怖い」
今日のところはしっかり宿で休んで、また明日以降に聞き込みしつつ酒場にも入ってみようってことになった。
「え、何してんの?」
「何って、水だよ」
「見ればわかるけど……ええ?」
何度かのやり取りをして、俺はやっと理解した。こっちの人たちは魔力で水を出すのなんて普通だから、お店の人はグラスを出すだけなんだ……。マギッドの町のときはグラスを出してくれるところがなかったから知らなかったよ。
もちろん、氷はヴァンのサービス。周りのお客さんの水には氷なんてない。
「お酒に入ってる氷は値段に含まれてるよ。ちゃんと店が仕入れた氷だからね」
「なんか、久々にびっくりしたなー。だいぶこっちに慣れたと思ってたのに」
「オレたちからしたら、水を買うってほうがびっくりだよ」
だってあっちじゃ魔法で水なんて出せないんだから、普通は生水しかないんだよ? そりゃきれいな生水もあるけど、海外でサラダを食べて腹を壊すなんてよく聞く話だ。普通は消毒されてない水なんてあまり良くないんだよな。登山の時だって、『この水は飲めます』の札がない湧き水なんかは飲んじゃだめだしさ。日本の水はタダみたいな感覚あるけど、それでも水道代を払ってるわけだし。
そういう意味では水魔法はやっぱり生命維持に必要不可欠だよね。俺が最初に覚えたがったのもそういうところからだしさ。
「はーい、おまちどう! どんどん持ってくるからね」
「きたー!」
まず出てきたのはお酒。それと……素揚げっていうか揚げ焼きされた魚に、千切りの野菜がもりっと乗って酸味のある香りのタレがかかってるやつと、カロイモ。魚はちょっと南蛮漬けっぽい感じ? これはお兄さんのおすすめだ。
「美味しそう!」
「うんうん。酸っぱい匂いがする! オレ絶対好き」
「そこまでキツくないといいんだが」
「ルイの好きなやつは時間かかるのかな」
「そうだな。少し待つ」
もうね、コレめちゃくちゃ美味しい。周りがカリカリになった魚は中身はふっくらしてて食感も最高。このあっさりとした白身魚に、ビネガーだけじゃなくて柑橘とか混ざってる酸味のあるドレッシングみたいなソースが絡んで……爽やかでありつつ揚げてあることでコクもあるというか。野菜も一緒に食べるとシャクシャクとした歯ざわりも加わって、また少し違った味わいになるのも楽しい。
「オレ、これ気に入った! いくらでも食べられるよ」
「この酸味はいいな。油のせいなのか食べやすい。前にイクミが作った柑橘ソースのステーキを思い出す」
「魚だからよりあっさりしてるね」
感激しながら食べてると次々に料理が出てくる。トルティーヤみたいなやつは形は整ってなくて結構適当な薄焼きパンみたいな感じ。硬めだけど噛みしめると甘みを感じる。
それからシンプルな塩焼き。これも海辺で塩がたくさん使えるからか、塩味がしっかりしてて満足感がある。今までワタの苦味は少し苦手だったけど、この魚は美味しく感じる。これはルイが2番目に好きなやつなんだって。
「お兄さん、イモ追加で!」
「はいよ。酒は?」
「んー、じゃあもう一杯だけ。こっちのもお願い」
ヴァンがすかさず追加注文してた。でも、わかる……魚が美味しくてどんどんいけちゃうんだよね。そして、ルイのお気に入り料理が追加のカロイモと共に出てきた。
ステーキの鉄板みたいなのにペースト状のものが敷き詰められ、その上に魚がバーンと乗ってグリルされている。見た目はいたってシンプル。
「このペーストなんだろう……」
「オレは匂いですぐわかったけど」
「え、そんな匂いする? ……ん? あ、ほんとだ」
料理に顔を寄せれば俺にもわかった。これはシャロだな。え……絶対美味しいやつじゃん。ルイは俺たちにほら食べてみろと先に勧めてくれた。
魚を解しつつ、シャロと一緒に取皿に分けると、ワクワクしながら口に運ぶ。シャロが加熱されて溶けたところに、魚の出汁を吸って……さらに長時間のグリルで水分が飛んで甘みも増してる感じ。これだけで美味しいソースみたいだ。魚は身がしっかりしてて弾力があるから食べごたえもある。
「「うっま……」」
「だろ?」
え、これトルティーヤもどきで包んで食べたい。カロイモとも合うけど、絶対美味しいよ。生野菜も一緒にしたらワンハンドミールにいいんじゃない?
そう思って、俺はお兄さんに普通のサラダがないか聞いた。あまり出ないけどあるにはあるって言うから頼んじゃった。
「ビネガーとかいるかい?」
「いえ、大丈夫です。これと一緒に食べるから」
お兄さんはキョトンとした顔でサラダを置いていった。そんな俺を2人は興味深そうに見てる。気にせず俺は、大きめのトルティーヤもどきにサラダ、魚、シャロを乗せて巻いてかぶりついた。
「ふおお! やっぱり思ったとおり美味しい!」
2人も真似して同じように手で持ってかぶりつくと絶賛していた。俺は久々のサンドイッチみたいな感覚で嬉しくて黙々と食べちゃったよね。
「やっぱり、イクミは応用がすごいね。才能だと思う」
「イクミの作るものは外れない」
「そ……そんな褒めても何も出ないよ」
俺たちは魚料理を堪能して大満足! どれも美味しかった。魔物肉だってもんのすごく美味しいんだけど、魚はなんかホッとする感じなんだよな。魔物じゃないからなのかも。
魔化した魚は魔魚とでもいうのかな……知らないけど。それも美味しいのかもしれないけど、外海に出られないから捕まえられないんだろう。
「お兄さん! お会計お願いしまーす」
「口に合ったかい?」
「すごく美味しかった」
「ところで……。君たちのやってたの裏で真似したんだけどさ、アレ売ってもいいかな?」
「へ?」
トルティーヤもどき巻きのことか! あんなの誰でも考えつくことじゃないの? 俺に許可なんかいらないと思うんだけど。
「イクミ、答えてあげなよ」
「あ、びっくりしちゃって。そんなの聞かないでいいのにって」
「いや。あんなの初めて見たんだ。だから君に許可を取るべきだと思って」
「そうなんだ。じゃあ……どんどんやっちゃって下さい」
だってね、食材全部ここの料理だし。俺は組み合わせただけで手を加えたわけじゃないもん。お兄さんには何か謝礼をって言われたけど、そんなこと言われてもなぁ。
「あ、じゃあ、海守りの塔の人が来たら俺たちが会いたがってたって伝えてくれますか?」
「そんなんでいいのか?」
「はい!」
「わかった。見かけたら伝えるよ。滞在先は?」
宿のことはルイが話してくれて、マギッドの女将さんの話とか金属の話も匂わせておいてくれた。さすがルイ!
店を出ると辺りは暗くなっていて、街の灯りが海に反射してきれいだ。それに酒場が開いたのか、ザワザワとした雰囲気が漂っている。
「今まで見てきたところと全く違うね……やっぱり人が集まるところは違うんだな」
「まあね。イクミはひとりになっちゃだめだよ?」
「……イクミも慣れれば対人できると思うが」
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