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情報収集の旅へ

164.畑だーー!

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 朝食後はさっそく町を歩いてみてる。
 まずは、朝市みたいなところから。野菜とかの他に、調理済みの骨付き肉とか揚げイモみたいなのとかも売っていた。あれはいわゆる食べ歩きできる簡易的な食事なのかもしれない。

「揚げイモ悪くないんだけど、味が薄いからやっぱ飽きるんだよね」
「そうなの?」
「俺は嫌いじゃない」

 ルイはフライドポテトも美味しそうに食べてたから、嫌いじゃないというか結構好きなんじゃないのかね。

「やっぱ塩かな……」
「イクミが来るまでは村でも塩はやや控えめだったからね。ここもそうなんじゃない? 塩って砂糖と比べたらかなり安いけど、それでも安いわけじゃないからねぇ」

 ここの世界に地殻変動とかがあるのかはわからないけど、岩塩が採掘できるようなところがあればいいのにね。海塩だけに頼るとなると、輸送とかでコストがかかるんだろうからさ。
 ルイがやってた村の仕入れだって、今までも塩はかなりの量を仕入れてたみたいだけど、俺のせいでその量をもっと増やすってことになってたもん。

「1個ずつだけ買うか?」
「あ、いや。俺は今はまだお腹空いてないし、明日食べてみるよ」
「そうか」

 とりあえず、町をぶらぶら歩いている。村と違って道がきれいに整備されていて、建物もまばらじゃなくて道に沿って並んで建っている。
 宿のある辺りは町の中央というか……店も多くて賑やかやだけど、放射状の道を歩いていけば、だんだん店より普通の家みたいなのが増えくる。さらに進めば建物の間隔があいてきて、畑が広がり始めた。

「真ん中が栄えてるってことかぁ」
「多分どこも似たような感じだと思うよ。中央に集めるって形が一番効率がいいんだ」

 どこも魔物を防ぐ目的で防壁があって、その中に畑とか鍛錬場とか土地を必要とする施設、そして住人、店とか宿とか公共の施設と立場の偉い人、みたいな感じで中央ほど密度が高くなってるんだって。それは、収穫した様々な作物も行き先考えず中央に運べばいいし、仮に魔物が防壁を破ったとしても、まず畑とかがあるおかげで人への被害を減らせるとかいろんな利点があるってことらしい。

「中央で何か軽犯罪をやらかしたとして、門を出るまでに住人たちにボコボコにされるってのもあるよ。まあ、そこまで頭が足りないのは滅多にいないけど」

 俺の中では、まだ村が基準になってるせいで、悪いことする人ってのがどのくらいいるのかがわからないんだよな。でもちょいちょい注意されるってことはそれなりにいるってことなんだろう。

「花って春がメインかと思ったけど、結構咲いてるんだね!」
「ここはいつでも何かしらは咲いてるな」
「でもなんか花が特産とかって珍しそう……村でも切り花とかあまり見なかったよ?」
「違うよ、イクミ。ここの花は染料になるのがメインだよ」
「はぇ?」

 全然そんなこと考えもしてなくてびっくりした。日本でも草木染めとかは聞いたことあったけど、俺の身近にないもんな……ていうか、このだだっ広い畑の花で染料?

「夜見せたジェムパウダーあったでしょ? あれも混ぜて作られたここの染料はかなり高品質で城下とかでも人気って話。ここは小さい町ではあるけど、意外と魔導士には有名なとこなんだよ」
「ん? てことは、染料だけど、魔導具的なの?」
「うーん……少し違うけど、でも作るのにはかなり魔力が必要だね」

 あー、やっぱり俺の認識を超えてくるなぁ。この花が染料ねぇ……。花を飾るとかはないのかなって思ったら、花を楽しむなら地植えか鉢植えが普通って言われた。

 ちゃんと魔力で練られた染料は魔物素材でもなんでもきれいに染められるんだって。ムル村ではそういう染料があまりないから、霧蜘蛛の糸の色をそのまま使うことが多かったみたい。でもオレンジとかグレーみたいな色はよく見た気がする。もちろん、ここの名産が花を原料とした染料なだけで、実や葉、鉱石を原料とした染料もあるみたい。そのへんは地球と同じか……あっちじゃ魔力なんてないけど。

「君たち、ずっと見てて飽きないの?」
「あ、え?」
「驚かせたらごめんね。ずーっと畑見てるからさぁ……こんななんの特徴もない畑……」

 畑の人ってわけじゃないのかな。自分の畑だったらこんな言い方しなそう。なんの特徴もないっていうけど、こんな一面の花畑なんてすごいと思うけどね。『映え』ってやつになりそうじゃん。

「外から来たから珍しくて。飽きないですよ。花もきれいだし、これが染料になるとか不思議で」
「ふーん……そう。変わってるね」

 なんとなく居心地悪そうなその男性は俺より少し年上のようにも見えるけど、こっちの人は大人びてるから意外と同世代なのかなぁ。その人は「花なんて」ってブツブツ呟いていたけど、柵を越えて中に入っていった。

「畑の人の割に畑のこと好きじゃなさそうだったね……」
「雇われかもしれないな」
「そういうもんかぁ。すごい特産を扱ってるって自慢しても良さそうなのにもったいないね」

 俺はまだ収入を得る仕事としてはアルバイトが精々だったけど、やっぱり自分がバイトした店の品物はちょっと贔屓しちゃうとこあったんだよな。好きなものは人に勧めたいと思うようになるし、彼がやりがいを見つけられるといいんだけど。

「オレたちは外部から来るから、それがすごいって思うけどさ、中にいるだけの人はそれがどれだけ他で評価されてるかはわからないもんなんだよ」
「なんとなくはわかるけど……」
「んー、さっきの人で言えばさ、イクミって魔物のいる外から来たすごい冒険者なわけ。でもイクミは今も自分なんて活躍できてないって思ってるでしょ? それと似たようなもん」
「うぐ……」

 そういうことね……理解。
 人のふり見て我がふり直せってあるけど、ホントそれな。俺は自分をすごいと思えたこと一度もないからなぁ……。

「意外かもしれないけど、ちゃんとした町なんかから、冒険者として強くなるのって大変なんだよ」
「なんで? なんかしっかりした鍛錬場あったじゃん」
「村とか集落みたいなとこじゃないと、どうしても国の手が入って、税金とかかかるんだ。そうするとそのために働かなきゃならないから鍛錬するのが大変なんだよ」
「あー……」

 ちょっとわかるかも。生きるためにお金は稼がなきゃならなくて、でもそのために時間は減っちゃって、本当にやりたいことに打ち込めないなんてあっちでも聞く話だよな。
 そういう意味じゃ、強くならなきゃ生きていけないムル村は、毎日が鍛錬だもんな。それ用にやらなくても冒険者レベルになるんだから、なんつーかやばいね。

「あんちゃんたち、うちの畑に用かい?」
「ここはおじさんの?」
「そうだよ。この区画は今ちょうど収穫時期さ」
「すごい一面の花ですよね。どうやって収穫を?」

 俺はつい気になっておじさんに質問しまくっちゃった。でもおじさんはニコニコと色々教えてくれてね。そんなことしてたら、あの男性がまたこっちに戻ってきた。
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