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情報収集の旅へ
156.土砂降り続き……
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翌朝、起こされてないけど、いつもよりたくさん寝たからか目が覚めた。まだ雨は降ってるし、どうすんのこれ……とか思って横を向いたら間近にルイの顔があって、変な声が出そうになった。
アワアワと這い出ようとすると、背後からルイの声が。
「イクミ? 起きたのか? 体調は?」
「だだだだいじょぶ……お、はよ」
かまどのところにいたヴァンが笑いだして、ちょっと腹が立つ。
「びっくりしてる人を見て笑うのはどうなの? ていうか、朝食どうする?」
「だって、面白かったから。んと、イモは焼いてる」
かまどをのぞいてみれば、カロイモが雑に包まれて突っ込んである。そのまま入れてないのは成長してるなって感じだ。肉は焼くと煙がここに充満しそうだなぁ。
「肉多めのスープにしようか」
「さんせーい!」
「別に作らなくても保存食もあるぞ?」
ルイはまだ俺が無理してると思ってるのかな。
もう元気だから大丈夫だし温かいもの食べたいんだよねって言ったら、それ以上は何も言わなかったけど。
早く火が通るように肉は小さく切っていく。ヴァンが持ってきた野菜も適当に選んだ。鍋にそれらを入れて、ヴァンに水を足してもらって煮る。そして、俺があっちの世界から持ち込んだ乾物の鷹の爪を細かくして少し加えた。これは村に置いてくるか聞いたんだけど、サディさんが今育てているやつから生の種が取れるから持っていっていいって言われたんだ。もともと俺のだからって。
「この量に1本だけならほぼ辛くないけど、ほんのり隠し味程度にピリッとしたら美味しいよねぇ、んふふ」
「なになに? 変な顔してるぅ」
「また何か工夫したのか?」
俺がニヤニヤしながら作ってたからか、2人が寄ってきた。ていうか、雨がすごくてすることがないんだろうな。ていうか、このかまどの火はどうやって維持してるんだ? 助かるけどさ。
「あ、もしかして、あそこで拾ってきた俺の持ち込んだ薪?」
「なんでそんなもったいないことしなきゃいけないのさ。外の木を切ってきただけだよ」
「はぁ!?」
「別にいつものことじゃん」
「俺たちは濡れてもすぐ乾かせるし、木も乾燥できるからな」
ううう……なんだかなぁ。つまり、足引っ張ってるのは俺だけじゃんか。2人がここに落ち着いちゃってるのも、俺のことを考えてってことだろ?
とりあえず作ったスープをよそっては2人に渡していく。ヴァンは匂いを嗅ぎながらニコニコしてる。
「足なんて引っ張ってないね! 別に期限なんてないんだから、自然に任せて動けばいいんだよ」
「主役はイクミだ。俺たちはサポートなんだからイクミに合わせるのは当たり前だ」
「それそれ。イクミが焦るのはわかるけど、無理して倒れたら後悔するのはイクミだと思うね」
「……はい」
2人に敵う気はしないし、言ってることが正論なのもわかるから反論はしない。俺はいつもネガティブになってみんなに叱られてるね……。でも気にするなって言われても、俺だけできてないんだから気にするの当たり前なんだよなぁ。
「わぁ! このスープ美味しい! なんかほんのりピリピリするよ」
「あの赤いやつだな」
「身体も温まるしいいかなと思ってさ。たくさん使っちゃうとお腹に刺激になっちゃうけど、このくらいなら平気だし」
「美味いな」
ヴァンが相変わらずルイと争うように平らげていく。魔物肉もまだたくさんあるし、水は2人がたくさん出せるから食事には困らないね。小雨になるまではここに居座る感じだろう。
「どうせ動けないなら、魔法でも練習しようかな……」
「おっ、いいじゃん!」
「俺は武器なんかの手入れするから、やるのあれば出しとけ」
「オレの短剣やってぇ。イクミの魔法見てるからさ」
「ああ」
ルイは自分の長剣と短剣、木を切ったりする斧みたいなやつとか、そんなに持ってたっけって量を目の前に並べていく。ヴァンの短剣も2本加わったからなんか武器屋みたいだ。
刃物の金属は鉄や鋼とは少し違うみたいだけど、扱いは似てるらしい。その金属は魔物の血液で錆びるとかはないみたいだけど、やっぱり使ってれば刃こぼれしたり切れ味が悪くなったりはするみたい。
ルイはそういうのを砥いでいくんだって。
「はいはい、じゃあイクミは魔法の練習しようねぇ」
「浄化を自分以外にやるやつ練習したい」
「あー、イクミにはまだ少し難しいかもだけどいい機会か。前にイクミに聞いた身体の浄化方法だと、物には適用できないもんね」
「うん。それで考えてたんだけど、魔力で浄化したい物の表面を覆って、魔力を水の微粒子に変えて……それでキレイにする感じでいいんだよね?」
「うんうん! それでいいよ」
俺はまだ魔力を自分の中からそのまま移動させて、別の物を覆うってのをしたことがないんだ。水を出すのだって浄化だって、火や風だって身体の外に出すときには現象として出してるからなぁ。魔力をそのままってのがまだ感覚としてよくわからないのが難点なんだよね。
「お願い、手伝ってね?」
俺はとりあえずは弓を胡座の上に置いて、撫でながら話しかける。ヴァンの生暖かい視線は気にしない。そして、さすがに鍋はでかいから、俺の使ったシェラカップを手に握った。
魔力を分割して手に移動させるのはもう慣れたもんだからいいとして……。そのまま、えっとぉ?
「ヴァン……どうしたら?」
「いや、そのまま移動だよ。なんでそこで引っかかっちゃうの?」
「だってぇ、今までで身体の外に出すときは必ず現象化してたんだもん。よくわからなくなっちゃったよ」
変化させない変化させない……そのままシェラカップを覆う……。弓と連結した俺の魔力は水っぽいイメージだから、どうしても水化しちゃいそうな感じでためらう。
だめだめ。俺がそういうイメージをしちゃったらそうなっちゃう。信じろ、弓と俺を。
「シェラカップは俺の腕の延長だと思って……そのまま魔力を伸ばす……」
ずずずっと手から水を出すのとは違った感覚がして、見た目には変化はないけど移動できてるような気もする。俺の脳内的には薄い水の膜がシェラカップを覆っている感じを保っている。
「いいよ。イクミ、魔力を変換してみて」
「!」
ヴァンがこう言ってくるってことはできてるんだよね。水の微粒子……これが難しいのはわかってる。だって身体の浄化のときあんなに苦戦したから。さて、どうしようかな……この状態で失敗したときは魔力は元に戻るんだろうか。
いや、やる前から心配してもしょうがない。元に戻らなくても回復したらまた練習するだけだ。そりゃ、減らなければ続けて練習できるから助かるんだけどさ。
うん、超音波みたいな感じがいいかな。前に考えた水分子を振るわせるマイクロウェーブだとどうしても電子レンジみたいなイメージがついてきちゃうから。超音波洗浄器とか超音波加湿器なんかだったらまだいいかもしれない。
そしてやってみた結果は……。
アワアワと這い出ようとすると、背後からルイの声が。
「イクミ? 起きたのか? 体調は?」
「だだだだいじょぶ……お、はよ」
かまどのところにいたヴァンが笑いだして、ちょっと腹が立つ。
「びっくりしてる人を見て笑うのはどうなの? ていうか、朝食どうする?」
「だって、面白かったから。んと、イモは焼いてる」
かまどをのぞいてみれば、カロイモが雑に包まれて突っ込んである。そのまま入れてないのは成長してるなって感じだ。肉は焼くと煙がここに充満しそうだなぁ。
「肉多めのスープにしようか」
「さんせーい!」
「別に作らなくても保存食もあるぞ?」
ルイはまだ俺が無理してると思ってるのかな。
もう元気だから大丈夫だし温かいもの食べたいんだよねって言ったら、それ以上は何も言わなかったけど。
早く火が通るように肉は小さく切っていく。ヴァンが持ってきた野菜も適当に選んだ。鍋にそれらを入れて、ヴァンに水を足してもらって煮る。そして、俺があっちの世界から持ち込んだ乾物の鷹の爪を細かくして少し加えた。これは村に置いてくるか聞いたんだけど、サディさんが今育てているやつから生の種が取れるから持っていっていいって言われたんだ。もともと俺のだからって。
「この量に1本だけならほぼ辛くないけど、ほんのり隠し味程度にピリッとしたら美味しいよねぇ、んふふ」
「なになに? 変な顔してるぅ」
「また何か工夫したのか?」
俺がニヤニヤしながら作ってたからか、2人が寄ってきた。ていうか、雨がすごくてすることがないんだろうな。ていうか、このかまどの火はどうやって維持してるんだ? 助かるけどさ。
「あ、もしかして、あそこで拾ってきた俺の持ち込んだ薪?」
「なんでそんなもったいないことしなきゃいけないのさ。外の木を切ってきただけだよ」
「はぁ!?」
「別にいつものことじゃん」
「俺たちは濡れてもすぐ乾かせるし、木も乾燥できるからな」
ううう……なんだかなぁ。つまり、足引っ張ってるのは俺だけじゃんか。2人がここに落ち着いちゃってるのも、俺のことを考えてってことだろ?
とりあえず作ったスープをよそっては2人に渡していく。ヴァンは匂いを嗅ぎながらニコニコしてる。
「足なんて引っ張ってないね! 別に期限なんてないんだから、自然に任せて動けばいいんだよ」
「主役はイクミだ。俺たちはサポートなんだからイクミに合わせるのは当たり前だ」
「それそれ。イクミが焦るのはわかるけど、無理して倒れたら後悔するのはイクミだと思うね」
「……はい」
2人に敵う気はしないし、言ってることが正論なのもわかるから反論はしない。俺はいつもネガティブになってみんなに叱られてるね……。でも気にするなって言われても、俺だけできてないんだから気にするの当たり前なんだよなぁ。
「わぁ! このスープ美味しい! なんかほんのりピリピリするよ」
「あの赤いやつだな」
「身体も温まるしいいかなと思ってさ。たくさん使っちゃうとお腹に刺激になっちゃうけど、このくらいなら平気だし」
「美味いな」
ヴァンが相変わらずルイと争うように平らげていく。魔物肉もまだたくさんあるし、水は2人がたくさん出せるから食事には困らないね。小雨になるまではここに居座る感じだろう。
「どうせ動けないなら、魔法でも練習しようかな……」
「おっ、いいじゃん!」
「俺は武器なんかの手入れするから、やるのあれば出しとけ」
「オレの短剣やってぇ。イクミの魔法見てるからさ」
「ああ」
ルイは自分の長剣と短剣、木を切ったりする斧みたいなやつとか、そんなに持ってたっけって量を目の前に並べていく。ヴァンの短剣も2本加わったからなんか武器屋みたいだ。
刃物の金属は鉄や鋼とは少し違うみたいだけど、扱いは似てるらしい。その金属は魔物の血液で錆びるとかはないみたいだけど、やっぱり使ってれば刃こぼれしたり切れ味が悪くなったりはするみたい。
ルイはそういうのを砥いでいくんだって。
「はいはい、じゃあイクミは魔法の練習しようねぇ」
「浄化を自分以外にやるやつ練習したい」
「あー、イクミにはまだ少し難しいかもだけどいい機会か。前にイクミに聞いた身体の浄化方法だと、物には適用できないもんね」
「うん。それで考えてたんだけど、魔力で浄化したい物の表面を覆って、魔力を水の微粒子に変えて……それでキレイにする感じでいいんだよね?」
「うんうん! それでいいよ」
俺はまだ魔力を自分の中からそのまま移動させて、別の物を覆うってのをしたことがないんだ。水を出すのだって浄化だって、火や風だって身体の外に出すときには現象として出してるからなぁ。魔力をそのままってのがまだ感覚としてよくわからないのが難点なんだよね。
「お願い、手伝ってね?」
俺はとりあえずは弓を胡座の上に置いて、撫でながら話しかける。ヴァンの生暖かい視線は気にしない。そして、さすがに鍋はでかいから、俺の使ったシェラカップを手に握った。
魔力を分割して手に移動させるのはもう慣れたもんだからいいとして……。そのまま、えっとぉ?
「ヴァン……どうしたら?」
「いや、そのまま移動だよ。なんでそこで引っかかっちゃうの?」
「だってぇ、今までで身体の外に出すときは必ず現象化してたんだもん。よくわからなくなっちゃったよ」
変化させない変化させない……そのままシェラカップを覆う……。弓と連結した俺の魔力は水っぽいイメージだから、どうしても水化しちゃいそうな感じでためらう。
だめだめ。俺がそういうイメージをしちゃったらそうなっちゃう。信じろ、弓と俺を。
「シェラカップは俺の腕の延長だと思って……そのまま魔力を伸ばす……」
ずずずっと手から水を出すのとは違った感覚がして、見た目には変化はないけど移動できてるような気もする。俺の脳内的には薄い水の膜がシェラカップを覆っている感じを保っている。
「いいよ。イクミ、魔力を変換してみて」
「!」
ヴァンがこう言ってくるってことはできてるんだよね。水の微粒子……これが難しいのはわかってる。だって身体の浄化のときあんなに苦戦したから。さて、どうしようかな……この状態で失敗したときは魔力は元に戻るんだろうか。
いや、やる前から心配してもしょうがない。元に戻らなくても回復したらまた練習するだけだ。そりゃ、減らなければ続けて練習できるから助かるんだけどさ。
うん、超音波みたいな感じがいいかな。前に考えた水分子を振るわせるマイクロウェーブだとどうしても電子レンジみたいなイメージがついてきちゃうから。超音波洗浄器とか超音波加湿器なんかだったらまだいいかもしれない。
そしてやってみた結果は……。
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