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情報収集の旅へ

151.戦力……戦力ねぇ

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 そんな魔法の話も聞きつつ、足も動かしているんだけど……。
 俺がルイに出会って、村に連れて行ってもらったときより進むのに時間がかかっているかもしれない。ヴァンが積極的に魔物を狩りにいってるからかなぁ。

「まあ、3人だからって思ってるんだろ。あのときはなるべく魔物を避けつつ最短でって思ってたからな」
「ほんとにありがと……今になって反省するよ」
「今のイクミは十分戦力だから頼りにしてるぞ」
「えっ、うそ」

 ルイに頼りにされるほどの戦力じゃないのは、俺が一番わかってるってのに。思わず反射的にうそって言っちゃったけど、その言葉に自分でダメージ受けた……。

「もう、イクミって『ルイは思ってもないこと言わない』ってしょっちゅう言ってて、なんで今そんなこと言ってるんだよ」
「だってぇ」

 いつもはルイの言うことならって素直に思えるけど、戦力に関してはとてもじゃないけどさぁ……。
 ちょっとヘコみ気味の俺の頭をポンポンすると、特に不機嫌そうでもなくルイが言った。

「さっきだって魔物の弱点を狙えてた。大丈夫だ。イクミはちゃんと戦力なんだぞ」
「あれは……だって、弓が」
「弓の力をイクミがちゃんと使えてるってことだろ?」
「そうだよ。オレならそんなのわかんないって言ってるでしょ」

 俺が弓を使えてるっていうか、弓に使われてるっていうか……。今ひとつ実感がないんだよね。
 村長に借りてから日に日に馴染んでいくような感覚は確かにある。俺のためにヴァンの魔法と組み合わせてもいいって感覚もあったし、仲良くなってる気もするんだけど。

「うーん……まあ」
「はっきりしないなぁ」
「しょうがないじゃん。実感がないんだから」
「追々だな」

 俺が自信満々になる日なんてこないと思うけどねぇ。でもこれ以上この話を引き伸ばすのもねと思って、俺は小さく頷いた。

 本格的に旅に出てしまったから、野営料理は演習のときほど凝ってはいない。それでもヴァンなんて大はしゃぎなんだから、普段の料理どうなってんのって思うよね。
 ルイはいつもどおり水だけでふやかして食べられるイモの粉と干し肉をメインに持ってきているらしいけど、ヴァンは生のカロイモやら日持ちする根菜を結構詰めてきているんだって。

「ヴァン、バッグの中で腐らせないでよね?」
「わかってるよ。最初の町までは残ってないはずだから大丈夫だって。メインは魔物肉だしね!」

 最初の町までは残ってないってどんだけ詰めてきたんだ? とは思うけど、主食とか野菜はありがたいから言わないでおこう。イモの粉はそのまま食べるのはやっぱ飽きると思うからね。

「今日はカロイモと魔物肉と根菜を炒めるのかスープにするかで悩んでる」
「オレはスープがいい!」
「イクミが楽な方で」

 どっちも変わらないよ……。待たせるのはスープだと思うけど、ヴァンがスープがいいって言うならそれでいいか。

「じゃあ、俺はスープの準備するから、串焼きでもなんでもいいからそっちで適当に肉焼いて」
「オレたちが作ったら味ないよ?」
「そのくらい自分でやって!」

 甘えすぎだろ。薬草パウダーはたくさん持ってきてるし、俺がやってるの今まで見てるじゃん。……正直言えば、スープを作りながら、肉を焼くとか1人でも全く問題なくできるんだけどさ。2人に少しでもやらせようという俺の作戦なわけ。

「……ルイは俺のやつ焼いてくれる?」
「あ、ああ……」

 ルイは普通に焼けばいいんだよなとか言いながら、ヴァンと串に肉を刺していた。素焼きしようとしてヴァンに言われ、今度は塩をたくさんかけそうになって更にヴァンに注意されてるところが可愛い……。そういえば、ルイは干し肉かじるような野営ばかりの人だったな。

 思ったとおり、ヴァンは元来、器用なんだよな。それに頭も良くて俺が言ったことを結構覚えてる。でも興味ないことは全然やろうとしないんだよ。

「ヴァン、魔物肉は別にそこまでしなくても美味いだろ……」
「イクミのスープと一緒に食べるのに、あのままでいいっていうのっ?」
「いや、まあ……」
「イクミはオレたちに美味しいスープ作ってくれるのに? ルイは、イクミ用の肉をそのまま素焼きで渡すの……? マジで……? オレは恥ずかしいよ」

 あ、ヴァンがルイのことからかって遊んでるや……しーらない。
 俺は見ないふりでスープをグルグルかき混ぜた。少しだけ非常食のイモの粉を加えたからとろみが出ていい感じ。もちろん煮込んでいれば具のカロイモも角が崩れて程よくなってくるんだけどね。

 スープの具に使っている方の魔物肉は出汁兼コク出しって感じだから、脂身とかスジの部分を多く使っている。こんな部分でも美味しいから本当に助かる。赤身の部分は肉をしっかり味わえるように焼いて使うことが多いけど。

「いったぁー……」
「ヴァンは黙れ」

 ヴァンが頭を押さえていた。ほら、やりすぎるからそうなるんだと呆れた顔してたら、ヴァンが涙目でこっちをチラチラ見てくるんだもんなぁ。

「スープはもう少し煮込みたいから、焼けたら食べ始めていいからね。ルイ、どんな感じ?」
「こっちももう少しじっくり火を通したいところだ」
「はーい!」

 ヴァンのぶつ切り肉がでかすぎて、あっちも結局時間かかってるっていう……。小さく切って早く火を通そうとはしないんだな。

「小さく切ると汁が垂れて味が落ちるじゃん」
「いや、まあ、わかるんだけどさ……」

 野営でそこにこだわる? そこにこだわるなら何故味付けにこだわらないんだよ……。みんな自由すぎんだろ。

 ヴァンが「串焼きできたー」とはしゃいだ声をあげたとき、スープもよく煮込めたところだった。根菜はほっくりと柔らかくなっていて、肉の旨味もよく馴染んでいる。ただ火加減にだけ注意して煮込んだだけとは思えない出来だ。

「はい、どうぞ。もし少し残ったら朝にも食べられる」
「ううー、残すとかなんでそんなツラい選択を迫るんだよぉ」
「そこまで!?」
「ヴァンに取られないように俺の分を朝用に確保しておいてくれ」

 じゃあ、俺とルイの分はこっちに取っておくか……なんて思っていたら、ヴァンが「朝、2人だけがスープを食べているのを見て正気でいられる気がしない」とか言ってた。しょうがないから3人分一皿ずつ分だけ先に取り置きしておく。

 こういうくっだらないやり取りのおかげで、俺が寂しさを感じることが少なくなっていると言っても過言ではないんだよな。やっぱりずっと一緒に料理していたサディさんと会えないのが結構寂しくて……。あの人の大らかさと優しさとチャーミングさに、俺はずっと励まされてきたからね。

 食事を終えれば、少し3人で話したり毎回じゃないけど反省会したりして、いつものように見張りの当番に分かれた。
 不安と寂しさと……変な焦りを隠しながら、でも2人に救われて毎日が過ぎていく。たまに訳もなく叫び出したいような、泣きたくなるような気分になるのも、ギリギリ踏みとどまれてるのは2人のおかげなんだよなぁ……。
 
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