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情報収集の旅へ
149.出会った場所
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「ここら辺り、だな」
さらに1回野営して昼くらいに着いた場所でルイが辺りを見回していた。そうだっけ? なんて思ったんだけど、あったんだよ……薪が。さすがに1年くらいじゃ腐ってることもなく、冬の間は雪に埋もれたからか湿気てたけど、完全に俺が捨てたやつ。だって、『ビニール紐』でまとめてあるから間違いようがない。
「ほんとだね……薪……」
「へぇ。これがイクミの世界から持ってきた木なの?」
「あのときは荷物になるから捨てろって言われてさ。確かに手が塞がってたらやばかったね……」
なぜかヴァンが薪をマジックバッグにしまいこんでたけど、何も言うまい。別にたいした理由はなくて、でも俺が持ち込んだ物だから珍しくてとかそんな感じなんだろう。
周辺をウロウロしてみるけど、別に霧が深くなったりもせず、俺がめまいを起こしたりすることもなく。
そりゃそうだ。そんなすぐどうにかなったら、あの時点で帰れてるんだよな。
「よくわからないね……」
「そうだな」
「えっと……ルイが拾われた場所……って?」
「ああ、それはあの辺だって教えられてな」
少し離れたところを指差すルイは、前に見たような少し困った顔をしていた。ヴァンも興味深そうに辺りを見てるけど、特に魔力がおかしいとかもないらしい。
なんか不思議だ。ルイも他の世界から転移してきたとかあるのかなとかちょっと思ったけど、だとしても地球ではないよな。あんな鮮やかな赤い髪色はないもん。
「まあ、何度も来てる場所だ。特に何かがあるわけじゃないのはわかっていたんだがな」
「ん。でも、俺も自分の目で見て良かったよ。あとで気になっちゃったかもしれないし……」
ルイは1人で何度も来て、何を考えていたんだろうって思うとちょっと切ないな。きっと実の親について考えていたんだろうけど、それがどういう思いなのかまでは俺にはわかんない……。
気がつくと、なんとなくルイの手首を掴んじゃってた。「ん?」という顔でルイが見てきて、俺はなんて言ったらいいのか迷う。
「えっと……ありがとう。ここに来てくれて」
「いや、手がかりを探してるんだから普通だろ?」
「そうじゃなくて、その……あの日も」
少しだけルイが驚いていた。それでいつもみたいに頭をくしゃってされたんだ。
ふと俺が顔を上げればヴァンがめちゃくちゃいい笑顔で見てたけどな。
「確かにイクミにとってすごくラッキーだったよね。良かったねルイと会えて」
あれ? からかわれるんじゃなかったんだ。
「普通、街のほうから村に直で帰ってきたらこんなとこ通らないんだから」
「そう……なの?」
「だから、なんでって思ってたんだ。ルイは聞いても言わないし。今回、オレとしては事情がわかってすっきりしたけど」
ああ、それがあったからお兄ちゃんの顔なのか。ヴァンにとって本当にルイは可愛い弟なんだなぁ……。
お似合いにも思えてちょっと悔しい。けど、ずっとこういう人がルイのそばにいてくれるなら安心だよねとも思っちゃう。
俺は精一杯明るく「先に進もっか」って声をあげた。そしたら2人もそうしようって感じで歩き出す。なんとなく、あのとき自分が座り込んでいた木の根元をもう一度振り返って、俺は2人の後ろに走り寄った。
ここから始まった俺の異世界生活……この先どうなるんだろうって気持ちは今もあのときと同じだ。でも、今の俺にはこの2人がいるんだもんな。
「次、魔物いたら俺も攻撃する!」
「気合入ってんねぇ」
「なんか、あそこに寄って少し気持ち切り替えられた」
そう俺が宣言すれば、ルイがぽんぽんしてくれる。そうだ、俺はあの日の俺じゃない。ルイに守られてばかりでいたくない。
「いいね。それだけでも来たかいがあったね」
「そういえば、最初の中継地までどのくらい?」
「イクミに合わせて進むが……結構かかると思ったほうがいい」
「まあ、いつくらいに着かなきゃとか思わないほうがいいよ。臨機応変ってやつ。焦ってもしょうがないから、のんびり行くみたいな気持ちでいなよ」
俺の性格をそれなりに把握されてるのか、予定日数は教えてもらえなかった。ルイなんて何度も行き来してるんだから、日数なんてだいたいわかってるはずだろ? でも2人に揃って言われちゃったらどうしようもない。
まずは霧の渓谷の地域を抜けること。そうしたら魔物も少しは減ってくるし、最初の町までの目処がつくかななんて言われた。
この辺てある意味山だからなぁ……。
登山経験のある俺からすると、やっぱりアップダウンのあるところは平地と同じにはいかない。疲労度も大違いだしね。魔物と戦うことも考えたら登山よりもっとかかるだろうなぁ。
「わかったよ……安全と健康第一、だよね」
「そうそう。最初にイクミが言ってたとおりだよ」
殿をつとめるのはルイが多いけど、ときどきヴァンと交代してる。やっぱりああいうのって先頭のほうが疲れるのかなぁ?
いや……山岳ツアーなんかだと最後尾のガイドさんはかなり大変そうだったな。どっちもどっちかも。
そんなことを考えていたら、ヴァンがちらっと振り返って飛び出していった。俺も弓を持ってルイを見る。
「あっちだ」
ルイが俺の背中に手を当てて走り出すから、なんかいつもより早く走れてる気分。ちょっとコケそうになったけど……。
魔物は変なウネウネが生えてて、俺は「うえぇ」って声をだしてしまった。ヴァンは魔物自体の攻撃とウネウネの攻撃に応じてて魔法は放ててないみたいだ。
「前に出るが、イクミ、大丈夫だな?」
「うん。2人を信じてる」
「よし」
そう言うと、ルイもヒラリと前に出た。ウネウネのせいであまり自由に動けてなさそうに見えるけど、2人の攻撃で確実に魔物が弱っていってる。
俺はすぐに矢筒から矢を抜き取って構えた。一度目をつぶって深呼吸をすると、スゥーっと矢と自分がつながる感じ。キリキリと弓を引いて1拍置くと、身体の中心に水がポチョンと垂れるような感覚があった。
そのタイミングで矢を放ったら、ルイやヴァンが攻撃していない身体の後ろの方に矢が吸い込まれるように飛んでいって……魔物が暴れだす。
「ひえぇっ! なになに!?」
「イクミ! 何したの! コイツ苦しんでる」
「わかんないってば! 矢を放っただけー!」
ヴァンがぴょんぴょんと飛び跳ねて俺のとこに来て、今魔物と対峙してるのはルイだけ。
ヴァンが魔法の詠唱を始めて、俺ももう1本矢を構えた。ヴァンの魔法に合わせて手を離そうって思ってね。それがわかったのか、詠唱を終えたヴァンが俺をチラリと見てきた。
コクンと頷くと俺は矢を、ヴァンは魔法を放つ。
ド派手な魔法かと思っていたのに、そんなことなくて、ヴァンの魔法は俺の矢に収束して魔物に突き刺さる。魔物が硬直して、そこをルイがバッサリと切り裂いた。
「終わった?」
「少し厄介なやつだったねぇ。魔力の強さだけじゃそこまではわからないんだよ」
「イクミの最初の一撃がかなり効いてたな。弱いところだったんだろう」
「そう、なの? 弓が……ね」
俺が狙ったわけじゃないんだよなぁ。なんか、手を離せって言われた気がしただけなんだ。
さらに1回野営して昼くらいに着いた場所でルイが辺りを見回していた。そうだっけ? なんて思ったんだけど、あったんだよ……薪が。さすがに1年くらいじゃ腐ってることもなく、冬の間は雪に埋もれたからか湿気てたけど、完全に俺が捨てたやつ。だって、『ビニール紐』でまとめてあるから間違いようがない。
「ほんとだね……薪……」
「へぇ。これがイクミの世界から持ってきた木なの?」
「あのときは荷物になるから捨てろって言われてさ。確かに手が塞がってたらやばかったね……」
なぜかヴァンが薪をマジックバッグにしまいこんでたけど、何も言うまい。別にたいした理由はなくて、でも俺が持ち込んだ物だから珍しくてとかそんな感じなんだろう。
周辺をウロウロしてみるけど、別に霧が深くなったりもせず、俺がめまいを起こしたりすることもなく。
そりゃそうだ。そんなすぐどうにかなったら、あの時点で帰れてるんだよな。
「よくわからないね……」
「そうだな」
「えっと……ルイが拾われた場所……って?」
「ああ、それはあの辺だって教えられてな」
少し離れたところを指差すルイは、前に見たような少し困った顔をしていた。ヴァンも興味深そうに辺りを見てるけど、特に魔力がおかしいとかもないらしい。
なんか不思議だ。ルイも他の世界から転移してきたとかあるのかなとかちょっと思ったけど、だとしても地球ではないよな。あんな鮮やかな赤い髪色はないもん。
「まあ、何度も来てる場所だ。特に何かがあるわけじゃないのはわかっていたんだがな」
「ん。でも、俺も自分の目で見て良かったよ。あとで気になっちゃったかもしれないし……」
ルイは1人で何度も来て、何を考えていたんだろうって思うとちょっと切ないな。きっと実の親について考えていたんだろうけど、それがどういう思いなのかまでは俺にはわかんない……。
気がつくと、なんとなくルイの手首を掴んじゃってた。「ん?」という顔でルイが見てきて、俺はなんて言ったらいいのか迷う。
「えっと……ありがとう。ここに来てくれて」
「いや、手がかりを探してるんだから普通だろ?」
「そうじゃなくて、その……あの日も」
少しだけルイが驚いていた。それでいつもみたいに頭をくしゃってされたんだ。
ふと俺が顔を上げればヴァンがめちゃくちゃいい笑顔で見てたけどな。
「確かにイクミにとってすごくラッキーだったよね。良かったねルイと会えて」
あれ? からかわれるんじゃなかったんだ。
「普通、街のほうから村に直で帰ってきたらこんなとこ通らないんだから」
「そう……なの?」
「だから、なんでって思ってたんだ。ルイは聞いても言わないし。今回、オレとしては事情がわかってすっきりしたけど」
ああ、それがあったからお兄ちゃんの顔なのか。ヴァンにとって本当にルイは可愛い弟なんだなぁ……。
お似合いにも思えてちょっと悔しい。けど、ずっとこういう人がルイのそばにいてくれるなら安心だよねとも思っちゃう。
俺は精一杯明るく「先に進もっか」って声をあげた。そしたら2人もそうしようって感じで歩き出す。なんとなく、あのとき自分が座り込んでいた木の根元をもう一度振り返って、俺は2人の後ろに走り寄った。
ここから始まった俺の異世界生活……この先どうなるんだろうって気持ちは今もあのときと同じだ。でも、今の俺にはこの2人がいるんだもんな。
「次、魔物いたら俺も攻撃する!」
「気合入ってんねぇ」
「なんか、あそこに寄って少し気持ち切り替えられた」
そう俺が宣言すれば、ルイがぽんぽんしてくれる。そうだ、俺はあの日の俺じゃない。ルイに守られてばかりでいたくない。
「いいね。それだけでも来たかいがあったね」
「そういえば、最初の中継地までどのくらい?」
「イクミに合わせて進むが……結構かかると思ったほうがいい」
「まあ、いつくらいに着かなきゃとか思わないほうがいいよ。臨機応変ってやつ。焦ってもしょうがないから、のんびり行くみたいな気持ちでいなよ」
俺の性格をそれなりに把握されてるのか、予定日数は教えてもらえなかった。ルイなんて何度も行き来してるんだから、日数なんてだいたいわかってるはずだろ? でも2人に揃って言われちゃったらどうしようもない。
まずは霧の渓谷の地域を抜けること。そうしたら魔物も少しは減ってくるし、最初の町までの目処がつくかななんて言われた。
この辺てある意味山だからなぁ……。
登山経験のある俺からすると、やっぱりアップダウンのあるところは平地と同じにはいかない。疲労度も大違いだしね。魔物と戦うことも考えたら登山よりもっとかかるだろうなぁ。
「わかったよ……安全と健康第一、だよね」
「そうそう。最初にイクミが言ってたとおりだよ」
殿をつとめるのはルイが多いけど、ときどきヴァンと交代してる。やっぱりああいうのって先頭のほうが疲れるのかなぁ?
いや……山岳ツアーなんかだと最後尾のガイドさんはかなり大変そうだったな。どっちもどっちかも。
そんなことを考えていたら、ヴァンがちらっと振り返って飛び出していった。俺も弓を持ってルイを見る。
「あっちだ」
ルイが俺の背中に手を当てて走り出すから、なんかいつもより早く走れてる気分。ちょっとコケそうになったけど……。
魔物は変なウネウネが生えてて、俺は「うえぇ」って声をだしてしまった。ヴァンは魔物自体の攻撃とウネウネの攻撃に応じてて魔法は放ててないみたいだ。
「前に出るが、イクミ、大丈夫だな?」
「うん。2人を信じてる」
「よし」
そう言うと、ルイもヒラリと前に出た。ウネウネのせいであまり自由に動けてなさそうに見えるけど、2人の攻撃で確実に魔物が弱っていってる。
俺はすぐに矢筒から矢を抜き取って構えた。一度目をつぶって深呼吸をすると、スゥーっと矢と自分がつながる感じ。キリキリと弓を引いて1拍置くと、身体の中心に水がポチョンと垂れるような感覚があった。
そのタイミングで矢を放ったら、ルイやヴァンが攻撃していない身体の後ろの方に矢が吸い込まれるように飛んでいって……魔物が暴れだす。
「ひえぇっ! なになに!?」
「イクミ! 何したの! コイツ苦しんでる」
「わかんないってば! 矢を放っただけー!」
ヴァンがぴょんぴょんと飛び跳ねて俺のとこに来て、今魔物と対峙してるのはルイだけ。
ヴァンが魔法の詠唱を始めて、俺ももう1本矢を構えた。ヴァンの魔法に合わせて手を離そうって思ってね。それがわかったのか、詠唱を終えたヴァンが俺をチラリと見てきた。
コクンと頷くと俺は矢を、ヴァンは魔法を放つ。
ド派手な魔法かと思っていたのに、そんなことなくて、ヴァンの魔法は俺の矢に収束して魔物に突き刺さる。魔物が硬直して、そこをルイがバッサリと切り裂いた。
「終わった?」
「少し厄介なやつだったねぇ。魔力の強さだけじゃそこまではわからないんだよ」
「イクミの最初の一撃がかなり効いてたな。弱いところだったんだろう」
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