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異世界生活編
121.髪の毛を整えました!
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「お……お願いします」
「美味しそうな差し入れまでもらっちゃってありがと! どんなふうにしたいの?」
「あんま短髪はしたことないから嫌で伸びるまで待ってたんで……茶色くなった部分をなくして変じゃないようにしてもらえれば……」
ふーんと言いながら俺の髪の毛を触って「なにこれ面白い」というお姉さん。「なんで毛先だけ色が違って、こんなうねうねしてるの」とかすごく質問された。俺は美容師じゃないからわからないけど、分かる範囲では答えておいた……ごめん。
「イクミくんの世界って不思議。でも髪の毛をそんなふうに変えられるのって楽しそうで行ってみたい!」
「魔法ないし、多分ここより不便ですよ?」
「えー……そうかなぁ」
まあ、何に重きを置くかなんだろうけどね。俺はあっちで生きてきたからあっちの便利さもわかってる。でもやっぱり魔法のすごさはまた違うんだよな。風呂トイレ水道系ひっくるめた水回りなんかの便利さは、とてもこっちに敵わない。
「ま、やろっか。まずはパサパサしちゃってる部分を切っちゃうね。それからどうするか決めよう」
「はい。お願いします」
しゃくしゃくという音が耳周りで聞こえて髪が落ちていく。鏡なんてないからどうなってるのかわからないけど、きっと中高生のころの俺みたいになっているんだろう。ほんと茶髪パーマを楽しんだ期間短かった……悲しい。
「んー、ほんとうに直毛なのね。黒くて艶もあってキレイ。これは整えるだけで長めでいこうよ。素敵だと思う」
「褒めすぎですって……普通の髪ですよ」
「見ててわかると思うけど、村じゃくせ毛が多いから。ルイは珍しい方だよ。みんな手入れしにくいから短髪になってくの」
そう言えばそうかもしれない。そう考えればヴァンは比較的長めか? それでも肩より下ってわけでもないけどさ。でもヴァンは柔らかそうな少しうねった髪の毛なんだよね。この間猫化してもらったときは別に長毛種ではなかったけど、あの毛の感じ。
「村以外の人もくせ毛が多いんですか?」
「さあ……私は出たことないからわかんない。この村じゃ黒髪も珍しいけど、外にはいるって聞くし、色んな人がいるんじゃないかな」
ルイが黒髪が差別されることはないとかも言ってたし、別に気にする必要もないか。
「俺はお姉さんに任せます。あ、でも……できれば、その、可愛いよりはかっこいい感じ……で」
「ふふ。頑張るけどさ。イクミくんは顔がすでに可愛いからしょうがないんじゃないかな」
「可愛くなんか……」
「いや、女の子みたいだとかそういう意味じゃないよ? ここって男がいかついでしょ? そういう比較対象からするとってだけ。私からしたらヴァンも可愛いし、そうだなぁ、ガルフもぎりぎり可愛いほうね」
ガルフさんも? 悔しいけどそんなふうに言われちゃうと反論できない。あのイケメンを可愛いって言っちゃうお姉さんに勝てる気がしない……。
そんな会話をしながらもお姉さんは俺の襟足のほうをカットしている。今まで襟足はホント伸びて気持ち悪かったからさっぱりするのが嬉しい。
「こんな感じかな……私の好みで前髪は長め」
「自分じゃわかんないですけどね」
「水鏡だしてあげるね」
薄っすらと映る俺は、なんか思い描いていたイメージと違っていた。俺ってこんな感じだったっけ?
首を捻っているとお姉さんが「気に入らない?」と心配そうに聞いてくる。
「ち、違うんです。なんか、元の世界にいたときによく見ていた自分の顔となんか違って見えて……」
「鍛えてるからじゃないの?」
「そうなのかな。髪型はかっこいい、です」
茶色部分がなくなって、耳周りも襟足もスッキリ。黒髪だから多少重く見えるけど、パーマが残った髪でモシャっとしているよりは全然いい。
お姉さんは風魔法を俺の足元から起こして、ぶわーっと服の中まで空気が上に流れていった。切った毛を飛ばしてくれたのかな……すごい。
俺はお姉さんにお礼を言って、また何か食べたいものがあれば持ってきますねって伝えた。
タタタッと走って帰っていると、子どもたちが駆け寄ってきた。
「イクミー!」
「くろーい」
「なんでぇ?」
おっと。捕まっちゃった。いつも布を巻いていたし、その下から覗いていた髪の毛は茶色くカールしてたからびっくりしたみたい。
「俺は元々黒い髪の毛なんだよ。俺の世界の魔法みたいなやつで色を変えてたの」
「すごい! くるくるも?」
「そう、くるくるもだよ」
「くるくるいいなあ」
「なんで? 君の髪の毛とってもキレイだよ?」
その子はサラサラの深緑の髪がすごくキレイで、なんで変えたいって思うのか俺には不思議だった。でもこの村では珍しい直毛系だからなのかな。みんなと同じがいいのかもしれない。
「俺もさ、本来はこういう髪の毛だから、一回憧れてああいうことしてみたんだけど、やっぱり自然がいいなって思ったよ。そのままでみんな素敵なんだよ。この金髪もきらきらだし、オレンジ色も夕焼けみたいだし、水色は清らかな川の流れみたい。君は常緑樹の緑みたいで俺は癒やされるなぁすごくキレイだなって思う。サラサラはいや? 俺とおそろいだよ!」
そう俺が言えば、子どもたちは自分たちの髪の毛を見たり友達の髪の毛を見たりしながらきゃっきゃしてる。深緑の子も、俺とおそろいって言った途端ぱっと笑顔になった。
「イクミといっしょ?」
「うん。一緒」
「「いいなー」」
わーって子どもたちと遊んでいたらルイが歩いてくるのが見えた。俺が手を振ってアピールするとこっちに来てくれる。
「帰ってこないからどうしたかと」
「子どもたちに囲まれた」
「それが、そのままのイクミの髪か。そのほうがいい」
「ボクもイクミとおそろいなの!」
なにがだ? という顔をするルイに俺が説明してあげれば、ふっと目が細くなる。そして、「じゃあ俺ともお揃いだな」と言った。確かにそうだよね。ルイの赤い直毛は俺にとって初めっからめちゃくちゃキレイだった。あのムシャーフから助けてくれたときの、火の矢が降ってきたかと思ったときのドキドキといったら……。
その後はその小さい子たちとワイワイ遊んで、そこそこ満足しただろうとこでルイと帰った。
ルイは俺の切りそろえられた髪の毛をじっと見ると、いつもみたいにポンポンするんじゃなくて表面を撫でてきた。たまに毛の内側に指が入ってくるのが変にゾクゾクしてしまって顔が赤くなってくる……もうやめてぇ。
「俺も、切るか?」
ふと、ルイがそんなことを言う。
「え、なんで?」
「前に言ってたから」
言ってたっけ? あ、確かに短いのもかっこいいかもっていうようなことを言った気もしなくもない……けど、俺はルイのその髪の毛も好きだよって言った。
初めて助けてくれたとき、魔力噴出で村に帰ってきてくれたとき、そういうときにルイの結んだ赤い髪の毛がすごく印象的だったんだ。まあ、どんな髪型でも絶対かっこいいだろうけど。
そのあとヴァンとかサディさんとかラキさんにまで微妙にいじられたけど、ルイがいいって言ってくれたからいいんだもんっ。
「美味しそうな差し入れまでもらっちゃってありがと! どんなふうにしたいの?」
「あんま短髪はしたことないから嫌で伸びるまで待ってたんで……茶色くなった部分をなくして変じゃないようにしてもらえれば……」
ふーんと言いながら俺の髪の毛を触って「なにこれ面白い」というお姉さん。「なんで毛先だけ色が違って、こんなうねうねしてるの」とかすごく質問された。俺は美容師じゃないからわからないけど、分かる範囲では答えておいた……ごめん。
「イクミくんの世界って不思議。でも髪の毛をそんなふうに変えられるのって楽しそうで行ってみたい!」
「魔法ないし、多分ここより不便ですよ?」
「えー……そうかなぁ」
まあ、何に重きを置くかなんだろうけどね。俺はあっちで生きてきたからあっちの便利さもわかってる。でもやっぱり魔法のすごさはまた違うんだよな。風呂トイレ水道系ひっくるめた水回りなんかの便利さは、とてもこっちに敵わない。
「ま、やろっか。まずはパサパサしちゃってる部分を切っちゃうね。それからどうするか決めよう」
「はい。お願いします」
しゃくしゃくという音が耳周りで聞こえて髪が落ちていく。鏡なんてないからどうなってるのかわからないけど、きっと中高生のころの俺みたいになっているんだろう。ほんと茶髪パーマを楽しんだ期間短かった……悲しい。
「んー、ほんとうに直毛なのね。黒くて艶もあってキレイ。これは整えるだけで長めでいこうよ。素敵だと思う」
「褒めすぎですって……普通の髪ですよ」
「見ててわかると思うけど、村じゃくせ毛が多いから。ルイは珍しい方だよ。みんな手入れしにくいから短髪になってくの」
そう言えばそうかもしれない。そう考えればヴァンは比較的長めか? それでも肩より下ってわけでもないけどさ。でもヴァンは柔らかそうな少しうねった髪の毛なんだよね。この間猫化してもらったときは別に長毛種ではなかったけど、あの毛の感じ。
「村以外の人もくせ毛が多いんですか?」
「さあ……私は出たことないからわかんない。この村じゃ黒髪も珍しいけど、外にはいるって聞くし、色んな人がいるんじゃないかな」
ルイが黒髪が差別されることはないとかも言ってたし、別に気にする必要もないか。
「俺はお姉さんに任せます。あ、でも……できれば、その、可愛いよりはかっこいい感じ……で」
「ふふ。頑張るけどさ。イクミくんは顔がすでに可愛いからしょうがないんじゃないかな」
「可愛くなんか……」
「いや、女の子みたいだとかそういう意味じゃないよ? ここって男がいかついでしょ? そういう比較対象からするとってだけ。私からしたらヴァンも可愛いし、そうだなぁ、ガルフもぎりぎり可愛いほうね」
ガルフさんも? 悔しいけどそんなふうに言われちゃうと反論できない。あのイケメンを可愛いって言っちゃうお姉さんに勝てる気がしない……。
そんな会話をしながらもお姉さんは俺の襟足のほうをカットしている。今まで襟足はホント伸びて気持ち悪かったからさっぱりするのが嬉しい。
「こんな感じかな……私の好みで前髪は長め」
「自分じゃわかんないですけどね」
「水鏡だしてあげるね」
薄っすらと映る俺は、なんか思い描いていたイメージと違っていた。俺ってこんな感じだったっけ?
首を捻っているとお姉さんが「気に入らない?」と心配そうに聞いてくる。
「ち、違うんです。なんか、元の世界にいたときによく見ていた自分の顔となんか違って見えて……」
「鍛えてるからじゃないの?」
「そうなのかな。髪型はかっこいい、です」
茶色部分がなくなって、耳周りも襟足もスッキリ。黒髪だから多少重く見えるけど、パーマが残った髪でモシャっとしているよりは全然いい。
お姉さんは風魔法を俺の足元から起こして、ぶわーっと服の中まで空気が上に流れていった。切った毛を飛ばしてくれたのかな……すごい。
俺はお姉さんにお礼を言って、また何か食べたいものがあれば持ってきますねって伝えた。
タタタッと走って帰っていると、子どもたちが駆け寄ってきた。
「イクミー!」
「くろーい」
「なんでぇ?」
おっと。捕まっちゃった。いつも布を巻いていたし、その下から覗いていた髪の毛は茶色くカールしてたからびっくりしたみたい。
「俺は元々黒い髪の毛なんだよ。俺の世界の魔法みたいなやつで色を変えてたの」
「すごい! くるくるも?」
「そう、くるくるもだよ」
「くるくるいいなあ」
「なんで? 君の髪の毛とってもキレイだよ?」
その子はサラサラの深緑の髪がすごくキレイで、なんで変えたいって思うのか俺には不思議だった。でもこの村では珍しい直毛系だからなのかな。みんなと同じがいいのかもしれない。
「俺もさ、本来はこういう髪の毛だから、一回憧れてああいうことしてみたんだけど、やっぱり自然がいいなって思ったよ。そのままでみんな素敵なんだよ。この金髪もきらきらだし、オレンジ色も夕焼けみたいだし、水色は清らかな川の流れみたい。君は常緑樹の緑みたいで俺は癒やされるなぁすごくキレイだなって思う。サラサラはいや? 俺とおそろいだよ!」
そう俺が言えば、子どもたちは自分たちの髪の毛を見たり友達の髪の毛を見たりしながらきゃっきゃしてる。深緑の子も、俺とおそろいって言った途端ぱっと笑顔になった。
「イクミといっしょ?」
「うん。一緒」
「「いいなー」」
わーって子どもたちと遊んでいたらルイが歩いてくるのが見えた。俺が手を振ってアピールするとこっちに来てくれる。
「帰ってこないからどうしたかと」
「子どもたちに囲まれた」
「それが、そのままのイクミの髪か。そのほうがいい」
「ボクもイクミとおそろいなの!」
なにがだ? という顔をするルイに俺が説明してあげれば、ふっと目が細くなる。そして、「じゃあ俺ともお揃いだな」と言った。確かにそうだよね。ルイの赤い直毛は俺にとって初めっからめちゃくちゃキレイだった。あのムシャーフから助けてくれたときの、火の矢が降ってきたかと思ったときのドキドキといったら……。
その後はその小さい子たちとワイワイ遊んで、そこそこ満足しただろうとこでルイと帰った。
ルイは俺の切りそろえられた髪の毛をじっと見ると、いつもみたいにポンポンするんじゃなくて表面を撫でてきた。たまに毛の内側に指が入ってくるのが変にゾクゾクしてしまって顔が赤くなってくる……もうやめてぇ。
「俺も、切るか?」
ふと、ルイがそんなことを言う。
「え、なんで?」
「前に言ってたから」
言ってたっけ? あ、確かに短いのもかっこいいかもっていうようなことを言った気もしなくもない……けど、俺はルイのその髪の毛も好きだよって言った。
初めて助けてくれたとき、魔力噴出で村に帰ってきてくれたとき、そういうときにルイの結んだ赤い髪の毛がすごく印象的だったんだ。まあ、どんな髪型でも絶対かっこいいだろうけど。
そのあとヴァンとかサディさんとかラキさんにまで微妙にいじられたけど、ルイがいいって言ってくれたからいいんだもんっ。
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