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異世界生活編
113.ご、ご、誤解だってばぁ
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見張りを交代してからはヴァンと休んだけど、やっぱ熟睡なんてできない。前に村に行くまでの間は疲れすぎて気を失うように寝たけど、今はそれなりに体力もついたし……なんていうか微妙に気分が高ぶってる。でも流石に休まないとしんどいよななんて思ってはコロコロと寝返りをうっていた。
「寝なよ、イクミ」
「わかってるんだけど。てか、ヴァン寝てたんじゃ?」
「気配がねぇ……」
「え、魔物?」
「何いってんの、イクミの起きてる気配」
お、俺のせいだった。ごめん。
「あの2人が見張りなら魔核持ちでも来ない限り完全に寝入っても大丈夫だよ。そして、そんな魔物の気配はまったくない」
「そういう心配で寝られないんじゃなくてさ。ただ単に妙に気が高ぶってピリピリしてるだけなんだよ」
「小さい頃のルイみたい」
「え?」
「アイツもいつも気ィ張ってピリピリしてたときがあったからね。じゃあ、お兄ちゃんが同じようにしてあげようか」
なんだ? と思ったら、シュルっと目の前でヴァンの姿が消えてヴァンの抜け殻の服の中から毛玉が出てきた。ブルーグレーの艶々した毛並みと真っ直ぐなキレイな尻尾。
「ふ、ふぁ……かわっ、かわっ……」
「これは特別。猫型になったのとか10年以上ないからね。あと、獣人でも獣化はできる人とできない人いるからみんなができるわけじゃないんだよ」
「さ、触っていい……?」
「あは、変なとこは触んないでよね。ルイはオレがこうして側にいて抱きしめて寝るのが好きだったんだ」
「これは癒やされる……」
喋るあったかい毛玉を抱きしめて撫でているとふわぁと緊張が抜けていくみたいだ。子どものルイもこうやってささくれた気持ちを落ち着けたのかなぁなんてふふっと笑いがこぼれる。でもわかる。ふわふわすべすべの猫の毛の感触たまらん。
たまにだめなとこに触れちゃってるのか手で顔をポスンと叩かれるけどその肉球の感触すら気持ちいい。可愛い。あまり身体じゃなくて頭とかだけ撫でたほうがいいのかな……なんて思いながら猫ヴァンを抱きしめてすぅーっと眠りについていった。
「イクミ、ヴァン、日の出……だ……」
いつの間にかぐっすりと寝入っていた俺はルイの声で目が覚めた。目を開けると初めて見るようなすごい顔したルイがいた。
「え、なに? 魔物!?」
つい大声を出してしまうと、ルイは「いや。湯を沸かしておくから準備しろ」とかまどの方へ戻っていった。
「あちゃ……やっちゃった。オレも熟睡しちゃったんだよね……」
いつの間にか人型に戻っていたヴァンはほとんど服を着てなかった。魔導士のヴァンは体温調節は寝てても無意識にできるレベル……とかそんな話じゃなくて! これって昨日猫になってくれたから、だよな。
え、あ、ルイ……もしかして俺がこのヴァンを抱きしめて寝てたの見て変な想像したとかないよな。うそぉ!
あわあわとしている俺にヴァンが謝ってくる。
「ご……ごめんイクミ。ルイは説明すればわかってくれるはずだから……オレが猫の姿になれるのも知ってるし。オレからもちゃんと言うから」
ヴァンも少し焦ってるけど、俺は俺で……特になんの関係でもない俺が言い訳するのもおかしくない? とか色々考えちゃって脳内が『うぉぉぉー!』って騒がしかった。
落ち着かない気持ちで緩めていた装備を締め直してかまどの側にいくと、いつもどおりの顔したルイ。
「朝飯はやりたいことあるのか?」
「考えてなかった」
「じゃあ肉とカロイモを焼いただけにしとくか」
すっごい普通。さっきの顔見てなきゃ何も思わないくらい普通。でもあの表情が忘れられない……。ソワソワするような心臓が上ずってるみたいな嫌な気持ちを抱えてるのに俺はなんて切り出していいのかわからない。
ルイの斜め後ろから動けない……。
「あは! いやー、久々に猫になったわー!」
やたらとでっかい声で喋りながら大きく肩を回してヴァンが近寄ってきた。わざとらしい……けど、助け舟を出そうとしてくれてるのはわかる。
「猫に……?」
「あ、うん。俺が……気持ちがピリピリして全然眠れないって言ったら、ヴァンがルイも子どものときそういうことしょっちゅうだったって猫化してくれた。た、しかに、あれは癒やされるねぇ。毛が気持ちいいなぁって思ってたらいつの間にか寝ちゃってたよ。……ルイもそうだった?」
こ、こんな感じで、自然に言えてるかな……? ちろっとルイを見れば、炎を見つめながら「そうか」とつぶやく。
「え、ヴァン、お前、獣化できるのか!?」
「ドマノンには言ってないんだけど」
「いやいや、聞こえるだろうがあんなでけぇ声で言っといて」
「うるさいなぁ、オレは大事なときにしか猫にはならないのっ。もう人型がデフォだから気を抜いたら人型だしっ」
少し離れたところでギャースカ話してるけど、おかげで少し空気が和んだ。ルイがふとこっちを見て寝付けないのはつらかったなと頭をポンポンしてくれる。
それだけで胸が締め付けられそうになった……。
「ヴァンがルイのときみたいに『お兄ちゃん』してあげようって……」
「ああ……」
「お兄ちゃん、なんだねぇ……」
「そうだな……」
火に焚べた薪がぱちんとはねる。
俺とルイの間には沈黙が続いているけど、さっきみたいな嫌な感じはなくて俺の心は落ち着いていた。
鍋のお湯はとっくに沸いていて、それを下ろすと下から投げ入れられていただろう焦げ焦げのカロイモが出てきた……これ食べるつもり? ワイルドすぎんじゃね?
「ねぇ、さすがに何かに包んでから火に入れたら?」
「何かって?」
「でかい生の葉っぱとか、濡らした皮とか」
「……なるほど。焼くと食べられない部分が多くなるなとは思ってたんだ」
そりゃ、こんだけ焦げたらね……。改善しようとは思わなかったのか?
肉はまだ焼き始めてなくて、昨夜俺らが倒したアイツの肉をぶら下げていたところから取って来て、それを一口大に切ると塩と薬草パウダーをまぶした。
適当に金串に刺してルイに渡すと焼いてくれる。
すっかり元の雰囲気に戻って俺はほっとした。片思いってキツいな……。この想いは伝えないって思ってるのに、ルイに変に思われたくないなんてわがままなこと考えてる。
でも……ルイのあの顔は。
驚きが一番だったんだろうけど……なんで、あんなちょっと傷ついたみたいな顔……ううん、考えちゃだめだ。
「あー。肉をただ焼くだけでもその粉つけると美味そうなのな」
「ちょっと、ドマノンはもう少し空気読んで!」
「なんだよ、空気って」
「ばか! 鈍感!」
騒がしくなったかまどの周りはいつもの様子だ。
今日も1日歩いたり獲物探したりするんだもんな。ちゃんと食べてしっかりやらなきゃ!
「寝なよ、イクミ」
「わかってるんだけど。てか、ヴァン寝てたんじゃ?」
「気配がねぇ……」
「え、魔物?」
「何いってんの、イクミの起きてる気配」
お、俺のせいだった。ごめん。
「あの2人が見張りなら魔核持ちでも来ない限り完全に寝入っても大丈夫だよ。そして、そんな魔物の気配はまったくない」
「そういう心配で寝られないんじゃなくてさ。ただ単に妙に気が高ぶってピリピリしてるだけなんだよ」
「小さい頃のルイみたい」
「え?」
「アイツもいつも気ィ張ってピリピリしてたときがあったからね。じゃあ、お兄ちゃんが同じようにしてあげようか」
なんだ? と思ったら、シュルっと目の前でヴァンの姿が消えてヴァンの抜け殻の服の中から毛玉が出てきた。ブルーグレーの艶々した毛並みと真っ直ぐなキレイな尻尾。
「ふ、ふぁ……かわっ、かわっ……」
「これは特別。猫型になったのとか10年以上ないからね。あと、獣人でも獣化はできる人とできない人いるからみんなができるわけじゃないんだよ」
「さ、触っていい……?」
「あは、変なとこは触んないでよね。ルイはオレがこうして側にいて抱きしめて寝るのが好きだったんだ」
「これは癒やされる……」
喋るあったかい毛玉を抱きしめて撫でているとふわぁと緊張が抜けていくみたいだ。子どものルイもこうやってささくれた気持ちを落ち着けたのかなぁなんてふふっと笑いがこぼれる。でもわかる。ふわふわすべすべの猫の毛の感触たまらん。
たまにだめなとこに触れちゃってるのか手で顔をポスンと叩かれるけどその肉球の感触すら気持ちいい。可愛い。あまり身体じゃなくて頭とかだけ撫でたほうがいいのかな……なんて思いながら猫ヴァンを抱きしめてすぅーっと眠りについていった。
「イクミ、ヴァン、日の出……だ……」
いつの間にかぐっすりと寝入っていた俺はルイの声で目が覚めた。目を開けると初めて見るようなすごい顔したルイがいた。
「え、なに? 魔物!?」
つい大声を出してしまうと、ルイは「いや。湯を沸かしておくから準備しろ」とかまどの方へ戻っていった。
「あちゃ……やっちゃった。オレも熟睡しちゃったんだよね……」
いつの間にか人型に戻っていたヴァンはほとんど服を着てなかった。魔導士のヴァンは体温調節は寝てても無意識にできるレベル……とかそんな話じゃなくて! これって昨日猫になってくれたから、だよな。
え、あ、ルイ……もしかして俺がこのヴァンを抱きしめて寝てたの見て変な想像したとかないよな。うそぉ!
あわあわとしている俺にヴァンが謝ってくる。
「ご……ごめんイクミ。ルイは説明すればわかってくれるはずだから……オレが猫の姿になれるのも知ってるし。オレからもちゃんと言うから」
ヴァンも少し焦ってるけど、俺は俺で……特になんの関係でもない俺が言い訳するのもおかしくない? とか色々考えちゃって脳内が『うぉぉぉー!』って騒がしかった。
落ち着かない気持ちで緩めていた装備を締め直してかまどの側にいくと、いつもどおりの顔したルイ。
「朝飯はやりたいことあるのか?」
「考えてなかった」
「じゃあ肉とカロイモを焼いただけにしとくか」
すっごい普通。さっきの顔見てなきゃ何も思わないくらい普通。でもあの表情が忘れられない……。ソワソワするような心臓が上ずってるみたいな嫌な気持ちを抱えてるのに俺はなんて切り出していいのかわからない。
ルイの斜め後ろから動けない……。
「あは! いやー、久々に猫になったわー!」
やたらとでっかい声で喋りながら大きく肩を回してヴァンが近寄ってきた。わざとらしい……けど、助け舟を出そうとしてくれてるのはわかる。
「猫に……?」
「あ、うん。俺が……気持ちがピリピリして全然眠れないって言ったら、ヴァンがルイも子どものときそういうことしょっちゅうだったって猫化してくれた。た、しかに、あれは癒やされるねぇ。毛が気持ちいいなぁって思ってたらいつの間にか寝ちゃってたよ。……ルイもそうだった?」
こ、こんな感じで、自然に言えてるかな……? ちろっとルイを見れば、炎を見つめながら「そうか」とつぶやく。
「え、ヴァン、お前、獣化できるのか!?」
「ドマノンには言ってないんだけど」
「いやいや、聞こえるだろうがあんなでけぇ声で言っといて」
「うるさいなぁ、オレは大事なときにしか猫にはならないのっ。もう人型がデフォだから気を抜いたら人型だしっ」
少し離れたところでギャースカ話してるけど、おかげで少し空気が和んだ。ルイがふとこっちを見て寝付けないのはつらかったなと頭をポンポンしてくれる。
それだけで胸が締め付けられそうになった……。
「ヴァンがルイのときみたいに『お兄ちゃん』してあげようって……」
「ああ……」
「お兄ちゃん、なんだねぇ……」
「そうだな……」
火に焚べた薪がぱちんとはねる。
俺とルイの間には沈黙が続いているけど、さっきみたいな嫌な感じはなくて俺の心は落ち着いていた。
鍋のお湯はとっくに沸いていて、それを下ろすと下から投げ入れられていただろう焦げ焦げのカロイモが出てきた……これ食べるつもり? ワイルドすぎんじゃね?
「ねぇ、さすがに何かに包んでから火に入れたら?」
「何かって?」
「でかい生の葉っぱとか、濡らした皮とか」
「……なるほど。焼くと食べられない部分が多くなるなとは思ってたんだ」
そりゃ、こんだけ焦げたらね……。改善しようとは思わなかったのか?
肉はまだ焼き始めてなくて、昨夜俺らが倒したアイツの肉をぶら下げていたところから取って来て、それを一口大に切ると塩と薬草パウダーをまぶした。
適当に金串に刺してルイに渡すと焼いてくれる。
すっかり元の雰囲気に戻って俺はほっとした。片思いってキツいな……。この想いは伝えないって思ってるのに、ルイに変に思われたくないなんてわがままなこと考えてる。
でも……ルイのあの顔は。
驚きが一番だったんだろうけど……なんで、あんなちょっと傷ついたみたいな顔……ううん、考えちゃだめだ。
「あー。肉をただ焼くだけでもその粉つけると美味そうなのな」
「ちょっと、ドマノンはもう少し空気読んで!」
「なんだよ、空気って」
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