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異世界生活編
103.春以降のことについて
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魔物騒ぎから一週間。どうやら上に追加で送る人が1人になるかもって話だったけど、上の人達は事情を知らずに急に変更になって戸惑わないのかな。俺だったら2人来ると思ってるところに1人しか来なかったら絶対がっくりしちゃうけど。
「臨機応変に作戦が変わるのは普通だろ? 生存率を高めるためだ」
「うーん、頭ではわかってるんだけどね」
やっぱり育ってきた環境の違いってやつなんだよな。俺はそういうのとは無縁で生きてきたし、やっぱ決められたスケジュール通りに進んでるほうが安心するからな。
「それに上でまずいことがあれば特別な狼煙が上がってその粒子がこの村に降ってくるんだ。村からは上のことは見えないからな」
「おお……そんな仕組みが」
「それに追加で行くのは魔導士。もし何かあって帰って報告することがあれば戻ってくるのは魔導士になるからな」
なんでだろって思ったら雪や氷で覆われた村までの道を1人で帰って来られるのは魔導士くらいなんだそうだ。すっかり忘れかけてたけど、そういえば崖っぷちの飛び石みたいなところがあったわ……。あれ、雪とか氷になってたら俺なら死ぬ。あれだろ? アクションゲームの氷ステージ……無理無理。
「今のところ狼煙はない?」
「ないな。基本はあいつらだけでなんとかできるから滅多にないと言ってもいい」
「おお! 信頼がすごい」
「それは……当たり前だろ?」
そうでした。村の安全を任せるに価してる人たちなんだもんね。でもいつもはルイも冬は村に滞在してないから最近のことはあまり知らないらしい。帰ってくれば村長や自警団の人から情報は聞いてるってことだけどね。
「ルイはいつもは冬はどこにいるの? 前も聞いたっけ?」
「大抵は少し南に下った町か海辺の街のどっちかだな。海辺の街で仕入れとか物を卸すから」
「あ、そんなこと言ってたかもね。村出身の人に卸すんだよね」
「まあ、そうだ。村に直接交渉に来られると困るからそういうやり方になってる。この村は本当に特殊なんだ。出ればこことは全然違うのはすぐわかるだろうが、外には悪意を持ったやつもそれなりにいる」
ルイが言うんだからそうなんだろうね。ここが平和すぎるほど平和なのは俺でも実感するもん。だから魔物だけじゃなくてそういうのにも対応できる力がないと村から出してもらえないんだって。うん、怖いから帰る手がかりを探す旅でもルイとヴァンから離れないようにしよう……。だって俺はオマケで出てもいいよって言ってもらえるようなもんだから。
「海辺の街って俺も行ける?」
「行くつもりだ。この村から近いところでは一番大きい街だからな。情報を探すにはうってつけだろ」
「そっか。ありがとう」
大きい街って聞いてちょっとワクワクしてくる。いや、この村は大好きだよ? でも異世界を受け入れた俺としてはやっぱり別の村とか街がどんなところなのかはやっぱ気になるんだよね。それにルイの言う通り大きい街ってことは人が多いってことで、つまり……何かの手がかりが見つかるんじゃないかって期待もある。
「とりあえず、この村を出発したらそこを当面の目的地として、情報があればそっちに、なければ大神殿のある中央部なんかを目指すのもいいかもしれないとは思ってる」
「ああ! 大神殿ね。神官さんとかがいくところだったよね」
「創世神に近いといえば近い者たちだから、何か知ってればいいんだがな」
そうだよな! っていうか、俺よりもずっとルイがいろんなことを考えていてくれたことにびっくりだ。前に地図が読めなくても俺がいるだろって言ってくれたけど、本当にこの世界を旅するサポートをしてくれる気満々だったんだな。
今の創世神様は啓示したり祝福をおろしたりするくらいだったっけ。お話はできないんだったよな。そしたら、古くからの記録が神官に受け継がれてないかみたいなところか……それでもあれば助かるけど。
「あ、そうだ! 俺のこととは関係ないんだけど、いつも行かないようなところに行くならルイは作物の種もサディさんに買っていってあげなよ。俺の持ち込んだ作物をあんなに育てられるならきっとこの村の役に立ててくれるよ」
「ああ……それは今回俺も思った。いつも同じような仕入れしかしてなかったんだが、種ならバッグのスペースを気にしなくてもいいのかってわかったからな」
「ヴァンは何か考えてるかな?」
「……いや。ヴァンは、興味半分、イクミの心配半分ってとこだと思うが。アイツも大概イクミに弱い」
お、そんなにヴァンをボロクソには言わなかった。まあ、ルイと俺だけより絶対ヴァンがいたら助かるもんな。主にルイの負担って面で……だけど。
俺だって前よりは足を引っ張りまくる原因にはならなくなってるとは思うけど、だからと言って魔力を察知する能力は低すぎるからやっぱり野営なんかでは役立たずだと思うんだよね。拾ってもらったときは村まであと少しだったからルイだけでも大丈夫だったけど、旅となったらそうはいかないもんなぁ。面白がってようとなんだろうとヴァンが着いてきてくれるのは俺としても安心だよ。
「ルイはヴァンと旅したことは?」
「あー、随分昔にその海辺の街までみんなで行ったときくらいか……」
「みんな?」
「外出許可が出たからと言ってすぐ1人で旅には出られないだろ? 案内の大人がついて村と往復するんだ」
「なるほど。言われてみればそうだよね」
仲が良さそうな割には旅はほとんどしたことないんだな。それぞれが役割を持ってればそうなるか……。でもそれを思うと俺のために2人が付き添いしてくれるのは村的に大丈夫なのかなとか思っちゃうけど。
「ヴァンが抜けるのは正直言えばちと痛いだろうとは思うが、これはヴァンの意思だからイクミは気にしなくていい。村長が許可出してるんだしな」
「そっか……ありがたいね。みんなにお礼言わなきゃ」
そう言うとルイに頭をポンポンされる。多分もうルイも無意識なんだろうなぁ。胸がほっこりするから俺も指摘しないしね。
子ども以外でルイがポンポンするのは俺くらい。しかも子どもだって誰でもってわけじゃない。あまり村にいなくて無口なルイに寄ってくる子どもはそこまで多くはないからね。
だから、なんかルイのポンポンは特別って感じがするよな!
「臨機応変に作戦が変わるのは普通だろ? 生存率を高めるためだ」
「うーん、頭ではわかってるんだけどね」
やっぱり育ってきた環境の違いってやつなんだよな。俺はそういうのとは無縁で生きてきたし、やっぱ決められたスケジュール通りに進んでるほうが安心するからな。
「それに上でまずいことがあれば特別な狼煙が上がってその粒子がこの村に降ってくるんだ。村からは上のことは見えないからな」
「おお……そんな仕組みが」
「それに追加で行くのは魔導士。もし何かあって帰って報告することがあれば戻ってくるのは魔導士になるからな」
なんでだろって思ったら雪や氷で覆われた村までの道を1人で帰って来られるのは魔導士くらいなんだそうだ。すっかり忘れかけてたけど、そういえば崖っぷちの飛び石みたいなところがあったわ……。あれ、雪とか氷になってたら俺なら死ぬ。あれだろ? アクションゲームの氷ステージ……無理無理。
「今のところ狼煙はない?」
「ないな。基本はあいつらだけでなんとかできるから滅多にないと言ってもいい」
「おお! 信頼がすごい」
「それは……当たり前だろ?」
そうでした。村の安全を任せるに価してる人たちなんだもんね。でもいつもはルイも冬は村に滞在してないから最近のことはあまり知らないらしい。帰ってくれば村長や自警団の人から情報は聞いてるってことだけどね。
「ルイはいつもは冬はどこにいるの? 前も聞いたっけ?」
「大抵は少し南に下った町か海辺の街のどっちかだな。海辺の街で仕入れとか物を卸すから」
「あ、そんなこと言ってたかもね。村出身の人に卸すんだよね」
「まあ、そうだ。村に直接交渉に来られると困るからそういうやり方になってる。この村は本当に特殊なんだ。出ればこことは全然違うのはすぐわかるだろうが、外には悪意を持ったやつもそれなりにいる」
ルイが言うんだからそうなんだろうね。ここが平和すぎるほど平和なのは俺でも実感するもん。だから魔物だけじゃなくてそういうのにも対応できる力がないと村から出してもらえないんだって。うん、怖いから帰る手がかりを探す旅でもルイとヴァンから離れないようにしよう……。だって俺はオマケで出てもいいよって言ってもらえるようなもんだから。
「海辺の街って俺も行ける?」
「行くつもりだ。この村から近いところでは一番大きい街だからな。情報を探すにはうってつけだろ」
「そっか。ありがとう」
大きい街って聞いてちょっとワクワクしてくる。いや、この村は大好きだよ? でも異世界を受け入れた俺としてはやっぱり別の村とか街がどんなところなのかはやっぱ気になるんだよね。それにルイの言う通り大きい街ってことは人が多いってことで、つまり……何かの手がかりが見つかるんじゃないかって期待もある。
「とりあえず、この村を出発したらそこを当面の目的地として、情報があればそっちに、なければ大神殿のある中央部なんかを目指すのもいいかもしれないとは思ってる」
「ああ! 大神殿ね。神官さんとかがいくところだったよね」
「創世神に近いといえば近い者たちだから、何か知ってればいいんだがな」
そうだよな! っていうか、俺よりもずっとルイがいろんなことを考えていてくれたことにびっくりだ。前に地図が読めなくても俺がいるだろって言ってくれたけど、本当にこの世界を旅するサポートをしてくれる気満々だったんだな。
今の創世神様は啓示したり祝福をおろしたりするくらいだったっけ。お話はできないんだったよな。そしたら、古くからの記録が神官に受け継がれてないかみたいなところか……それでもあれば助かるけど。
「あ、そうだ! 俺のこととは関係ないんだけど、いつも行かないようなところに行くならルイは作物の種もサディさんに買っていってあげなよ。俺の持ち込んだ作物をあんなに育てられるならきっとこの村の役に立ててくれるよ」
「ああ……それは今回俺も思った。いつも同じような仕入れしかしてなかったんだが、種ならバッグのスペースを気にしなくてもいいのかってわかったからな」
「ヴァンは何か考えてるかな?」
「……いや。ヴァンは、興味半分、イクミの心配半分ってとこだと思うが。アイツも大概イクミに弱い」
お、そんなにヴァンをボロクソには言わなかった。まあ、ルイと俺だけより絶対ヴァンがいたら助かるもんな。主にルイの負担って面で……だけど。
俺だって前よりは足を引っ張りまくる原因にはならなくなってるとは思うけど、だからと言って魔力を察知する能力は低すぎるからやっぱり野営なんかでは役立たずだと思うんだよね。拾ってもらったときは村まであと少しだったからルイだけでも大丈夫だったけど、旅となったらそうはいかないもんなぁ。面白がってようとなんだろうとヴァンが着いてきてくれるのは俺としても安心だよ。
「ルイはヴァンと旅したことは?」
「あー、随分昔にその海辺の街までみんなで行ったときくらいか……」
「みんな?」
「外出許可が出たからと言ってすぐ1人で旅には出られないだろ? 案内の大人がついて村と往復するんだ」
「なるほど。言われてみればそうだよね」
仲が良さそうな割には旅はほとんどしたことないんだな。それぞれが役割を持ってればそうなるか……。でもそれを思うと俺のために2人が付き添いしてくれるのは村的に大丈夫なのかなとか思っちゃうけど。
「ヴァンが抜けるのは正直言えばちと痛いだろうとは思うが、これはヴァンの意思だからイクミは気にしなくていい。村長が許可出してるんだしな」
「そっか……ありがたいね。みんなにお礼言わなきゃ」
そう言うとルイに頭をポンポンされる。多分もうルイも無意識なんだろうなぁ。胸がほっこりするから俺も指摘しないしね。
子ども以外でルイがポンポンするのは俺くらい。しかも子どもだって誰でもってわけじゃない。あまり村にいなくて無口なルイに寄ってくる子どもはそこまで多くはないからね。
だから、なんかルイのポンポンは特別って感じがするよな!
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