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異世界生活編
101.心を落ち着けよう
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俺は春には村を出られる? 本当に?
なんかドキドキする。やっと帰るための手がかりを探しにいけるのに、不安とか寂しい気持ちもあるんだ。村の人があまりにもいい人たちばかりだったから、俺はすっかりここに馴染んでしまった気がする。だって、大学にいるよりも長くここに住んでしまったんだもん……。
でも春と言っても、外の雪解けまでは旅は厳しいだろうってことでまだ先のことだから、それまでは鍛錬も欠かさずやって……あとみんなと料理もやろうと思う。
「イクミくんがいなくなったら寂しいわね。でもイクミくんの希望が叶うように応援するわ」
サディさんは後片付けをしながら言った。俺も寂しいけどいる間はたくさんいろんなことさせてねってお願いして2人で笑った。だってそろそろ収穫のジャガイモ水飴も教えなきゃだもん。砂糖ほど使い勝手は良くないけど料理とかお菓子とかに役立ててほしいなって思っちゃうよな。
「あ! サディさん、鷹の爪……トウガラシどうなった?」
「状態はいいわよ。結構適正気温が高いみたいだから魔力で温度管理するのだけはちょっと大変だけど鉢が少ないからなんとかなってるわね」
「あー、やっぱりそうだよねぇ」
「実は6鉢から5鉢になってしまったのよ。でもその5鉢は花が咲いてるわ」
「え! すごい! あっちなら夏とかのやつだと思うのに」
だめになっちゃった鉢は温度管理を低めにして日にもあまり当てなかったやつなんだって。やっぱ暑い地域の作物なんだな。でもいろいろ実験しつつ1つしかだめにしてないのが本当にすごい。
この分なら春には収穫できちゃう感じかな。魔法の温室があればもう少しいろんな作物育てられそうだよね。土壌の質とかまでは俺にはよくわからないけど。
あー、こういうときに限っては俺の中途半端な知識が悔しいよな。浅く広くが便利なことも多くてそれをありがたいと思うこともあるからなんとも言い難いけど。
「農地で育てるのは無理そうだけど、少量育てて上手く村の中で使っていくって感じになるかしらね。それでもこういった香辛料が手に入るのは嬉しいわ」
香辛料、買ったら高いんだろうなぁ……てことは育てられるのは貴重ってことか。
「ちゃんと受粉して実がなるかな?」
「そうね……今の時期は虫も少ないものね」
「俺の世界では花を筆でこしょこしょして受粉させるみたいのも見たことあるよ?」
「フデ?」
おっとぉ……筆ないか。紙も貴重品だから筆記具もないのか……あるとしてもペンなのかな?
「ええっと、筆は毛を束ねてあって墨……インクをつけて紙に書く道具だよ。でも書くのに使わないで、その毛の部分で他の花の花粉をつけるっていうか」
サディさんは俺の話を聞いて、ふむふむと理解したようだった。俺の下手な解説でわかるんだから頭良いよなぁ。そのあと、サディさんは人工受粉についていくつか質問してきて、俺は超あいまいな話をする羽目になった。なんか植物によっては雄株雌株があるんだよーとか、遺伝の仕組みの簡単なやつーとかね。
品種改良の話はサディさんの心を大いに刺激したみたいだけど、俺にできる話は少ない。
「たまに突然変な育ちをするのはそういうことなのねぇ……」
「確か、そういうのだけを集めて継代していくとそういう品種になるんだよ」
植物のことだからか俺の説明なんかでも把握していくサディさん。めっちゃ助かる……つか、俺がわかってなさすぎでごめんって気分。やっぱその道のプロには敵わないよな。
俺は明日トウガラシの花を見させてもらう約束をした。実は俺も乾燥した実は知ってても花を見たことがないんだ。だから少し楽しみ。
後片付けと翌朝の準備を簡単にしてからリビングに戻ると珍しくルイがまだいた。いつも村長の部屋に行っちゃったり自室に戻っちゃったりしてるのにな。
「ルイ、どうしたの?」
「いや……大丈夫か、と思って」
「何が?」
「なんでもない」
少し居心地悪そうに席を立とうとするルイを見て、サディさんが俺に耳打ちした。
「ルイはイクミくんが心配だったのよ。落ち着く前の震えてる姿見てるんだもの」
「あっ……」
やば……お礼言うどころか普通にスルーしそうになっちゃった。ワタワタしながらルイを追いかけて袖をつまんだ。
「ルイ……ありがと……」
「別に、俺は何もしてない」
「無事でいてくれて、ありがと……俺の心配してくれたのもだけど無事でいてくれたことのほうが嬉しい」
俺がそう言えばルイは頭をポンポンしてくれる。俺の年齢を知って頭を撫でるのをためらっていたルイは最近は全然遠慮しない。でも俺もなんかこれが当たり前みたいになってるんだよな。
そのあとルイは俺の部屋までついてきて俺の話を聞いてくれた。まあ、サディさんとの普段通りのやり取りのおかげで気分は落ち着いていたから単に俺がブチブチ言うだけだったんだけどね。
「俺がもう少し参戦を遅らせてイクミといたら早く終わらせられてたかもしれなかったな」
「でもあの時はいきなり複数現れたって感じだったし、前に出てた人の人数的にもしょうがなかったんだよ、きっと」
「でもどんなときでも見張り台に一人は残そうってことになった。今回は本当にイクミがいて良かった」
うわぁ、ドキドキする。そういう意味じゃないのに! 俺の煩悩どこか行けってば……真面目な話をしてるんだってば。
「お……俺より弓が上手くて魔力もたくさんある人がいたらもっと良かった……んじゃないかな」
「そういうのは言い出したらキリがないぞ? それに弓はこの村のやつは少ないからな」
村長とかルイはかなりの腕前だけど、みんな基礎をかじったくらいらしい。大体の人が剣を選ぶし、魔導士がいるからって遠距離を選ぶ人がまずいないんだそうだ。そういうもんなんだな……それを考えたら俺が弓選んじゃったのって本当に無謀だよ。教えてくれる人少なすぎじゃん……。でも基礎をかじったくらいだとしてもきっと俺よりは上手いんだろうなとは思うけど。
「今回のイクミの話を聞いて弓に興味を持った子が何人かいたらしいぞ」
「はぇ?」
「イクミは気づいてないかもしれないが、お前のこと好きな子ども多いからな。真似したくもなるんだろ」
「良いのか悪いのかよくわからない……ははは……」
ルイは村の人の武器がかたよらないようになるのは良いことだって話してたけどね。
俺がこの村に影響を与えてるっていうのがなんか不思議だよな……。だって日本にいたら俺が少し何かをしたところでほとんど影響なんかないわけじゃん。小さな世界ってすごい……けど、怖いな。こんな俺でもちゃんと責任持った行動しないとなって思っちゃう。
眠くなってきたのをルイに見破られて「もう寝ろ」って部屋に帰っていった。もう少し一緒にいたかったな……。
なんかドキドキする。やっと帰るための手がかりを探しにいけるのに、不安とか寂しい気持ちもあるんだ。村の人があまりにもいい人たちばかりだったから、俺はすっかりここに馴染んでしまった気がする。だって、大学にいるよりも長くここに住んでしまったんだもん……。
でも春と言っても、外の雪解けまでは旅は厳しいだろうってことでまだ先のことだから、それまでは鍛錬も欠かさずやって……あとみんなと料理もやろうと思う。
「イクミくんがいなくなったら寂しいわね。でもイクミくんの希望が叶うように応援するわ」
サディさんは後片付けをしながら言った。俺も寂しいけどいる間はたくさんいろんなことさせてねってお願いして2人で笑った。だってそろそろ収穫のジャガイモ水飴も教えなきゃだもん。砂糖ほど使い勝手は良くないけど料理とかお菓子とかに役立ててほしいなって思っちゃうよな。
「あ! サディさん、鷹の爪……トウガラシどうなった?」
「状態はいいわよ。結構適正気温が高いみたいだから魔力で温度管理するのだけはちょっと大変だけど鉢が少ないからなんとかなってるわね」
「あー、やっぱりそうだよねぇ」
「実は6鉢から5鉢になってしまったのよ。でもその5鉢は花が咲いてるわ」
「え! すごい! あっちなら夏とかのやつだと思うのに」
だめになっちゃった鉢は温度管理を低めにして日にもあまり当てなかったやつなんだって。やっぱ暑い地域の作物なんだな。でもいろいろ実験しつつ1つしかだめにしてないのが本当にすごい。
この分なら春には収穫できちゃう感じかな。魔法の温室があればもう少しいろんな作物育てられそうだよね。土壌の質とかまでは俺にはよくわからないけど。
あー、こういうときに限っては俺の中途半端な知識が悔しいよな。浅く広くが便利なことも多くてそれをありがたいと思うこともあるからなんとも言い難いけど。
「農地で育てるのは無理そうだけど、少量育てて上手く村の中で使っていくって感じになるかしらね。それでもこういった香辛料が手に入るのは嬉しいわ」
香辛料、買ったら高いんだろうなぁ……てことは育てられるのは貴重ってことか。
「ちゃんと受粉して実がなるかな?」
「そうね……今の時期は虫も少ないものね」
「俺の世界では花を筆でこしょこしょして受粉させるみたいのも見たことあるよ?」
「フデ?」
おっとぉ……筆ないか。紙も貴重品だから筆記具もないのか……あるとしてもペンなのかな?
「ええっと、筆は毛を束ねてあって墨……インクをつけて紙に書く道具だよ。でも書くのに使わないで、その毛の部分で他の花の花粉をつけるっていうか」
サディさんは俺の話を聞いて、ふむふむと理解したようだった。俺の下手な解説でわかるんだから頭良いよなぁ。そのあと、サディさんは人工受粉についていくつか質問してきて、俺は超あいまいな話をする羽目になった。なんか植物によっては雄株雌株があるんだよーとか、遺伝の仕組みの簡単なやつーとかね。
品種改良の話はサディさんの心を大いに刺激したみたいだけど、俺にできる話は少ない。
「たまに突然変な育ちをするのはそういうことなのねぇ……」
「確か、そういうのだけを集めて継代していくとそういう品種になるんだよ」
植物のことだからか俺の説明なんかでも把握していくサディさん。めっちゃ助かる……つか、俺がわかってなさすぎでごめんって気分。やっぱその道のプロには敵わないよな。
俺は明日トウガラシの花を見させてもらう約束をした。実は俺も乾燥した実は知ってても花を見たことがないんだ。だから少し楽しみ。
後片付けと翌朝の準備を簡単にしてからリビングに戻ると珍しくルイがまだいた。いつも村長の部屋に行っちゃったり自室に戻っちゃったりしてるのにな。
「ルイ、どうしたの?」
「いや……大丈夫か、と思って」
「何が?」
「なんでもない」
少し居心地悪そうに席を立とうとするルイを見て、サディさんが俺に耳打ちした。
「ルイはイクミくんが心配だったのよ。落ち着く前の震えてる姿見てるんだもの」
「あっ……」
やば……お礼言うどころか普通にスルーしそうになっちゃった。ワタワタしながらルイを追いかけて袖をつまんだ。
「ルイ……ありがと……」
「別に、俺は何もしてない」
「無事でいてくれて、ありがと……俺の心配してくれたのもだけど無事でいてくれたことのほうが嬉しい」
俺がそう言えばルイは頭をポンポンしてくれる。俺の年齢を知って頭を撫でるのをためらっていたルイは最近は全然遠慮しない。でも俺もなんかこれが当たり前みたいになってるんだよな。
そのあとルイは俺の部屋までついてきて俺の話を聞いてくれた。まあ、サディさんとの普段通りのやり取りのおかげで気分は落ち着いていたから単に俺がブチブチ言うだけだったんだけどね。
「俺がもう少し参戦を遅らせてイクミといたら早く終わらせられてたかもしれなかったな」
「でもあの時はいきなり複数現れたって感じだったし、前に出てた人の人数的にもしょうがなかったんだよ、きっと」
「でもどんなときでも見張り台に一人は残そうってことになった。今回は本当にイクミがいて良かった」
うわぁ、ドキドキする。そういう意味じゃないのに! 俺の煩悩どこか行けってば……真面目な話をしてるんだってば。
「お……俺より弓が上手くて魔力もたくさんある人がいたらもっと良かった……んじゃないかな」
「そういうのは言い出したらキリがないぞ? それに弓はこの村のやつは少ないからな」
村長とかルイはかなりの腕前だけど、みんな基礎をかじったくらいらしい。大体の人が剣を選ぶし、魔導士がいるからって遠距離を選ぶ人がまずいないんだそうだ。そういうもんなんだな……それを考えたら俺が弓選んじゃったのって本当に無謀だよ。教えてくれる人少なすぎじゃん……。でも基礎をかじったくらいだとしてもきっと俺よりは上手いんだろうなとは思うけど。
「今回のイクミの話を聞いて弓に興味を持った子が何人かいたらしいぞ」
「はぇ?」
「イクミは気づいてないかもしれないが、お前のこと好きな子ども多いからな。真似したくもなるんだろ」
「良いのか悪いのかよくわからない……ははは……」
ルイは村の人の武器がかたよらないようになるのは良いことだって話してたけどね。
俺がこの村に影響を与えてるっていうのがなんか不思議だよな……。だって日本にいたら俺が少し何かをしたところでほとんど影響なんかないわけじゃん。小さな世界ってすごい……けど、怖いな。こんな俺でもちゃんと責任持った行動しないとなって思っちゃう。
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