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異世界生活編
95.久々に来たアレ
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――ズズン
夕飯の支度をしているときよくわからない衝撃を感じた。特に音が聞こえたとか何かがあったという感じではなかったんだけど、これは一体なんなんだろうと思っているとサディさんが顎に手を当てて上を向いていた。
「遠いわね」
「何が?」
さっきのズーンときたアレのことだとは思ったんだけどアレがなんなのかわからなくて俺はサディさんに尋ねる。
だってね、別に家が揺れたりとかがあったわけじゃなくて、変な波みたいのが身体の中を通っていったみたいな感じでオエッてなるみたいな感覚だったんだよね。
「魔力噴出よ?」
「うそ!? 前にめっちゃ爆発してたやつ?」
「あのときは村の近くであったものねぇ。今回はかなり遠そうね。魔力波の名残だけきたもの」
「アレがそうなんだ?」
魔力噴出は年に何度かはあるから経験するだろうとは言われてたけど、今回は地震で言えば震度1みたいなものってことかな。オエッてのがなかったら全然わからなかっただろうし。
ていうか、魔力噴出かぁ。前回のときはここに来たばっかりで本当に怖くてしょうがなかったよな……。通訳の魔導具も使えなくてルイもいなくてさ。あの時の心細さは筆舌に尽くし難いものがあったよな。
「今回も偵察に行くの?」
「かなり遠そうだからないんじゃないかしら。近場ならどんなに雪が深くても行くとは思うけど、空気が響きもしなかったでしょう?」
それを聞いて安心した。魔力噴出は俺にとってトラウマみたいなもんなんだもん。
それにしても……前回夏至みたいな日を過ぎたあたりだったと思うけど、今回は冬至みたいに日が一番短い日が近いんじゃないか? そういうのなんか関係あるのかなぁ。いや、ありそう。地球だって満月や新月の時は引力で地震が起きやすかったりするし、原理は違ってもそういうことがあっても不思議じゃない。
でも、とりあえず遠くで起こって村にほとんど関係ないなら良かったよ。俺は霧がない日をみんなと楽しみたいんだって。不思議な魔力の霧の謎とか解明出来たら面白いだろうなぁ。冒険映画みたいにさ、謎を解き明かして行くと財宝が……とか、異世界なんだし新たな能力が……とかあったら面白そうだよね。娯楽映画の見すぎかなぁ。
夕飯のときに村長が魔力噴出について話していた。サディさんの言った通り、前みたいにチームに分けた偵察隊を出すことはしないって。でも噴出が起こった辺りで魔化した生物がいるだろうから、村の中からの警備は強化するということだ。
「イクミ君、やってみる?」
「へ?」
「防壁の見晴らし台から少し当番で待機するだけだよ。イクミ君は弓が使えるからいいんじゃないかな?」
「で、でも……見逃したり失敗したりしたら……」
「俺が一緒にいるから」
俺が戸惑っているとルイがすかさず口を挟んでくる。フォローのつもりかもしれないけど、俺からしたら逃げられないように背後からグイグイ押し出されてるみたいに感じる。
「村から出ないで場合によっては魔物を狙えるチャンスだろ?」
「チャンス……っていうかさぁ……」
村から出るっていうのを目標に武器の練習をしてきた俺だけど、やっぱりいざとなると尻込みしちゃうもんだな。村に来るまでにルイに守られてたときの魔物なんかを思い出してかなりビビっていると、ルイがスッと目を細めて俺を見たのがわかった。
あ……。ルイの期待は裏切りたくないかも。
「ん。ルイがサポートしてくれるなら……やってみようかな。でも、頭数には入れないでっ」
テーブルでみんなに見られながら言うのはちょっと恥ずかしかった。でも3人の視線は優しくて、ホント俺みたいなよそ者になんでここまで優しいんだよ。そんな重要なことにまで関わらせてくれてさ。
「イクミくん最近とっても頑張っているものねぇ。ルイもヴァンもイクミくんの弓の腕がかなり上達してるってアルに話してたわよ」
「そっ……だから、バラすなよ……」
「むしろなんで言ってあげないのよ」
俺の知らないところで情報共有されてた……。いや、前からそうだったんだけど、こうやって他の人から聞くと急に『うわー』って思っちゃうよね。そんで、思ってないところでサディさんに言われて照れるルイが相変わらず……ゲフンゲフン。
それにね、サディさん、俺、別にルイに褒められてないわけじゃないんだよ。いつも『よくやってる』『ちゃんと上手くなってる』って言ってもらってるし、悩んでたらさりげなく声かけてくれたりフォローしてもらってるもん。
「え、えっと……明日から? 担当する時間とか決まってるの?」
「イクミ君には昼間の短い時間だけ立ってもらおうか。いつもやってることの合間だけでいいよ」
「他の人に悪くないかな?」
「頭数に入れないんだろ? 気にするなって」
「そうは言ったけど……」
ルイも村長も、これは魔物を発見したり対峙したりする練習だからって言うんだよね。他の人たちもわかってるからいいって。いや、おかしくない!? 村の安全に関わることだよ?
「イクミが真面目でわざとサボるようなヤツじゃないってみんなわかってる。大丈夫だ」
村長も魔物が大挙して押し寄せるなんてことはないから大丈夫だって言うんだよねぇ。大型の魔物が村に近づいたら自警団を村の外に行かせるからっていうけど、むしろそのほうが俺の未熟な弓が味方を射ってしまいそうで怖いよ……。
俺はちょっとソワソワした気持ちで夕飯を終えて、緊張で熟睡できなかった。うーん、メンタルがまだまだだなぁって思っちゃうよね。
夕飯の支度をしているときよくわからない衝撃を感じた。特に音が聞こえたとか何かがあったという感じではなかったんだけど、これは一体なんなんだろうと思っているとサディさんが顎に手を当てて上を向いていた。
「遠いわね」
「何が?」
さっきのズーンときたアレのことだとは思ったんだけどアレがなんなのかわからなくて俺はサディさんに尋ねる。
だってね、別に家が揺れたりとかがあったわけじゃなくて、変な波みたいのが身体の中を通っていったみたいな感じでオエッてなるみたいな感覚だったんだよね。
「魔力噴出よ?」
「うそ!? 前にめっちゃ爆発してたやつ?」
「あのときは村の近くであったものねぇ。今回はかなり遠そうね。魔力波の名残だけきたもの」
「アレがそうなんだ?」
魔力噴出は年に何度かはあるから経験するだろうとは言われてたけど、今回は地震で言えば震度1みたいなものってことかな。オエッてのがなかったら全然わからなかっただろうし。
ていうか、魔力噴出かぁ。前回のときはここに来たばっかりで本当に怖くてしょうがなかったよな……。通訳の魔導具も使えなくてルイもいなくてさ。あの時の心細さは筆舌に尽くし難いものがあったよな。
「今回も偵察に行くの?」
「かなり遠そうだからないんじゃないかしら。近場ならどんなに雪が深くても行くとは思うけど、空気が響きもしなかったでしょう?」
それを聞いて安心した。魔力噴出は俺にとってトラウマみたいなもんなんだもん。
それにしても……前回夏至みたいな日を過ぎたあたりだったと思うけど、今回は冬至みたいに日が一番短い日が近いんじゃないか? そういうのなんか関係あるのかなぁ。いや、ありそう。地球だって満月や新月の時は引力で地震が起きやすかったりするし、原理は違ってもそういうことがあっても不思議じゃない。
でも、とりあえず遠くで起こって村にほとんど関係ないなら良かったよ。俺は霧がない日をみんなと楽しみたいんだって。不思議な魔力の霧の謎とか解明出来たら面白いだろうなぁ。冒険映画みたいにさ、謎を解き明かして行くと財宝が……とか、異世界なんだし新たな能力が……とかあったら面白そうだよね。娯楽映画の見すぎかなぁ。
夕飯のときに村長が魔力噴出について話していた。サディさんの言った通り、前みたいにチームに分けた偵察隊を出すことはしないって。でも噴出が起こった辺りで魔化した生物がいるだろうから、村の中からの警備は強化するということだ。
「イクミ君、やってみる?」
「へ?」
「防壁の見晴らし台から少し当番で待機するだけだよ。イクミ君は弓が使えるからいいんじゃないかな?」
「で、でも……見逃したり失敗したりしたら……」
「俺が一緒にいるから」
俺が戸惑っているとルイがすかさず口を挟んでくる。フォローのつもりかもしれないけど、俺からしたら逃げられないように背後からグイグイ押し出されてるみたいに感じる。
「村から出ないで場合によっては魔物を狙えるチャンスだろ?」
「チャンス……っていうかさぁ……」
村から出るっていうのを目標に武器の練習をしてきた俺だけど、やっぱりいざとなると尻込みしちゃうもんだな。村に来るまでにルイに守られてたときの魔物なんかを思い出してかなりビビっていると、ルイがスッと目を細めて俺を見たのがわかった。
あ……。ルイの期待は裏切りたくないかも。
「ん。ルイがサポートしてくれるなら……やってみようかな。でも、頭数には入れないでっ」
テーブルでみんなに見られながら言うのはちょっと恥ずかしかった。でも3人の視線は優しくて、ホント俺みたいなよそ者になんでここまで優しいんだよ。そんな重要なことにまで関わらせてくれてさ。
「イクミくん最近とっても頑張っているものねぇ。ルイもヴァンもイクミくんの弓の腕がかなり上達してるってアルに話してたわよ」
「そっ……だから、バラすなよ……」
「むしろなんで言ってあげないのよ」
俺の知らないところで情報共有されてた……。いや、前からそうだったんだけど、こうやって他の人から聞くと急に『うわー』って思っちゃうよね。そんで、思ってないところでサディさんに言われて照れるルイが相変わらず……ゲフンゲフン。
それにね、サディさん、俺、別にルイに褒められてないわけじゃないんだよ。いつも『よくやってる』『ちゃんと上手くなってる』って言ってもらってるし、悩んでたらさりげなく声かけてくれたりフォローしてもらってるもん。
「え、えっと……明日から? 担当する時間とか決まってるの?」
「イクミ君には昼間の短い時間だけ立ってもらおうか。いつもやってることの合間だけでいいよ」
「他の人に悪くないかな?」
「頭数に入れないんだろ? 気にするなって」
「そうは言ったけど……」
ルイも村長も、これは魔物を発見したり対峙したりする練習だからって言うんだよね。他の人たちもわかってるからいいって。いや、おかしくない!? 村の安全に関わることだよ?
「イクミが真面目でわざとサボるようなヤツじゃないってみんなわかってる。大丈夫だ」
村長も魔物が大挙して押し寄せるなんてことはないから大丈夫だって言うんだよねぇ。大型の魔物が村に近づいたら自警団を村の外に行かせるからっていうけど、むしろそのほうが俺の未熟な弓が味方を射ってしまいそうで怖いよ……。
俺はちょっとソワソワした気持ちで夕飯を終えて、緊張で熟睡できなかった。うーん、メンタルがまだまだだなぁって思っちゃうよね。
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