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異世界生活編
89.魔力半分作戦
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俺の魔力半分作戦はこう。まずはいつもみたいに全部を1か所に集めて、それを想像で作り出した包丁で半分に切る。その片方が散っちゃわないうちにカプセルに閉じ込める。これなら半分以外でも自分の好きな分量の魔力を手に移動させられそう。俺って頭いい! うそうそ……ちょっと調子に乗った。
「よし。とりあえず、想像はできてる。でもちゃんと魔力の半分だけ移動させられてるかは俺じゃいまひとつわからないんだよな」
いつものように自主練をしながら独り言が止まらない。俺こっち来てから独り言増えたよな。前も自宅じゃぼちぼち言う方だったけど明らかに増えたなとか思って笑っちゃう。でもね、意外と言葉として口に出すことで考えがまとまったり気持ちが落ち着いたりするんだから侮れない。さすがに人が多いところで言う勇気はないけどさ。
「1回ヴァンにチェックしてもらったほうがいっか。ルイがわかるならいいんだけど……やっぱ魔力のことだからヴァンだよな」
てことで、今日の朝の自主練は終了! さて、朝食の用意をしていつものお仕事頑張ろっと。
「あら、イクミくん。なんか今日はいつもより元気ね」
「え、そう? あ、魔力の練習が思ったとおりにできてそうだからかな」
「そうなのね。良かったじゃない。どんなことをしているの?」
そういえば俺はサディさんに魔力の練習なんかはあまり話したことがなかったかもしれない。それこそ最初の悩みまくってたときはぽろっと話したかもしれないけど、カプセル作戦を思いついたあたりからは何も言ってなかったかも。
「──って感じで今は半分の魔力を集めるのにチャレンジ中なんだ」
「すごいじゃない。イクミくんの世界のわかりやすいものを使った想像ね。私たちはあまり意識しないからそういう話はとても興味を惹かれるわ。それにヴァンが言っている魔力をある程度残しておかないと回復が遅くなるというのも本当よ。だからその練習はとても大事ね」
「そうなんだ。なんでそうなるとかはわかってるの?」
「詳しくは私にもわからないけど。でも残っている魔力が体内を循環して新たに取り入れた魔力を自分のものに変換していく……みたいな感じかしら。だから循環する魔力が少ないと変換も少ないのよ」
魔力の仕組みは俺にはよくわからない。けど、こっちの人もよくわかってないから聞いても曖昧な返答ばかりだ。こっちの世界の学者さん、もっと頑張ってよ! 絶対研究とかしてる人いるだろ? ここが秘境だからあまり情報が伝わってこないのかなぁ。紙が貴重だからとかもあるのかもだけど。
「なんとなく魔力の回復についてはわかったようなわからないようなって感じだけど……。あと、現象を起こすってのが俺にはまだよくわからないんだよね」
「そうねぇ、私の場合は魔力を放出するときに何に変わってほしいかをイメージしてるかしらね。人によって感覚は違うみたいよ? でも色々試していると自分にあったやり方がわかってくるものなのよ」
「ルイは取り出すって言ってた……けど、サディさんは放出、か」
「ルイはそんなこと言ってたのね」
サディさんも「初めて聞いたわ」なんて感じだった。生活魔法なんて当たり前の魔法すぎてどうやってるとかそんなこと話す人がいないのかもしれない。でもルイの言ってた『取り出す』よりはサディさんの言う『放出のときにイメージ』の方が俺にとってはやりやすいかも。
「サディさん、めっちゃいいヒントになったよ。ありがとう!」
「あら、そう? なら良かったわ! そういえば、冬の野菜がね――」
サディさんと冬の寒い時期だけに採れる栄養豊富な野菜の話をしながら、前に作ったカロイモポタージュみたいなとろっとして身体の温まるスープを作った。カロイモがそもそもねっとり系のイモだから入れて潰すとそうなるんだよね。今日のはミルクを使ってないんだけど、いろんな野菜が入っててそれを風魔法で全部ガーッとやった感じのスープ。それに魔物肉の串焼きだね。少しサディさんの料理も俺風になって来ちゃってるな。でもスープのバリエーションが増えたってサディさんは喜んでたからいいか。
◇◇◇
俺は弓練習のあと、早速ヴァンを引き止めて半分の魔力を見てもらった。今まではある程度出来てからって感じだったけど、これに関しては俺が知覚出来るようになるのは先過ぎるからさ。
そしたら、やっぱ作戦は成功して、出来てるって言うんだから「よしっ!」って感じだよね。なんかイメージのコツがわかってきたようにも思うよ。
あれをこうして、それから……みたいな理屈で考えてからそのついでに場面が思い浮かんでもイメージじゃないんだ。いや……イメージはイメージなんだろうけど、考えまくっちゃってるっていうかね。で、脈絡なかろうがぽんぽんと受け入れて出していっちゃうのがイメージ、って言うのかな……。正確には違うかもだけど、俺的認識はそんな感じ。前者でも俺が最初に魔力を集める練習をしたときみたいに出来るには出来るんどけど、色々試してみた結果圧倒的に後者の方が成功率が高いんだよな。でもリアルに想像するにはある程度の裏付けは必要だからその辺の兼ね合いがね……。
「えー、イクミすごいじゃん! あっという間に出来るようになっちゃうんだねぇ。人並みにはすぐ出来るって言ってたの本当にそうだね」
「いや、それはちょっと違うんじゃ? 今回はたまたまひらめいた作戦が……」
「何言ってんの。そのひらめくのがスゴイんだよ? さらにひらめきをちゃんと活かすところもね」
そうかな? よくわかんないけど……まあ褒められるのは嬉しいからありがたくそう思っておくか。とりあえず、俺の魔力の半分をちゃんと移動させるのは出来てるみたいだから水を出す練習してみようっと。
「前にルイに水を出してもらったときにさ、出してくれた水が玉になって浮いてたんだけど、あんなふうになる?」
「いや、それはイクミには無理かな。保持できないと思うよ?」
「てことは、俺がやると地面に落ちちゃうのか……シェラカップ用意して練習かな」
「あと、昨日も言ったけど、もし出せたとしたらその1回でやめといてね。その後はオレがいいよって言うまでは集めたり移動させたりするコントロールの練習だけするようにして」
「わかった」
回復しにくくなったら練習も遅れるだろうし、それは俺もやだから先生の言うことはちゃんと聞いておこう……。
「よし。とりあえず、想像はできてる。でもちゃんと魔力の半分だけ移動させられてるかは俺じゃいまひとつわからないんだよな」
いつものように自主練をしながら独り言が止まらない。俺こっち来てから独り言増えたよな。前も自宅じゃぼちぼち言う方だったけど明らかに増えたなとか思って笑っちゃう。でもね、意外と言葉として口に出すことで考えがまとまったり気持ちが落ち着いたりするんだから侮れない。さすがに人が多いところで言う勇気はないけどさ。
「1回ヴァンにチェックしてもらったほうがいっか。ルイがわかるならいいんだけど……やっぱ魔力のことだからヴァンだよな」
てことで、今日の朝の自主練は終了! さて、朝食の用意をしていつものお仕事頑張ろっと。
「あら、イクミくん。なんか今日はいつもより元気ね」
「え、そう? あ、魔力の練習が思ったとおりにできてそうだからかな」
「そうなのね。良かったじゃない。どんなことをしているの?」
そういえば俺はサディさんに魔力の練習なんかはあまり話したことがなかったかもしれない。それこそ最初の悩みまくってたときはぽろっと話したかもしれないけど、カプセル作戦を思いついたあたりからは何も言ってなかったかも。
「──って感じで今は半分の魔力を集めるのにチャレンジ中なんだ」
「すごいじゃない。イクミくんの世界のわかりやすいものを使った想像ね。私たちはあまり意識しないからそういう話はとても興味を惹かれるわ。それにヴァンが言っている魔力をある程度残しておかないと回復が遅くなるというのも本当よ。だからその練習はとても大事ね」
「そうなんだ。なんでそうなるとかはわかってるの?」
「詳しくは私にもわからないけど。でも残っている魔力が体内を循環して新たに取り入れた魔力を自分のものに変換していく……みたいな感じかしら。だから循環する魔力が少ないと変換も少ないのよ」
魔力の仕組みは俺にはよくわからない。けど、こっちの人もよくわかってないから聞いても曖昧な返答ばかりだ。こっちの世界の学者さん、もっと頑張ってよ! 絶対研究とかしてる人いるだろ? ここが秘境だからあまり情報が伝わってこないのかなぁ。紙が貴重だからとかもあるのかもだけど。
「なんとなく魔力の回復についてはわかったようなわからないようなって感じだけど……。あと、現象を起こすってのが俺にはまだよくわからないんだよね」
「そうねぇ、私の場合は魔力を放出するときに何に変わってほしいかをイメージしてるかしらね。人によって感覚は違うみたいよ? でも色々試していると自分にあったやり方がわかってくるものなのよ」
「ルイは取り出すって言ってた……けど、サディさんは放出、か」
「ルイはそんなこと言ってたのね」
サディさんも「初めて聞いたわ」なんて感じだった。生活魔法なんて当たり前の魔法すぎてどうやってるとかそんなこと話す人がいないのかもしれない。でもルイの言ってた『取り出す』よりはサディさんの言う『放出のときにイメージ』の方が俺にとってはやりやすいかも。
「サディさん、めっちゃいいヒントになったよ。ありがとう!」
「あら、そう? なら良かったわ! そういえば、冬の野菜がね――」
サディさんと冬の寒い時期だけに採れる栄養豊富な野菜の話をしながら、前に作ったカロイモポタージュみたいなとろっとして身体の温まるスープを作った。カロイモがそもそもねっとり系のイモだから入れて潰すとそうなるんだよね。今日のはミルクを使ってないんだけど、いろんな野菜が入っててそれを風魔法で全部ガーッとやった感じのスープ。それに魔物肉の串焼きだね。少しサディさんの料理も俺風になって来ちゃってるな。でもスープのバリエーションが増えたってサディさんは喜んでたからいいか。
◇◇◇
俺は弓練習のあと、早速ヴァンを引き止めて半分の魔力を見てもらった。今まではある程度出来てからって感じだったけど、これに関しては俺が知覚出来るようになるのは先過ぎるからさ。
そしたら、やっぱ作戦は成功して、出来てるって言うんだから「よしっ!」って感じだよね。なんかイメージのコツがわかってきたようにも思うよ。
あれをこうして、それから……みたいな理屈で考えてからそのついでに場面が思い浮かんでもイメージじゃないんだ。いや……イメージはイメージなんだろうけど、考えまくっちゃってるっていうかね。で、脈絡なかろうがぽんぽんと受け入れて出していっちゃうのがイメージ、って言うのかな……。正確には違うかもだけど、俺的認識はそんな感じ。前者でも俺が最初に魔力を集める練習をしたときみたいに出来るには出来るんどけど、色々試してみた結果圧倒的に後者の方が成功率が高いんだよな。でもリアルに想像するにはある程度の裏付けは必要だからその辺の兼ね合いがね……。
「えー、イクミすごいじゃん! あっという間に出来るようになっちゃうんだねぇ。人並みにはすぐ出来るって言ってたの本当にそうだね」
「いや、それはちょっと違うんじゃ? 今回はたまたまひらめいた作戦が……」
「何言ってんの。そのひらめくのがスゴイんだよ? さらにひらめきをちゃんと活かすところもね」
そうかな? よくわかんないけど……まあ褒められるのは嬉しいからありがたくそう思っておくか。とりあえず、俺の魔力の半分をちゃんと移動させるのは出来てるみたいだから水を出す練習してみようっと。
「前にルイに水を出してもらったときにさ、出してくれた水が玉になって浮いてたんだけど、あんなふうになる?」
「いや、それはイクミには無理かな。保持できないと思うよ?」
「てことは、俺がやると地面に落ちちゃうのか……シェラカップ用意して練習かな」
「あと、昨日も言ったけど、もし出せたとしたらその1回でやめといてね。その後はオレがいいよって言うまでは集めたり移動させたりするコントロールの練習だけするようにして」
「わかった」
回復しにくくなったら練習も遅れるだろうし、それは俺もやだから先生の言うことはちゃんと聞いておこう……。
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