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異世界生活編
88.第2段階のお披露目
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何度も何度も1人で練習して魔力を集めてから手への移動がそこそこ早くできるようになったからヴァンにお披露目することにした。前よりは必死に集中しなくてもできるようになったし、少し気が楽になったかなと思う。
ヴァンの前だと少しドキドキするけど気楽に、気楽に。俺なりの魔力コントロールをすればいいんだから。とは言っても、まだ想像するときには目を閉じないとできないんだけどね。でも座禅みたいな瞑想スタイルはしなくてもできるようになってきたんだ。集中して想像のガチャガチャカプセルを身体の中で転がしていく。
「……こんな感じ……」
「おおお! すごいじゃん。前より早いしかなりしっかり!」
自分の実感もちゃんとあったからだめとは言われないと思ったけど、この感じだと結構いい出来だったのかな。なんだかんだいって褒められるのはやっぱ嬉しい。
「もうあとはその基礎練をしつつ現象を出してくだけだよ。生活魔法は基本は手からだからね。でも今は魔力をほとんど全部集めてるだろうけど、これからはイクミの全魔力の半分だけを集めるようにね」
「半分!?」
「さすがに全部使い切っちゃうとしんどいと思うよ? 多分回復も遅くなる」
「うう、わかった」
半分っていう指定は正直言って、結構……難しそうだよ。だって全部だったら考えないでひたすら集めればいいけど、半分って量を把握してちゃんとコントロールしなきゃならないじゃん。ってことは、まだ水を出す前にできなきゃいけないことがあるってことなんじゃーん。ヴァンのバカ。全然「あとは現象を出すだけ」じゃないじゃないか。
うーん……半分、半分ねぇ。どうしたらいいのかな。でも、俺はここのところの練習で思い知ったんだ。難しいこと考えないで俺が納得できる方法ならなんでもいいってね。
あっ! てことはさ、俺の身体の中にある少なーい量の分からない魔力を半分だけ集めるとかいう難易度の高いことをしなくても同じようになる方法を見つければいいんだろ? ……なるほどね。なんとかなりそうな気がしてきた。
それはそれとして、俺が最近謎に思っていた、集めた魔力をそれぞれの現象として出すにはどうしたらいいのかってことを聞いてみた。前にルイは『水の魔力を取り出す』みたいに言ってたからさ。
「んー、ルイの言ってたのはルイなりのイメージだと思うよ。世界を構成する要素の話は知ってるんだよね? つまり、魔力ってのはその全てを内包してるんだ。扱いの得手不得手があるとしてもみんなが持ってる力なんだよ」
「でも、俺はこの世界の人じゃないよ?」
「こっちに来て魔力が溜まったんだから出身は関係ないでしょ」
「ああ……そうか。魔力はこっちのもんだった」
全てを内包ってことは生活魔法しか使えないって言ってる人も上位の魔法を使うことができないわけじゃないのかな。術式とか詠唱の話もちらっとルイに聞いたけど、前にヴァンに氷を出してもらった時にはとくに詠唱はしてなかったと思うんだよね。そんなことを考えている俺を余所にヴァンの説明は続いている。
「相性の良し悪しってのはどうしてもあるんだよね。オレだって上位だと闇魔法が一番相性がいいからさ。ルイも水魔法が一番みたいだし。だから、イクミも水が出してみたいのはわかるけど水にこだわらないでちっちゃい火を出すとか風を起こすとかも試してみなよ」
そういうもんかと俺は返事をして、でも今はまだその現象を起こすてのはやらないだろうからなととりあえずヴァンとは解散した。それにしてもこの魔法が使いたいからって苦手を克服するみたいな考え方はこっちにはあまりないのかな? いや、きっとあるにはあるんだろうな。でもそこに時間を割くよりは得意分野を伸ばすほうに重点を置いてるのかも。
でもさ、多分水を出すとか身体の浄化とかって基礎の基礎だろ? 相性云々の前の話なような気がするんだけど……。うう、魔法って「えいっ」ってやったらぽんっとできる不思議な力と思っていたのに全然想像と違うよな。そう考えるとゲームの世界の方が意外と近いのかもしれない。ゲームって呪文を習得するレベルが決まってたじゃん? あれってきっとレベルが上がるまでの間、魔力のコントロールをして俺みたいに練習しまくってるに違いない。そんなことを考えたらゲームキャラにちょっと親近感わいてきた!
「ルイはさ、最初はどんな魔法使ったの?」
「最初? いや、覚えてないな」
「えー、そうなんだ。なんか最初の魔法とかって印象に残ってるもんかと思ってたよ」
「当たり前のことだからな……。最初に喋った言葉を覚えてるか? ってのに近い」
う……なるほど? そう言われちゃうと確かに俺も覚えてないや。こっちの人は生まれながらに親からある程度魔力を受け継いでるんだもんな。その上周りの人達がみんな当たり前に魔法を使っている環境じゃそりゃ気づいたらできてるか。ずるい。
やっぱ俺の仲間はゲームのキャラなんだな。やつらもレベルが上がらないとマジックポイント増えないし魔法も覚えないし。
「のんびりやるしかないかぁ」
「そうしろってずっと言ってるだろう? 俺やヴァンがいるんだからそこまで魔法は必死にならなくていいんだ」
「これは俺の戦いなのっ! 弓は村を出るために必死でやってるけど、魔法は俺の自己満足でやってる……ある意味趣味みたいなもんじゃん? でもできたら絶対楽しいし何かの役に立つと思うんだよね。だから無理してやってるわけじゃないんだよ。俺の世界にないことをやってるっていうワクワクもあるから」
「そうか。イクミのそういうところ、いいよな」
ひょえ! 急にそんなこと言うのやめてよ、照れる。人の気も知らないでドキッとさせるようなこと言うんだから。なんか耳がカッカしてるよ……もうっ!
ヴァンの前だと少しドキドキするけど気楽に、気楽に。俺なりの魔力コントロールをすればいいんだから。とは言っても、まだ想像するときには目を閉じないとできないんだけどね。でも座禅みたいな瞑想スタイルはしなくてもできるようになってきたんだ。集中して想像のガチャガチャカプセルを身体の中で転がしていく。
「……こんな感じ……」
「おおお! すごいじゃん。前より早いしかなりしっかり!」
自分の実感もちゃんとあったからだめとは言われないと思ったけど、この感じだと結構いい出来だったのかな。なんだかんだいって褒められるのはやっぱ嬉しい。
「もうあとはその基礎練をしつつ現象を出してくだけだよ。生活魔法は基本は手からだからね。でも今は魔力をほとんど全部集めてるだろうけど、これからはイクミの全魔力の半分だけを集めるようにね」
「半分!?」
「さすがに全部使い切っちゃうとしんどいと思うよ? 多分回復も遅くなる」
「うう、わかった」
半分っていう指定は正直言って、結構……難しそうだよ。だって全部だったら考えないでひたすら集めればいいけど、半分って量を把握してちゃんとコントロールしなきゃならないじゃん。ってことは、まだ水を出す前にできなきゃいけないことがあるってことなんじゃーん。ヴァンのバカ。全然「あとは現象を出すだけ」じゃないじゃないか。
うーん……半分、半分ねぇ。どうしたらいいのかな。でも、俺はここのところの練習で思い知ったんだ。難しいこと考えないで俺が納得できる方法ならなんでもいいってね。
あっ! てことはさ、俺の身体の中にある少なーい量の分からない魔力を半分だけ集めるとかいう難易度の高いことをしなくても同じようになる方法を見つければいいんだろ? ……なるほどね。なんとかなりそうな気がしてきた。
それはそれとして、俺が最近謎に思っていた、集めた魔力をそれぞれの現象として出すにはどうしたらいいのかってことを聞いてみた。前にルイは『水の魔力を取り出す』みたいに言ってたからさ。
「んー、ルイの言ってたのはルイなりのイメージだと思うよ。世界を構成する要素の話は知ってるんだよね? つまり、魔力ってのはその全てを内包してるんだ。扱いの得手不得手があるとしてもみんなが持ってる力なんだよ」
「でも、俺はこの世界の人じゃないよ?」
「こっちに来て魔力が溜まったんだから出身は関係ないでしょ」
「ああ……そうか。魔力はこっちのもんだった」
全てを内包ってことは生活魔法しか使えないって言ってる人も上位の魔法を使うことができないわけじゃないのかな。術式とか詠唱の話もちらっとルイに聞いたけど、前にヴァンに氷を出してもらった時にはとくに詠唱はしてなかったと思うんだよね。そんなことを考えている俺を余所にヴァンの説明は続いている。
「相性の良し悪しってのはどうしてもあるんだよね。オレだって上位だと闇魔法が一番相性がいいからさ。ルイも水魔法が一番みたいだし。だから、イクミも水が出してみたいのはわかるけど水にこだわらないでちっちゃい火を出すとか風を起こすとかも試してみなよ」
そういうもんかと俺は返事をして、でも今はまだその現象を起こすてのはやらないだろうからなととりあえずヴァンとは解散した。それにしてもこの魔法が使いたいからって苦手を克服するみたいな考え方はこっちにはあまりないのかな? いや、きっとあるにはあるんだろうな。でもそこに時間を割くよりは得意分野を伸ばすほうに重点を置いてるのかも。
でもさ、多分水を出すとか身体の浄化とかって基礎の基礎だろ? 相性云々の前の話なような気がするんだけど……。うう、魔法って「えいっ」ってやったらぽんっとできる不思議な力と思っていたのに全然想像と違うよな。そう考えるとゲームの世界の方が意外と近いのかもしれない。ゲームって呪文を習得するレベルが決まってたじゃん? あれってきっとレベルが上がるまでの間、魔力のコントロールをして俺みたいに練習しまくってるに違いない。そんなことを考えたらゲームキャラにちょっと親近感わいてきた!
「ルイはさ、最初はどんな魔法使ったの?」
「最初? いや、覚えてないな」
「えー、そうなんだ。なんか最初の魔法とかって印象に残ってるもんかと思ってたよ」
「当たり前のことだからな……。最初に喋った言葉を覚えてるか? ってのに近い」
う……なるほど? そう言われちゃうと確かに俺も覚えてないや。こっちの人は生まれながらに親からある程度魔力を受け継いでるんだもんな。その上周りの人達がみんな当たり前に魔法を使っている環境じゃそりゃ気づいたらできてるか。ずるい。
やっぱ俺の仲間はゲームのキャラなんだな。やつらもレベルが上がらないとマジックポイント増えないし魔法も覚えないし。
「のんびりやるしかないかぁ」
「そうしろってずっと言ってるだろう? 俺やヴァンがいるんだからそこまで魔法は必死にならなくていいんだ」
「これは俺の戦いなのっ! 弓は村を出るために必死でやってるけど、魔法は俺の自己満足でやってる……ある意味趣味みたいなもんじゃん? でもできたら絶対楽しいし何かの役に立つと思うんだよね。だから無理してやってるわけじゃないんだよ。俺の世界にないことをやってるっていうワクワクもあるから」
「そうか。イクミのそういうところ、いいよな」
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