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異世界生活編
87.村の冬支度
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かなり寒くなってきた今日、自警団の一部の人たちが村の外で駐留するために出ていくらしい。ガルフさんやサグさんがそこに含まれているんだって。外や上で雪が深くなってしまう前に拠点を作らなければならないからってことだけど、本当に数ヶ月出て行って帰ってこられなくなってしまうのは大丈夫なのかな。
「魔核持ちの魔物さえ出なければそこまで問題はないと思うぞ。それにこれは毎年のことなんだから」
「毎年こんなことしなきゃいけないの大変だね。食事とか防寒とかさぁ……」
拠点は毎年同じところに作るらしいし、雪解けの頃に帰ってくるのは決まっているから心配はいらないとルイに言われるけど、こういうのを見送るのは俺は初めてだしやっぱり心配になっちゃう。野生の動物は冬眠してしまったり雪にまぎれたりしてあまり見ることはないらしいけど、魔物は季節は関係ないから見つけたら仕留めれば食べるものは困らないんだって。マジックバッグもあるしそこに食料やら武器の予備やら手入れ用品やら沢山詰めていくらしい。ヴァンは行かないけど魔導士ももちろん行くし、バランスのよいチームを組むそうだ。そんでもって二ヶ月後に転移の魔法陣で二人上に合流するんだって。基本は上に行った人は期間中村に戻ってはこないらしいけど、どうしてもなときは村長に報告しなきゃいけないから戻ってくるそうだ。でもそれがすごく大変なんだって。
「うー、聞いてるだけで本当に大変そうだね」
「そういう立地だからなぁ……しょうがないだろ。安全のためだから」
「本気の秘境の村って感じだよ」
「なんだ、それ」
うん、俺も自分で言っててなんだそれって思う。でもさ、日本じゃこういうことってないもん。ごくたまに豪雪地帯で孤立しちゃうニュースとか見るけど、ああいう感じってことだろ? 行ったり来たりがしにくくなるのはホント大変だよな。
「でもガルフさんとサグさんが一緒なのは良かったね。数ヶ月離れ離れはガルフさんは……」
「それがあってサグが一緒に行くんだぞ?」
「あえ?」
サグさんにベタ惚れなガルフさんが初めて冬季の駐留担当になったときにそうとうゴネたらしい。公私混同だとかなんだとか周りからはいろいろ言われたらしいけど絶対譲らなかったんだって。そこでサグさんが自分も一緒に駐留するから許してやってくれと言って、なんとかその件は一段落したとかなんとか。うん、すごい。ガルフさんは遠距離恋愛できないタイプってことがわかった。いや、でもそうか、こっちじゃ電話なんかもできないんだもんな。手紙もないだろうし。
「サグも最初は呆れてたんだけどな。でもまあ、今はまんざらでもなさそうだ」
「あは、ガルフさん良かったね。つらい環境でも好きな人が一緒にいてくれるんだもんね」
「俺はいつも冬はこの村にいないから上で駐留したことないが、あいつらがいて暑苦しくないのかは気になるな」
「ちょ、ひどいっ」
俺はルイの呆れた物言いに思わず吹き出しちゃったよね。副団長で任務は断れないけど愛する人とは離れたくないとかガルフさん可愛いじゃん。見た目はめっちゃハリウッド俳優みたいなイケメンなのに。それに俺も走り込みとかのときに会うとちょいちょい話すことあるんだけど、ガルフさんてめっちゃいい人なんだよなぁ。まあ、この村で悪い人を探すのは無理な気がするけども。
「ルイはいないからしょうがないとしても、ヴァンは冬の外に行ったことあるのかな?」
「冬はなさそうだぞ? そういった話を聞いたことがないしな」
俺がこの村に来たときは外にいたみたいだけどね。なんて思ってたけど、ヴァンは魔導士だけど自警団ってわけでもないらしい。強いし魔法に長けてるから何でも屋みたいに村中で活動してるんだって。ちょっとなるほどなって思っちゃった。確かに村の中でもいろんなことを器用にできる人って重宝するだろうしね。だから魔導士でも戦闘特化みたいな人が自警団にいて、そういう人が上に駐留するんだそうだ。
なにかあったときだけ何人かが転移で上に行くのは駄目なのかなって思ったけど、雪が深くなるとその「なにか」があったときの察知がとても遅くなるんだって。だから拠点を作っておいたほうがいいんだそうだ。でもそういう「なにか」が起こるのはそんなに多くはないそう。多くはないけど、過去には結構ヤバかったこともあるらしくて毎年きちんと駐留させてるんだってさ。
「別に猫だから寒さに弱くてって訳じゃないんだね」
「ん? 猫って寒さに弱かったか?」
「弱いのとは違うかもだけど、温かいところにいるイメージじゃん。少なくとも俺の国じゃ猫は炬燵で丸くなるんだよ」
「コタツ……?」
そうだね……炬燵があるわけないか。俺はルイに炬燵をざっくりと説明する。でもルイにはあまりイメージが掴めなかったみたいだな。テーブルが低いのもそこに布団がかかってるのも中が温かくなるのもこっちにはないもんなぁ。冬は炬燵があるとそこから動きたくなくなるくらい快適なんだけどね。そういえば、俺は一人暮らしをするときに炬燵は買わなかったんだ。まあ、春と初夏しかまだ一人暮らしの経験がなかったわけだけど。
ちょっと炬燵入りたくなってきたな。んで、やっぱ炬燵と言えばみかんと煎餅でしょ。って、何もかもこっちにはないじゃんね。魔導具を使えば炬燵っぽいものは作れるだろうけど、俺が求めてるのはそうじゃないんだよなぁ……。
「魔核持ちの魔物さえ出なければそこまで問題はないと思うぞ。それにこれは毎年のことなんだから」
「毎年こんなことしなきゃいけないの大変だね。食事とか防寒とかさぁ……」
拠点は毎年同じところに作るらしいし、雪解けの頃に帰ってくるのは決まっているから心配はいらないとルイに言われるけど、こういうのを見送るのは俺は初めてだしやっぱり心配になっちゃう。野生の動物は冬眠してしまったり雪にまぎれたりしてあまり見ることはないらしいけど、魔物は季節は関係ないから見つけたら仕留めれば食べるものは困らないんだって。マジックバッグもあるしそこに食料やら武器の予備やら手入れ用品やら沢山詰めていくらしい。ヴァンは行かないけど魔導士ももちろん行くし、バランスのよいチームを組むそうだ。そんでもって二ヶ月後に転移の魔法陣で二人上に合流するんだって。基本は上に行った人は期間中村に戻ってはこないらしいけど、どうしてもなときは村長に報告しなきゃいけないから戻ってくるそうだ。でもそれがすごく大変なんだって。
「うー、聞いてるだけで本当に大変そうだね」
「そういう立地だからなぁ……しょうがないだろ。安全のためだから」
「本気の秘境の村って感じだよ」
「なんだ、それ」
うん、俺も自分で言っててなんだそれって思う。でもさ、日本じゃこういうことってないもん。ごくたまに豪雪地帯で孤立しちゃうニュースとか見るけど、ああいう感じってことだろ? 行ったり来たりがしにくくなるのはホント大変だよな。
「でもガルフさんとサグさんが一緒なのは良かったね。数ヶ月離れ離れはガルフさんは……」
「それがあってサグが一緒に行くんだぞ?」
「あえ?」
サグさんにベタ惚れなガルフさんが初めて冬季の駐留担当になったときにそうとうゴネたらしい。公私混同だとかなんだとか周りからはいろいろ言われたらしいけど絶対譲らなかったんだって。そこでサグさんが自分も一緒に駐留するから許してやってくれと言って、なんとかその件は一段落したとかなんとか。うん、すごい。ガルフさんは遠距離恋愛できないタイプってことがわかった。いや、でもそうか、こっちじゃ電話なんかもできないんだもんな。手紙もないだろうし。
「サグも最初は呆れてたんだけどな。でもまあ、今はまんざらでもなさそうだ」
「あは、ガルフさん良かったね。つらい環境でも好きな人が一緒にいてくれるんだもんね」
「俺はいつも冬はこの村にいないから上で駐留したことないが、あいつらがいて暑苦しくないのかは気になるな」
「ちょ、ひどいっ」
俺はルイの呆れた物言いに思わず吹き出しちゃったよね。副団長で任務は断れないけど愛する人とは離れたくないとかガルフさん可愛いじゃん。見た目はめっちゃハリウッド俳優みたいなイケメンなのに。それに俺も走り込みとかのときに会うとちょいちょい話すことあるんだけど、ガルフさんてめっちゃいい人なんだよなぁ。まあ、この村で悪い人を探すのは無理な気がするけども。
「ルイはいないからしょうがないとしても、ヴァンは冬の外に行ったことあるのかな?」
「冬はなさそうだぞ? そういった話を聞いたことがないしな」
俺がこの村に来たときは外にいたみたいだけどね。なんて思ってたけど、ヴァンは魔導士だけど自警団ってわけでもないらしい。強いし魔法に長けてるから何でも屋みたいに村中で活動してるんだって。ちょっとなるほどなって思っちゃった。確かに村の中でもいろんなことを器用にできる人って重宝するだろうしね。だから魔導士でも戦闘特化みたいな人が自警団にいて、そういう人が上に駐留するんだそうだ。
なにかあったときだけ何人かが転移で上に行くのは駄目なのかなって思ったけど、雪が深くなるとその「なにか」があったときの察知がとても遅くなるんだって。だから拠点を作っておいたほうがいいんだそうだ。でもそういう「なにか」が起こるのはそんなに多くはないそう。多くはないけど、過去には結構ヤバかったこともあるらしくて毎年きちんと駐留させてるんだってさ。
「別に猫だから寒さに弱くてって訳じゃないんだね」
「ん? 猫って寒さに弱かったか?」
「弱いのとは違うかもだけど、温かいところにいるイメージじゃん。少なくとも俺の国じゃ猫は炬燵で丸くなるんだよ」
「コタツ……?」
そうだね……炬燵があるわけないか。俺はルイに炬燵をざっくりと説明する。でもルイにはあまりイメージが掴めなかったみたいだな。テーブルが低いのもそこに布団がかかってるのも中が温かくなるのもこっちにはないもんなぁ。冬は炬燵があるとそこから動きたくなくなるくらい快適なんだけどね。そういえば、俺は一人暮らしをするときに炬燵は買わなかったんだ。まあ、春と初夏しかまだ一人暮らしの経験がなかったわけだけど。
ちょっと炬燵入りたくなってきたな。んで、やっぱ炬燵と言えばみかんと煎餅でしょ。って、何もかもこっちにはないじゃんね。魔導具を使えば炬燵っぽいものは作れるだろうけど、俺が求めてるのはそうじゃないんだよなぁ……。
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