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異世界生活編
78.新たな魔導具!
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先日の冬連れ虫? を見た後から本当にぐっと冷えてきた。でも結界のお陰で村の中は厳寒期以外は雪が積もったり霜が降りたりはしないらしい。
それでも寒いもんは寒いんだよ。前にルイに貰った上着もあるんだけど鍛錬のときはさすがに邪魔かなと思って着てないからなんだけどね。動きやすい作りしてたし多分問題ないんだとは思うんだけどさって俺が泣き言を言っていたらヴァンが魔導具を貸してくれた。
「これはね、チャージがいるからそれはオレがしてあげるね。ピンになってる裏側にスイッチがあるんだ。作動させると身体の周りに暖かい空気の層を纏うからちょっと楽だよ」
「個人用エアコンじゃん……」
「エア、コン?」
「あー、俺の世界の暖房器具ってとこ」
懐炉って言おうとしたけど、身の回りの空気を温めるなら違うかと思って。でも、これすごくいいなぁ。空気の層が薄いから暑いとかは全然なくて、「寒すぎない」って程度なのが特にいい。
こっちの器用な人なら生活しながら自分の魔力を纏わせてそうやって体感調整することもできるんだって。でもなんでもかんでも魔力でどうにかしようとはしてないみたいだから上着とか暖房なんかもあるし、魔力にしても得手不得手があるようで何かをしながら魔法を常に纏ってってのができない人もいるらしくて、そういう人がこんな魔導具を使うんだそう。
「ヴァンはこんなの必要なさそうなのになんで持ってるの?」
「これは研究用だよ。なんか改良したりとか違う使い方できないかなーって」
「あ、なるほど。ていうか、研究用借りちゃってごめんね」
「いいよー。寒いのに弓の練習はきついでしょ」
そうなんだよね。走り込みしたあとに筋トレするのなんかは身体があたたまるからいいんだけど、弓はじっとしながらやることが多いからすぐ指がかじかむんだよ……。そんでもって震えるとそれだけで狙いが外れる。シビアすぎる。だからこの魔導具はかなりありがたいよ。あの上着を着てもどうしても指先は冷えてたんだけど、それがないんだもん。
「ヴァン、これホントすごい! めちゃくちゃ嬉しい!」
「村の子なんかは冬は弓じゃないやつ練習するんだよ。みんなしんどいのわかってるからね」
「まあ、そうなるよねぇ……」
だって子どもって俺以上には魔力あるだろうけど、大人みたいに魔力量が完全じゃないんだろ? きっと、この魔導具みたいな作用の魔力コントロールもできないはずだもんな。
俺とヴァンがきゃっきゃしてるのをルイがちょっと離れたところから見てるんだけど……なんか暗くない? え、大丈夫?
「あ、あの……ヴァン? ルイの様子おかしくない? なんか聞いてる?」
「うんにゃ? ただのいつもの無表情だよ。気にしなくていいよ」
「でも体調不良とかさ……」
「あの体力オバケが体調不良とかウケるんだけどっ」
ケラケラと笑うヴァンは本当に心配してなさそうだった。ってことはさほど気にしなくても大丈夫なのかな? 俺には魔力の乱れとかも感知できないしわからないから不安になったけど、察知能力の優れてるヴァンが大丈夫っていうならきっと本当に大丈夫なんだろう。
気にはなるけど、余計なことをしたくないような感じもしてルイには話しかけられなかった。まあ、ルイからも何か言ってきたりはしなかったし、夕飯は普通に食べてたから俺の気のせいだったのかもな。
とりあえず、魔導具のおかげで冬の鍛錬の心配がほとんどなくなった。もうガッツリやってやる! 絶対絶対春には『俺、弓が得意です』って言えるくらいになりたい。
なんか流れに任せてたらルイが近距離の剣、ヴァンが攻撃や支援の魔法、俺が遠距離の弓みたいにいつの間にか「旅立つときの役割分担」が決まりつつあってさ。まあ、分担的にはちょうどいいのかもしれないけど。
まあ、そんな感じで俺はそれから弓の鍛錬をかなり必死にやるようになったんだよね。で、時々は短剣の組み手なんかもしたんだ。弓が使えない状況でも身を守るためにね。
短剣の組み手は前のお試し期間よりもっと専門的になってたから最初はついていくのが大変でさ……。弓の感覚との切り替えっていうのかな……そういうのが難しいのもあったし、短剣のほうは常に動いてるから身体の使い方も全然違うし。
今も組み手は背格好の似てるヴァンとやってるっていうのはちょっと助かってる。まあ、自分の気持ちに気づいちゃった当初よりはドキドキは落ち着いてきたよ。上手く抑えられるようになったっていうか。でも突然胸がキュッてなるときはあるんだけどね……食事のときなんかは毎度ともいうけど。
だってね、俺の作った食事を無表情の中にも嬉しそうに食べてくれるんだもん。たまに目が弓なりに細くなって……あんなのずるいよ。そう思ってもルイが喜びそうなメニューを考えちゃう自分が恨めしい。
でも無理。だって好きなんだからしょうがないよね。ただ……ルイの部屋に気軽に行くっていうのはどうもできなくなっちゃった。緊張しすぎちゃって。俺、神話聞いた時ベッドでルイの横にぴったりくっついて話聞いたんだよな。今思いだすと『うおおおおおおお』ってなっちゃうよ。恥ずかしくなるっていうか。
俺には初めてのことで全然わからないんだけど、人を好きになるとこんなに挙動不審になっちゃうものなの? ちょっとしたことでも嬉しいし不安だし恥ずかしいし切ない……。気持ちに振り回されてる感じ?
日本にいたときはみんなもっと恋愛を楽しんでるって感じに俺からは見えてたけどな。片思い中の子もキラキラして見えたし、恋人同士になったらイチャイチャ楽しそうでさ。だから俺も好きな人欲しいなって思春期と言われるような歳になってからは思ってたんだよ。
それが、こんなに苦しいなんて思ってなかったなぁ……。
それでも寒いもんは寒いんだよ。前にルイに貰った上着もあるんだけど鍛錬のときはさすがに邪魔かなと思って着てないからなんだけどね。動きやすい作りしてたし多分問題ないんだとは思うんだけどさって俺が泣き言を言っていたらヴァンが魔導具を貸してくれた。
「これはね、チャージがいるからそれはオレがしてあげるね。ピンになってる裏側にスイッチがあるんだ。作動させると身体の周りに暖かい空気の層を纏うからちょっと楽だよ」
「個人用エアコンじゃん……」
「エア、コン?」
「あー、俺の世界の暖房器具ってとこ」
懐炉って言おうとしたけど、身の回りの空気を温めるなら違うかと思って。でも、これすごくいいなぁ。空気の層が薄いから暑いとかは全然なくて、「寒すぎない」って程度なのが特にいい。
こっちの器用な人なら生活しながら自分の魔力を纏わせてそうやって体感調整することもできるんだって。でもなんでもかんでも魔力でどうにかしようとはしてないみたいだから上着とか暖房なんかもあるし、魔力にしても得手不得手があるようで何かをしながら魔法を常に纏ってってのができない人もいるらしくて、そういう人がこんな魔導具を使うんだそう。
「ヴァンはこんなの必要なさそうなのになんで持ってるの?」
「これは研究用だよ。なんか改良したりとか違う使い方できないかなーって」
「あ、なるほど。ていうか、研究用借りちゃってごめんね」
「いいよー。寒いのに弓の練習はきついでしょ」
そうなんだよね。走り込みしたあとに筋トレするのなんかは身体があたたまるからいいんだけど、弓はじっとしながらやることが多いからすぐ指がかじかむんだよ……。そんでもって震えるとそれだけで狙いが外れる。シビアすぎる。だからこの魔導具はかなりありがたいよ。あの上着を着てもどうしても指先は冷えてたんだけど、それがないんだもん。
「ヴァン、これホントすごい! めちゃくちゃ嬉しい!」
「村の子なんかは冬は弓じゃないやつ練習するんだよ。みんなしんどいのわかってるからね」
「まあ、そうなるよねぇ……」
だって子どもって俺以上には魔力あるだろうけど、大人みたいに魔力量が完全じゃないんだろ? きっと、この魔導具みたいな作用の魔力コントロールもできないはずだもんな。
俺とヴァンがきゃっきゃしてるのをルイがちょっと離れたところから見てるんだけど……なんか暗くない? え、大丈夫?
「あ、あの……ヴァン? ルイの様子おかしくない? なんか聞いてる?」
「うんにゃ? ただのいつもの無表情だよ。気にしなくていいよ」
「でも体調不良とかさ……」
「あの体力オバケが体調不良とかウケるんだけどっ」
ケラケラと笑うヴァンは本当に心配してなさそうだった。ってことはさほど気にしなくても大丈夫なのかな? 俺には魔力の乱れとかも感知できないしわからないから不安になったけど、察知能力の優れてるヴァンが大丈夫っていうならきっと本当に大丈夫なんだろう。
気にはなるけど、余計なことをしたくないような感じもしてルイには話しかけられなかった。まあ、ルイからも何か言ってきたりはしなかったし、夕飯は普通に食べてたから俺の気のせいだったのかもな。
とりあえず、魔導具のおかげで冬の鍛錬の心配がほとんどなくなった。もうガッツリやってやる! 絶対絶対春には『俺、弓が得意です』って言えるくらいになりたい。
なんか流れに任せてたらルイが近距離の剣、ヴァンが攻撃や支援の魔法、俺が遠距離の弓みたいにいつの間にか「旅立つときの役割分担」が決まりつつあってさ。まあ、分担的にはちょうどいいのかもしれないけど。
まあ、そんな感じで俺はそれから弓の鍛錬をかなり必死にやるようになったんだよね。で、時々は短剣の組み手なんかもしたんだ。弓が使えない状況でも身を守るためにね。
短剣の組み手は前のお試し期間よりもっと専門的になってたから最初はついていくのが大変でさ……。弓の感覚との切り替えっていうのかな……そういうのが難しいのもあったし、短剣のほうは常に動いてるから身体の使い方も全然違うし。
今も組み手は背格好の似てるヴァンとやってるっていうのはちょっと助かってる。まあ、自分の気持ちに気づいちゃった当初よりはドキドキは落ち着いてきたよ。上手く抑えられるようになったっていうか。でも突然胸がキュッてなるときはあるんだけどね……食事のときなんかは毎度ともいうけど。
だってね、俺の作った食事を無表情の中にも嬉しそうに食べてくれるんだもん。たまに目が弓なりに細くなって……あんなのずるいよ。そう思ってもルイが喜びそうなメニューを考えちゃう自分が恨めしい。
でも無理。だって好きなんだからしょうがないよね。ただ……ルイの部屋に気軽に行くっていうのはどうもできなくなっちゃった。緊張しすぎちゃって。俺、神話聞いた時ベッドでルイの横にぴったりくっついて話聞いたんだよな。今思いだすと『うおおおおおおお』ってなっちゃうよ。恥ずかしくなるっていうか。
俺には初めてのことで全然わからないんだけど、人を好きになるとこんなに挙動不審になっちゃうものなの? ちょっとしたことでも嬉しいし不安だし恥ずかしいし切ない……。気持ちに振り回されてる感じ?
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