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異世界生活編
76.なんか、俺の専用武器が決まっちゃった感じ……?
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自分の気持ちに気づいちゃってから、今までどうやってルイに接してたっけってわからなくて悶々としてる。振り返っても俺ってルイのことばっかり考えてたじゃん……としか思えなくて。気づいてみたらなんてわかりやすいって思うんだけど、どういう状態が人を好きになった状態なのか全然わかってなくてさ。いや、早くから気持ちに気づいたとしたってどうすることもできなかったと思うし、今と同じだとも思うんだけどさ。
「はぁ……しっかりしろ、俺。今まで通りにするんだ。ルイに心配とか迷惑かけちゃ駄目だ。あんないい人に負担かけたら絶対駄目……」
それから俺は今まで以上に鍛錬に身を入れて取り組むようにした。必死で何かに取り組んでいれば少しは気が紛れるから。ルイもヴァンも「どうした?」って言ってきたけど、俺が「もっと頑張って強くなりたいんだ」って言ったら普通に納得してくれたんだよね。
気を抜くとついルイのこと目で追っちゃうからひたすら的に集中できる弓は俺にとって都合が良かった。剣とかの鍛錬だと組み手とかでどうしても……ね。
「イクミは弓が気に入ったんだねぇ」
「んー、自分に合ってるのかはわからないけど結構楽しいよ。もう少し力がついたら最初の弓使って練習したいしさ」
「楽しいと思えるものの方が上達も早いだろうな」
「でしょ。アームガードの他に最近グローブも使うようになったから怪我もないしさ。コントロールはちょっと落ちたけど、すぐ挽回するつもりだもんねー」
そう、俺は数をこなすためにグローブをつけることにしたんだ。だってまた出血なんかしたらルイが心配するし練習止められちゃう。それは困る。俺の現実逃避の手段なのにっ。
「まあ、そんなに気に入ったなら続けてみたらいいんじゃない? ねえ、ルイ?」
「そうだな。弓メインにするならサブは短剣とかが良さそうだな」
「でも、一通りやるんじゃないの? まだ斧系とかやってないよ? 正直向いてるとは思わないけどさ」
「別に絶対やらなきゃいけないって訳じゃない。村長はそうやって育ててくれたけどな。なんでも使えれば困ることはないって主義だから。でもイクミは限られた時間でやるしかないんだから自分はこれだってものがあったならそれに集中したって構わない」
限られた時間……かぁ。胸痛いなぁ。
いや、わかってるけどね。初恋は実らないって言葉聞いたことあるけど、ほんとにね。でも、きついけど一緒にいられる時間を大切にしよう。帰れるって決まった訳じゃないのもわかってる。だけど、俺がうっかりここに迷い込んだときみたいにひょんなことで帰れちゃうことだってあるかもしれないし、帰る手がかりが見つかって帰れることになるかもしれない。そのとき、俺がルイに恋したことを思い出として大事にしたいんだ。
あ、やばい。泣きそう……。
「前の弓、使いそうだし持ってきておくか」
「オレ行ってこようか?」
「俺の部屋にあるから大丈夫だ」
2人が後ろで話してるのを聞きながら、俺はキッと的を睨んでいた。集中しろ! 余計な考えは頭から追い出すんだ。
ヒュッと音を立てて放った矢が綺麗な軌道を描いて的に吸い込まれるように飛んでいく。パシュッという音がして的の真ん中を貫く。
「よし!」
「おおー、短期間でほんと上達したよね。めっちゃ向いてるんじゃない?」
ヴァンが褒めてくれたから振り返るとルイがいなくて思わずキョロキョロしてしまった。
「弓、取りに行ってるよー」
「ああ、そんな話してたよね。でもまだ……俺あっちの弓使えるかと言われると……」
「いいじゃん。冬は長いよ」
確かに? ていうか、俺の現実逃避のせいで俺の武器が弓に決まりつつある。まあ……2人が反対しないならそれでいいのかなー。でも確かに剣よりは向いてるかなって気がするからいいんだけどね。それにしても、冬の鍛錬ってきつそうだな。俺にできるかな……。
そんなことをヴァンと話してたけど、雪が降ったりはするけど結界とかこの地域の不思議な霧の力で村の外よりはかなり過ごしやすいんだそうだ。ルイも言ってたけど、結界すごいよなぁ。いまだにここの霧の幻想的な様子には感動するときがある。そりゃ毎日じゃないんだけど、やたら色合いが綺麗なときがあるんだよね。一番最初に坑道を出たときの感動には及ばないけど……。
「待たせた」
「別に待ってないよー。オレはイクミと楽しく話してたしー」
いやぁぁぁぁ! ヴァンやめて! 変な言い方しないでよ!
笑顔を作ろうとしても口の端がヒクヒクしちゃうのがわかる。今までだったら全然気にならない言葉だったと思うのに……。
「いい加減にしろ。イクミが困ってるだろ」
「ええー……イクミ、困ってたの?」
「あ、いや、その……」
普通にルイがヴァンを窘めて、ほらと最初の弓を手渡してくれた。んー、やっぱりこっちはそれなりに重いな。でも前よりは片手で持ったときのずっしり感が軽くなっているような気もしないでもない。
「ちょっと試してみるよ!」
困った気持ちをどうにかしたくて、弓を構える。左手を前に突き出して矢を乗せるようにして、右手で弦と矢をグググっと引く。顎辺りで固定して矢の軌道を想定しながらやや上向きに……パッと右手を開くと矢は綺麗に飛んでいった。
「ああっ! 惜しいねぇ」
「的じゃなくて大きい魔物だったら当たってたかもな」
すごく綺麗に飛んでいったけど矢は的の右端を掠めるようにして外れた。とはいえ、手応えが全然違った。
「なんか……いけそうな気がしてきた!」
子供用で頑張った成果なのか筋トレの成果なのか、両方なのかわからないけど最初の頃のグギギってなりながら引いてた感じとは全然違う。完全にこっちの弓にしちゃっていいのかは判断に迷うところだけど、数投で挫折ってことにはならなさそうだ。
「いやー、イクミはホント飲み込みが早いねぇ」
「でも俺は浅く広く頭打ちも早いんだよ? 正直微妙じゃない?」
「それはイクミがそう思ってるだけじゃないのか? それを完全にモノにしようとやり続けたことはあるのか?」
……。ない、かも?
あっちじゃいろんな選択肢が溢れすぎてて、好奇心で手を出してはそこそこ出来たら次って感じで変えてきてたもんな。やってみたいことが多すぎたから。そうか……俺でもやり続けたら人並み以上になれるものあるのかな。
「2人がそう言うなら……頑張ってみる」
俺がそう言うとルイに頭ポンポンされて顔がめっちゃ熱くなるのがわかった。うわーん、変に思われるからやめてぇ。
「はぁ……しっかりしろ、俺。今まで通りにするんだ。ルイに心配とか迷惑かけちゃ駄目だ。あんないい人に負担かけたら絶対駄目……」
それから俺は今まで以上に鍛錬に身を入れて取り組むようにした。必死で何かに取り組んでいれば少しは気が紛れるから。ルイもヴァンも「どうした?」って言ってきたけど、俺が「もっと頑張って強くなりたいんだ」って言ったら普通に納得してくれたんだよね。
気を抜くとついルイのこと目で追っちゃうからひたすら的に集中できる弓は俺にとって都合が良かった。剣とかの鍛錬だと組み手とかでどうしても……ね。
「イクミは弓が気に入ったんだねぇ」
「んー、自分に合ってるのかはわからないけど結構楽しいよ。もう少し力がついたら最初の弓使って練習したいしさ」
「楽しいと思えるものの方が上達も早いだろうな」
「でしょ。アームガードの他に最近グローブも使うようになったから怪我もないしさ。コントロールはちょっと落ちたけど、すぐ挽回するつもりだもんねー」
そう、俺は数をこなすためにグローブをつけることにしたんだ。だってまた出血なんかしたらルイが心配するし練習止められちゃう。それは困る。俺の現実逃避の手段なのにっ。
「まあ、そんなに気に入ったなら続けてみたらいいんじゃない? ねえ、ルイ?」
「そうだな。弓メインにするならサブは短剣とかが良さそうだな」
「でも、一通りやるんじゃないの? まだ斧系とかやってないよ? 正直向いてるとは思わないけどさ」
「別に絶対やらなきゃいけないって訳じゃない。村長はそうやって育ててくれたけどな。なんでも使えれば困ることはないって主義だから。でもイクミは限られた時間でやるしかないんだから自分はこれだってものがあったならそれに集中したって構わない」
限られた時間……かぁ。胸痛いなぁ。
いや、わかってるけどね。初恋は実らないって言葉聞いたことあるけど、ほんとにね。でも、きついけど一緒にいられる時間を大切にしよう。帰れるって決まった訳じゃないのもわかってる。だけど、俺がうっかりここに迷い込んだときみたいにひょんなことで帰れちゃうことだってあるかもしれないし、帰る手がかりが見つかって帰れることになるかもしれない。そのとき、俺がルイに恋したことを思い出として大事にしたいんだ。
あ、やばい。泣きそう……。
「前の弓、使いそうだし持ってきておくか」
「オレ行ってこようか?」
「俺の部屋にあるから大丈夫だ」
2人が後ろで話してるのを聞きながら、俺はキッと的を睨んでいた。集中しろ! 余計な考えは頭から追い出すんだ。
ヒュッと音を立てて放った矢が綺麗な軌道を描いて的に吸い込まれるように飛んでいく。パシュッという音がして的の真ん中を貫く。
「よし!」
「おおー、短期間でほんと上達したよね。めっちゃ向いてるんじゃない?」
ヴァンが褒めてくれたから振り返るとルイがいなくて思わずキョロキョロしてしまった。
「弓、取りに行ってるよー」
「ああ、そんな話してたよね。でもまだ……俺あっちの弓使えるかと言われると……」
「いいじゃん。冬は長いよ」
確かに? ていうか、俺の現実逃避のせいで俺の武器が弓に決まりつつある。まあ……2人が反対しないならそれでいいのかなー。でも確かに剣よりは向いてるかなって気がするからいいんだけどね。それにしても、冬の鍛錬ってきつそうだな。俺にできるかな……。
そんなことをヴァンと話してたけど、雪が降ったりはするけど結界とかこの地域の不思議な霧の力で村の外よりはかなり過ごしやすいんだそうだ。ルイも言ってたけど、結界すごいよなぁ。いまだにここの霧の幻想的な様子には感動するときがある。そりゃ毎日じゃないんだけど、やたら色合いが綺麗なときがあるんだよね。一番最初に坑道を出たときの感動には及ばないけど……。
「待たせた」
「別に待ってないよー。オレはイクミと楽しく話してたしー」
いやぁぁぁぁ! ヴァンやめて! 変な言い方しないでよ!
笑顔を作ろうとしても口の端がヒクヒクしちゃうのがわかる。今までだったら全然気にならない言葉だったと思うのに……。
「いい加減にしろ。イクミが困ってるだろ」
「ええー……イクミ、困ってたの?」
「あ、いや、その……」
普通にルイがヴァンを窘めて、ほらと最初の弓を手渡してくれた。んー、やっぱりこっちはそれなりに重いな。でも前よりは片手で持ったときのずっしり感が軽くなっているような気もしないでもない。
「ちょっと試してみるよ!」
困った気持ちをどうにかしたくて、弓を構える。左手を前に突き出して矢を乗せるようにして、右手で弦と矢をグググっと引く。顎辺りで固定して矢の軌道を想定しながらやや上向きに……パッと右手を開くと矢は綺麗に飛んでいった。
「ああっ! 惜しいねぇ」
「的じゃなくて大きい魔物だったら当たってたかもな」
すごく綺麗に飛んでいったけど矢は的の右端を掠めるようにして外れた。とはいえ、手応えが全然違った。
「なんか……いけそうな気がしてきた!」
子供用で頑張った成果なのか筋トレの成果なのか、両方なのかわからないけど最初の頃のグギギってなりながら引いてた感じとは全然違う。完全にこっちの弓にしちゃっていいのかは判断に迷うところだけど、数投で挫折ってことにはならなさそうだ。
「いやー、イクミはホント飲み込みが早いねぇ」
「でも俺は浅く広く頭打ちも早いんだよ? 正直微妙じゃない?」
「それはイクミがそう思ってるだけじゃないのか? それを完全にモノにしようとやり続けたことはあるのか?」
……。ない、かも?
あっちじゃいろんな選択肢が溢れすぎてて、好奇心で手を出してはそこそこ出来たら次って感じで変えてきてたもんな。やってみたいことが多すぎたから。そうか……俺でもやり続けたら人並み以上になれるものあるのかな。
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